【ケース問題を徹底解説】将来予測×フェルミ推定における、論点の洗い出し(公共政策問題)
2017/10/24
#戦略コンサルのケース面接対策
#ベンチャーで成果を出すスキル

はじめに

今回も、現役コンサルタントの方に、ケース問題の解答方法について解説していただきました。ぜひご覧ください。

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導入: 本コラムの趣旨

今回のコラムでは、公共政策系の将来予測のフェルミ推定から面接官の出題意図を探ることで、問題の重要論点を探っていきます。

ケース面接の中でも、特にフェルミ推定となると、ついつい数値計算にばかり意識が行ってしまいがちです。しかし、長い問題文の場合は、様々な情報や制約が付けられているため、ビジネスケースと同様、論点の把握が必要です。

今回の例題の場合、「現在の値」ではなく、「将来の値」を計算しているのが重要なポイントです。この場合、将来の数値を予測する「実際の担当者の立場で考える」ことが有効です。

担当者であれば、まず、将来予測をする場合、「何が数値に影響を及ぼすか」という視点や要素を考えるでしょう。その考え方の詳細について、具体的に解説していきます。

ここからは、例題に沿った解説を行います。Liigaコロッセオにて出題された問題を利用しますので、ぜひコロッセオを解いたうえで、本コラムを読んでみてください。今回解説するのは、以下の例題です。

現在の日本では、高齢者向けの介護施設において、多くの問題や課題が発生しており、様々な議論がなされています(キャパシティの不足など)。

そこで、15年後を目標に、これらの諸問題を解決していくことになりました。さて、諸問題が解決された場合、15年後に日本の高齢者向けの介護施設で働く介護士の数は、合計何人必要になるでしょうか?

※この問題のポイント
さて、この問題は、一見するとただのフェルミ推定にみえます。しかし、なぜ出題者は「介護士の人数を推定してください」というシンプルな問題文にしなかったのかについて、考察してみましょう。

==========設問==========
※注:以下の問1と問2は互いに関連しています。並列で考えながら回答してください。

問1: 仮に「介護士の人数を推定してください」というシンプルな問題文であった場合と比較して、どのようなこと(現状分析や論点など)について、追加で検討する必要が出てくるでしょうか。(問2の解答の要素・項目との関連を意識しながら、回答してください。)

問2: このフェルミ推定における、数式・因数分解の要素・項目を記述してください(問1の解答で洗い出した検討事項と連携した数式・因数分解にしてください)

問3: 問1で洗い出した検討事項について、それぞれどのようにアプローチ・考えるべきか、重要そうなものから順に述べてください。

問題を解きたい方はこちら

いきなり数値計算を始めてはいけない: 問題文から出題者の意図を考察する

さて、普通に介護士の人数を計算する場合、例えば、以下の数値を計算するでしょう。 ・介護の総需要 ÷ 介護士1人当たりの供給

そして、「介護の総需要」をもう少し細かく、例えば以下のように計算するのではないでしょうか。 ・高齢者人口 × 介護を必要とする割合 × 介護施設の利用を希望する割合 × 介護サービスを必要とする頻度(日数や時間)

さらに、もう少し気が利けば、そもそも介護のサービスの種類(介護を必要とする度合いなど)を数パターンに分け、それぞれで、「介護サービスを必要とする時間」はもちろん、介護の手間の違いによる「介護士1人当たりの供給」が異なることなどを明示しながら、2軸のマトリックスにして、各因数分解の項目を介護サービスの種類ごとに推定しながら、計算を進めると思います。

出題者の意図を、問題文の因数分解から読み解く

しかし、今回のフェルミ推定において、上記の回答では、おそらく不十分です。そもそも、上記のような内容を聞きたいだけであれば、「介護士の人数を推定してください」という、単純な問題文で十分だからです。

しかし今回の問題は、15年後という「将来の数値」を推定させていますし、さらに「諸問題を解決していく」といった形で、介護を取り巻く「状況・環境の変化」があることを示唆しています。わざわざ、このような補足情報が問題文に追加されている理由を考えてみましょう。

「状況・環境の変化」には、様々なものが想定される

「将来」に向けて、「状況・環境変化」がある中で数値を推定するわけなので、まず「状況・環境変化」について、「思いつきベース(あまり網羅性を重視しない)」でいくつか挙げてみましょう。

変化1: 年々、介護対象となる人口は増えていく

15年もたてば、人口ピラミッドは大きく変化します。「1世代(1年)あたりの人口規模」も変化しますし、「平均寿命」も延びていくでしょう。

大きく見れば、介護の対象となるのは高齢者であり、これらの世代の方々の一部が介護対象となることを考えると、この人口ピラミッド変化である、「1世代(1年)あたりの人口規模」や「平均寿命」の視点は重要です。

変化2:介護が必要となる人の割合は、様々な要素で変動する

15年もたてば、様々な技術やノウハウも発達してくるでしょう。例えば、医療技術の発達や健康ノウハウの深化によって、健康に生活できる期間が長くなり、介護を必要とする期間が減るかもしれません。

また、別の視点としては、環境や食習慣の悪化などにより、体調を崩す人の割合が増え、介護が必要になる人の割合が増えるかもしれません。また、医療技術の発達が、健康寿命を延ばさす、単純な寿命のみ延ばせば、介護を受ける期間は長くなるでしょう。

変化3: 介護が必要になる程度が小さくなる

これは、変化2に似ているのですが、技術やノウハウの変化は、介護を必要とする人の割合だけでなく、各人が介護を必要とする度合い(要介護度)も変化するでしょう。要介護の度合が変化すれば、介護士がケアできる人数も変化するので、見逃せない視点です。  

変化4:実際に介護サービスを受ける人の割合が変化する

この部分は、様々な要素があり得ますので、いくつかに分けながら考えてみます。

● 介護サービスを受ける必要がなくなる 機械・ロボットなどの技術が進化すれば、自宅で介護を受けることが容易になり、あるタイプの要介護者は、介護サービスを受けなくとも、自宅介護にて対応可能になるかもしれません。

● 海外で介護サービスを受ける 日本は、労働人口が減っているため、「サービスのキャパシティを確保する」という側面や「コスト」の視点で、そもそも国内で介護サービスを行うことが現実的でなくなるかもしれません。

また、もっと踏み込めば、コスト・パフォーマンスの視点で見て、国内で介護サービスを受けることが、介護を必要とする人から見て、良い選択でなくなる可能性も、“ないとは言えない”でしょう。

その場合、極端な例ではありますが、「海外で介護サービスを受ける」という選択肢を選ぶ人が増え、結果として、日本国内の介護サービスの需要が減るかもしれません。(これは、国が積極的に推進しなくても、サービス需要者側がコスト・パフォーマンスを判断し、「海外」という選択肢を主体的に選ぶ可能性がある点に注意が必要です)

● 現在満たされていない介護需要が満たされる 極端な例ですが、いきなり明日から介護サービスの供給が十分なされるようになった場合を想定してみましょう。

ここからは、「現在と比較して、将来どれだけ需要が増えるのか」という、現在との比較で考えてみます。まず、前提として、「介護サービスの供給は、ほぼいっぱいであり、サービス供給を受けたくても受けられない」というのが、現在の状況とします。 

まず、すでに現時点で、「介護サービスを受けるために、施設の空きを待っている」人が、サービスの共有を受けるようになるでしょう(やむを得ず、「自宅介護」「認可のない介護施設」「海外の介護施設」でサービスを受けている人)。その意味で、15年後「諸問題が解決」されるのであれば、「待機している人がゼロになる」「待機している人がサービス需要者になる」という視点が必要です。

● 潜在的な需要が喚起される それ以外にも、まだあり得ます。初めから「介護施設に空きがない」ことを前提に、対策している人が、新たに需要者として発生する可能性があります。

これは、保育園で考えるとわかりやすいのですが、あらかじめ保育園が空いていないことを見越して、「祖父母に孫の世話をお願いする」「ベビーシッターを手配しておく」などの手を打っている人は、そもそも保育園の需要者として現れない(照会・申請すらしない)でしょう。

しかし、十分な供給が行われるようになれば、このような事前の対策は必要なくなるので、需要者として顕在化してくる可能性があります。

変化5:介護士一人当たりが介護可能になる人数が増える

まず、わかりやすい例としては、技術革新によるものでしょう。介護士に対して、「ロボットの補助」「機能的なベッドによるサポート」などが行われるようになれば、単純に介護士一人当たりが介護できる人数が増えます。

また、「介護施設に多くの問題や課題がある」という問題文の記述もポイントです。このような状況で有れば、非効率なオペレーションも多数発生していると思われます。

介護という一種の「産業」が「成熟」してこれば、労働生産性が向上してくるでしょう(わかりやすい例は、企業や施設の大型化かと思います)。

将来の様々な変化が、推定数値に大きな変化を及ぼす

ここで一つ重要なのは、上記の「変化」がどの程度になると予測するかに応じて、介護士の人数という推定数値が変化するということです。

コラム作成者
Liiga編集部
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