パートナーになる鍵は人間関係 Managing Directorが赤裸々に語る、コンサルティング業界での評価軸 #03
2019/09/20
#金融の専門性を身につける
#ポスト戦略コンサルの研究
#総合コンサルタントへの転職体験記
#総合コンサルで最速マネージャーを目指す
#新卒内定者必須コラム

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はじめに

本コラムは、コンサルティングファームでパートナークラスの職位まで昇進されたコンサルタントX氏にインタビューを実施し、活躍するコンサルタントの条件をお伺いしました。

3作目である今回は、コンサルタントとして活躍されている方の特徴やX氏自身の今後のキャリア展望について語っていただいています。

ぜひ、ご覧ください。

 〈目次〉
#01
・プロジェクトでの立ち振る舞いから、マネージャーへの適性を判断する
・突然降ってきたマネージャー業務
・マネージャーとシニアマネージャーの違い
#02
・シニアマネージャーへ
・昇進の決め手は、いかに会社の方向性をくみ取るか
・面白さで選んだ外資系戦略ファーム
・プロフェッショナルファームではクロスボーダー案件が増加。高まる英語の必要性
#03
・お酒の場で転職を決断。現在はマネージングディレクターに
・コンサルタントの成功パターン
・偶発性を大事にするキャリア


〈Profile〉
2000年、新卒で総合コンサルティングファームに入社。
IT領域の官公庁向けコンサルティングに従事。11年在籍しアナリストからシニアマネージャーに昇進。
2011年、外資系戦略コンサルティングファームに、シニアコンサルタントとして転職。日系企業の海外進出戦略、全社立て直し戦略の策定に従事。
2012年、フィナンシャルアドバイザリーファームにシニアマネージャーとして転職。
2019年現在、同社にてマネージングディレクター。

お酒の場で転職を決断。現在はマネージングディレクターに

—Xさんは、現在フィナンシャルアドバイザリーファームで、マネージングディレクター(以下、MD)をされています。外資系戦略ファームから現職に転職された経緯を伺えますか。

戦略ファームに転職して2年目の頃、新卒で入社した総合ファーム時代の先輩から、お酒の場で、現職の誘いを受けたのです。

その先輩は既に現職のフィナンシャルアドバイザリーファームに勤務されており、そこで担当しているプロジェクトをマネジメントできる人材が足りない、ということで私を誘っていただきました。

話を伺ってみると、そのプロジェクトは大企業の危機対応というスケールが大きく、また日本の役に立てると感じられる内容だったので、私は興味を持ち、「やってみたい」という回答をさせていただいたのです。

―先輩にヘッドハントされ、お酒の場で転職を決断したということですね。

そうなりますね。戦略ファームでの仕事も非常に楽しかったのですが、お誘いの魅力が勝りました。

結果として、シニアマネージャーの職位で現職に転職することになりました。

ただ、フィナンシャルアドバイザリーファームについてよく調べずに入ったため、入社後は非常に苦労しました(笑)。

フィナンシャルアドバイザリーファームは、基本的にM&Aと事業再生・危機管理の2つの領域を専門としています。しかし、会社の業務内容をよく知らずに転職したため、ゼロからキャッチアップすることになりました。

―業務内容を知らずに転職されたのは、凄いですね。

最初に誘われた案件は、M&Aとは関係がなかったので(笑)。後先よく考えずに飛び込んだら、想定外の苦労があったという形です。

最終的には、M&A領域の中でも自分ができそうな分野で案件を獲得することができるようになり、なんとかキャッチアップすることができました。それでも、M&Aについてゼロから勉強し、わからないことだらけの中で自分の戦い方を見つけるというのは、なかなか骨が折れるものです。

―そんな環境で、Xさんは更に職位を1つ上げて、MDに昇進されています。どのようなきっかけだったのでしょうか。

私のチームが育ち、売上が大きくなってきたからでしょうか。私が誘われた最初の案件は2年ほど続き、その後はずっとM&A領域のプロジェクトを担当していました。そうして数年経つ中で、チームメンバーも人数が増え、安定的にプロジェクトを獲得できるようになってきたことが大きいと考えています。 現在は、さらにチームを大きくすること、新たなサービスを開発することをミッションとして、日々奔走しています。

コンサルタントの成功パターン

―若手コンサルタントにとって、どの領域のプロジェクトに携わるか、というのはキャリア形成の上で非常に重要です。MDまで昇進されたXさんから見て、アドバイスはありますか。

私の経験に則して言えば、「プロジェクトは選ばない方がいい」と思います。この点に関しては様々な方を見てきました。中には「~のプロジェクトでなければやりたくない」という方もいます。

しかし、どんなプロジェクトでも学べることはあります。そもそも、若手の方の場合、プロジェクトを選り好みできるような身分ではないですよね。選り好みした結果、どのプロジェクトにもアサインされない人も何人も見てきました。

ディレクターになって感じるのは、コンサルタントの評価は「いかにお客様が自分のファンになってくれるか」で決まるということです。

ファンになったクライアントは仕事を依頼してくれます。世間にはコンサルタントが星の数ほどおり、その中で仕事を受注するには、クライアントが困った時・誰かに相談したい時に真っ先に顔を思い浮かべてもらえる存在になる必要があります。

それでは、クライアントがどんなコンサルタントのファンになるのかと言えば、それは「どんな内容でもとりあえず相談したくなる人」です。そんなコンサルタントになるには、自分の中に、いかに多くの引き出しを持つかが鍵になります。

多様なプロジェクト経験があり、様々なことを知っていて、各所にアンテナが立っている。 どんなことでも、顧客の相談相手になってアドバイスをすることできる。そういった方が、ファンを増やしていきます。

その場で全て解決する必要はありません。一時的にクライアントの相談相手になって、「恐らくそれはこういうことでしょう」、「今度~の専門家を連れてきましょう」という対応ができれば良いのです。

そのためには、アナリスト・コンサルタント時代に、様々なプロジェクトを選り好みせずに経験しておくことが大事になります。例えば事業再生領域の経験がない人が、事業再生について顧客の相談に乗れなかったら、仕事を得る機会を失うことになりますよね。

最初に様々な経験をして、自分の基礎・守備範囲を広く作っておく。その上で、マネージャーになり、自分の得意領域がでてくれば、自分の中で柱となるような領域を強化する。シニアマネージャーになったら、その「柱」を複数用意する。こうすれば、コンサルタントとして生きていきやすくなると、私は思います。

―ジェネラリストたることが、コンサルタントとして活躍する鍵になると。

1つのことを突き詰める、スペシャリスト型のキャリアも成功パターンとしてあるでしょう。特に、専門としている領域について、世間で非常に大きな需要があり、相談しにくるクライアントが絶えないという場合に、この成功パターンは成立します。

自分がスペシャリスト型なのか、ジェネラリスト型なのか、自分の適性を見極めるという意味でも、いきなりスペシャリスト型を目指すのではなく、最初は色々経験してみるのが良いと思います。

―MDになる方とならない方の差も、そういう経験値の幅の広さに出てくるのでしょうか。

少なくとも大きな要因の一つだと思います。コンサルティング業界で成功する要因は、究極的には「自分のクライアントをいかに作れるか」という人間臭い部分です。

弊社にも、長い間ずっとシニアマネージャーのままの方もいます。こうした方がなかなか昇進できない要因は、結局「仕事をつくる力」が足りないこと、ファンとなる顧客を持っていないことだと思います。

コンサルティングファームでパートナーやディレクターになると、サービス開発、組織運営に比重が置かれ、現場から離れてしまう寂しさがありますし、私自身、そもそもコンサルタントを続けるべきか迷いがあるため、どちらが幸せかはわかりません。

ただ、コンサルティングファーム内で昇進を続け、パートナーやディレクターになるためには、「自分の顧客を作る」ことが重要だと思います。

結局、私はあまり計画的にキャリアを考えずに、チャンスがあればそこに移る形で、自分のキャリアを歩んできました。

いわゆる「プランドハプンスタンス(※)」ですね。世の中には様々なチャンスが転がっているので、それをうまくつかんでいけば、明確なキャリアプランがなくとも、自ずとそれなりの立場になれると思います。

※プランドハプンスタンス(計画的偶発性理論):キャリアは偶然の出来事、予期せぬ出来事に対し、最善を尽くし対応することを積み重ねることで形成される、という理論のこと。


こういうキャリアの築き方をした私からすると、逆に若い内に自分の道を決めきってしまっている方は、もったいなく感じます。

偶発性を大事にするキャリア

―コンサルタントを続けるか迷っていらっしゃるのですね。

実は、日系大企業が新設しようとしている、子会社の立て直しをミッションとするポジションでの転職のお誘いを頂いており、そちらと迷っています。

―そういったお誘い、募集案件の紹介は他にもあるのでしょうか。

やはり、今の立場ですと、エージェントの方から紹介されるのはコンサルティング会社が多くなります。しかしコンサルティング会社に転職するのは、よほどの魅力がないと考えません。後はベンチャー企業のCxOも紹介されますね。

―これらの中で、日系大企業でのポジションに特に注目している理由は何でしょうか。

やはりそこは「人の面白さ」ですね。私が以前、戦略ファームに転職した際と同様の理由です。この事業会社のポジションはトップティアの外資系戦略ファーム出身者が多く、なかなか面白いなと思っています。

コンサルティング業界内でも昨年給与が1.5倍になるという破格の待遇でオファーを頂いていましたが、先方のトップの方と様々なお話をさせて頂いた末、断りました。「この方と一緒にやりたい」という意欲が湧き切らなかったのです。

―現在の転職の軸は、給料より、人の面白さということでしょうか。

そうですね。もちろん、お金は多いに越したことはないですが、きちんと成長していけば後からついてくるでしょう。

もっとも、「人の面白さ」だけでなく、今後のキャリアという危機感の面でも、転職を考え始めています。

現在の職責上、毎日のように様々な方の履歴書を拝見しています。そこで最近強く感じるのが、50代の転職希望者が非常に増えてきていることです。しかし、50代の方を採用するのは、現実にはなかなか難しい。

今の会社に最後まで残り、「骨を埋めます」という考え方であれば、転職を考えずに済むので楽でしょう。しかし、コンサルティング業界自体が将来どうなるかも不透明ですし、50代になっても路頭に迷わないよう、経験を広げておくべきかもしれない、と考えています。

これまでプロフェッショナルファームでキャリアを重ねてきたため今まで経験していないことは多々あり、事業会社側で意思決定することもその1つです。その意味で、事業会社への転職に興味を持っている部分もあります。

―ここから更に経験を広げられるのですね。

私も40代になり、随分長く働いてきたと感じるのですが、よく考えると、65歳まで働くとするとまだ折り返し地点にも来ていないことになります。ここから更に何をして生きていくべきか、難しいところです。

そんな中で思うのは、偶発的に機会を頂く中で、自分が今まで積み重ねてきたことを生かせたら良いな、ということです。今ちょうどお話を頂いていますし、ちょうど事業会社での意思決定の経験を積みたいと思っていたので、数年後にはコンサルティング業界とは全く違う場所にいるかもしれません。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

本作では、コンサルタントとして活躍されている方の特徴やX氏自身の今後のキャリア展望について語っていただきました。

3作を通じて、コンサルタンティングファーム内で昇進される方の特徴やキャリアの歩み方を理解することができたのではないでしょうか。また、X氏のように「人の面白さ」や「偶発性」を大事にされるキャリア観も非常に参考になるものだったと思います。

本コラムが、Liiga会員の皆さまのキャリア構築の一助となれば幸いです。

コラム作成者
Liiga編集部
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