成長したいなら「居酒屋の掃きだめみたいな会話はするな」~大手・ベンチャーの事業責任者が語る、事業会社でのキャリアの歩み方 #01
2017/07/09
#ITベンチャー仕事の実態
#ベンチャーで成果を出すスキル
#新卒内定者必須コラム

はじめに

みなさんの中には、事業会社でのキャリアを歩んでいらっしゃる方や、事業会社への転職を考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

今回は、実際にIT系メガベンチャーで10年以上働き、その後スタートアップ企業へ転職なさった方にインタビューしました。前編である今回は、事業会社でのキャリアの歩み方と、事業づくりの面白さ・重要なポイントについてお聞きしました。

後編はこちら

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インターネットでメディアのあり方が変わると思い、IT系メガベンチャーに入社

- 本日はよろしくお願いいたします。まずはご経歴を教えていただいてもよろしいでしょうか。

新卒でIT系メガベンチャーに就職し、その後10年ほどしてスタートアップ企業に転職しました。

前職では1年目に営業を経験した後、2,3年目は事業の短期的なKPI・収益改善を担当し、4,5年目から事業の中長期戦略の立案を担当しました。

6年目からマネージャー(一般的には課長)を務めた後、新規事業を立ち上げてマネージャーとして事業拡大を推進し、その後スタートアップ企業に転職した形になります。

- かなり長い間事業に携わっているのですね。新卒でIT系メガベンチャーを選んだのはなぜでしょうか。

1番の理由は、事業の企画から実行、改善まで全てのフェーズに携わって、世の中に影響力のあるプロダクトを作れるような会社に入りたいと思ったからですね。

学生時代に、エンジニアとして受託開発をするアルバイトをしていたんですが、どうしても人に言われたものを作る感覚がありました。自分って結構「オレがオレが」みたいなタイプなので、自分で企画・実行したものを世の中の人に使ってもらいたいという気持ちが強かったですね。

影響力のあるプロダクトを作りたいだけなら、メーカーでもいいんじゃないかと思われるかもしれませんが、そうしなかったのには理由がありました。当時はインターネット黎明期で、Googleが日本でやっと使われ始めて、家庭にインターネットが普及し始めた、ちょうどそのような時期でした。

きっと、情報がインターネットにのることでメディアの在り方が変わると思ったので、インターネットをしっかりとやっている会社に入りたいと思い、今の会社を選びました。

必要なのは、社会課題を見つけられる「現場」感覚。だからこそ営業を志願した

- 自分でプロダクトを企画したいという気持ちで入社したのであれば、最初の配属が営業なのは抵抗感があったのではないでしょうか。

いえ、むしろ営業には自分から志願して行きました。いいプロダクトを作るために必要なのって、「現場」に出てどれだけ社会課題を発見できるかだと思っています。なので、営業から離れた2年目以降も、週に1回は実際にお客様の元を訪れて、現場感覚を養うことを忘れませんでしたね。

- 2,3年目に行っていた事業の短期的なKPI・収益改善について、具体的に教えていただけますでしょうか。

最初のうちは、収支管理の仕事とも呼ばれている、数字を追いかける仕事をしていました。

今月はどれだけ売上が立って、どれだけコストがかかるのか、設定したKPIは達成しているのかなどを追っていきます。そして、数字が変動しているとしたらそれはなぜなのか、どのコストが増えたからなのかなどを考え、月1回上長に発表します。要は内部の数字のまとめ役ですね。

最初はPLとかも見たことがない状態だったので、非常に苦労して、先輩の下で修業するような感覚でした。そのうち、数字にも強くなってきたので、商品のプロジェクトリーダーを任せてもらえました。実際に売上が5億円の商品を10億円にするにはどうすればいいかといったことを施策まで含めて考えるような仕事です。

売上を倍にするには、単純に考えると、お客様の数を倍にしなければいけないわけですが、そのためにはどうしたら営業が効率的に商品を売れるのか、というように、どの数字を動かすべきで、その数字を動かすためにはどうすればいいのかという肌感覚を身に着けていきました。

成長したいなら「居酒屋の掃きだめみたいな会話はするな」

- 若いうちからそういった数値感覚が身につくのはいいですね。その後、事業の中長期戦略の立案に移ったのはなぜでしょうか。

実はこの中長期戦略のプロジェクト、自分で勝手に立ち上げたみたいなものなんです(笑)。短期的に売上を立てる商品企画というのがわかってきたので、中長期的な検討もしてみたいなと思って。

- それで実際にプロジェクトをやらせてもらえるのはすごいですね。

前職の会社は、「やりたいことをやらせてくれる文化」みたいなものが根付いていましたね。仕事を振るのを待っている人は成長せず、やりたいことしっかりと表明していく人は成長して大きなプロジェクトを任されていました。

同期の中でも出世していくのは、自分の意見をガンガン言って、隙あらば明日にでも辞めて起業してやるみたいな前のめりな姿勢を持っている人でしたね。パッションとロジカルを兼ね備えているというのが成功した人の共通点だと思います。

- 自分から仕事をつかんでいく人が成長するというのはよく言われている気がしますが、そういった人材になるためのコツみたいなものはあるのでしょうか。

先輩からは「居酒屋の掃きだめみたいな会話はするな」と言われました。要は、ああだこうだと問題点ばかり言う「評論家」になるのではなく、それを自分はどうやって解決したいのかという、解決策までをセットで話せっていう意味です。

なので、上司に「こういうことで悩んでいます」と相談すると、解決策がセットになっていないので、「じゃあお前はどうしたいの」と必ず聞かれます。そうすると、「じゃあお前はどうしたいの」と聞かれるのがそのうち恥ずかしくなってくるんです。そのうち自然と「こういうこと悩んでて、自分はこうしたいけどどうですか」という風に、やりたいことも含めて自分の意見を言えるようになります。

中長期戦略には正解がない。大事なのは不確実な未来の中でどう仮説を立てるか

- 課題と解決策をセットで言うのは確かに大事なことですね。中長期戦略を立てるのは、短期で戦略を立てるのとだいぶ違うのでしょうか。

中長期戦略を立てるのに1番意識しないといけないのは、とにかく正解がないということです。

短期の場合は、売上を上げるためにどの数値を改善すればいいのかを発見し、それを発見した後はとにかくPDCAを回していくことの繰り返しです。

一方、中長期の戦略策定ではそういった頼れる数値が少ないので、出していく意見は全て仮説でしかありません。想像している未来が全て不確実な中で、5ForceやPESTといったフレームワークを使いつつ、どうやって仮説を立てるかを考えていきます。

そして、先ほどいった正解がないという点がポイントで、立てた仮説は間違っていることが往々にしてあります。その点を自覚して、明確なゴールがない中でどんどんと仮説をアップデートして精度を上げていかなければなりません。

結局、未来なんて誰にも分らないわけですから、どれだけぶっ飛んだアイデアを出して、それをどう現実にすり合わせるかが意外に重要だったりします。

- その後、新規事業にも携わっていますが、実際にある商品の売り上げ改善を考えるのと新規事業を考えるのではやることがだいぶ違うように思えます。

新規事業を考えるのも、短期の売上改善を考えるのも、そんなに変わらないのではないかと思っています。

結局どちらであっても、どこに課題があるのかという、課題の見つけ方が重要で、結局はそれをどう解決するのかというアプローチの仕方の違いでしかありません。どちらにしても、「現場」感覚を忘れずに社会課題を見つけていくことが必要になってきます。

- 最後に、事業を作っていてよかったと思う瞬間は、どんな時でしょうか。

プロダクトを利用してくださる方が、どんどん増えていく感覚を持ったときが、事業運営をしていてよかったなと感じる瞬間ですね。

あるプロダクトをリリースした直後、営業の方が私のデスクのところに来てくれて「今日お客様に、『これ作った人、天才だよ!』って言われたんですよー!」と、嬉しそうに話してくれた時は、非常に嬉しかったし、やりがいを感じましたね。

プロダクトを利用してくださる方々の声を聞くことは自分のライフワークになっていて、今お話ししたような嬉しい話もありますが、もちろん叱咤激励をいただくこともあります。

お客様のリアルな声は本当に宝だなと思っていて、そのような叱咤激励をいただいた時は、「これはプロダクトへの期待だ」と思って、プロダクトの改善をできる限り行おうと決めています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。正解のない中で仮説を立てていくダイナミズムや、短期間でどんどんとPDCAを回してとにかく目標を達成していくストイックさなど、事業づくりの醍醐味がわかったかと思います。

後編ではベンチャー企業への転職について詳しくお聞きします。

後編はこちら

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コラム作成者
Liiga編集部
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