残業は何時間以上だと長い?平均残業時間と違法となる時間数
2022/11/03

description 残業時間の平均は、2021年の厚生労働省調査によれば約13時間。いわゆるホワイト企業であれば残業時間は月20時間程度までが一般的で、月30時間を過ぎると身体にも負担になります。違法となる残業時間や職種による差をチェックしてみましょう。



【結論】令和3年の平均残業時間は13.2時間

月間実労働時間数等 一般労働者 パートタイム労働者
総実労働時間 162.1 時間 78.8 時間
 所定内労働時間 148.9 時間 76.8 時間
 所定外労働時間 13.2 時間 2.0 時間
出勤日数 19.5 日 13,9 日

(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和3年分結果速報」)

厚生労働省の調査によれば、一般労働者の所定外労働時間(残業時間)は平均で13.2時間です。出勤日1日あたりで計算し直すと、所定内労働が約7.6時間、残業が約40分という計算です。

ただしこれは、事業者を対象に調査を行って算出した数字です。そのため「勤怠管理システムに登録されていない」など事業者が把握していない残業は含まれていない可能性があります。

民間調査では20~25時間という数値も

民間でも残業時間に関しては様々な調査が行われています。民間調査によると平均残業時間は20~25時間という結果が多いようです。この場合、1日あたりの残業時間は1~1.5時間程度という計算になります。

どの調査結果を見ても、平均残業時間は2015年ごろから減少傾向にあります。

残業時間の上限は原則45時間まで

そもそも、残業をさせるには労使間で「時間外・休日労働に関する協定届(通称「36協定」「サブロク協定」)」を締結し、所轄労働基準監督署に届出をしなければなりません。 この協定がない場合、1日8時間以上および週40時間以上の労働は認められていません。

また時間外・休日労働に関する協定届が出されていたとしても、残業時間の上限は、原則として月間45時間、年間360時間と労働基準法で定められています。 突発的なアクシデントなど特別な理由があれば、例外として月100時間未満・年間720時間以内までは残業や休日労働時間の上限を引き上げることができますが、これが認められているのは年間6回までです。

雇用契約や労働基準法の範囲を超えた長時間の残業を強いられている場合は、労働基準監督署に相談・通報することができます。

ブラック?ホワイト?残業時間ごとの特徴

最近では、企業がホームページや求人票に平均残業時間を記載するケースが増えています。「この残業時間は普通なのか?多いのか?」を判断する参考に、平均残業時間ごとの特徴や身体への負担を解説します。

20時間未満ならホワイト

残業時間が20時間ということは、1日あたりの残業は約1時間という計算です。これくらいの残業であれば、身体にもそれほど負担がなく、いわゆる「ホワイト企業」といえるでしょう。 ただし、きちんと勤怠管理されているのが大前提です。

また、会社によっては部署や職種による差が大きいことがあるので注意しましょう。 転職先を見極める時には、配属される部署の、自分と近いポジションの人の話を聞くことをおすすめします。

30時間を超えると「キツイ」と感じる人も

残業時間が30時間ということは、1日1.5時間程度の残業という計算です。18時が定時の場合、19時半に会社を出ることになり、家に着くのは20時以降になる人もいるでしょう。

「繁忙期には残業時間が30時間を超える」という会社は少なくありません。しかし「毎月30時間以上の残業がある」という場合は、「残業がキツイ」「身体がもたない」と感じる人も出てきます。

いつも45時間超ならブラック企業の可能性が高い

先述のように、残業時間の上限は原則として月間45時間、年間360時間と定められています。

年6回までは例外的に上限を引き上げることは認められていますが、毎月のように45時間を超える残業があるならば、遵法精神のない「ブラック企業」と考えてよいでしょう。

ただし本当のブラック企業は勤怠管理をしていない

ちゃんと残業時間を把握している企業、正しい平均残業時間を公表している企業であれば、勤怠管理や透明性への意識があるので、残業時間が長くても「まだマシ」といえるでしょう。 本当のブラック企業の場合、タイムカードと実態がかけ離れていたり、そもそも勤怠管理のシステムがないなど、勤怠をきちんと管理していません。

そのため、上辺だけの数字に騙されないようにしましょう。 他方で企業に関する口コミサイトには「企業に恨みを持つ退職者」が投稿していることも多く、悪い面が強調されている可能性もあります。 辞めた人、今も働いている人、取引先など様々な立場の人から情報を集めるようにしましょう。

Q&A 過労死に繋がる残業時間は?

過労死に繋がる残業時間としては、以下のようにいわれています。

  • 月45時間を超えると脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まる
  • 月80時間を超える残業が数ヶ月続くと、脳・心臓疾患の発症との関連性が強くなる
  • 月100時間を超える残業をしている場合、直後の脳・心臓疾患の発症との関連性が強くなる

残業時間が月80時間を超えると、労働者は会社に「医師との面談指導」を求めることができます。また常に45時間を超える残業がある場合は、医師だけでなく労働基準監督署に相談・通報することも検討しましょう。

残業時間が長い職種・短い職種

残業に対する姿勢は企業ごとの差が大きいですが、職種によっても残業の量には差があります。残業が多い職種、少ない職種をチェックしてみましょう。

残業が少ないのは事務やアシスタント


  • 秘書・受付
  • 事務(一般事務、医療事務、営業事務、金融事務など)
  • アシスタント(経理、財務、総務、法務、広報など)
  • 翻訳・通訳・英文事務
  • 金融営業
  • MR
  • 販売・接客・売り場担当
  • コールセンター・カスタマーサポート


残業が少ない職種の代表は、秘書・受付、事務、アシスタントです。これらの職種は、業界を問わず残業時間が短い傾向にあります。

また営業・セールス職については、業界によって残業時間に大きな差があるようです。金融営業やMRは残業時間が短いです。また営業時間が決まっている売り場担当や、受付時間が決まっているコールセンターなども残業時間が短いといわれています。

残業が多いのは建築・クリエイティブ・営業・コンサル等


  • 設計監理・施工管理
  • 建築設計・デザイン・測量
  • 機械設計・金型設計・光学設計・回路設計
  • プロデューサー・ディレクター・プランナー(出版、広告、ウェブなど)
  • 編集・記者・ライター
  • ゲームクリエイター
  • 経営コンサルタント
  • IT・インフラコンサルタント
  • 人材サービスの営業
  • 電機メーカーの営業

工期・納期に追われることが多い建築業界は、施工管理や施工など様々な職種で残業が多いようです。また慌ただしくスケジュールが不規則になりがちな広告・出版・ウェブ業界、ゲーム業界、コンサルティング業界も、残業時間が長くなりがちです。

また営業職の中でも、人材サービスや電機メーカーは残業が多いといわれています。

【関連記事】「GAFAは残業0で、女性より男性の方が育休をとる」GAFA30代女性マネージャーが語る、女性が長く働き続けるコツ

働きやすい企業の見極め方

残業時間が長いからといって、一概に「働きにくい」とはいえません。例えば「少しでも残業代を稼ぎたい」「今は多くのことを勉強して、いずれ起業したい」という人の場合、労働時間を制限されることで「働きにくい」と感じるケースもあります。

大事なのは、勤怠や残業時間を正確に把握・公表している会社であること、そして本人が納得できる残業時間であることです。またライフスタイルが変わった時に、働き方を交渉できるような職場だと理想的です。 だからこそ、以下のような方法で会社の実態や雰囲気を見極めることをおすすめします。

  • 18時や19時に面接を設定し、その前後に執務スペースを見せてもらう
  • 取引先、辞めた人など、その会社の内情をよく知る人の話を聞く
  • 同じような部署・ポジションの人の話を聞きたいと依頼してみる


特に最後の「同じような部署・ポジションの人の話を聞きたいと依頼してみる」は、それに対して企業がどのように対応するのかも見極めポイントの一つです。 「全くそのような場を設けてくれない」「人事や上役同席での面談しか認めてくれない」「ランチなど気軽に話せる場を用意してくれる」など対応に差が出やすいです。

残業が少ないことが「売り」の求人を探す方法も

「とにかく残業したくない」という場合は、残業が少ないことをセールスポイントにしている求人を探すのもおすすめです。 こうした求人の場合、残業できない人材が応募してくることを前提にしているため、そもそも残業が少ない仕事であることが多いです。また求人票に残業のことが書かれているため、面接の時にも残業について質問しやすいでしょう。

Liigaの求人検索でも、「残業」という言葉で検索すると、以下のように残業時間が短い求人が見つかります。

description ※ 画像は2022年10月時点での求人情報です。

残業時間がそれなりに長い求人も含まれていますが、「平均は約40時間で、裁量労働ではありません(きちんと残業代が支給されます)」など実態が明記されているので参考にしてみましょう。

専門性が高い転職エージェントを使うのもオススメ

転職エージェントの中には、専門性が高く、その業界に属する企業の社風やカルチャーに詳しい人もいます。その企業や業界のOB/OGが転職エージェントをしているケースもあり、その場合は内情にも詳しいでしょう。

また転職エージェントは、企業との関係性を維持するためにも、すぐ辞めてしまうような人は紹介したくないと考えています。そのため「残業時間を重視している」と伝えれば、ミスマッチを起こしにくい企業を紹介してもらえるでしょう。

Liigaでは転職エージェントの口コミも見られるので、自分の行きたい業界に詳しい転職エージェントを見つけることができます。ミスマッチを起こさないためにも、口コミを活用しながら最適なエージェントを見つけてください。

コラム作成者
Liiga編集部
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