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2004年に設立した株式会社ベーシック(以下、ベーシック)は、これまでに50以上の新規事業を立ち上げ、そのうちの複数の事業は株式会社マイナビをはじめ大手企業にも事業譲渡してきた。2020年12月には、創業時からの柱として運営してきた比較メディアを事業譲渡し、主な事業をBtoB向けマーケティングサービスのSaaS(Software as a Service)事業に一本化した。
2021年12月には総額11億円の資金調達を実施し、事業を加速させている同社が目指すのは「Webマーケティングの大衆化」だ。ベーシックの創業者である秋山勝代表取締役に、創業期のストーリーやSaaS事業に経営の方針を変更した背景、今後の事業の方向性を聞いた。
※内容や肩書は2022年5月の記事公開当時のものです。
「自社メディアが中長期的な成長の要因になる」。存在しなかった比較メディアを立ち上げる
――ベーシックを創業した経緯を教えてください。
秋山:前職は、ITサービス企業のトランスコスモスに在籍し、Webマーケティング関連の新規事業立ち上げを中心に行っていました。その中で、自社メディアの存在が、中長期的に事業を成長させていく大きな要因になるのではないかと考えました。
というのも、当時は業界に特化した企業のサービスを比較するメディアがほぼ存在していませんでした。そのようなメディアをつくれば、早期に各業界のお客さまと関係構築ができる上に自社の差別化要因にもなり、最終的には収益構造も改善できると考えていたからです。
しかし、会社の事情でその実現が難しくなりました。それなら自分でやってみようと、ベーシックを創業しました。
――創業から今までに、どのような事業を行ってきたのでしょうか。
秋山:2004年に引っ越しサービスの比較メディアを立ち上げた後、証券会社やウエディングの比較メディアなど、これまでに50以上の事業を立ち上げてきました。現在は、BtoB向けマーケティングサービスのSaaS事業として、さまざまなサービスをまとめたオールインワン型BtoBマーケティングツール「ferret One」とフォーム作成管理ツール「formrun」を展開しています。
事業を立ち上げるときに私が一番大切にしているのは、どのポイントを押さえれば事業が一気に立ち上がっていくかを考えることです。オセロでいえば四隅を押さえるという感覚ですが、それが何かを考えます。
例えば、比較メディアを新しく立ち上げるときに一番有効な手は、その業界のリーディングカンパニー、もしくはその業界に影響力のある会社を掲載することです。すると一気に実現可能性が高まるので、まずはその戦略で立ち上げました。
これまで比較メディア事業とSaaS事業の両方を運営していましたが、比較メディア事業は2020年12月に事業譲渡し、SaaS事業に経営の資源を集中させました。
多額の広告費を支払った企業が上位表示される比較メディアに危機感。「真っ当な状態」を目指す
――これまで立ち上げてきた事業について、印象的なプロジェクトをお話しください。
秋山:証券会社の比較メディアの立ち上げでは、すでにビジネスをある程度確立している競合がいて、参入が非常に難しい状況でした。一方でその比較メディアでは、広告費を多く出した証券会社が上位に表示されていたのです。そのため結局一社独占となり、情報の非対称性を改善していく役割を担う比較メディアとして真っ当と言える状態ではないと感じていました。
そこで、メディア間で競争した方が、結果的に業界にとって意義がある状態になるのではないかと考えて、あえて証券の比較メディア事業にベーシックとしても参入しました。
しかし当時の私たちは、金融業界で何の実績もない新規参入者です。そこで、私たちのメディアで広告主となってくれそうな証券会社に対し、私たちが半年以内に情報の非対称性の改善を目指す姿を具体的に示し、そのときに業界に与えるインパクトがどれほどかを確認してもらおうと考えました。
さらに私たちは、未来の実績を前提に、今を評価してほしいという相談もしました。通常であれば、実績を基にそれに見合った成果報酬が支払われます。しかし、思い描く未来の実績を必ず実現するから、今それに見合った成果報酬が欲しいという話をしたのです。
結果的に、業界に与えるインパクトや、既存の比較メディアのけん制になることなど、多くの証券会社が我々のビジョンに賛同してくれて、後発でありながら早期に事業を立ち上げることができました。
――現在注力しているBtoBマーケティングのSaaS事業は、どのような経緯で立ち上げたのでしょうか。
秋山:私たちはさまざまな業界で比較メディアやマッチングサービスを立ち上げていきましたが、それらを軌道に乗せていく上で一番重要なスキルが「マーケティング」でした。もちろん、ベースとしてその業界が抱える問題の核心を突いた事業モデルを構築することが前提ですが、それでもインターネット上で多くの人を集客する力は事業成長に不可欠です。
実は比較メディア事業と同時並行で、日々のマーケティング業務を楽にしたり、マーケティングの思考を加速したりするような簡単なツールも自社で開発していました。ツールを広く世の中に公開したところ驚くほど喜ばれたので、私たちの持っているノウハウには価値があるのだと気付き、それが事業立ち上げのきっかけになりました。
ツールを提供しているとマーケティングに悩んでいる人から相談を受ける機会が増えていきます。その過程で、私が当たり前だと思っていたことでも、多くの人はそのもっと手前からつまずいていることに気が付きました。結果として、マーケティングにまつわる本質的な問題の構造が分かってきたのです。
――「問題の構造」とは何でしょうか。
秋山:まず、この世の中にはマーケティングのノウハウが体系立った形で存在していないことです。そのため、マーケティングを学ぼうと思ってもどう学んでいいのかが分からない。
もしくはSEO(Search Engine Optimization)だけ、SNSだけに詳しい、リスティング広告に詳しい、といったように、それぞれの手法に傾倒してしまう傾向が多くの会社で見られ、断片的な知識の集積にとどまっていました。
マーケティング戦略を含めて構造化し、最も有効な手段や真のセオリーから順番に実施していくことが大事なのですが、そのノウハウが確立されていなかった。
例えば、SEOで自社サイトの検索表示順位が上がったのに全く成果に結びつかないという相談を受け詳しく調べたところ、遷移先の自社サイトがそもそも成果につながらない内容になっていたのです。
それなら我々が持っているマーケティングノウハウを広く一般に公開しようという構想で生まれたのが、マーケティングメディアの「ferret」でした。その上で、ただ知識を得ただけではどうにもならないということで、それを実践に移すためのツールとして「ferret One」の前身のサービスも続けてつくりました。
「我々の挑戦が顧客の成長につながり、顧客の成長が我々の発展につながる」SaaS事業の魅力
――秋山さんは、これまで50以上もの事業を生み出しました。多いときは月1回のペースで新規サービスをリリースしています。なぜ、そんなスピードで事業を生み出せるのでしょうか。
秋山:私が、物事を構造化することが得意だからでしょうか。比較メディアは、最初の立ち上げから2年程度で、すでに量産体制を構築していました。というのは、比較メディアが持つ情報の構造や、人から認知を得るために必要なメッセージの構造、サイトの仕組みなどは業界が変わっても共通するからです。それを基本構造として社内で独自のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を構築しました。
そのため、新しい業界の比較メディアを立ち上げるときは、そのCMS上でサイトのロゴやメインメッセージ、掲載するお客様の情報を変更するだけで、すぐに比較メディアをつくることができるようになっていました。
このように、物事の共通項を抽出して構造化し、量産できるようにするという考え方は、現在提供している「ferret One」のサービス構造の基礎にもなっていて、業界にかかわらず広く展開できるのです。
――2020年に比較メディア事業を売却し、SaaS事業に経営資源を集中しましたが、どのような背景があったのですか。
秋山:元々は比較メディアとSaaS事業を両輪で推進していましたが、それぞれへの投資が中途半端になってしまっているという思いが拭えませんでした。そのため、このまま2軸でやっていくことが、本当に事業にとってもその事業に携わっている人にとってもいいことなのだろうかという悩みがありました。
事業に携わっている人にとっては、会社が全力で取り組んでいる領域にみんなで身を投じながらやる方が励みになります。そのため、最終的に比較メディアは、メディア事業をメインでやっている会社に売却する道を選びました。
一方で、SaaS事業を残したのは、SaaS事業が私の仕事観に合っていたからです。
私たちが提供するマーケティングノウハウのようなソリューションサービスは、選んで購入または契約していただいてからが本番です。お客さまと対応するときはこちらも緊張感を持ち、サービスを成長させるための挑戦をし続ける必要があることに魅力を感じました。
それが世にいうカスタマーサクセスです。その挑戦がお客さまの成長につながり、お客さまの成長が結果的に私たちの事業の発展にも大きな影響を与えるのです。
――SaaS事業において、重要視しているのは何でしょうか。
秋山:マーケティング活動で伝えているメッセージや営業部門がするお話、契約を締結した後のカスタマーサクセスの対応という一連の事業活動が、お客さまの期待に対して首尾一貫していることです。
逆に言えば、それだけを一心にやり続ければいいというビジネスモデルなので、それが気持ち良くて、私に合っていました。常に取り組むべき問いが立っている状態なので、SaaS事業に携わる人も常に安定して走り続けることができて、楽しいと思います。
物事の核心をとらえ、顧客の本当の課題を発見できる人材を求める
――秋山さんがSaaS事業を通して目指すのは、どんな未来でしょうか。
秋山:「Webマーケティングの大衆化」ですね。この世の中には、スマートフォンやパソコン、車、テレビなど、大衆化したものがたくさんあります。裏側の仕組みがどんなに高度で複雑でも、我々はそれを知ることなく、簡単に使えるようになっています。しかし、マーケティングはまだまだ複雑な仕組みの学習が必要で、誰でも簡単に使えるわけではありません。
世の中にマーケティングで困っている人たちが非常に多いにもかかわらず、使い手を選ぶ状態になっています。我々はマーケティングのノウハウを持たなくてもやりたいことが実現できるプロダクトを開発し、マーケティングを大衆化したいと考えています。今は「ferret One」をもう一段発展させたプロダクトを開発しており、マーケティング大衆化に向けた一歩を踏み出しているところです。
――目指す未来の実現のために、どのような人を求めていますか。
秋山:常に立てられる問いに対して、解を出せる力を持っている人です。つまり、我々が物事をシンプルにして横展開してきたように、難しいことを簡単にして、物事の核心を突ける人ですね。
例えばお客さまが発した言葉の裏側にある、本当の課題を見つけることなどが重要になってきます。
さらにいえば、その課題がどの企業にも共通する困りごとなのかどうかを見極め、対処の必要性を決める必要もあります。
もう一つは、選んだ道を正解にできる人です。事業や人間関係では良いことがあれば悪いこともあり、最初の期待通りになることはほとんどないでしょう。そのときに、現時点で実施することを見据えながら、目標にたどり着くためにはどうしたらいいかを考えて、最終的に自分が選んだ道で良い結果を出せる人が、ベーシックという会社には合っていると思います。