はじめに
転職成功者インタビュー、経営企画編です。
今回は、戦略コンサルティングファームからの事業会社の経営企画部というキャリアを歩んだ方に、お話を伺いました。その内容を2回に分けてお届けします。
前編となる今回は前歴として、コンサルティングファーム間の転職や、どのように経営企画部へのキャリアを築いたか、お聞きしています。
起業に向けて戦略コンサルティングファームへ
―本日は宜しくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
現在はITベンチャー・C社にて経営企画を担当しています。新卒時に独立系総合コンサルティングファーム(以下、A社)に入社した後、3年目でM&A・戦略コンサルティングファーム(以下、B社)へ転職しました。同社は2年で辞め、現職(C社)に至ります。
―A社といえば、中小企業の経営支援に強いコンサルティングファームですね。
はい。もっとも私の所属は経営戦略事業部で、売り上げが数百憶円程の大企業向けに戦略コンサルティングを行っていました。業務は主に、顧問契約から発生したプロジェクトで、業界を問わないものでした。
―基本的には、戦略に特化した部門だったのですね。新卒時は戦略コンサルティングファームを軸に就職活動をされていたのでしょうか。
そうですね。背景として、学生の頃から起業への思いがありました。しかし経営のことがわからず、戦略ファームで経営を学ぼうと思い、就職活動時は戦略ファームの選考を受けるに至ります。
しかし戦略ファームの選考が実際に進み、インターンに行ったりする中で、新卒時は日本流ビジネスをきちんと教えてくれる日系企業に行きたいと感じ始めます。そして、「日系×戦略」で探し当てたのが、A社でした。
―なるほど。具体的にはどのような業務に取り組まれていたのでしょうか。
具体的な仕事内容は、PDCAの定着支援、中期計画策定、新規事業の検討などです。時には外資系の大手戦略ファームと競合することもありました。
その他にも、私が中国語を話せたため、同社の中国部門と日本部門の間で「橋渡し」的な業務をしていたこともあります。
―中国部門との橋渡しですか。
実は、幼少期の背景により中国語をネイティブレベルで話せるのです。一方でA社は中国でのコンサルティング事業を拡大しようとしており、戦略コンサルティング×中国語の能力がある人材を強く欲していました。
―非常に希少な人材ですよね。「橋渡し」とは、どういった業務なのでしょうか。
中国部門のサポートです。そもそも同部門の顧客は、中国に進出した日系企業ではなく、純粋な現地企業です。彼らに日本流の経営を教えるという趣旨でコンサルティング事業を行っています。
基本的には現地の人材で対応させようとはしているのですが、どうしてもプロジェクト型の難しい案件には人員の限界があるため、日本から人材が派遣されることはよくあります。私の場合も、経営戦略の知見が必要になった故の派遣でした。
私の場合、担当した顧客は主に食品流通メーカーです。日本の数百倍の規模がありましたね。IT業界を除いて、日本と比べると中国は特に物流などのインフラ系企業のレベルが低く、日本の知見が貢献できる余地は非常に大きいですね。
トップティアの戦略ファームを敬遠した
―中国×戦略というのは非常に興味深いです。なぜそこから、B社に転職されたのでしょうか。
3年間A社に在籍する中で、経営について学べることの限界を感じ、「次のステップに行きたい」と考えたのが大きな理由です。
財務・戦略の視点や実行支援の動かし方など、もっとコンサルタントとして自分のレベルを高める必要があると感じました。そこでMBAに象徴される、いわゆる「戦略コンサルティング」を学ぼうと考えます。
コンサルティング業界に強い人材エージェントを使った、およそ2~3ヶ月にわたる転職活動でした。
―その軸ですと、どのような企業が候補になったのでしょうか。
当時B社以外ですと、外資系戦略ファーム、日系戦略ファーム、BIG4等の数社ですね。
王道の戦略コンサルティングを学びたい一方で、起業時のために、戦略の実行支援にも強い関心があったのです。
そこで、戦略に特化したトップティア戦略ファームや、大規模で社内分業が進み、実行まで目が届かないBIG4は敬遠しました。最後は適度な規模感の日系戦略ファームとB社の2社で悩みました。
その中でもB社を選択したのは、「人」の面が大きいです。面接時にお話しした人と、価値観が合ったのです。
加えて、B社はM&Aに強いファームのため、トップティア戦略ファーム出身者や投資銀行出身者も在籍しており、両者の知見がクロスする環境があります。財務視点を強化したい自分にとって、うってつけでした。
他にも、中国での拡大方針という特殊な環境が入社を決める判断材料になりました。
昇進しそうだから会社を出る
―先ほど、起業を意識したステップアップとして、いくつか向上させたい要素を挙げられていましたね。改めてお聞きできますか。
まずは外部環境、内部環境を分析して行うような、欧米的なコンサルティング思考プロセスのレベルアップですね。これに加えて財務視点や実行支援の他、大手企業をどう動かすか、経営会議をどう取り仕切るかというファシリテーション能力も意識していました。
―これらはA社ではレベルアップが難しかったのでしょうか。
はい。A社は長所を発見して伸ばすという一点突破型のコンサルティングで、分析的な欧米流のコンサルティングとは大きく異なるものでした。特に財務視点は大きく欠けていました。
実行支援についても、A社は顧客社員と合宿を開く程度ですが、B社の場合、一緒に提案書を作成したり、経営会議でファシリテーションを担って合意事項をまとめたりしていました。
各部署とのコミュニケーションを積極的にとり、何をどう調整すべきか自分で考える必要がありました。その点は非常によかったと思います。
―そうして入ったB社も、2年で事業会社に転職されていますね。何がきっかけだったのでしょうか。
ネガティブな理由としては、ファームの経営方針が変わり、転職理由の1つであった中国での展開を、縮小し始めたことです。それに合わせて、私が面接時から尊敬していたマネージングディレクター、部長たちが全員辞めていき、自分が残る理由がなくなりました。
ポジティブな理由としては、マネージャーかそれに準じる職位へのプロモーションの話が出てきたためです。職位を上げればコンサルティング業界から抜けられなくなると感じました。
―昇進するから、逆に転職すると。
マネージャーの給与水準はとても高く、それに見合う転職先が他業界にあまりないため、マネージャーになってしまうと転職という決断がしにくくなります。特に、ベンチャーや事業会社がそうです。そのため、マネージャーになったらコンサルタントを辞め、事業を行うことは、以前から心に決めていました。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、コンサルティングファーム間の転職や、どのように経営企画部へのキャリアを築いたか、お伺いしました。ご自身の身に着けたいスキルを考えながらキャリアを歩んでこられた姿は非常に参考になったのではないでしょうか。
後編では、転職時の様子や、その際にご自身がどのように意思決定を行ったのか、語っていただいています。ぜひ、ご覧ください。