【ケース問題を徹底解説】差の決定的要因がどこにあるのか、具体的に考えてみる
2017/07/09
#戦略コンサルのケース面接対策

はじめに

前回に引き続き、戦略コンサルタントの方にLiigaコロッセオの問題を解説していただきました。コンサル志望の方はぜひご覧ください。

前回のコラム:【ケース問題を徹底解説】正確な現状分析を踏まえた、矛盾のない解答とは?

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導入: 本コラムの趣旨

本コラムでは、「ケース問題から重要な1つの要素やプロセスを抽出した問題」について、解説や考え方を提示していきます。ケース面接中に考えるべき要素・プロセスの中から、1つに集中して深く考えていただき、その内容に絞って振り返りを行うことで、より広く・深く考える方法を身に着けていただければと思います。

Liigaコロッセオにて出題された問題を利用しますので、ぜひコロッセオを解いたうえで、本コラムを読んでみてください。今回解説するのは、以下の問題です。

あなたのクライアントは、野菜ジュース市場で2位につけています。
1位企業とのシェアの差は大きく、日々シェア拡大の方法を模索しています。
さて、野菜ジュースの売上・シェアを構成する要素は様々ありますが、どの部分がシェアの差の決定的要因となっているでしょうか。


売上・シェアを構成する要素を分解するうえで、「全体像を示し」つつ、「特に重要な要素について言及」してください。


問題を解きたい方はこちら

よくある解答の傾向

さて、今回の問題を、「要因特定」ではなく「売上を上げるには」という形式で出題した時、「顧客Needs・Trendの分析をして、それに合わせた商品の開発を行う」といった視点で解答を作成するパターンが、非常によく見かけられます。

もし今回のケース問題が、一般論としての「野菜ジュース市場の売上を上げるには」であれば、これも1つの解答方針だと思われます。しかし、今回の問題は、「シェア2位」の「特定の企業」です。

さて、少し考えてみてほしいのですが、「顧客Needsにバッチリあう商品」を開発できれば、それだけでシェア2位の企業は、売上増加&シェアUPが実現できるのでしょうか(他に必要な・満たすべき条件はないのでしょうか)。

今回の問題・解説の特徴

それでは、解説に入ります。まず初めに本解説の結論として、今回の「問題」と「解答」の特徴や傾向について述べておきます。

問題の特徴

まず、最低限抑えておくべきなのは、今回のテーマが市場規模ではなく、「特定の企業」の「シェア」にあることです(つまり、競合メーカーの視点が1つ重要です。また、仮に改善の打ち手を考える場合でも、新しい市場を開拓して自社の売上を伸ばすのでなく、単純に競合の売上を奪うだけでも良いことになります)。

次に押さえておくべきなのは、今回のクライアントが「業界2位企業」であることです。「とある企業A社」ではなく、わざわざ「業界2位」と指定されており、しかも「1位とのシェアの差は大きい」とあることから、当然、解答の方向性が狭くなってしかるべきです。

解答の特徴

今回の問題では、「小売店の店頭」における事象に気が付くことが非常に重要です。詳細は、解説内で順を追って説明していきます。

また、問題の特性でもあるのですが、「野菜ジュースという商品特性」を考慮する必要があることを簡単に述べておきます(特に他の消費財との違いを考えるとわかりやすいです)。

野菜ジュースは、「お店に特定の商品の在庫がなければ、別の店まで買いに行く」という行動がなされる可能性が、他の消費財と比較して相対的に低く、「お店に在庫がある商品から選んで買う」という選択になりがちです。

問題を解く前に

具体的にイメージすることの重要性: そもそも野菜ジュースとは?

ケース問題には、「具体的に考える」という視点が非常に有用です。ケース面接は、「架空の企業」について議論する場合も多いですが、これを現実の話を例に考えてみるのです。

さて、日本で野菜ジュースのシェアNo.1企業がどこかご存じでしょうか。大半の方は想像がつくと思いますが、「カゴメ」であり、「野菜生活,」「野菜一日これ一本」といったブランドを展開しています。

では、シェア2位の企業はどこでしょうか。これは難しいかもしれませんが、「伊藤園」であり、「充実野菜」「一日分の野菜」などのブランドを展開しています。

さて、このように言われても、伊藤園の「充実野菜という商品を知らない」といった方も、少なからずいるのではないでしょうか。もしかしたら、そもそも「カゴメ以外の野菜ジュースのブランドを見た記憶がない」といった方もいるかもしれません。

一方、同じく飲み物でも、ビールであれば「アサヒ(スーパードライ)」、「キリン(一番搾り)」などの複数思いつくでしょうし、コーラであれば「コカ・コーラ」、「ペプシコーラ」など、やはり複数思いつく方が多いと思われます。

そして、ここが重要なのですが、「普段ビール・コーラを飲まない人であっても、ビール・コーラの複数ブランドを知っている」のではないでしょうか。

さて、野菜ジュースの場合、なぜカゴメのブランドしか思いつかないのでしょうか。これにはいくつか理由が考えられますが、いったん1つの論点に絞りたいと思います。特に、伊藤園のブランドを知っている人だと、「充実野菜がお店(コンビニ)に置いてあるのを、あまり見ないな」と感じる方もいるのではないでしょうか(この話を、伊藤園のブランドを知らない人に置き換えると、「そもそもお店の棚に置いていないから知らない」となります)。

当たり前の話ですが、「お店に置いていない」のであれば、商品は売れようがありません。そうなれば、全体の売上が小さくなり、当然シェアも低いままとなります。

以上のように、現実の話で具体的に考えてみると、いろいろとわかることがあります。今回の場合、「2位の企業の商品がわからない」、もしくは「2位の企業の商品は知っているが、あまりお店に置いているのを見ない」といった感覚が、考えを深めるうえで、非常に有用です。

要因の特定: シェア1位企業との差はどこにあるのか

まず、今回のケース問題は、特にカゴメや伊藤園といった、現実のメーカーが指定されているわけではありません。しかし、いったんカゴメ(1位)と伊藤園(2位)を、具体的にイメージしながら考えてみてください。

さて、前置きが長くなりましたが、ここから要因特定に入ります。今回のクライアントは、シェア2位企業であり、シェア1位の企業とはかなりのシェア差があることを思い出してください。さて、この要因はどこにあるのでしょうか。

考えられる要因:2位企業の商品力が低い?

さて、2位企業の商品力が低い、商品が顧客Needsにあっていない場合を考えてみましょう。

まず、商品力が低い場合、どうなるでしょうか。これは小売店側、特にコンビニをイメージして考えるとわかりやすいでしょう。野菜ジュースの販売チャネルは、様々なものがありますが、具体的なイメージを持つために、いったんコンビニに限定してみます(「様々なチャネルがある」という、“ふわっと”した考え方をしていると、具体的に考えるのが難しくなります)。

もし、2位企業の商品の売れ行きが悪ければ、小売店はその商品をそもそも店頭に並べなくなります(これは、特に棚の大きさに制限のある、コンビニ、ドラッグストア、都市型の小型のスーパーに顕著です)。

その代わりに売れそうな商品、例えば1位企業の商品力の高い商品を棚に並べるでしょう(代わりに並べる商品は、コーヒー、炭酸飲料、果汁ジュースなどの別カテゴリ商品もあり得ます)。そうなると、お店の棚には、1位企業の商品は多くの種類が並びますが、2位企業の商品は比較的売れ行きの良いわずかな種類の主要な商品が並ぶのみになります。

これは、実際の状況とも、ある程度合致します。特に、棚の大きさに制限のあるコンビニに行っていただけるとわかりますが、野菜生活は、多くの種類の商品が棚に置いてありますが、充実野菜は、相対的に置いてある商品種類が少ないです。

お店に置いていない商品は、そもそも売れようがありません(そのお店における売上は0です)。特に野菜ジュースのようなソフトドリンク系の商品は、化粧品などと異なり「なければ別の店で買う」といった行動に結び付く可能性が低いです(そもそも、ほとんどの店で棚に置いていなければ、別の店に行っても、やはり棚にないでしょうから、別の店に行っても無駄になります)。

以上のように、そもそも「商品力がない」⇒「棚から商品が排除される」という流れが成立します。そのため、商品力がないという現状であれば、棚にも置いていないという現象を引き起こすはずです。

一方、たとえ2位企業の商品であったとしても、棚に置かれている少数の種類の商品は、一定の売れ行きを達成できているからこそ、棚に残されている可能性が高いです。

そのため、1位企業と比較して、棚に残っている2位企業商品は、種類こそ少ないかもしれませんが、1種類あたりの売れ行きに、著しい差があるとは想定し難いです(もし、1種類あたりの売れ行きが大きく劣っているのであれば、1位企業の商品や、他の飲料カテゴリの商品が、棚の位置を奪いに来るでしょう)。

要因特定において最低限抑えておきたい重要な要素

以上のように、2位企業のシェアが低い理由は、「商品の売れ行き(正確には、1種類あたりの売れ行き)が低い」ことも原因の1つですが、「商品が棚に置いていない(正確には、「棚に置いてある商品の種類が少ない」、「1種類あたりで見て置いてある店舗数が少ない」)」ことも原因であり、この両者の掛け算が「シェアに大きな差がある」原因のはずです(このような分類を示したうえで、さらに販売チャネル別に、上記数値の予測や妥当性の検討をすると、より深い要因特定になると思われます)。

要素の見落としを防ぐための工夫

商品の売れ行きについては、ほとんど全ての方が言及されます。しかし、棚に置いてあるという視点については、見逃す方が大半です。この棚に置いてあるという視点は、「消費者側」の視点のみを、「なんとなく」考えているだけでは、思いつくのが難しいです。 では、どのようにすれば、見落としを防ぐ可能性を上げられるのでしょうか。

例えば、消費者視点で考える場合であっても、「そもそもどのように野菜ジュースを買うだろうか?」といった視点で、購買の一連の流れ・プロセスを、実際の消費者になりきって、具体的に考えてみるのが有用でしょう。

「ランチの弁当をコンビニに買いに行った時、飲み物を買う必要性を感じると同時に、健康のことも気になって、野菜ジュースの棚の前に移動して、棚にある商品から〇〇の考えのもと商品を選択して…」、などとプロセスを細かく考えていけば、「棚に置いてある」という視点を思いつく可能性が高くなります。

繰り返しますが、「プロセス」をとにかく「具体的」に「当事者になりきって」考えることが重要です。

別の方法としては、企業視点で考えてみるのも有効です。当たり前ですが、メーカーは、マーケティング部や商品開発部だけではなく、営業部を所有しています。ここで、「営業担当者の視点で何か見落としがないか」を少し考え込んでみます。

営業担当者は、スーパーやコンビニに行って、何を営業するのでしょうか。営業担当者になったつもりで、具体的に想像(MECEのことは、いったん無視)しながら、思いつきをあげてみましょう。

「弊社の商品を置いてください」、「この価格で納品をお願いします」、「販促・広告の枠をください」といった内容であれば、営業の仕事を経験したことがなくても、比較的簡単に想起できるのではないでしょうか。

このように、様々な視点から、「具体的」に深く考えることで、重要な要素を取りこぼす可能性を減らすことができます。一方、「1つの視点」のみをひたすら深く・細かく考えることは、思考力に自信のある方を除いて、あまりおすすめできない方法です。どのような視点であったとしても、「難点」や「見落としが発生しやすい要素」があるため、浅い思考結果に終わりがちです。

ケース面接は時間が短いため、ついつい焦ってしまい、いきなり特定の軸で深く考えてしまい、結果、狭い議論に終わってしまいがちですが、「別の視点がないか」といった広い視野・余裕を持つことも忘れないでください。

実際のケース問題(施策まで考える場合)に備えて

さて、今回の「要因特定」から、若干話が離れますが、別の視点を考えてみます。実際のケース面接であれば、要因特定だけでなく、当然「シェアを上げる」施策を求められるはずです。それについて、簡単に補足・言及しておきます。

2位企業の商品は棚に置いていない?

先ほどの話を、逆の順序で考えてみましょう。すでに棚には2位企業の商品は、少数の種類の商品しか置いていません。その状況下で、仮に顧客Needsにあった商品を展開した場合どうなるでしょうか。この時、2つの問題が発生します。

まず1つ目の問題は、「棚に置いてもらうのが難しい」ということです。単純に新しい商品が複数メーカーから出たとき、小売店からすると、2位企業の商品を採用するより、1位企業の新商品を採用する可能性が高いでしょう(また、棚のスペースに余裕がない場合、1位企業は、自社の別の“末端”の商品を棚から排除し、代わりに自社の新商品を入れる提案をすることも、比較的容易です)。

次に2つ目の問題は、消費者にトライアルしてもらえるか否かという点です。すでに2位企業の商品はあまり棚に置いておらず、ブランドの顧客認知も低いと思われます。仮に良い良品を2位企業が販売しても、結局1位企業の商品(新商品)が選択されてしまうかもしれません(そして、売れ行きが悪いことを理由に、小売店はすぐに棚から商品を外してしまうでしょう)。

付け加えるのであれば、仮に2位企業がよい商品を出したとしても、野菜ジュースの商品特性上、1位企業が簡単に模倣できる可能性が高いです(これは良い商品が、どのような意味で良い・革新的かによります)。そうなると、上記の2つの問題と相まって、2位企業がシェアを伸ばすのは難しいでしょう。

以上のように、すでに業界2位である企業が、良い商品を出したとしても、シェアを伸ばすのは簡単ではありません。特に、今回のタイプのケース問題で打ち手を考えるとき、「消費者Needs」や「世の中のトレンド」に言及した“新商品”を提案される方が多いです。

しかし、飲料において「世の中のトレンドにあった商品を取り扱う」、「トライアル消費を誘う」うえで、コンビニは最も有力・効率的なチャネルと思われますが、このコンビニこそが、棚の広さ・取扱商品種類数の制限が大きいチェーンであることに注意が必要です。

野菜ジュースという、指向性が小さい商品であることなども考慮して、「商品力以外の施策」も考慮に入れて、セットで打ち手を提案しないと、「実際に売れる商品・施策」とはならないでしょう。 ※「商品力以外の施策」とは、営業活動、パッケージ・訴求方法、注力チャネル、広告など様々考えられます、どのような商品を提案するかによって、セットで言及すべき施策は変化するでしょう。本解説の趣旨からは外れるので、詳細は省略します。

現状把握と、その要因や意味を理解しないと、良い打ち手は出ない

このように、すでに市場シェア2位であり、1位とのシェア差が大きいという現状を踏まえると、打ち手の方向性は限られます。1位企業であれば、良い商品を開発するだけで、市場規模UP・売上UP・シェアUPを達成できるかもしれませんが、2位以下の企業だとそう簡単にはいきません(2位企業であるというだけで、いろいろと制約が大きく・難易度が高くなります)。

現状を把握したうえで、その要因や、現状が制限・導く意味を理解することが、打ち手を考えるうえで必須であることを忘れないでください。

補足:「売れ行きが良い商品」の部分を細かく分解してみる

補足で、「売れ行きが良い」という部分について、もう少し細かく分解してみましょう。

仮に棚に置いてもらったとしても、あまり売れなければ売上は低いままです(しばらく経ったのち、棚から外されて売上が0になるでしょう)。その意味で、棚に置いたとき、商品の売れ行きが良いか否かは、当然ですが重要です。

この場合の要素は様々考えられます。そもそも、商品やブランドが、お店に来る前に、あらかじめ消費者に認知されていれば、選択される可能性が高くなります。

これは、そもそも1位ブランドが優位であるという側面がありますが、2位企業であってもTVCMを多めに打つなどの方法で認知を上げることが可能でしょう。また、商品の特徴や訴求ポイントが、顧客Needsをとらえていれば、TVCMも心に残りやすくなりますし、仮に店頭で初めて見た商品であったとしても、目を引くため、やはり選択される可能性が高まるでしょう。また、当たり前ですが、意味もなく価格が高ければ、敬遠されるでしょうし、高い価格でも同数量売れれば、売上金額ベースのシェアは高くなります。

また、購入頻度やリピートについて言及される方が複数見えました(これは、「商品の売れ行きが良い」と同系統の要素と考えても差し支えないと思われます)。

しかし、野菜ジュース(カゴメの野菜生活)が、季節限定の味を頻繁に発売することで、置いてある商品の味を頻繁に交換している件について、一度背景を考えていただくとよいかと思います(これも、現実の話を具体的に考えることの一例です)。

(本解説の趣旨と外れるので、いったんここで止めます。皆さんぜひ考えてみてください)

今回の解説の趣旨

今回の問題は「シェアの差の決定的要因の特定」でした。

まず、問題文をよく読んだうえで、「野菜ジュースという商品の特徴」、「問われているのはシェアである(売上ではない)」、「クライアントは、市場シェア2位である」ということを認識し、その意味を考えることが重要です。

そのうえで、「具体的に考える」ことの重要性を、複数個所で言及しました。

  • 現実の野菜ジュース市場(カゴメ、伊藤園)を考えてみる
  • コンビニをイメージしながら、小売店側の考え方・アクションを考えてみる
  • 「消費者の購買プロセスの視点」や「企業の視点」に切り替えて考えてみる

上記のような思考を持つことで、様々なことを具体的に考えやすくなります。そうすると、より広く・深く考えやすくなり、「商品の売れ行き」だけでなく、「商品が棚に置いてある」という見逃しがちな要素を想起しやすくなります。

物事をしっかりと広く・深く考える上で、必要なことは様々ありますが、具体的に考えるというのは、一つの重要な方法です。抽象的かつ“ふわっと”した「机上の空論」とならないよう、具体的な部分もしっかりと考え、必要な要素を落とさないよう、注意してください。

次回:【ケース問題を徹底解説】自社の現状が市場分析や打ち手を大きく限定する場合の対策とは

コラム作成者
Liiga編集部
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