コンサルタント転職入門。市場動向・採用基準を語る。コンサルタント経験者・伊東和也氏インタビュー #03
2018/03/21
#ポスト総合コンサルのキャリア
#総合コンサルタントの面接で大事なこと

はじめに

今回はコンサルタント出身の人材エージェント・伊東氏へのインタビュー、第3弾です。

第2回では、コンサルタントの魅力や人材エージェントに転職された経緯について伺いました。

その続きとなる第3回では、コンサルティングファームの転職市場や、転職に際して求められる資質について話してくださっています。

ぜひご覧下さい。

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コンサルティング転職市場は拡大している

―コンサルティング業界の転職市場は、現在どのような状況なのでしょうか。

拡大傾向にあります。私がA社を退職した時も、コンサルティングファームでは人材不足が課題でした。「人手が足りず、手が回らない依頼をいかに断るか」というような状況でした。人材不足の傾向は続いています。

―昔と比べて、コンサルタントの需要は増えていると。

需要の増加に従って、実際にコンサルタントの数も増えています。私が入社した時のA社は従業員が5千人程でしたが、現在は1万人程と、倍増しています。

また当時は新卒入社ばかりでしたが、現在は中途入社が非常に多いです。従来は年齢で職位の目安がついたのですが、現在は年齢と職位が比例しなくなり、社内の方と話すときは常に「さん」付けで話す必要があります。

―ファーム別では、総合ファームの募集案件が多いのでしょうか。

そうですね。BIG4、アクセンチュア、アビームがやはり多いです。募集される職種は様々ですが、コンサルティングファームはトレンドを追いかける必要があるので、テクノロジーなど新領域の募集は多くなります。

その場合、新領域に通じている人は非常に限られるので、最初の募集用件はその領域に興味があるかどうか、という程度のものが多いです。そのため新しいことを始めたい人に向いていますね。

―トレンドとは例えばどういうものでしょうか。

今ですと、業界を問わず、AIやロボティクスなどの新技術を取り込む必要があります。一方で、この領域の第一人者はそれほど多くありません。そのため、ITの理解が少しでもあれば、これから専門性を育てるという目的で採用することがあります。

―IT分野で中途採用が増えやすいということですね。ITの経験が有利に働くということでしょうか。

そうですね。IT経験者のコンサルタントへの転職は多いです。私が受け持つ案件でも、コンサルティング経験者のみでなく、大手SI企業出身の候補者が大きな比重を占めます。

また、弊社は①IT、②金融、③製造業等、その他の事業会社の3チームに分かれており、ITと同様に金融も重視されています。

金融業界が特殊な業務で、特別な知識、高い専門性が要求されるため、金融業界のコンサルティングも慢性的に人手不足で、需要が大きいのです。

―ITや金融など、先進的な分野でコンサルタント不足の状態にあるということですね。

はい。先進的で、かつ売り上げ規模が大きい業界ですね。

コンサルタントの採用基準

―コンサルタントの需要は拡大しており、事業会社から中途転職される方も多いとのことでした。基本的には、前職での業界経験を活かした形の転職になるのでしょうか。

そうですね。例えば金融出身者でしたら金融のコンサルティング、メーカーにいた人は製造業へのコンサルティングに携わろうとするケースが多いです。しかし、前職とは異なる業種のコンサルタントとして採用されるケースも、決して少なくありません。

―異業種から転職される場合、前職の経歴の重要性は下がりますね。その場合、どのような基準が重視されて採用されるのでしょうか。

例えば戦略ファームでしたら、特に若手の場合は地頭の良さや英語能力が見られます。総合ファームでもケース問題やフェルミ―推定など、地頭の良さで選別するファームがあります。その場合でも当然、学歴や前職の社格が見られています。

ただし、採用時の需給バランス、人手不足の深刻さによって採用の難易度は上下します。需要が逼迫した場合や、専門家の少ない新技術の場合、専門学校卒でも採用されることがあります。

―地頭の良さを見られるという点は、新卒採用でのポテンシャル重視に似ていますね。

第2新卒など、20代半ばまでの若手層は新卒採用と似た側面はありますね。しかし年齢を重ねれば、前職での実績の比重が増します。ファーム毎によって基準が異なるので一概には言えませんが、例えば前職の企画経験が問われたりします。

―能力面以外では、例えば性格面ではどのような方が求められているのでしょうか。

まず言えるのはチャレンジ精神ですね。もっとも、コンサルティングファームを目指される時点で、成長意欲や学習力がある方がほとんどだと思います。

それに加えて、キャッチアップ能力も求められます。プロジェクトベースのコンサルタントは、毎回顧客や業務内容が変化します。しかしアサインされた時点で、その領域の専門家として振る舞わなければなりません。

私は金融関係のキャリアが皆無でしたが、証券会社の案件ではあたかも金融業界を熟知しているかのような仕事ぶりが要求されました。ファーム内の専門家に教えてもらうこともできますが、やはり自力のキャッチアップは大前提になります。

そのため、それを苦に思わない人、 新しいことを学ぶのが楽しいと思える人はコンサルティング向いているでしょう。

―新しいこと学べるのがむしろ魅力だと先ほど伺いました。

そうですね。もっとも、毎回自分の興味があるプロジェクトにアサインされるとは限りません。その場合でも新しいことを学ぶ良い機会として、選り好みせずに勉強するべきでしょう。予想していなかった領域が、好きになる場合も珍しくありません。

実際、私も会計やサプライチェーンに携わることになるとは思いませんでした。「絶対この領域以外は携わりたくない」という拘りがあると、入ってから厳しいでしょう。

―食わず嫌いは良くないと。

自分の志望を主張しつつ、志望外のプロジェクトにアサインされても、まずは興味をもって取り組む姿勢が重要です。

迷ったときの第三者

―転職を視野に入れているLiigaユーザーの皆様も、かつての伊東氏が経験したように「キャリアの迷い」を抱いています。キャリアに迷う後輩に向けて、アドバイスを頂けますか。

若い時は自分が挑戦したい業種がよく変わります。現に私がそうで、最初は業務系、戦略系など上流の領域を志望していたのが、IT案件の志望を出したり、海外プロジェクトを経験すると次も海外に行きたいと感じたりしました。

結局、志望業種が変わるのは、隣の芝生が青く見えているだけでした。志望通り、新しい業種に取り組めるようになっても、「前の仕事のこの部分良かったな」と感じることもしばしばでした。

―実際、伊東氏も一度事業会社に転職して、1年ほどしてコンサルティングファームに戻られていますね。

自分の本当に好きな分野は最初はわからないので、志望が変わるのはある意味当然です。その時、興味のあるものに一生懸命取り組めばいいと思います。

そうして3、4回、「この分野は違った」と、間違えていく内に、好きな分野が定まるのだと思います。私も大学卒業時に、自分が人材エージェントになるとは思っていませんでした。

自分の好きな分野を見つけられず、転職を考え始めることもあるでしょう。それはそれでいいと思います。

ただしその時気をつけてほしいのが、自分1人で悩まずに、第3者に相談した方がいいということです。自分だけで考えていると、視野が狭くなり、危険です。

もっとも家族に相談しても、過剰に心配されてしまいます。上司には他の会社のことで相談するのは難しいでしょう。そういう時に、エージェントを使えばいいのでは、と考えています。

―人材エージェントには第3者としての価値があると。

エージェントに相談して、転職を無理に決められてしまうことを恐れている方もいるでしょう。私も転職時には、半分そう思っていました。

それでも、エージェントは第3者として現状や自分の能力を踏まえ、適性を客観的に伝えてくれます。エージェントでなくてもよいので、キャリアの相談ができる第3者を見つけて、定期的に自分の考えを整理することが重要です。

私がキャリアの勉強を始めたのも、その重要性に気づいたのが原点です。それが興じてエージェントになりましたが、今でも中立的な立場からキャリアの相談に乗ることが目標です。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

第1回、第2回、第3回にわたり、伊東氏の10年に及ぶコンサルタントとしてのご経歴から、コンサルタントの魅力や転職市場の状況について語って頂きました。

自らの長い経験に裏打ちされた伊東氏の言葉は、多くの方にとって説得力のあるものだったのではないでしょうか。

ご参考になれば幸いです。

コラム作成者
Liiga編集部
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