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NECでは、顧客への価値提供の在り方を問い続けている。その象徴ともいえる組織が「ビジネスアプリケーションサービス統括部」だ。
同部は2020年に発足した組織で、これまでにNECが行ってきたシステム構築・保守やリソース提供といった案件に加え、SAP社の提供するERP(*1)製品の導入やDPI(Digital Process Innovation)領域につながる新たなビジネスを生み出す役割を担っている。
顧客も気付いていないニーズを見つけ出すスキルは、コンサルタントとしての経験を生かせる場にもなり得るはずだ。
今回はシニア・ディレクターの吉尾理氏に、同部の全体像やビジネスの現在地と見通し、さらにどのような人材が活躍できるのかを聞いた。 *1 Enterprise Resource Planningの略。「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」など企業の経営資源を統合管理するシステムのこと。
※内容や肩書は2023年5月の記事公開当時のものです
新しいテクノロジーを世の中に浸透させたいという思いでNEC本社へ転籍
――これまでのキャリアを教えてください。
吉尾:1993年に新卒でNECのグループ会社へ入社しました。特定の大型汎用(はんよう)機の販売を行う1000人規模の会社でしたが、配属後すぐにNECの本社へ出向したんです。製造業領域での販促担当として、プリセールスや製品技術営業に従事していました。
出向を終えてからは、現在のクラウドのような新技術が出てきました。新しい技術に特化したプロジェクトチームに参画したり、マーケティング視点から新たな商材を提案したり、リソースの足りないチームでサポート役を担ったり……と、新しい領域に身を置きながらいろいろな視点で経験を積めました。
NECに正式に転籍したのは2000年のことです。それまでの経験もあって「もっと新しいことをやりたいな」と感じるようになり、社内公募制度を利用してNEC本社へ出向したんです。その後、グループ会社統合などの流れで転籍しました。
――「新しいこと」とは、どのようなことだったのでしょうか。
吉尾:新しいテクノロジーを世の中に浸透させることです。社会人になったばかりの時から、新規事業の創出や、ビジネスの立ち上げに関心がありました。
例えば、登場したばかりのシステムや商材をどのように広めていくか、どうやって製品の良さを知ってもらうか……。そんなことに着目しながら仕事に取り組んでいました。
NECに来てからも、各ユニット長や事業部長から「新技術を使ってビジネスをしたい」という相談を受けて動いてきました。当時は顧客へ人材を送り込んで開発に当たってもらうようなアウトソーシングの案件が多かったのですが、「クライアントのビジネスにおいて、我々がどの部分をどのように支援できるか」を考えるチャンスに恵まれましたね。
SI(システムインテグレーション)というと、要件が既にあって、要件定義の通りに開発したモノを納めるのが基本ですが、もっとクライアントのビジネスを俯瞰(ふかん)して、そこでどのようにNECが貢献できるかを考えるようになったんです。
NECの各ケイパビリティをつなぎ、コンサルからサービスフェーズまで継続的に行える仕組みをつくる
――吉尾さんはビジネスアプリケーションサービス統括部の立ち上げにも携わったとお聞きしていますが、どのような組織なのでしょうか。
吉尾:ユニットの成長戦略や領域横断型でのビジネス展開について考えるうちに、それを担う組織があればいいなと考えるようになり、統括部の立ち上げへとつながっていきました。
NECのグループや各部門には、非常に多様なケイパビリティがあるんです。でも、それぞれが独立して動いていることでNEC全体としての価値提供につながりにくくなっているという課題もあります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)やVUCA(*2)というワードが聞かれるようになってから、クライアントの出す要件に対して「そもそも何のためにやるのか」というような構想策定や、もっと手前の段階での課題設定が必要だと感じることが増えました。それをクライアントだけで考えていただくのも難しい話で、NECとしてコンサルティング的な要素が必要になってきたんです。
NECのグループ会社にはコンサルティングファームもあります。ではそこに案件を投げてしまえばいいのか?多分、それだけでは不十分です。クライアントの課題解決のために、コンサルティングを提供することに加えて、システムの開発機能、運用・保守機能など、専門性の高いグループ各社や部門を結び付けてうまく連携できれば、より高い価値提供と、より豊富なビジネスチャンスを創出できるのではと考えました。 *2 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語。先行きが不透明で、社会やビジネスにとって将来の予測が困難な状態のこと。
――その機能を中心に担うのが、ビジネスアプリケーションサービス統括部なのですね。
吉尾:はい。人的リソースの確保や予算編成など、コンサルフェーズからSIフェーズ、サービスフェーズまでを継続的にビジネスとして行える仕組み作りを目的としています。
具体的には、各商談のプリセールスを担いつつ、メイン事業であるシステムのバリューチェーンをいかにつなげばよいかの事業戦略を立て、関連するプレーヤー企業と連携を図っていきます。
「コンサルティングをお願いしたい」「こういう課題を解決するプロジェクトなので、おそらく後からこういうシステムが必要になる」といった根回しなども行い、全体を見ながら最適なチームの組成をしていきます。
――業務の幅がとても広いですね。プロジェクトのスタートは、営業から引き合いがあって動き出すのでしょうか。
吉尾:そうですね。営業から持ち込まれる案件に対して、プリセールスとして振る舞ったり、時には簡易なコンサルティングを通してコミュニケーションを図ったり、営業とともにプロジェクトを育てていきます。
現在、ビジネスアプリケーションサービス統括部が展開しているのは、大きく分けてSAP社の提供するERP製品の導入とDPIの2領域です。
SAP社のERP製品の導入は元々NECのビジネスと非常に近い領域です。そのため、営業から「取引先がSAPの導入を検討している」と相談を受けることが多いですね。彼らと一緒にヒアリングに行き、必要に応じてコンサル機能を手配したり、自分たちで提案書を書いたりしながらプロジェクトを進めていくのが基本的な流れです。
DPIは主にファシリティマネジメント領域をターゲットとした新しいデジタルソリューションの提供で、NECの営業もまだアプローチをしていない企業が多いんです。
故に、我々がアポイントを取ることも少なくありません。時には「DPIがよく分からないからクライアントに提案できない」という社内の営業を相手に我々がプレゼンをすることもあります。SAP社のシステムと比較するとまだまだチャネルが太くはないので、成長途上の領域ですね。
クライアントの潜在的な要望を引き出せる人、より大きな裁量を求める人に向いている部署
――チーム編成はどのようになっているのでしょうか。
吉尾:立ち上げ当初は15人ほどの組織でしたが、現在は50人ほどになりました。SAPとDPIの2つの領域を軸に、さらに分けるとプロダクトのプランニング、コンサルティング、ビジネスプランニングの3テーマで、各々の専門に基づいて動いてもらっています。
SAP領域のメンバーは元々あったプロダクトセールスチームから人員を集めているので、中途採用の社員は1割ほどでしょうか。DPI領域の方は社内公募で興味を持ってくれたNECの社員に加えて他のメーカー出身者、コンサル経験者など中途採用メンバーの割合も高くなっています。
――コンサル経験者をはじめ、さまざまな業界からチームメンバーを構成しているのですね。
吉尾:我々の部署は、コミュニケーションのやり方を変えて、もっと良い方法を模索しようとしています。部署のビジョンやミッションについてトップダウンで決めるのではなく、フラットなディスカッションを重ね、コミュニケーションを取り続けてきたかいもあって、新たに加わったメンバーから「フランクなチームですね」と言われるようにもなりましたね。
立ち上げから3年が経過しようとしているタイミングですが、事業もチームもようやくうまく回り始めたかなという手応えがあります。
――上下の立場関係なく、フラットなカルチャーが根付いてきたのですね。今後新しくNECにジョインするメンバーに求めるスキルやマインドについて教えてください。
吉尾:例えば、コンサルタントとして経験を積んできた人は、コンサルティングファームで得たスキルとナレッジがすぐに生かせ、即戦力になれます。
我々はクライアントがビジネスを通して何かを成し遂げる、そのための戦略を立てて、その後も別のソリューションやプロダクトで伴走し、価値提供し続けていくアプローチを主としています。
そのため、培ってきたコンサルティングスキルを生かして、クライアントの潜在的な要望を引き出し、一緒に成功の方法を考え、長期的にお付き合いできるタイプの方は向いているのではないでしょうか。
――関わる案件は、大規模なものも多いのでしょうか。
吉尾:はい。ただ案件の規模が大きくなればなるほど関わる人やグループ企業も多くなりますから、率直にいえば大企業ならではの“腰の重さ”のようなものを感じることも増えます。時間もかかりますから、大きなディールだけではどうしてもビジネスの波ができてしまうため、中規模、小規模の案件を獲得しながら、それらの案件を少しずつ育てていくというアプローチもできますね。
「この案件が終わったら、次はきっとこういう要望が出てくる。そうなるとあのテーマで……」と、どんどん次へつなげていけると、評価にもつながりやすいと思います。
――どのような人がビジネスアプリケーションサービス統括部に向いていると思いますか。
吉尾:これまで部分的にしか“活躍の場”を与えられてこなかった人には、面白いと思ってもらえる仕事だと思います。「まだ若いから」と言われて大きな裁量を持つ機会が少なかった人にとって、我々の部署はそういったチャンスが多いと思います。
NECの持っているケイパビリティを組み合わせてアイデアをどんどん出し、他の人へ働きかけができる人が望ましいですね。
――今後の展望を教えてください。事業テーマが変わっていくこともあるのでしょうか。
吉尾:この部署は現在、社会課題を起点に生まれたテーマを扱っています。SAPもDXの文脈にあると思いますし、DPIもファシリティマネジメント業界が直面する労働力の補塡(ほてん)や業務プロセスの効率化が目的です。こういったところにITの可能性がまだまだ眠っていると感じています。そういったクライアントが感じている課題や社会の要請に、NECとしてどのように応えられるのかを考えていきたいですね。
今取り組んでいるSAPやDPI領域でNEC全体が連携し、それぞれが立てている数値目標や課題に向かって有機的に動けるようになったなら、ハブとしての我々の役目はなくなるのかもしれません。そうなればまた別の社会課題や、新しいテーマに取り組んでいくのもいいなと思っています。
例えば、コンサルティングファームで培ってきたメタ認知能力、さまざまなステークホルダーの情報や意見を基に構造化して、課題を解決できる人がいてくれるといいですね。何かをきっかけに大きく動き出せるはずですし、社会課題の解決とNECの利益、双方のバランスを取りながらビジネスを展開できるようになれば、持続性も成長性も期待できる。NECがこの先100年も乗り切れる気持ちが高まりますね。