【解答の視点を学習】回答の方向性が広い、あいまいなケース問題に対するアプローチ
2017/12/05
#戦略コンサルのケース面接対策

はじめに

今回も、現役コンサルタントの方に、ケース問題の解答方法について解説していただきました。ぜひご覧ください。

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導入: 本コラムの趣旨

今回のコラムでは、社会変化に合わせた魅力的なビジネスについて取り上げました。

今回のケース問題は、問題の問い方があいまいであり、まずしっかり問われている内容を整理する必要があります。ここでいう、「問題の定義」は、ケース問題によくある「前提の定義」とは少し異なりますので、今回詳しく解説します。

また、ビジネス環境への影響には、記載されている社会変化から直接導かれるもの以外にも、派生した様々な変化があり得ます。広い視点がないと、ビジネス機会の範囲を大きく狭めてしまいかねません。

また、あたり前ですが、ここで「本当に良いアイデアを出すことを求められているわけではない」と考えることも重要です。問われている「社会変化」自体は、日本全国の皆さんが知っていることですし、その変化に対応したビジネスを、日本中の人が考えています(本当に良いアイデアであれば、とっくに誰か別の人がすでにビジネスと立ち上げているでしょう)。

その観点からも、「とあるビジネスが良い」と示すことそのものではなく、それを「良いと特定したプロセス」やその理由こそが重要であり、そこが面接官から見られていると考えるべきでしょう。アイデア勝負をすることは望ましくありません。   ここからは、例題に沿って、詳細を解説していきます。Liigaコロッセオにて出題された問題を利用しますので、ぜひコロッセオを解いたうえで、本コラムを読んでみてください。今回解説するのは、以下の例題です。


団塊の世代の方々が、定年を過ぎ、続々と退職して第2の人生に入っています。それによって特に注目すべき、魅力的なビジネスは何か、理由とともに教えてください。


問1: 「団塊の世代」の特徴について、整理してください。

問2: 「団塊の世代が退職」することによって、日本の世の中にどのような変化が起きるでしょうか。様々な側面から、整理してください。

問3: 「魅力的なビジネス」とありますが、この場合「魅力的」とは具体的にどういう意味でしょうか。まず、あり得そうな意味を複数洗い出し、妥当なものを選択してください。

問4: 問1と問2で整理した内容を踏まえつつ、「魅力的なビジネス」と、それを選択した理由を教えてください。

問題を解きたい方はこちら

陥りがちな罠: 安易な現状把握のみを基礎として、打ち手を考えてしまう

まず、この問題が出題されると、皆さん必ず答えるのが「高齢者の人口が増える」「高齢者はお金を持っている」「高齢者は時間に余裕がある」といったものです。そして、これらの「現状認識」をベースに、いきなり打ち手を答え始めます。

しかし、少し考えてみてほしいのですが、「高齢者はお金を持っている」「高齢者は時間に余裕がある」といった部分は、以前から同じ状況であり、団塊の世代の退職に特有の変化と呼べるものではないでしょう。

また、「高齢者の人口が増える」というのは、正しいのですが、「変化」はたったこれ1つだけでしょうか。

まずは、現状分析をどう実施するかについて、少し考えてみます。

視点: 問題文を因数分解する

さて、もう少し現状把握をしっかりと実施したいところです。特に、「変化」の洗い出しが重要でしょう。

そのため、まずは今回の問題文を因数分解してみましょう。問題文を見てみると、例えば「団塊の世代」「魅力的なビジネス」という2つの単語が気になります。以下、これらについて、考察していきます。

「団塊の世代の退職」による変化とは

さて、団塊の世代の退職による変化には、どのようなものがあるでしょうか。これは様々な視点から洗い出すことができると思われます。今回の例題の問1と問2は、この団塊の世代の退職の特徴に対して、それぞれ違った視点から言及しています。以下、それぞれ考察してみましょう

「団塊の世代」の特徴とは(問1)

この問1で問われている内容は、「団塊の世代」と問題文で、“わざわざ”指定されている意味です。「陥りがちな罠」でも述べた通り、「お金を持っている」「時間に余裕がある」というのは、「団塊の世代の高齢者」だけでなく、近年の「高齢者全般」に言える特徴です。では、「団塊の世代」特有と言えそうな特徴とは、何でしょうか。

視点: 代表的な例と比較する

ここで、「以前の世代」との違いを考えれば、様々な違いが出てくると思われます。それらの違い、つまり特徴を踏まえたビジネスの方が、より「魅力的」といえるでしょう。

※補足: 以前の世代の退職者にも共通する特徴であれば、すでにそれに合わせたビジネスが存在するかと思いますが、団塊の世代特有の特徴に合わせたビジネスであれば、これから立ち上がる・大きくなるビジネスですので、より「魅力的」と言えると思われます。これは、市場を細分化したうえで、どのセグメントの市場が特に増加するのかを判定しているとも言えます。

ここからは、あくまで一例としてご確認ください。

団塊の世代の特徴として、様々なことが巷で言われています。例えば「アクティブシニア」的な話などです。この世代の方々は、これまでの世代の方々より「行動力がある」「活動的である」という特徴があるなどと言われています。

そうなると、例えば、「海外旅行の需要」「社会的な活動」「積極的な高額消費」などへ、つながりやすくなるかもしれません。これらの市場は、高齢者の増加割合以上に伸びが大きい市場、場合によっては新しく発生する市場であり、より「魅力的」な市場と言えるでしょう。

今回、アクティブシニアの例を挙げましたが、実のところ、これはあまり良い例とは言えないでしょう(世間で一般的すぎる特徴であるため)。

この種類の特徴は、しっかり考えて示唆のある提言をするほど、かえって客観的であるとは言い難くなる傾向もため、人によっては「それは違うと思う」と考える場合もあるでしょう。面接官としっかり議論しつつ、「打ち手」に必要な特徴を明確にしたいところです。

別の言い方をすれば、ここは自由かつ独特の観察力・洞察力・解釈が問われる部分と言えるため、あまり「違うと思う」と言われることを恐れない方が良いかと思われます。

(客観性が不十分なことは、伝え方を工夫すれば十分でしょう。例えば、「これは私の感覚も入るのですが、…」といった言い回しで意見を述べるなどです。)

一番良くないのは、「団塊の世代」の特徴を、考慮すらしないことでしょう。検証した結果、「ビジネス上で有効な団塊の世代に特有の特徴はない」という話であれば、まだ良いですが、何も検証していないのであれば、それは検証プロセスをスキップしていることになってしまいます。

団塊の世代が「退職」することによる変化とは(問2)

さて、今回のような問題の出し方をすると、「団塊の世代そのもの」や「高齢者から直接お金が発生するビジネス」ばかりに集中してしまいがちです。しかし、それ以外の変化はないのでしょうか。もっと広い視野から、少し考えてみましょう。

視点: 「別の主体から考える」&「考えている項目を抽象化する」

さて、高齢者以外の世代から考えると、何か見えてくることはないでしょうか。ここは、高齢者以外の世代として、わかりやすく「若者」視点で考えてみましょう。

団塊の世代の退職による、最もわかりやすい変化は「高齢者の人口が増える」という部分です。これを、若者視点から見るとどう見えるでしょうか。

まず、「年金問題」などからもわかる通り、「より少ない若者の数で多くの高齢者を支える」必要が出てきます。これは、「税金負担が重くなる」などの理由による、若者の消費の減衰といった話だけではなく、もっとわかりやすい変化があります。

この「より少ない若者の数で多くの高齢者を支えなければならない」という内容を、抽象的に言い換えれば、「労働者人口の割合が小さくなる」と言えます。

また、別の視点だと「退職」という単語を言い換えれば、「働かなくなる」という意味に解釈でき、労働者の数が減ることになるため、ここから「労働者人口の割合が小さくなる」という内容を導くこともできるでしょう。

そうすれば、必然的に「効率的な労働力の活用」が必要になるため、例えば、「低付加価値な仕事の海外移転」といったビジネス(例:アウトソーシング)や、労働生産性の向上(例:機械化・ロボット化・AI などの技術)といったビジネスが有望になってくるでしょう。

これらは、いずれも高齢者から直接発生する需要やお金ではありませんが、団塊の世代の退職が増えることで魅力が増すビジネスの一つであることは、ご納得いただけるのではないかと思います。

この種類の打ち手の方向性を、面接中に選択肢として提示できるか否かは、「広い視野を持っている」というポイントの評価を大きく変化させるでしょう。必ずしも、これらを最も魅力的なビジネスの最終的な回答にする必要はありませんが、「方向性の提示」「選択肢の提示」レベルで大丈夫ですので、面接官に提示しておきたいところです。

「団塊の世代が退職」は、様々な側面で変化を起こす

以上のように、「団塊の世代が退職」といっても、変化の内容は様々です。

まず、大きくは高齢者人口の増加を中心とした「高齢者消費の市場の変化」と、退職者の増加による「労働者人口の割合の減少」があります。

特に後者の「労働者人口」の視点を見落としやすいので、広い視野から物事を把握する(今回の場合、退職という現象・単語の裏側を見る)ことを心がける必要があるでしょう。

また、前者も「高齢者消費の市場増加」と単純に解釈してしまうと、現状把握として不十分でしょう。「団塊の世代」と指定があることから、この世代の特徴を洗い出すなど、より深い現状把握をしないと、検討として不十分だと思われます。

「魅力的」なビジネスの意味とは(問3)

さて、問題文には何となく「魅力的」なビジネスとありますが、この「魅力的」という単語はあいまいすぎないでしょうか。

「魅力的」なものが何かというのは、人によって異なります。卑近な例を挙げてしまえば、「魅力的な仕事」「魅力的な異性」といったものは、人によってバラバラです。しかし、このバラバラであることは、「他の人が、非合理的な思考をしているから」といったものではないはずです。

バラバラである背景には、「趣向」「プライオリティ」といったものや、おかれた環境(前提条件)などがあり、それらに応じて「合理的に考えた魅力的なもの」は変化するでしょう。

つまり、「魅力的」とは何かについての議論、最低でも認識の確認程度は必要になると思われます。

視点: 「当事者の立場になって考える」&「極端な2例で比較検討する」

さて、ビジネスにおいて「魅力的」というと、ついつい「売上高」「利益額」「利益率」といったもので判断すればよいと、単純に考えがちです。しかし、本当にこれで正しい(単純で良い)のでしょうか。

ここでは、わかりやすく2つの極端な主体を提示し、彼らの当事者の立場になって考えてみます。

2つの主体の例として、以下の極端な2種類を考えます ・主体X: 大企業の新規事業担当者 ・主体Y: これから起業を考えるベンチャー企業の社長

一方、ビジネスの種類としては、こちらも極端な例として、以下の2種類を考えます。 ・市場A: 新しく立ち上がった、小さくニッチな市場 ・市場B: 既存の市場であるが、規模そのものや伸び幅が大きい市場

さて、市場Aのような、ニッチ市場を、各主体から見るとどうでしょうか。まず、主体Xのような大企業の場合、規模がある程度大きくないと(将来的に大きくなる見込みがないと)参入するうまみが小さいです。そんな小さな市場に人員を割くくらいであれば、既存の事業のテコ入れをした方が良い場合が多いでしょう。

一方、主体Yのようなベンチャーであれば、市場が小さいことは、そこまで大きな問題になりません。むしろ、資金力のある大企業が、競合として参入してこないのであれば、ビジネスとしてやりやすく、魅力的と言えるでしょう。

一方、市場Bのような巨大市場であればどうでしょうか。まず、これらの市場については、世の中の多くの人が気付いているはずです。そのため、競合が多くなる可能性があります。

また、大きな市場で安定した売上や利益を得るためには、コスト競争力や高い認知度をもとに高シェアを得る必要がある場合も多く、人的リソースや資金力も必要になってくるでしょう(生産、営業、広告などの規模)。

これらは、主体Xのような大企業であれば対応可能かもしれませんが、主体Yのような小さい企業では対応が難しいでしょう。

以上はあくまで一般論に過ぎないので、テーマの商材などに応じて状況が変化することに注意が必要ですが、内容を抽象的にまとめると、「そもそも、どのようにビジネスを展開したいと考えているのか」をはっきりさせる必要がありそうです。例えば以下のような視点や切り口があるでしょう。

・「短期で安定した利益を上げたい」 or 「時間がかかっても良いので、中長期的に大きなビジネスにしたい」 ・「ベンチャー企業の事業」 or 「大企業の新規事業」 ・「今後の成長余地の大きい市場を攻略したい」 or 「規模の大きな市場に攻勢をかけたい」

問題の問われ方そのものが曖昧であり、それを整理することは、実際のコンサルティングでも多い

上記のように、各実施主体のおかれた状況・環境はもちろんですが、そもそものビジネス展開上の目的・目標などによっても、「魅力的」という単語の意味は変化するでしょう。どれが「魅力的」の意味として適切かについて、「一般論としての正解」や「論理的な正解」はないと思われますので、面接官と確認・議論しておきたいところです。

特に今回の場合、面接官がこのような議論を望んで、あえて「魅力的」というあいまいな単語を問題文に記載している可能性も高いです。もし、このような議論が不要であれば、初めから「大きくなりそうな市場」「伸びが大きい市場」などと、具体的に書くこともできるはずです。実際のコンサルの仕事でも、クライアントのあいまいな意向を、具体的に整理する思考やプロセスはよく必要になるので、しっかり押さえておきたいところです。

コンサルの視点で回答を構成する必要がある(俯瞰的、客観的、論理的に)

さて、ここまで様々な選択肢の洗い出しや、特徴の分析をしてきましたが、なぜこれらのプロセスが必要なのでしょうか。このような面倒なプロセスを飛ばして、何かイケてる打ち手を1つ出せば、それでOKではないのでしょうか。

以前の「サーフショップ」のコラムでも解説しましたが、ケース面接は「コンサル」の採用選考として行われる以上、やはり「コンサル」に必要とされる様々な思考力を図るものであり、議論や思考のプロセスも、コンサルの実務に沿った形式が望ましいです。   もちろん、自分一人で出資金を用意し、自己責任で勝手に自己資金を投じて新しいビジネスをやるのであれば、「別の選択肢を比較しながら考慮する」ことも、「なぜその選択肢が優れているのか理由を考える」ことも、“必須ではない”でしょう。

しかし、コンサルの仕事は、クライアントという“他者(他社)”のことについて実施しますし、コンサルが提案した内容をクライアントが実施したことによって、失敗や損失が発生したとしても、コンサルが責任を取るわけではない場合が大半です(出入り禁止になる程度です)。

そのため、クライアントやその関係者をロジカルに説得する必要があります。そうなると、例えば、「客観的」な視点から、様々な可能性を「俯瞰的」に考慮しながら選択肢を洗い出し、それぞれのメリット・デメリットなどを「論理的」かつ体系的に整理し、なぜ最終的な提案内容・選択肢が良いのか、理由を説明する必要があるでしょう。

今回のケース問題も、同様の視点で取り組まないと、コンサルティング会社のケース面接の回答としては不十分になってしまいます。特に、これまでのコラムでも解説した通り、いわゆる“論理的”な回答をするにあたって、現実的には「俯瞰的な視点」「広い視点」といった部分がおろそかになる方が多いです(一方、単純な論理の飛躍などは、あまり発生しないイメージです)。視野が狭くならないよう、注意してください。

 

最終的な回答の提示方法・粒度も考慮したい

今回の問題は、あくまで「魅力的なビジネスは何か」です。さて、最終的な回答の着地点はどのあたりになるのでしょうか。少し考えてみましょう。

まず、今回のケース問題は、問われている内容があまりにも“ざっくり”しすぎており、回答の方向性として非常に多くのものが考えられるため、どう手を付けて良いかわからないと感じた方もいるのではないでしょうか。

このようなざっくりした問題に限ったことではありませんが、基本的に「広い視点から詳細へ」と「議論の範囲を段々と狭く」しながら、進めていくのがポイントです。

先ほどの段落の解説でも解説した通り、コンサルタント的に回答するためには、ある程度広い視点から物事を整理しつつ、より良い方向性へ細かい議論を進めていくことになります。

(今回の例題だと、まず「高齢者そのものの需要」と「労働人口減少による変化」という大枠を提示し、次にどちらか選択した方についてより詳細に検証を進めていくイメージです。)

想定される回答の“粒度”には幅がある

さて、ここで問題になるのは、「どこまで詳細な議論・回答が求められているのか」という部分です。

ある程度大雑把な方向性であれば、例えば「特に肉体労働系の仕事かつ日本語能力が必要となる仕事は、労働者を見つけることが困難になると予想されるため、これらの仕事の機械化・ロボット化の産業が魅力的である」といったレベル感の、定性的な議論が大半となる回答になるでしょう。

この場合、細かい話は具体例・一例のレベル(「例えば、介護事業などは一つの大きな選択肢でしょう」)で終わると思われます。

一方、もし詳細な回答を求めるのであれば、極端な例だと「介護産業の入浴における機械・ロボット化が魅力的であり、…。現状の市場規模がXXであり、そのYY%と取れるとすると…」といった、ビジネスプランさながらの、詳細まで踏み込んだ、具体的かつ定量的な回答になると思われます。

どのような場合でも、広い視点から方向性の議論をしておけば、リスクが少ない

正直なところ、どのレベル感の詳細な回答を求められているかは、面接官にもよると思われるため、明確な答えはないと思います。

全く同じ問題文であったとしても、面接官によって、重要視する内容が異なるからです。そのため、抽象的な方針としては、「面接官の反応を見ながら、うまく面接を進めていく必要がある」ということになります。

しかし、これでは助言としてあまりに曖昧・抽象的すぎるので、もう少し詳細に考えてみましょう。この時、面接官が求める回答のレベル感がどの程度であったとしても、「広い視点から、より詳細へ」という議論の流れが有用であることがポイントです。

仮に、面接官がとても細かいビジネスプランレベルの回答を求めていたとしても、「なぜその回答が良いのか」ということを議論・説明するためには、大枠からの議論が必要になります。

もし、面接官があなたの詳細な回答について、「そもそもの回答の筋が悪い」と感じた場合、その後の議論の展開が絶望的になります。

この時、簡略で良いので、広い視点から「方向性」について提示して議論をしておけば、「それは違うんじゃない?」「今回はこちらを考えてみて」といった形で、面接官も修正ができるため、大きなリスクを回避できます。

また、仮に面接官があなたの詳細な回答と、おおむね同じ内容を考えていたとしても、「なぜその打ち手が良いと思う?」という質問をされる可能性が高いです。

ここで、体系立てて理由を説明できないと、「単なる思い付きの回答」と判断されてしまい、評価が低くなってしまうでしょう。

(また、打ち手の内容をいきなり提示し、それが優れている理由を述べた場合、現実的には「理由の後付け」感が出てしまい、客観的な評価・理由付けに聞こえない場合が多いです。ある程度、上段の方向性から説明することで、これらの問題を回避できる場合が多いです。)

重要なのは、回答プロセスであり、踏むべき手順は大きく変わらない

以上のように、いきなり細かい打ち手を上げるのではなく、まず広い視点から、どの方向性が重要かについて、しっかり提示・議論することが必要です。

この時、面接官が「方向性」「定性的な議論」をより重視していれば、「この広い視点」の部分について、長い時間をかけて議論することになるでしょう。

一方、もし、面接官が「細かいビジネスプランレベルの回答」「緻密さ」を求めているのであれば、方向性の議論は、軽く提示しながら「認識確認」レベル・短時間で済ませ、詳細を詰める議論に多くの時間を使うことになるでしょう。

「最終的な回答」だけではなく、それまでの「議論・思考のプロセス」が大切ですので、しっかりとしたプロセスを踏んだ回答の提示ができるよう、注意してください。その上で、面接官の反応を見つつ、どの部分に議論や思考の時間を使うべきか、配分を判断しましょう。

本コラムのまとめ

本コラムでは、社会変化に合わせた魅力的なビジネスについて解説しました。

まず、社会変化には、様々な側面があります。今回のように、高齢者の増加は、高齢者市場に関するビジネスの魅力が向上するだけではありません。

社会全体で見れば、労働者人口の割合が減ることになるため、ここにもビジネス機会があるでしょう。視点を高めにもっておき、ある程度事象を抽象的に解釈するクセがないと、想起するのが難しい部分です。

次に、「団塊の世代」と書いてあっても、この団塊の世代の特徴に言及できる方が少ない傾向にあります。普段から、比較しながら考える(今回の場合、それ以前の世代の方と比較して考える)クセを付けておけば、自然と特徴を考えられるはずです。

また、「魅力的」という単語が、立場によって異なることも提示しました。今回の例題では、「魅力的」というあいまいな単語を、面接官が意図的に問題文へ採用している可能性が高いので、面接官としっかり確認・議論しておきたい部分です。

最後に、この問題の回答として、どこまで詳細なものが求められているかは、面接官によるため、問題文からだけでは予測不可能であることも提示しました。

しかし、「方向性」レベルの議論が求められている場合でも、「具体的なビジネスプラン」レベルの詳細な回答が求められている場合でも、今回の解説通り、広い視点から方向性の議論をしつつ、段々と詳細な議論に入っていくことが必須です。

このような「広い視点から詳細へ」というプロセスを踏まえつつ、最後は面接官の反応を見ながら、どの部分により多くの時間を使うべきか、ご判断いただけると良いかと思われます。決して、プロセスを丸々飛ばすことがないよう、注意してください。

今回のケース問題は、「とあるビジネスが良い」ことを示すことそのものではなく、それを「良いと特定したプロセス」やその理由こそが重要であり、そこが面接官から見られていると考えるべきでしょう。アイデア勝負をしてしまわないよう、注意してください。

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。