【解答の視点を学習】新規事業の採算性検討のケース問題における適切な回答の方向性
2017/11/13
#戦略コンサルのケース面接対策

はじめに

今回も、現役コンサルタントの方に、ケース問題の解答方法について解説していただきました。ぜひご覧ください。

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導入: 本コラムの趣旨

今回のコラムでは、新規事業の採算性検討のケース問題を取り上げました。その中でも、特に出題者の意図をつかむ部分に、ポイントがある問題について、解説します。

まず、「採算性検討」といわれると、ついつい単調にフェルミ推定をしてしまう人がいます。もちろん、議論や思考のプロセスの中に、フェルミ推定が必要になりますが、フェルミ推定だけすれば良いわけではない場合も多いです。

また、新規事業系のケース問題になると、ついつい思いついたアイデアに引っ張られる方も少なくありません。しかし、実務の側面で考えた場合、それでは不十分であり、ある程度広い視点で選択肢を検討すべきであるはずです。

ケース面接は時間的制限もあるため、ある程度簡略的な方法であることは仕方がありません。しかし、そもそもの実務の考え方と、かけ離れたものであることは、あまり好ましくないでしょう。

ここからは、例題に沿って、詳細を解説していきます。Liigaコロッセオにて出題された問題を利用しますので、ぜひコロッセオを解いたうえで、本コラムを読んでみてください。今回解説するのは、以下の例題です。


東京の品川駅で、「おにぎり」と「汁物」を売るお店を出店するか否かを検討しています。出店可否の判断のため、出店した場合、採算がとれるか否かを推定・計算してください(問①)。

また、仮に出店した場合、3年後にはそのお店の業績がどうなっていると思われるか、推定・説明してください(問②)。

問題を解きたい方はこちら

この例題を適切に解くうえで必要な視点

さて、この問題を適切にとくには、以下の2つの視点が最低限必要になると思われます。これまでのコラムでも紹介してきた内容ですが、改めて今回の例題に沿って解説いたします。

下記の2つの視点を考慮すれば、今回のケース問題、特に問1が、「新規事業立案」「採算がとれる、良い“ビジネスモデル”を考える」という側面の強いお題である可能性が高いことが想定できるはずです。以下、解説します。

視点1: 出題者の意図を考える

さて、今回の例題には、問題が2種類あります。その意味を考えてみましょう

まず、問1は理解できるでしょう。この例題のメインとなる、新規事業の採算性の検討を求めています。

さて、問2が少し不思議な感じがします。この問2は何のためにあるのでしょうか。もちろん、文面通り、3年後の「事業の将来やトレンドなどを考える思考力」を見たいだけの可能性もあります。

しかし、問1と合わせてみると、別の視点も見えてきます。問2で「仮に出店した場合」と書いてある以上、問1も「出店できる・採算が取れる場合のケース」が望ましいのではないでしょうか。

仮に、問1で採算が取れないとなった場合、問2が非常に回答しづらくなります。採算が取れない新規事業に対して、3年後の業績を予測するとなると、イメージがわきにくく、そもそも意味があるとは思い難い検証をすることになる可能性が高いです。

(※注: 決して、採算が取れるように、計算式を“歪める”べきだというわけではありません。詳細は後ほど解説します。)

視点(補足): 問題文をシンプルに考える

また、そのうえで問1を見ると、問題文が以下のような単純な書き方をしていないのも気になります。

=====例題のシンプル版=====

東京の品川駅で、「おにぎり」と「汁物」を売る店舗の収益構造(売上とコストの構造)を分析してください。

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採算が取れるか否かを検証するためには、“数値計算”という次元で見れば、売上とコストを分析すればよいことになります。

しかし、もし出題者が売上とコストを「計算する思考力そのもの」を見たいのであれば、上記のシンプル版の例題のような、単純なフェルミ推定を出題すれば十分なはずです。

視点2: 当事者の立場になって考える(当事者意識をもって解答する)

さて、仮にあなたがどこかの飲食チェーンの本社で働いていたとして、このような指示を上司より受けた場合(もしくは出資者などに内容の説明が必要な場合)、どうするでしょうか。

おそらく、まず「どのような形態の店舗・ビジネスモデルにしたら儲かるのか」を考えるはずです。そのために、どのような出店・ビジネスパターンがあるのか洗い出すでしょう。

(詳細は後述しますが、「品川駅」で「おにぎりと汁物を売る店」といっても、「在来線の改札近く」「新幹線のホーム」など、出店のパターンは様々あります。)

ここで、もしあまり深いことを考えず、“代表的”な出店パターンによる収益構造を分析した場合、上司や出資者からどう言われるでしょうか。このような“代表的”なパターンは、あいまいな“ふわっと”したイメージや定義の場合が多いことが問題です。

まず、「採算が取れない」という結論であれば、かなり厳しい指摘をされるでしょう。上司から、当然ですが「他に採算が取れるビジネスモデルはないのか」「そもそも、〇〇のようなビジネスモデルであれば、採算が取れるのではないか」などと、いろいろな指摘をされ、検証のやり直しを命じられるはずです。

一方、仮に「採算が取れる」となっていても、そのまますんなり検証が終わるとは思い難いです。“代表的”な“ふわっと”したビジネスモデルだと「ビジネスモデルの具体的イメージがわかない。これだと本当に計算が正しいのかわからない。詳細をもっと詰めてこい」と指摘を受ける可能性が高いです。

(イメージできなければ、それが「最善」か否かもわからないので、そもそも「もっと採算のいいビジネスモデルはないのか」といった指摘をされる可能性も高いでしょう。)

以上のように、自分が最も良いと思うビジネスモデルのみを説明しても、上司を説得することはできないでしょう。「他の(上司が良いと思う)ビジネスモデルの採算性を検証」するか、もしくは「自身が採算性を検証したビジネスモデルが、なぜ最も良いのか説明」できないと、説得・プレゼンとして不十分であり、論理的な解答とは言えません。

視点(補足): 具体的にイメージしながら考える

上記のように、ビジネスモデルがあいまいなままだと、そもそも相手に話が伝わりませんし、その採算性検証における、各種数値が妥当なのか否かもわかりません。

(※例:賃料は50万円と言われたとき、聞き手はこの値の妥当性をどう判断するでしょうか。まず具体的な広さの数値がないと、妥当性は全く分かりません。仮に、25m2と記載されていたとしても、テイクアウト専業であれば可能かもしれませんが、イートイン有りであれば、スペースがまったく足りないでしょう)

以上のように、具体的なイメージをもとに、様々なビジネスモデルの前提を置かなければ、そもそも採算性の計算が正しいか否かを、聞き手も判断できないでしょう。

今回の問1にて、あるべき検討プロセス

さて、上記の視点を踏まえて、今回の例題をもう一度見てみましょう。まず、「品川駅」で「おにぎりと汁物を売る店」とありますが、ビジネスのパターンとしては、様々なものがあり得ます。

例えば、品川駅のどこに出店するのでしょうか。極端な2例を出すと、「在来線の改札の外」に出店する場合と、「新幹線のホームの売店」として出店する場合では、客層を含めて、様々な要素がまるで違うでしょう。

また、店舗の形態も重要です。おにぎりと汁物を売るだけであれば、テイクアウトのみの店舗も考えられますし、イートイン(店内で飲食するスペースがある店舗形態)を含んだ形態も考えられます。このどちらかによって、コスト(特に賃料)や客層が大きく変化するはずです。賃料の変化は、採算性に多大な影響を及ぼすでしょう。

以上のように、「新規事業の採算性」を検討するのであれば、当然採算性の高い、良いビジネスモデルの採算性検討結果を報告すべきでしょう。それを踏まえると、新規事業の検討をするうえで、単純にかんがえても、最低限以下の2プロセスが必要なはずです。

・Step1: 有望なビジネスモデルを考案・議論 ・Step2: ビジネスモデルの採算が取れるか否かを検証

この時、Step2は皆さん実施しますが、Step1を抜かす方が多いです。

また、Step1とStep2では、考え方・心構えが異なる点にも注意が必要です。まず、Step1は、「可能な限り採算性がよさそうなモデルを探す」という、ある意味で「大きく意思を入れた思考」が必要です(仮説思考の一種と考えることもできます。

すべてのモデルにて、Step2の採算性検証を実施するのは、現実的ではないでしょう)。一方、Step2では、有望だと思われるモデルに対して、「中立的・客観的」に数値を計算する必要があります。

コンサルの仕事というと、ついつい「中立的・客観的」な思考ばかりに目が行きますが、思考プロセスの中には、Step1のように、ある程度意思を入れる(仮説思考を実施する)必要もあります。

Step1を、変に中立的・客観的に行ってしまうと、意味のない検証Stepになってしまうので、注意してください。

現実的な思考プロセス: 問1 - Step1 有望なビジネスモデルを考案・議論

さて、これまでの解説を踏まえて、どのような解答内容が妥当か、簡単に考えてみましょう。

まず、理想としては、ビジネスモデルを構成する様々な要素(店舗形態、場所、コンセプト、価格帯…)を洗い出し、そこから様々なビジネスモデルのパターンを考えたいところです。しかし、ケース面接においては、時間の制限があるため、これらすべてを実施するのは難しそうです。

現実的なところとしては、ビジネスモデルを構成する様々な要素を洗い出し、その中から、特に重要そうな箇所から、順番に前提を置いていくのが現実的かと思います。

さて、ビジネスモデルを構成する要素として、どのようなものがあるでしょうか。ここは、イメージを持ちやすくするため、あえてMECEにせず、適当に洗い出してみます。

・出店場所: 新幹線のホーム、駅の改札の外、駅のホーム、駅の売店・レストランフロア など ・主要客層: サラリーマンor移動・観光客、男性or女性… ・食事オケージョン: 朝食 or 昼食 or 夕食 or 間食 ・店舗形態: テイクアウトのみ or イートイン込み… ・食べる場所: 店舗 or 自宅 or 職場 or 歩きながら or 座席… ・商品コンセプト: コスパ重視 or 質・味重視の高付加価値 ・調理場所: 店舗で調理or 調理済みを持ち込む

※さらに、上記を決定するためには、「客層とニーズ」「想定される競合」など、別の視点の内容を考慮する必要があるでしょう。

重要に見える要素から、前提を置いていく

これらの各要素から、どの項目が最も良いか、すべての組み合わせパターンについて議論している時間はないと思われるので、特に重要に見える要素から、議論・決定していくのが良いでしょう。

さて、どの要素が重要でしょうか。ここは意見が分かれるところかと思いますが、「出店場所」が、在来線ユーザー向けの場所か、新幹線ユーザー向けの場所かは、重要な視点であり、それ以外の要素の項目選択が大きく変わるところだと思われるので、ここから決めると、話がスムーズになると思います。

あとは、面接官と議論・確認しつつ、すでに決定した前提条件に合わせて、他の前提を決めていくことになるでしょう。ある程度の数の前提を決めれば、Step2の採算性検討が可能になるはずですので、残りはStep2の中で必要になったタイミングにて決定していけばよいでしょう。

面接官と議論がしやすい伝え方をする

この時、一応、各要素の対案・選択肢は準備しておくのがおすすめです。以前にも解説した通り、面接官はある程度「自身が正しいと信じる答え」をもっている場合も多く、さらに「自身が正しいと信じる答えを、受験者が導出する」ことを求めてくる場合も少なくありません。

この時、「出店場所としては、新幹線のホーム、駅の改札の外、駅のホーム、駅の売店・レストランフロア などがありますが、今回は新幹線のホームで考えます」と述べれば、議論がスムーズです。面接官が納得しない場合、「なんでその選択肢にしたのか理由を教えて」「今回は、いったん〇〇で計算してもらっていい」といった形で突っ込みを入れることができます。また、別の選択肢が提示されていると議論を通して修正が行いやすいです。

「新幹線」の要素を見落とさないための視点

さて、もしかしたら、「新幹線のホーム」「新幹線の利用者」といった要素に、まったく気が付かなかった方もいるかもしれません。

● 視点:「問題文を因数分解する」 このような場合、やはり「問題文」をしっかりと読めていないのが原因かと思います。今回の例題の問題文を因数分解すると、今回、わざわざ「品川駅」と指定されているのがわかります。

さて、なぜ具体的に「品川駅」と指定されているのでしょうか。品川駅の特徴を考えてみる必要がありそうです。

●視点:「代表的な例と比較して考える」 ここで品川駅の特徴を抽出するため、一般的な駅と比較してみましょう。他の山手線の駅と比較した場合、「ビジネス街である」といった特徴もありますが、特に大きな特徴は「新幹線の停車駅であり、のぞみも停車する主要駅である」という部分かと思います。(東京23区内の駅の中でも、新幹線が停車する駅はわずかです。)

次に、この「新幹線」という部分が、今回の問題に何か影響がないか考えれば、「新幹線の駅には、駅弁屋などの売店がある」ことに気が付くことで、「ここで出店するという選択肢もある」と気が付けるはずです。

● 心構え: 面接官はディスカッションパートナーと考える 仮に、ほとんど東京に来たことがなく、品川駅についてよくわからない場合は、品川駅について、面接官に正直に聞きましょう。

まず、品川駅というのが重要な要素でなければ、「別の駅でもいいよ」と変更を許可してくれるでしょう。そうでなければ、品川駅について説明してもらえるか、「どんな駅だと思う」という形で逆に質問され、議論しながら特徴を整理することになると思います。

少なくとも、ケース面接を受けに来る人の大半は、品川駅の特徴について理解できるはずです。もし、このような常識的な内容であったとしても、知らない場合は、変に濁したりせず、正直に聞いた方が良いと思われます。

常識や知識の幅は個人間で多少異なるはずなので、たまたま知らないこともあるでしょう。知らずにおかしな認識のまま議論を進めるよりも、正直に聞いた方が、リスクが少ないと思われます。

補足: 「新幹線の乗客」と「在来線の乗客」では、商品に求めるニーズがかなり異なる

余談ですが、今回のテーマのビジネスモデルに関して、少しだけ補足で追加説明したいと思います。

今回、販売商品として、「おにぎり」だけでなく、「汁物」も入っているのもポイントでしょう。新幹線と在来線のお客さんでは、まず、「汁物」の需要の考え方が異なると思われます。

通勤客であれば、オフィスまで持ち歩く手間がそれなりにありますし、職場で食べる場合、「におい」のある汁物は避けたいかもしれません。

一方、新幹線であれば、購入⇒乗車⇒着席の流れがスムーズであり、持ち歩きの手間は小さいでしょう。また、車内は、温めた駅弁を食べている人もいるため、においについてそれほど神経質にならなくても済みそうです。

また、別の視点だと、通勤客は「日常的に食べる」ものとして買っていますが、新幹線は「たまに食べる」ものとして買っている人も多いというのがポイントです。

そうすると、 ・価格感度: 日常的に買うものは、ある程度安い方がよい。一方、たまの旅行や出張であれば、少しくらい高くても買ってくれるので、高級路線もありえる。 ・商品ラインナップ:日常的に食べる人には、飽きにくくするため、種類を増やし、さらに定期的に新商品を出す必要があるかもしれない。 などに大きく影響するでしょう。

以上のように、新幹線と在来線で、ビジネスの中身が大きく異なるでしょう。ここまで見てきた通り、面接官に対して、すくなとも、この2つのパターンがあることくらいは、提示しておきたいです。

現実的な思考プロセス: 問1 - Step2: ビジネスモデルの採算が取れるか否かを検証する

現実のビジネスであれば、複数のビジネスモデルの採算性を検討するかと思います。しかし、ケース面接においては、時間が限られるので、1つしか採算性の検証(フェルミ推定)を実施できないでしょう。

そのため、Step1にて定性的な議論をしたうえで、1つのビジネスモデルに特定しておき、そのビジネスモデルのみ計算することになるのが現実的かと思います。

※詳しい計算式については、今回解説を割愛させていただきます。

フェルミ推定結果の検証方法: 標準的なフェルミ推定との違い

さて、計算の結果が「採算が取れる」の場合は、まだ大きな問題はないでしょう。しかし、もし採算が取れないという結論になった場合はどうするべきでしょうか。

(上記解説の通り、この問題は、基本的に採算の取れるビジネスモデルを考案することが求められている可能性が高いです。)

普段のフェルミ推定であれば、推定式の各数値の妥当性を検証し、「〇〇の数値が低すぎた」「〇〇の数値のインパクトが大きいので、時間があればここを精査すべき」といったコメントをすることになると思います(現実的に、この様な方向性しかないでしょう)。

しかし、今回は、Step1でビジネスモデルの洗い出しと選択をしているので、「〇〇のビジネスモデルも採算性が高そうなので、時間があればこちらを検証してみるべき」といった、そもそもの回答の方向性を変更する趣旨もあり得るでしょう。

どちらが良いかは、「問題の内容」「受験者の回答の内容」もさることながら、「面接官は筋が良いと感じているのはどちらか」にもよるので、コミュニケーションスキル(相手の意図を読むスキル)が高い方が有利になるかと思います。

そして、このStep2の出来の良さは、実質的にはStep1の検討・議論内容の質に大きく左右されるでしょう。

現実的な思考プロセス: 問2 – 三年後の状況

まず、この問2については、「とってつけた」感じがします。基本的には、問1にしっかり解答することが求められている可能性が高そうです(見た感じがそう思えるだけでなく、そもそも問2のような思考を特に見たいのであれば、それに合わせた問題や設問を作成するでしょう)。

時間が足りなければ、問2の解答がなくても、それだけで選考から落とされることはないと思います。

以前のコラムでも解説した通り、ケース面接は「加点方式」ととらえた方が良いです。問1と中途半端に実施して、無理やり問2を解答する時間を作るよりは、問1を確実に解答しましょう。

さて、そのことを踏まえたうえで、問2が存在する理由は何でしょうか。難しいところですが、まず「問1のヒントとして存在する」可能性と、「時間軸の変化に対する考察ができるかを見ている」可能性があります。

問1のヒントとしては、ここまで解説してきた「問1にて、採算が取れるようなビジネスモデルを考えるべき」というだけでなく、「将来的に採算が立つかも考えるべき」というメッセージも読み取れます。

飲食店を開店するにあたって、当たり前ですが複数年の間、採算が取れる必要があります。しかし、このような問題形式で「採算性を計算」といわれると、ついつい点で考えてしまい、開店初年度のイメージが強いまま、短期の計算してしまう傾向があります。

開店後、時がたつにつれて、市場環境は変化するため、その変化後も中長期的に採算が立つか否かを、問1で考えられていることがベストです。そのことを指摘する(ヒントを出している)問いとも受け取れます。

「時間軸の変化に対する考察ができるかを見ている」という部分については、出店後に「競合が進出・対策をとってくる」「消費者が飽きてくる」など、様々な変化が考えられます。これらを洗い出す思考力と、その中で何が重要か(採算性へのインパクトが強いか)を考察する能力が見られているでしょう。

この時、「仮に出店した場合」ということは、すでに「採算性が成り立つ」という結果が出ている想定のため、採算性が成り立たなくなるような脅威・難点に対して、特に着目すべきでしょう。さらに、付け加えるのであれば、その場合の対策を合わせて提言できれば、評価は高いと思います。(解答の具体例・詳細は省きます)

この時、もし問1で採算性を計算したビジネスモデルが適当・あいまいだった場合、「採算性へのインパクト」が強い項目を検討する意味がそもそも薄くなってしまいます。

以上のように、上記のいずれであったとしても、問1の問題・回答が念頭にあって、はじめて問2が意味を持つと言えます。問1をしっかり解答できるよう、まず心がけましょう。  

本コラムのまとめ

今回のコラムでは、新規事業の採算性検討のケース問題を取り上げました。

これまでのコラムでも解説した通り、まず問題文をよく読むことで「出題者の意図を読み取る」ことが重要です。そのためには、「問題文を因数分解」しながら「代表的な例と比較して考える」ことや、「当事者の立場に立って考える」こと有用です。

今回のケース問題では、特に「より採算性の高いビジネスモデルを考える」ということが、暗に求められている可能性が高いことに気づいたか否かがポイントになると思います。

ついつい、「計算」と言われると単純なフェルミ推定のように考えてしまい、“ふわっと”したあいまいな前提のまま、議論を進めてしまう方が多いです。しかし、採算性が成り立つか否かというのは、具体的なビジネスモデルの中身によって変化します。

また、新規事業の採算性を求めている以上、常識的に考えて「採算性が成り立ちそうな、良いビジネスモデルの採算性を知りたい」と意図をくみ取るのが自然です。

今回の問題の場合、問題文をよく読んで、「当事者意識をもって考える」ことが、最も有効かと思います(問2という、一種のヒントとも思える問題もあったため、出題者の意図がくみ取りやすくなっています)。

ケース問題を、単なる思考ゲームとして、あいまいな議論ばかりに時間を費やさないよう、注意してください。

今回のケース問題も、もし普通のディスカッションであれば、「新規事業だし、まずはビジネスプランを考えよう。そのためには、いろいろなアイデアをまず出さなくては。」といったプロセスや意見が、自然に出てくる方が多いでしょう。

しかし、「ケース面接」と言われてしまうからなのか、ついつい思考が停止してしまい、「フェルミ推定」などの「手法」にいきなり飛びついてしまいがちです。くれぐれも、普段通り「自然」に考えるよう、注意しましょう。

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。