【ケース問題を徹底解説】町の個人経営店から考える、重要な論点や項目を把握するための、現実的かつ柔軟な思考プロセス

はじめに

今回も、現役コンサルタントの方に、ケース問題の解答方法について解説していただきました。ぜひご覧ください。

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導入: 本コラムの趣旨

  今回のコラムでは、”現実的"な思考プロセス・議論の流れについて、解説したいと思います。

ケース面接において、「様々な視点から考え、広く項目・要素を抑える」ことが非常に重要であり、これを怠ると、重要な論点を外してしまうことで、中身のない議論に時間を消費してしまうリスクがあることは、これまでのコラムにて解説してきました。

しかし、きわめて短いケース面接の時間内で、広く考えることばかりに時間を使っていては、なかなか議論が進まないでしょう。

また、十分に時間を使えば、モレなく項目・要素を抑えられるとも限りません。 そのため、様々な視点から考えることによる「論点把握」の難易度が高い問題にて、「現実的」にどのようなプロセスで論点が特定されるのか、具体例をもとに考えながら、あえてきれいに進めない柔軟な思考プロセスが、現実的かつ有効であることを提示したいと思います。

ここからは、例題に沿った解説を行います。Liigaコロッセオにて出題された問題を利用しますので、ぜひコロッセオを解いたうえで、本コラムを読んでみてください。今回解説するのは、以下の例題です。

地方の商店街(市の中心地・駅の近く)に位置する、個人経営の文房具店があります。この文房具店の売上を上げる施策を考えてください。

※ さて、いきなり施策を考えるのではなく、プロセスを整理してみましょう。まず、文房具店というビジネスにあまりなじみがない方が多いと思われますので、「文房具」を扱うビジネスについて、順番に整理してみます。

問①:この文房具店は、主にどのようなお客さんから売上を得ているのでしょうか。重要なお客さんから、順に記載してください。

問②:この文房具店の主だった競合のタイプを複数上げてください。さらに、問①で上げた売上上位のお客さんに対して、最も脅威となる競合を特定してください。

問③:さて、問②で上げた脅威となる競合と自社の違いを把握し、自社の強みを特定してください。

問題を解きたい方はこちら

なじみがないテーマだからこそ、現状をしっかり把握・整理する必要がある

今回の「文房具店」というテーマを聞いて、どう感じたでしょうか。 おそらく、なじみがない方が多いのではないかと思います。 文房具は「ネットで買う」「本屋やコンビニで買う」のが普通であり、専門店である文房具店に行くことがほぼない方も多いのではないでしょうか。また、都会の方だと、「そもそも、町の個人経営の文房具店を見た記憶がない」という方もいるかもしれません。

このような「なじみのないテーマ」であるからこそ、現状把握を「意識的」かつ「念入り」に行う必要があります。 なじみのないテーマは、イメージがわきにくいことで「広く要素を洗い出すことが難しい」ですし、また「どの要素が重要・論点となり得るかという直観」も働きづらいからです。 これを怠ると、重要な論点を見落としたまま、議論を展開してしまうリスクが高くなります。

では、このような、なじみがないテーマに対して、現状分析と論点把握を行うとき、どのようなプロセスを経るのでしょうか。 以前のコラム(https://liiga.me/columns/113)(https://liiga.me/columns/119)にて、視点を広げるための「意識的」な考え方をいくつか紹介してきました。 今回は、それらを復習しつつ、実際の思考・面接プロセスでどう展開されるのか、例示していきたいと思います。

ポイント: 重要な視点・項目である「法人顧客」に気が付くことができたか

まず、解説の初めに、今回のケース問題における一番のポイントを明らかにしておきます。 それは、「個人経営の文房具店」特に「地方の商店街」に立地しているような店舗において、最も重要なお客さんは「法人顧客(学校、役所、地場企業 など)」であるという部分です。

しかし残念ながら、このケース問題を出題すると、半数程度の方は、この「法人顧客」に気が付きません。

もちろん、重要顧客だからと言って、「法人顧客の売上UPの打ち手を考えよ」と即座になるわけではありません。 法人顧客の売上改善が望めないのであれば、例えば「新規顧客の開拓」「弱い顧客層の強化」などが有効な打ち手でしょう。

しかし、「新規顧客の開拓」や「弱い顧客層の強化」を選択するにあたっても、既存の最大顧客である「法人顧客」に関する言及がなければ、打ち手の提案までの全体ストーリーに大きな欠落があることになります。

「法人顧客」という主要顧客に気が付くにはどのような方法があるか

今回の場合、「法人顧客」に気が付かない人が続出するのは、ある意味仕方がないとも言えます。 なぜならば、「文房具店に一人のお客さんとして来店して買い物をする」場面をイメージしても、「法人顧客」に気が付くのが困難だからです。

このような場合、いくつかの視点・方法にて、「法人顧客」に気が付くことが可能でしょう。以下3つの方法を例示します。

方法①: 出したアイデアを抽象化し、並列・反対にある項目を考える

シンプルに(狭い視点で)、クライアントである文房具店(3Cの自社)の顧客層を洗い出した場合、「学生(学校の勉強用)」「サラリーマン(仕事・職場で使用)」「主婦(家庭用)」などが上がると思います。

さて、この顧客層の例示には、「バイアス」がかかっています。一般的に、思考にはバイアスがかかるのはやむをえないのですが、考えた内容を「抽象化」することで、バイアスを排除することができます。その流れを具体的に示したいと思います。

まず、これらの顧客層は、いずれも「店舗への来店客」を想定していると言えます。 であれば、「店舗に来店する以外の客」はいないのかと考えを及ぼし、「店舗が宅配する」ことはないのかと考えれば、「大口顧客」がいる、具体的には「企業」「学校」「役所」がいるとなります。

別の考え方としては、「学生」「サラリーマン」「主婦」はいずれも「一般消費者」と言えます。それならば、「法人顧客」がいるはずだと考え、具体的には「企業」「学校」「役所」などを想起することになると思います。

方法②: 「店舗側」ではなく「顧客側」から、さらに「購買」ではなく「利用」から考える

そもそも、文房具店という小売店側から考えること自体、バイアスがかかってしまいます。 そうではなく、顧客側(3Cの消費者)から見た「文房具そのもの」を見ると、より広く・違った視点から、洗い出しができると想定されます。

また、顧客サイドであっても、購買する人の視点で見ると、これもバイアスの原因になります。 例えば、伝統的な4人家族「サラリーマン、専業主婦、中学生、小学生」を考えると、家庭で文房具を「購買」するのはおそらく「専業主婦」ですが、「利用」は全員、特に中学生と小学生が多いでしょう。このように、「利用者」で見た方が、より広く要素を抑えられそうに思えます。

さて、顧客サイドかつ利用者の視点で見ると、どうなるでしょうか。例えば、サラリーマンを考えてみましょう。 サラリーマンが会社で利用している文房具は、だれが購買しているのでしょうか。 万年筆などであれば、個人的な持ち物でしょうし、ボールペンなどもこだわりがあるので、個人的に買ったものである可能性が高そうです。 しかし、ハサミやホッチキスは、さすがに会社の備品として、総務部などがまとめて購買していると想定されます。つまり、「法人購入」を行っている可能性が高そうです。

※ここで、はさみ、ホッチキスなどが出てきましたが、そもそも文房具店はどのような商品を売っているのか、ここで疑問に思いたいところです。特に、プリンタ関連用品(トナー、コピー用紙 など)は、法人の消費量が多い商品であり、法人が購買しているとみて間違いないでしょう。このように、現状分析において、商品ラインナップについて広く考えることによっても、「法人顧客」に気が付く可能性を高めることができるでしょう。

方法③: 競合の顧客層も分析すれば、見落としていた別の顧客層を想起しやすい

ケース面接が進んでいけば、いずれ「町の文房具店の競合」(3Cの競合)について考えるタイミングが来ると思います。

どのような競合が存在するのか洗い出してみる

まず、明白な「他の文房具店」以外を考えてみると、 ・コンビニ、スーパー、ホームセンター、書店 といった競合がすぐに思い浮かぶと思います。

しかしこれらはいずれも「実際の店舗を構えている業態」と抽象化できれば、 ・Amazon、ヨドバシドットコム のような、「インターネットショッピング」も思い浮かぶと思います。

しかし、上記は、いずれも文房具の専門ショップではなく、「ついでに文房具を取り扱っている」にすぎません。 「実際の店舗」にて文房具を取り扱っている競合は「他の文房具店」となりますが、「インターネットショッピング」かつ「文房具の専門店」はないのかと考えると、 ・アスクル、カウネット などが出てくると思います(あまりなじみがない方もいるかもしれませんが、会社名くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか)。

自社の顧客層だけでなく、競合の顧客層も洗い出してみる

さて、いったん上記のように競合を洗い出しました。ここで、各競合について、自社分析をするときと同様に、「主要な顧客層」を分析してみましょう。

一般家庭において、アスクルやカウネットを利用している方は少ないのではないかと思います。では、彼らの主要顧客はどこかを考えれば、必然的に「法人顧客」が思いつくと思います。

洗い出した視点・要素は、別の分析ステップでも活用できる

そもそも、「競合」の主要な顧客を分析した理由は、おそらく 「自社の顧客層との重複の程度を確認しつつ、どこがより競合しているか」 「市場分析からわかった有望な顧客層を獲得しているのは現在どこか」 などといったものでしょう(あくまで別の目的でしょう)。

しかし、仮に自社分析をしている段階で「法人顧客」の存在に気が付いていなかったとしても、競合のカウネットの主要顧客を考える中で「法人顧客」という視点・要素を想起した時点で、自社分析のことを再度思い出せれば、自社の顧客にも「法人顧客」があることに気が付けます。

以上の様に別の分析(競合分析)をしているときに、すでに実施済みの分析(自社分析)を思い出し、お互いの分析で想起した視点や要素を活用すれば、より広い視点で物事をおさえられます。 すでに完了した分析・プロセスであったとしても、必要であれば議論の後半で積極的に見直し・ブラッシュアップをする視点を持ちましょう(このように、必要に応じてプロセスを巻き戻せることも、「広い視点」で考えることの一例と言えるでしょう)。

補足: 「主体の変更」という視点は、広く項目・要素を洗い出しやすい

上記の方法①~③は、いずれも「主体の変更」をしながら、現状を考察していると言えます。「自社」「競合」「法人顧客」「一般消費者(利用者)」「一般消費者(購買者)」などです。

以前、野菜ジュースメーカーのコラムでも「消費者(購買時)」「メーカー目線(営業担当者)」などの、別の主体で考えることが、思考の幅を広げることを解説しました。 主体が異なれば、想起しやすい視点・要素が異なります。そのため、1つの主体からの視点だけでは見落としがちな要素(今回の場合、法人顧客)を想起できる可能性が上がりますので、様々な主体から考察する癖をつけたいところです。  

解決策: 後から、「議論を巻き戻す」「内容をブラッシュアップする」ことを厭わない

シンプルに述べれば、「自社の主要顧客が法人顧客」ということは、方法①で行った自社分析にて気が付くのが「自然」でしょう。 しかし、前述のとおり、文房具店になじみがない場合、方法①のように、「要素を抽象化する」ことで無理やり思考の幅を広げる「自然ではない考え方」で法人顧客という要素を思いつくことが必要になるため、少し難易度が高いです。

しかし、方法②や方法③にある通り、「市場(文房具利用者)」や「競合(競合の主要顧客)」を分析することでも、自社の主要顧客と同じ要素である「法人顧客」を洗い出せます。 「文房具店」になじみがない方でも、「会社や学校で購買した文房具を利用している」「アスクル(カウネット)という企業を知っている」可能性は十分にありますし、こちらであればなじみがあるため、イメージで考えられることから、「法人顧客」という要素を想起できる可能性が高いでしょう。(もちろん、自社分析の後に、まだチャンスが2回あるという意味でも、想起の可能性が高まります。)

以上の様に、重要な要素・項目に気が付けるポイントが、思考・議論のプロセス上、この「自社分析」の1か所しかないのは、運悪く想起できずに終わるリスクが高いです。また、以上の様に、重要な要素(法人顧客)を想起しやすいタイミングが、必ずしも必要なタイミング(自社分析)とは限らないことも注意が必要です。

さて、ここで問題になるのは、方法②や③で行った「市場分析」や「競合分析」で出てきた「法人顧客」という視点を、どのように「自社分析」時の自社の主要顧客の部分でも活用・連想するかにあると思います。

洗い出した視点・要素を紙に書き出しておくことで、別の分析ステップで活用しやすくなる

さて、すでに他の分析(競合分析)を実行している中で、以前の分析(自社分析)のブラッシュアップの余地に気が付くのは、頭の切り替え上、簡単ではないでしょう。

このようなとき、必要に応じて頭を切り替えるためには、「頭の中だけで考えない」ことが重要です。ケース面接中、時間が短いため、ついつい口頭による議論に集中してしまいがちです。このようなとき、思い付いた視点や要素を、いったん紙に書き出しておけば、その議論の時に利用したか否かに関わらず、あとから出てきた視点や要素と紐づけられる可能性が高まります。 一方、「頭で考えただけ」「一度だけ思考の中に出てきた」にすぎない視点や要素を、後ほど再度思いつくことは、難易度が高く、結果として狭い議論に着地しかねません。

ケース面接時は、面接官にプレゼンする内容・解答だけでなく、それに至る現状分析や視点(結果的に面接官に伝えない内容)までを、紙にメモしながら考える余裕を持ちたいところです。

補足: この後の議論のイメージ

さて、今後の議論は、どのように進めていくべきでしょうか。結論を示してしまうと、理解の弊害になる恐れもありますので、視点だけ共有してみようと思います。(問②・問③の解答をイメージしてください)

主要顧客が「法人顧客」であると考えると、この客層に集中するのか、それとも別の客層を開拓するのか、まず大まかな方針を決めて検討を進めたいところです。そこで、法人顧客に限定して、少し分析してみましょう。

まず、競合の視点を考えてみると、文房具店の主要顧客が「法人顧客」であるのであれば、同じく法人顧客を主要とする「アスクル(+カウネット)」が現時点の強力なライバルであると言えそうです。

「アスクル」と「町の文房具店」を比較してみましょう。まず、品ぞろえの多さでみると、アスクルはWebベースのビジネスがあるため、優っているでしょう。また、価格においても、アスクルのほうが安いと想定されます(注:町の文房具店も宅配している前提です)。配達の迅速さについては、一概に言えないと想定されるので、いったん「同等」としておきます。

このように、客観的な判断軸からみていくと、町の文房具店が優っているポイントがない気がしてきますが、本当に他に何もないのでしょうか。ここで、客観的な視点ではなく、あえて「主観的に町の文房具店の目線で強みを整理」してみると、「既存の学校・役所などへのコネクション」「融通の利きやすさ」や、中小法人の信用情報を多少持っていることなどがあるでしょう。

これ以外にも、様々な視点があると思います。たとえば、同じ法人顧客をターゲットとしているとは言うものの、「町の文房具店」と「アスクル」が本当に競合しているのかは、顧客ニーズや顧客セグメントを考えて、考察したいところです。あと、ここまでの議論では、「客数」ベースの話ばかりであり、「客単価(購入頻度、購買点数 など)」の議論はまだなされていません。以上の様に、様々な視点で整理することで、「既存の重要顧客(法人顧客)の強化」と「別の顧客層の強化・開拓」のどちらが良いか、少しずつ見えてくると思います。

本コラムのまとめ

さて、今回は、実際の思考・面接プロセスに沿った、「現状認識の広げ方」「論点の特定」について解説しました。

今回の「町の文房具店」のような、なじみのないテーマの場合、念入りかつ意識的な現状分析が必要となります。もちろん、以前のコラム(https://liiga.me/columns/119)(https://liiga.me/columns/113)で解説したような考え方で、意識的に思考を広げたいところですが、現実的には限界もあるでしょう。

そのような場合、面接中の「他の分析や議論」で出てきた要素を、うまく別の分析や議論に結び付けることができれば、要素や論点をすくい取れる可能性が高まります。分析や議論に応じて、視点・要素の重要性は異なりますが、必ずしも該当の分析・議論のステップにて重要な要素ほど想起しやすいわけではないことに注意が必要です。

面接プロセス上の各分析で想起した視点・要素は、該当の分析における有用性に関わらず、雑多でもよいので紙に書き留めておくのが有効です。そのためには、普段から、頭だけでなく紙に書きながら整理する癖をつけると良いでしょう。そうすることで、各分析や議論で出てきた視点・要素を、別の分析や議論で活用できる可能性が高まります。

上記のように、思考や議論の流れは、「きれいな順序」で進むものではなく、多少の巻き戻しが起こってしまうのが現実的です(やはり、人の思考力には限りがあるため、見落としは発生してしまいます。必要なタイミングに、重要な項目・要素をもれなく全て想起することは、現実的には困難です)。

ケース面接を、プレゼンテーションのように扱わず、ディスカッションと考えれば、多少議論の流れが行ったり来たりするのは自然ですし、より柔軟に考えやすくなります。 時には、「すでに議論した内容を修正する」ことや、「議論を大きくひっくり返してやり直す覚悟も持つ」ことも有効です。議論全体の内容(+面接官の反応・顔色)を俯瞰しながら、適時判断できる客観性を持つと、より柔軟な思考をすることが可能となり、良い議論・面接の内容になるでしょう。

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