華のある経験や実績を語っても、面接で上手くいかない人は少なくありません。新卒でP&Gの営業部(Sales)に入社し、その後グーグルの営業部門に転職した伊丹順平さんは、両社で採用に一部携わった経験があります。
現在は、両社で培った経験を活かし、リテイルテック事業や広告代理事業を行うベンチャー企業FEZ(フェズ)を起業し、代表を務めています。
伊丹さんがよくする質問は「どういう時に自分の成長を感じるか」。肩書きだけではなく、自分のことを自分の言葉で語る力が求められています。(取材・構成・撮影:小野ヒデコ)
「何がしたいの?」と聞かれても何もしたくなかった大学時代
――高校時代、甲子園に出場するほどの球児だったそうですね。
伊丹:小学校から野球をしていて、高学年の時には「甲子園に出たい」と思っていました。その頃から目標をしっかり立て、自分なりに目標を達成するためのプロセスを踏むことで、一歩ずつ結果を出してきました。
――高校生活は野球一色だった、と。
伊丹:進学した地元の県立岡山城東高校の野球部ではポジションはセカンド。代打でしたが、甲子園に出場するという夢が叶った時に得た快感は今でも忘れられません。
社会人になってもその経験がベースとなっていて、毎日スモールステップを自分に課し、その達成感を味わうことを大切にしています。
――卒業後は、東京理科大学に進学したんですね。
高校時代は野球漬けだったので、全教科勉強する時間がありませんでした。浪人時代、私立の理系に志望を絞って0から勉強をし、結果的に工学部工業化学科に進学が決まりました。
就職の際、大学の同級生たちは大手の研究職に就く人が多かったんですが、その当時僕は特にやりたいことがなかったんです。
――P&Gは第一志望だったのですか? 伊丹:P&Gを受けたのは、正直言うと選考が早かったからです。当時の採用試験は、3年生の9月ぐらいから始まり、グループディスカッションと4回ほどの面接、あとは1週間のインターンでした。
グループディスカッションでは、7人ほどのグループで約20枚の資料を読み込み、「この商品の市場シェアを2%上げるためには?」ということを話し合う内容だったと記憶しています。アウトプットだけではなく、話し合いの内容や考え方を見られていました。
――新卒でP&GのSales(営業統括)部門に入られました。
伊丹:高校球児から東京理科大に進学して、就職はP&Gって一貫性がないですよね(笑)。でも、理系で、体育会で、少しばかりですが「地頭」があると自負しているので、その三つがそろっている点は貴重なのではないでしょうか。
ただ、P&Gでの営業は2年ほどで先が見えてしまいました。売る商品の単価が安く、一人あたりの仕事のスケールが小さいと感じてしまって3年半勤めて転職をしました。
面接の評価ポイントは「熱量」と「自分の言葉で語ること」
――P&G時代、採用に携わられたそうですが、採用ポイントはどこだったのでしょうか?
伊丹:熱量ですかね。自分の言葉で語ることです。採用に関しては、その次に就職したグーグルでも少し携わりました。
共通して言えることは「自分の言葉で語れない人が9割だった」ということ。どれだけ素晴らしい経験を語ってもらっても、嘘っぽく聞こえるんです。そういった意味で熱量がないと、何を語ろうとも落とすことは決めていました。
――どのように熱量を測るのでしょうか?