sponsored by A.T. カーニー
世界有数の経営コンサルティングファームであるA.T. カーニーの化学プラクティス(グループ)では、石油化学に代表される「コモディティケミカル」や、半導体や医薬品といった「スペシャリティケミカル」の領域で、次世代エネルギーへの転換や業界の再編に関するプロジェクトなどを遂行している。
特にスペシャリティケミカルでは高い専門性が求められるため、化学のさまざまなバックグラウンドを持ったメンバーが集まっている。事業会社で研究や開発に従事するのではなく、コンサルティングファームから化学に携わる面白さは何か。
シニアパートナーの西川覚也氏とアソシエイトの大河原昂広氏に、スペシャリティケミカルのプロジェクトに携わる醍醐味(だいごみ)や、今後の業界展望などについて語ってもらった。
※内容や肩書は2022年11月の記事公開当時のものです
本当の価値を生み出すR&D戦略に真正面から取り組むため、A.T. カーニーへ転職
――まずは、西川さんの経歴と、現在の業務内容を教えてください。
西川:2002年に新卒で特許事務所に入り、そこで2年間を過ごしました。その中で私は、総合電機メーカーによる半導体製品の特許申請を扱うことが多くありました。
印象に残っているのは、特許申請しようとしている技術の98%くらいが、何かしら実現したいことがあるからではなく、「上から言われたから」「ノルマだから」という理由で開発されていたこと。成果物が商品として世の中に出ていくイメージを持たないまま開発しているのだろうなと感じていました。
そこで、ある時この課題の真因は、R&D(研究開発)戦略が深く考えられていないことにあると気付いたのです。これを解決するためにはR&D戦略を広く支援する必要があると考え、それができるのはコンサルティングファームなのではないかと思い、2004年にA.T. カーニーに転職しました。
A.T. カーニーでは、電機業界や機械業界に関するプロジェクトに多く携わってきました。仕事の半分はPE(プライベートエクイティ)ファンド関連で、半導体のバリューチェーンにおけるさまざまな事業の売買のサポートをしながら、半導体の材料や製造プロセス、製造装置に詳しくなっていきました。
その流れで、半導体や医薬品などのスペシャリティケミカルと呼ばれる分野を取り扱うクライアントとの取り組みが始まりました。現在はシニアパートナーとして、化学セクターの中でも特にスペシャリティケミカルの分野を管轄しています。
いち早くマネジメントに携わるため、事業会社からキャリアチェンジ
――大河原さんの経歴を教えてください。
大河原:学生時代から今まで、化学分野にずっと携わってきました。化学に本格的に触れたのは大学4年の時に研究室に入ってからです。修士課程を終えるまでの計3年間、有機化学、高分子化学、計算化学を専攻しました。
大学で化学の面白さを感じていたので、就職活動は化学メーカーを中心に行い、2014年に富士フイルムに新卒で入社しました。
同社では半導体材料の中でも、カメラに内蔵するイメージセンサー用のカラーフィルターの研究開発に携わりました。
富士フイルムには4年半ほど在籍しましたが、その中で研究者として専門分野を極めるよりも、マネジメントができる人材になりたいという思いを持つようになりました。ところが日系の大手企業では、マネジメントができる立場になるには長い時間がかかります。
そこで、学生の時に興味のあった戦略や経営に携わるコンサルティングファームに改めて着目しました。キャリアをスイッチするリスクはあるものの、実を結べば事業会社よりも早い期間でマネジメントができるようになるだろうと思い、転職を決めました。
――転職先として、A.T. カーニーを選んだのはなぜですか。
大河原:A.T. カーニーには、コンサルティングファームにありがちなUp or Out(昇進するか、退職するか)の文化があるというイメージから、選考前はあまり良い印象を持っていなかったんです。
でも面接を受けてみると、コンサルティングファームでよくあるケース問題は1次面接だけで、2次で西川が面接官だった際はあまり出題されなかったんです。そこでは、私が富士フイルムで携わっていたイメージセンサーの話や、日々何を考えながら仕事をしているのかといった話になりました。
その際に、社員の人の良さや面白さが感じられたことから、意外とA.T. カーニーになじめるのではないかと思いました。
転職活動では他に、理系に特化したブティック系のコンサルティングファームも検討していました。ただ、面接を通して社員の優れた人間性を肌で感じ、次のキャリアを「A.T. カーニーで挑戦してみよう」と思って入社を決断しました。
――A.T. カーニーで経験したプロジェクトや、現在の仕事内容を教えてください。
大河原:2019年1月に入社してからは、スペシャリティケミカルの領域で半導体材料やディスプレイなど、富士フイルム時代の経験が生きるプロジェクトに携わってきました。
その中で、クライアントの事業戦略における策定支援や、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンスとその後のPMI(Post Merger Integration)などを手掛けました。
事業会社を経由してきたことで、化学、中でも特に半導体の分野に詳しい人というポジションを社内でいち早く築けました。また、事業会社の社内力学に勘所があることも役立っています。
現在は、テック系メガベンチャーの経営企画部門に出向し、管理会計の仕組み整備と、それを基にした予実管理のマネジメントを行い、経営の意思決定支援を担当しています。
コンサルティングファーム側から、先端的な技術に触れ続けるための環境づくりに貢献できる
――A.T. カーニーの化学プラクティスの中でどのようなテーマを扱っていますか。
西川:化学プラクティス全体では石油化学に携わっている人が多いです。そこでは、多くのチームがグローバルを舞台に、ガソリンの次に来る次世代燃料をテーマとしたプロジェクトに関わっています。
一方で、石油化学に代表されるコモディティケミカルもスペシャリティケミカルも、欧州を皮切りに1990年代から業界の再編が起こっています。
しかし、日本はそうした流れに遅れていて、最近ようやく業界をどのように再編していくべきかと悩み始めています。
その中で、私が管轄しているスペシャリティケミカルでは、何が成長領域になるのか、これから何が起こるのかを予測し、クライアントとともに新しい事業を創出することが重要なテーマになっています。
医薬品でいえば、薬をどう売るかよりも、「今後どのような薬をつくるか」というプロジェクトが増えています。
例えば、化学メーカーや機械メーカーから製薬市場を新たに開拓したいというニーズがあれば、化学の技術で細胞をつくる、医薬品開発のための光学測定器をつくるといったことのお手伝いをします。プロジェクトでは、バリューチェーンの上流から下流まで支援することが多いですね。
――専門性の高いスペシャリティケミカルに携わることのやりがいは何でしょうか。
西川:先端的な技術に触れられる面白さがあります。知的好奇心を満たす場として、こんなに良い分野はないでしょう。
でも、それだけなら研究所に勤めればいいはずです。コンサルティングファームでスペシャリティケミカルに携わることのやりがいは、研究の中で、面白いと思うことをずっとやり続けるための環境づくりに直接貢献できることです。
残念ながら思うような結果が出ずに撤退してしまう研究テーマも多い中で、日本人がつくるべきものは何かを考え、利益を出して再投資につなげられるようにする。そこに貢献できる機会を与えてもらっていることにやりがいがあると感じていますね。
ファシリテートや論点設計など、アソシエイトからマネージャーになるために必要なスキルが身に付いた
――大河原さんがこれまで携わってきたプロジェクトの中で、特に印象に残っているものは何でしょうか。
大河原:大手機能性化学品メーカーの事業戦略策定支援ですね。その会社は、汎用(はんよう)寄りの分野で非常に強いコア製品を持っているのですが、今後どのような成長戦略を描き、半導体や通信、あるいは宇宙衛星、エネルギー分野など、どの市場に投資していくのかを考えたいという相談があり、プロジェクトが発足したんです。
そのプロジェクトは、私がアソシエイトに昇進して初めて担当したプロジェクトでした。少人数での打ち合わせが非常に多かったため、私が単身でクライアントのミーティングに入ることも多くありました。そこで、論点をまとめながら、最初から最後まで議論をファシリテートするという経験をたくさん積むことができました。
議論する内容の専門性が高い上に、正解がない中で議論するのは難易度が高く非常に苦労したのですが、だからこそ学びを得る機会も多くあり、大きく成長できたと感じました。
――特に苦労したのはどのようなことですか。
大河原:論点設計ですね。論点設計とは、結局は何が問いなのか、何を解かなければならないのかを最初に明らかにすることで、プロジェクトの進む方向性が狂わないようにするために行うものです。
アソシエイトになる前は、ある程度論点が設計された状態でタスクが下りてくるのですが、アソシエイトは論点設計から任されるようになるんです。
最初はそれがよく分からず、例えばクライアントが「半導体ガスの商社の動きを知りたい」と言っていたので、考えるきっかけとして何か欲しいのだろうと思って商社について調べてマネージャーに相談したところ、「論点が分からない」と言われたのです。
そこで一旦振り出しに戻り、最上段の論点として「ガス系材料の業界にシナジーを生みつつ参入するとしたら、どんな参入ストーリーが成立するのか」といったことを考えました。
「シナジーを生みつつ」としたのは、このクライアントがガス系材料への参入によって既存事業との間にどんなシナジーが生まれるか、をとても重視していたからです。
その上で、次の論点として「既存製品との技術的シナジーが見込めるか」「技術的シナジーがない場合は、何かしらのバリューアップの余地があるか」を設定したのです。最終的には、それに対して解が出るようなアプローチを採りました。
クライアントが「商社」と言ったのは、あくまでも「何か少しでもヒントが欲しい」という思いが例示的に顕在化したものに過ぎず、それを追いかけても適切な答えは出ないことに気が付いたのが、大きなポイントでした。
論点設計は、こうした経験を何回か重ねるうちに身に付いていき、クライアントの3手先、4手先を読むことができるようになったと感じています。
4つのスキルを掛け合わせ、化学業界に一番面白い貢献をしていきたい
――今後、化学プラクティスが目指すことは何でしょうか。
西川:最近は日本でも業界の再編が起こり始めているので、それをサポートすることで、日本人が投資した開発が芽吹き、より多くの利益を回収できるようにしたいと思っています。
そのためには、半導体材料や医薬品周辺のバリューチェーンにおけるポジショニングが強化されると良いだろうと考えています。
――大河原さんは、今後化学プラクティスでどのようなキャリアを築いていきたいですか。
大河原:富士フイルム、A.T. カーニー、テック系メガベンチャーという3つの異なる環境を通して、「化学や半導体に対する知見とパッション」「汎用(はんよう)的な問題解決力」「経営の意思決定に対する肌感覚」という、大きく3つの能力が身に付きました。今後はマネージャーに向かっていくにあたって「プロジェクトのマネジメントスキル」を身に付けたいです。
この4つの能力を持っている人はおそらく希少な存在だと思っているので、私はこれらを全て掛け合わせて、化学業界に貢献をしたいと考えています。