大切なのは自らの市場価値を高めることー私はこうして総合商社へ転職した
2019/04/16
#転職で総合商社に入るには?
#日系メーカーから脱出する

はじめに

転職を検討していながら、業務内容の異なる他業界への転職へはなかなか踏み出せない、と感じているLiiga会員の方も多いのではないでしょうか。

今回インタビューを実施したのは、日系メーカーから総合商社へ転職された方です。日系メーカーから総合商社へと、業界を超えて転職を決意した背景を語っていただきました。

ぜひ、ご覧下さい。

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大切なのは「どの会社で働くか」より「自分が何をするか」

- 新卒でメーカーに入社された理由をお聞かせください。

正直、新卒の段階では働いた経験も無かったので、果たして働くことがどういうことなのか、あまりイメージもできませんでした。

一方で恐らく大事なのは、「どの会社で働くか」よりも「入社した会社で自分が何をするか」である、というようなことは思っていて、取りあえずどこかに入って、今後のことは働いてみてから考えよう、くらいに思っていました。

ですので、会社を選ぶ際は、とりあえずの軸で1. グローバル、2. 潰れない(技術力が高い等)、3. 働いている人の好さ、というものを持って色んな会社をみていました。

ただ、それらの条件が揃っている会社は正直いくらでもあるので、数多く選考を受けた中で最初に内定をいただけた会社に行こうと思い、結果あるメーカーへの入社を決めました。

- メーカーに入社されてからは、ご自身のキャリアについてどのように考えていたのですか。

メーカーに入社した当初は、転職せずにその会社で働き続けるかもしれないな、とは思っていました。

しかし、入社してから半年ほど働いているうちに、入社時に抱いていた様な働くことへの高揚感と、実際の業務内容の単調さや難しさとの間にギャップは感じていました。これは、漠然と転職を視野に入れるきっかけになったと思います。

入社から半年後には、複数の転職サイトに登録し、幅広い業界を転職先の候補としてチェックしていましたね(実際に転職したのはそれから数年後ですが)。

- 実際の業務に対して高揚感を感じられなかった、とのことですが、前職ではどのような業務を担当されていたのでしょうか。

入社して数年間はBtoB商材扱う事業部で、担当製品の事業計画、需給計画の立案及び遂行管理を行っていました。事業部の中とはいえ管理系の仕事で、マーケットとの距離もあり、手触り感やワクワク感がある感じではなかったですね。

需給管理の仕事自体は突き詰めれば実に奥が深い業務ではあるのですが、営業担当と製造担当に挟まれながら、殆ど目にしたことのない製品に数字を元に向き合い、正確にやってもなかなか感謝されることもない仕事だった様に思います。

その後、BtoC商材を扱う事業部に異動となり、担当製品の事業戦略と併せて、商品企画・マーケティングを担当しました。

異動先の上司は、マーケティングのスペシャリストで、その方と一緒に働いて、マーケティングの真髄、面白さに触れることができたことは自分にとって大きな経験でしたね。

マーケティングにはロジカル思考は勿論のこと、市場に製品の価値を認めてもらう上で人の感性に訴えかけるセンス、アイディア力が必要です。

その上司があまりにもやり手で、自分がマーケティングの世界を突き詰めて彼の様になれるのか、将来大成できるのか、少し不安になる程でした。

同時期に担当製品の事業戦略も担当していたのですが、事業戦略は数字の分析・立案が重要です。

マーケットが思わぬ動きをするのに比べると、数字は嘘をつきません。自分が食べていく糧として、数字のスキルを他の人と差別化が図れるレベルにまで持っていく方が、自分の場合良いのではと考えたりもしていました。

自分の価値を高められることを見極め、転職に至った

- 転職を決意するきっかけとなった出来事はあったのでしょうか。

それから数年経ってから、海外駐在の打診がありました。

普通であれば喜んでいくのかもしれませんが、私はやはり、どこで働くかよりも、自分が何をするのか、を一番に考えていました。

赴任先で担当する業務を想定すると、本社と海外支社の橋渡し役となり、レポーティング業務や事業計画の取りまとめ等に追われ、なかなか面白い仕事ができないというのが、印象としてあり、赴任していた先輩方の働きぶりを見ても、明るい未来ではないことは容易に想像できました。

むしろ、海外駐在をしてそうした環境に数年間身を置くことが、先々の人生が決まってしまいそうで(笑)、悪い様に触れてしまうリスクもあるように感じられたのです。

これが、転職を真剣に検討するようになったきっかけです。

- 転職活動に真剣に取り組むようになった、とのことですが具体的にどのような活動をしていたのでしょうか。

転職活動をすることのメリットは、自分の価値を客観的に判断できるようになることです。定点観測的に、転職エージェントと面談したり、会社説明会等に参加したりしていました。

転職を真剣に考えるようになってからは、知人を通じて興味をもった業界で働いている方とお会いするなど、様々な方とお話をするようにしていました。

- 転職先として総合商社を検討されたのはどのような理由からでしょうか?

興味をもつきっかけになったことの一つが、村上世彰さんの「生涯投資家」を読んだことです。「本来有効に活用されるべきお金を、お金を必要としている領域に投資することで有効活用していく」という事業投資の本質に、魅力を感じました。

事業投資をよりインパクトのある形で行っていくためには、やはり今後はIT、ICTの分野に携わっていくことは欠かせないだろうと考えていました。

職業軸としての事業投資、産業軸としてのICT、これらを思う存分やれる会社という軸で、転職先を探すようになりました。こうして転職先の選考を受けることにしました。

- 選考はどのように進められましたか?

一般的な新卒採用と恐らく差異はなく、Webで仮エントリーをした後、WebテストとESを経て、複数回の面接を受けました。期間にすると、約4ヶ月かかりましたね。

- 面接ではどのようなことを質問されましたか?

主に、前職での経験と、入社したら何を実現したいのか、について聞かれました。

単純ですが、私が面接で意識したのは、面接官の質問の背景をくみ取り、それに合わせた回答をきちんとすることです。

具体的には、企業が目指している方向と自分の目指している方向が合致していることを言葉でアピールするそのために会社のニュースや決算報告に目を凝らし、それらを面接時に話すストーリーと絡めていました。

需要の高さと専門性の高さが市場価値を決定付ける

- 転職する際に最も大切にしていた考え方などはありますか。

自分の市場価値を高める場所に身を置く、ということです。市場価値の高さは、需要と専門性の高さの掛け算で決まるはずで。

例えば、日本では英語ができることはある程度価値として認められている。理由は英語が市場で求められる場面が多いから。例えば、もし市場でスワヒリ語が高く求められていれば、私は英語ではなくスワヒリ語を勉強します。

みんなどこかで、市場価値を意識した意思決定をしているのだと思います。

一部の天才を除いて、人の能力に大きな差はない、と考えています。人によって変えられるのは、時間の使い方だけ。市場価値に差が生まれるのは、時間の配分によるものだけです。その時代に価値があるとされていことを見極めて、それにどれだけ時間を費やせるか。

市場価値を高めることに時間を費やせているか意識すること、転職活動で業界や企業を選ぶ際もこのことを大切にしていました。

- 現職ではどのような業務を担当なさっているのでしょうか。

私の所属する本部は、様々な業務の旧態依然とした部分をICTで変革していく機能貢献的な役割と、ICT独自で事業を生み出していく役割、の2つを担っています。

私は主にICTで新規事業を生み出す業務を担当しています。ただ現状は、他本部の事業投資で多くの利益をあげており、ICT独自の新規事業で利益をあげることが今後の課題かつ目標ですね。

- メーカーと商社、他業界を経験されたことで感じた業界の違いはありますか。

メーカーはプロダクトアウト、商社はマーケットインというビジネスクリエイションの違いでしょうか。

メーカーは自分の思いを形にし、形にしたものを世の中に価値として認めてもらい、広めて行くという試み。一方で商社は市場にどのようなニーズがあって、そのニーズを満たすために、必要なモノやサービスを創っていく、時には他社と連携する等の試みが求められます。

こうした業務上の観点の違いがあることで仕事に取り組む考え方や姿勢が変わります。この点で、他業界を経験することには面白さを感じますね。

- 今後、想定されているキャリアはありますか。

経営のプロを目指しています。どの会社も基本的に行っていることは3つで、お金を集め、投資して、利益をあげる、ということ。総合商社で行う事業投資は、担当業務次第で深さの違いはあるも、全てのプロセスに関わることができます。

メーカーでの業務は「利益をあげる」活動に特化し、中々全方位的な業務の仕方はできません。一方で、マーケットに近い所で価値を生み出すことを体験できた、という点でその会社で良い経験を積むことができたと感じています。

- ありがとうございます。最後になりますが、これから商社を志望する人に求められる素養とはどのようなものだとお考えでしょうか。

損益計算書や貸借対照表などを読めること、資金調達をはじめとして経営をある程度理解していることが求められるかと思います。

また総合商社の最近の傾向として、消費者にいかにアプローチして、価値を創造していくか、ということがトレンドかと思います。ですので、価値を生み出し、世の中に広めていくというマーケティングの素養も求められるようになると考えています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

本コラムでは、日系メーカーから業界を変えて総合商社へ転職された方のキャリア事例をご紹介しました。

市場価値を高めるための行動を常に心がける、という考え方が非常に印象的でした。

本コラムが皆さまのキャリア構築の一助となれば幸いです。

コラム作成者
Liiga編集部
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