アサイン代表・小瀬村氏がゼロから解説する #01「キャリア戦略の必要性」
2018/08/22
#キャリア戦略概論
#良いエージェントの選び方

はじめに

先日、コンサルティングファームへの転職支援を得意とする株式会社アサイン代表取締役・小瀬村卓実氏に、キャリア戦略セミナーを開催いただきました。セミナーの概要をコラムとしてお伝えいたします。

Liiga会員の皆さんは、将来的に事業会社で経営を行うこと、マーケターとして企業を渡り歩くこと、起業すること、などご自身の中で思い描いていらっしゃるキャリアがある方が多いと思います。では、このようなキャリアにたどり着くためにどのようにして20代、30代のキャリアを歩んでいけばよいのでしょうか。

セミナーでは、人生100年時代の現代においてキャリア戦略の必要性から、実際のキャリア戦略の描き方、キャリアアップの実例等、キャリア戦略のプロの立場から語っていただき、

第1回:「キャリア戦略の必要性を知り、内容を理解する」 第2回:「キャリア戦略の描き方(理論編)」 第3回:「キャリア戦略の描き方(実例編)」

の3回に分けて掲載いたします。

本コラムのテーマは「キャリア戦略の必要性を知り、内容を理解する」です。ぜひご覧下さい。

第2回はこちら 第3回はこちら

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本記事に登場いただいた小瀬村氏にご相談したい方はコラム最後にありますボタンからご連絡ください。

キャリア選択を描く際に重要な3つのステップ

これからの長期に渡るキャリアをどのように歩いていけばいいのか、長期的な視点を持ったキャリア戦略が必要になってくると思います。実はLiiga会員の皆さんのような20代の方々は、30~35歳くらいまでのプランを描けていれば、今後40年のキャリアはおおよそ見渡すことができるのです。

これはロケットを打ち上げた時に最初の角度を変えると、その先の軌道に大きな影響を及ぼす原理とよく似ています。「せいぜい30歳、35歳までのキャリアを見渡せていればいい」という見方もできますが、逆にその年齢までのキャリアを見渡せていないと「後々には修正が効かない」、そんな見方もできます。

「修正が効かない」事態に陥らないように、今回のセミナーではキャリア戦略を描くために、重要な3つのステップを説明することを目的として進めていきたいと思います。

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①キャリア戦略の必要性を知る

キャリアの長期性

そもそもキャリア戦略がなぜ必要なのでしょうか。

Liigaの会員の皆様は社会人になられてから数年の方が多いかと思いますが、人生100年時代のキャリアに向かって非常に長い道のりを歩むことになるでしょう。ご自身が生きてきた年数より、今後のキャリアが長いということはなかなかイメージがつきにくいものです。

この長期のキャリアをどのように歩んでいけばいいのかを考えるにあたって、マイルストーンが重要になります。このマイルストーンを意識しながらキャリアを積んでいかなければ、思うようにキャリアを歩んでいくことは非常に厳しいものになってくるのです。そのために、今の年齢から長期的なキャリア戦略を描いていくことが必要です。

キャリアにおけるマイルストーン

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マイルストーンとは物事の進捗を管理するために途中で設ける節目のことを指しますが、これをキャリアに当てはめて考えていきたいと思います。例えば、キャリアチェンジをしたいとなると、社会人5年目がリミットになります。今行っている仕事と畑違いの仕事を行いたいのであれば、この時期が最終チャンスでしょう。

採用する側の視点からお話すると、20代前半から中盤の年次の場合はその方の『ポテンシャル』を見て採用します。例えば、法人営業の方であれば、「人とコミュニケーションをとることが好き」「数値を追うことが好き」など、こういった価値観適正を見極めて積極的に採用を行っていこうという判断になります。

これがもう少し年次が高い30歳の転職希望者に対してどのような採用を行っているのかというと、応募された職種に、少し関連した領域で経験を積んでいないと雇わなくなります。法人営業の募集であれば、法人営業の経験がなくとも個人営業、代理店営業に携わられていた方であれば、ぎりぎり採用できるかな、という判断ですね。

例えばカスタマーサポートなど、電話での接客業務を中心に行っていた方は、もし30歳になられたときに法人営業にキャリアチェンジしたいと考えても、実際に働くことは難しいかもしれません。年齢を重ねるにつれてこのような制限が出てくるのです。そのため、社会人5年目というのはキャリアチェンジにおける重要なマイルストーンになります。

具体的なキャリアアクション

では、最適なキャリアを積み上げていくために、30歳の時点でどの程度まで自分のキャリアを考えられていればいいのかというと、自分の価値観にあう領域をある程度特定していることが重要です。

現在Liiga会員の方々は25歳から28歳くらいのご年齢の方が多いと思いますが、この段階でのキャリア選択は非常に重要です。30歳で自身に合う領域を特定するためには、20代後半にはその領域に移っておく必要があるからです。いくら考えたところで、実際にやってみないと、本当に自分に合っているかはわからないところがありますからね。

30歳の段階で、実業務の経験も踏まえ、やりたい領域を特定できていることが大切なのです。ポテンシャルで見てもらえる年齢上限から考えても、今の領域を一生続けたいと思えないのであれば、真剣に考え、積極的に実経験を取りに行くべきです。意外に猶予はありません。

ここの見立てが甘く、30歳になってから自分のキャリアを考え始める方も結構いらっしゃいますが、転職市場はなかなか厳しく、思うような転職を行うことは難しい現状があります。30歳になってしまうと、私達のようなエージェントとしても、選べる選択肢の中でキャリアをサポートしていくことしかできなくなってしまうので、やはり若いうちからキャリアを考えていくことは重要です。

そこから35歳~40歳と年齢を重ねていくと、35歳ではスキル採用、例えば営業職では誰にどんな商材を売ってきたのかという経験が見られるようになります。ITの営業職に応募するのであれば、それまでにIT関連の営業を経験していないと、そもそもの書類選考を通過することも難しくなっていきます。

40歳になった時には、より実績や経験重視の採用になってきます。どの会社とコネクションがあって、どの程度の交渉力があるのか、または部門の売り上げを何年間で何倍にしたのか、などの過去の実績が求められます。

こういったマイルストーンを見ていくとキャリアの厳しさを感じることもあるかと思いますが、これを意識した上でキャリアにおけるロールモデルを1人だけ紹介させていただきたいと思います。

具体的アクションのロールモデル

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ここでご紹介するロールモデルは、実際にいらっしゃった方の話なのですが、非常に面白いキャリアを歩まれているなと思います。この方はP&Gのマーケティングに新卒で入社して、現在は41歳で教育企業のマーケティング部長をされています。

新卒で入社してから30歳までに3社の企業を経験されているのですが、P&Gから花王という転職ケースが非常に珍しく、明確な意図があることがわかります。新卒の頃の気持ちに戻って想像してみると、この2社ってP&Gの方がブランド力があるイメージかと思います。

なぜ彼がP&Gから出て花王に転職したのか、というと国内のマーケットでP&Gが花王に勝てていないからでした。日本ではP&Gよりもシェアが高い花王のマーケティングには、仕組みとして必ず自分が学ぶべきことがあるはずだと考え、転職されたのです。これは非常に面白い考え方ですね。そこからマクドナルドやジョンソン・エンド・ジョンソンで経験を積んだあとに教育企業のマーケティング本部長に就任されています。

彼は、P&Gのマーケターとして30歳まで働き続けていれば、P&Gが好きだからその仕事に取り組んでいるのか、マーケティングが好きだからその仕事に取り組んでいるのか、わからなかったかもしれません。そうならずに積極的に動いていくというキャリアの築き方をしている点が、能動的で印象深いキャリアだなと思っています。

さらに象徴的なのは、この方は3社目以降、契約社員として入社しています。なかなかこういう日系の大企業で部長が契約社員というのは結構違和感があるかもしれませんが、実はこういう方は結構いらっしゃいますね。

この雇用形態で入社することは彼なりの決意を表しているのかもしれません。契約社員というのは、1年ごとにパフォーマンスが悪かったらクビを切られるということを意味するからです。しかしその分、高い給料をいただくことができます。

自分のスキルで会社を渡り歩くというスタンスが明確で、まさに傭兵のようなキャリアを歩まれてきました。これくらいキャリアというものは1人1人異なっており、自由に選択できるものなのです。自由で楽しいものであるという認識を持ったうえで自分のキャリアを考えていただきたいと思っています。

②キャリア戦略の内容を理解する

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セミナーの目的の2つ目でもある「キャリア戦略の概要を理解する」ということですが、先ほどのマイルストーンにきちんと答えていくということこそがキャリア戦略の骨子です。

新卒の就職活動では、企業に、どんな大学でどんな所属で留学経験はあるのか、など、このようなスペックを見られていました。しかしこれが中途採用になるとこの辺りの話はあまり関係がなくなり、ざっくりと経歴しかみられなくなります。

一方で価値観、スキル、実績といった右側にあたるところを年齢が上がるにしたがってきちんと積み上げているのかどうかという点を見られています。

では具体的にどのようなことを考えていけばいいのでしょうか。

20代だから、自分の価値観だけわかっていればいいやという話ではありません。一旦自分が思い描いている長期のキャリアに対して、未来のスキルや実績を書ききってしまいましょう。そして、それを随時修正していくという進め方にしないと、キャリアの節目が来る度にどの選択を行えばよいのか分からず、行き当たりばったりで進んでしまいます。次から、価値観、スキル、実績/経験について具体的に説明させていただきます。

価値観

みなさんは明確な価値観を既にお持ちになっています。20年以上生きている中で人間としての価値観はほとんど構築されているため、価値観については、自分自身の価値観を明確に理解できているのかどうか、につきます。理解できていないのであれば、何らかの方法で理解していくことが非常に重要です。その方法は後ほど、説明させていただきます。

スキル

スキルについては30歳くらいまでであれば、「法人営業の経験があります」「コンサル経験があります」というレベルのスキルで十分です。しかし35歳になった時に急に詳細なスキルが求められるようになります。

具体的には転職活動時にアライアンスの経験があったとしても、それはオープンイノベーションを目的としたベンチャー企業のアライアンスなのか、または大きな事業スキームを組むために大企業同士のアライアンスを組んだのか、によって活躍の場は全く変わってくるのです。

戦略コンサルと言われる領域でも全社戦略と新規事業のどちらを経験されているかによって、そもそもアプライ(応募)できる案件が変わってきます。新規事業の領域ではハッチング(※1)やリアルオプション(※2)などは当たり前の概念ですが、全社戦略を専門にしている方は単語すら知らない可能性もあります。

一方で全社戦略はマーケットの分析や為替市場の分析などのマクロ視点での分析には長けています。このように広い意味で同じ領域のスキルでも、具体的にできることは全く異なるため、このくらい細かい粒度でスキルを見られるようになってくるのです。

(※1)事業を企み、試行錯誤を重ねながら事業検証を行い、事業の成功モデルを抽出すること (※2)金融工学で用いられるオプションの価格決定理論を応用した、プロジェクト評価の考え方

実績/経験

実績や経験も進みたい方向によって埋めなければならない項目が変わっていきますね。

例えば、マーケティングという道でキャリアを歩みたいのであれば入社する会社の社格とかブランドはあまり関係がありません。唯一のKPIは売上や利益といった数字になるので、饅頭の売上を1億円から100億円まで伸ばしました、などの実績があればどこの企業でも欲しがると思います。

一方でコンサルタントだと「先生」の色合いが出てきます。弁護士が学歴を重視されるように「どこどこ大のMBAを取得しています」とか、「何々についての講演や執筆歴があります」などといった話も重視されます。

このように、将来やりたいことを描けたとしても、それに向けたスキルや経験、実績が簡単にわかるかというと、そう簡単には行きません。きっちり腰を据えて、自分が行きたい領域が何なのか、そこに行くためにはどこまでスペシフィックで具体的なスキルが求められるのか、どのような実績を残していくべきなのか、について一旦描ききる必要があります。

本記事に登場いただいた小瀬村氏にご相談したい方はこちらのボタンからご連絡ください。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回のコラムでは若いうちからキャリア戦略を考えておく必要性とキャリア戦略の内容についてご説明いただきました。自分が思うようなキャリアを描くためには、マイルストーンを把握し、アクションを起こしていく大切さをお話いただきました。

キャリア戦略セミナーコラム第2回では、「キャリア戦略の描き方」を実際にご説明いただきました。ご期待ください。

第2回はこちら

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。
関連エージェント
アサイン
小瀬村 卓実