「カバレッジ&プロダクト:2刀流に加え、任される裁量大」外資系ブティック型投資銀行の魅力と、転職実態に迫る(前編)
2019/08/21
#投資銀行から広がるキャリア

description

はじめに

現在投資銀行(IBD)にお勤めの方は、新卒で希望の会社に入社したものの、更なるキャリアステップを狙い、若くして「転職」をしたいと考えている人も少なくないのではないでしょうか。しかし、他のIBDに移ることや、日系から外資系にチャレンジするにあたり、転職することに不安を抱く方も多いことでしょう。

今回は、着実なキャリアステップを見据え、見事外資系のブティック型投資銀行に転職を果たしたCさんに、転職体験談を語って頂きました。

後編はこちら:https://liiga.me/columns/323



 【目次】
・転職理由は、少数精鋭のハウスで挑戦したいと考えたから
・外資系ブティックの良さは「オーナーシップ」。バルジブラケットは「重厚なチーム体制」
・「他社から自分がどう評価されるのかを試したかった」
・アソシエイトの面接は「即戦力になるか?」。MDの面接は「自分や会社と合うか?」

転職理由は、少数精鋭のハウスで挑戦したいと考えたから

ーーまずは、現在のご職業について教えてください。

外資系のブティック型投資銀行でM&Aアドバイザリーをしています。数年前に入社しました。前職では日系の証券会社でM&Aアドバイザリーを2年ほどしていました。

ーーM&Aには学生の頃から興味を持っていたのですか?

そうですね。学生の時に参加した投資銀行のインターンシップをきっかけに興味を抱きました。簡単なグループワークでしたが、M&Aに係る投資銀行での仕事内容が純粋に面白そうだと感じるようになり、自分で本を買って勉強したりしました。

そのため、「M&Aの現場に携わりたい」という明確な想いから新卒の時もIBDに向けて就職活動はしていました。

今振り返ると、転職の時より新卒の時の就活の方が大変でした。私は法学部出身でかつ経済・金融分野とは遠い分野の研究をしていたので、「なぜM&Aの現場に携わりたいか」といった説得力のある志望動機を学生時代の経験から導き出すことが大変でした。「インターンで面白いと思いました」といった本音をそのままストレートには話せないですし(笑)、学生時代の研究分野との関連性が低いからこそ、新卒の時はその点で苦労した記憶があります。

ーー志望企業に入社されたのに、今回なぜ転職を考えたのでしょうか?

いえ、前職に全く不満があったわけではありません。前職の会社に入った理由は「案件数が比較的多く、若手のうちから経験値を積むことができる」と考えていたからです。しかし当時、働き方改革が進み始めたこともあり、一人当たりにアサインされる案件数を制限する動きも現れ始め、将来的に経験不足になってしまうのではないかという懸念が出始めました。その懸念を払拭すべく次のアクションプランを検討していたところ、エージェントからの紹介もあり、次は前職とは異なる少数精鋭のハウスで挑戦したいという思いが芽生えました。アナリストとして一通りの所作は出来るようになったのではないかと当時は考えていたので、転職先でも過去の経験を活かすことが出来ると思い、最終的には転職に踏み込みました。

外資系ブティックの良さは「オーナーシップ」。バルジブラケットは「重厚なチーム体制」

ーー外資系ブティック型投資銀行に入社されてみて、ご感想はいかがですか?大手の投資銀行に入社する選択肢もありましたが。

入社前の期待通りでした。ブティックに魅力を感じた一番の理由は、個人の裁量・オーナーシップを持って仕事が出来るというところにあります。

バルジブラケットはきちんとMD・VP・アソシエイト・アナリストが全員しっかり揃い、アナリストはアソシエイトの指示を受けて仕事をする、といったようにある意味「重厚な組織体制」で仕事することが多いとも聞きます。チームアップがしっかりしているからこそ、業務執行にあたって、アナリストが直接MDから指示を受け、コミュニケーションを取る機会も少ないという話も聞きます。

それに対して、外資系ブティックは「少数チーム体制」です。MDとアナリストの2人でピッチの資料を作成するような場合は、アナリストでもMDから直接指示が飛んでくることもしばしばあります。チームにアソシエイトが不在の場合には、アナリストがアソシエイトのロールまで考えて動く必要がありますし、場合によっては自分のロールがタイトルに縛られず、ストレッチする機会が多いという点で良い組織だと思います。その点では、貪欲に何でもやっていきたいという人には向いていると思います。

ーーなるほど。他にブティックが良いと感じた点はありますか?

MDと一緒に、ジュニアのうちからクライアントへのプレゼンテーションにも積極的に参加できる点です。チーム体制のしっかりとしたバルジブラケットであればこのような機会は少ないのではないかと思います。しかし私の会社だと、「資料は君が作ったんだから、詳細は君が説明して良いよ」と言われることもあり、人前で資料の説明をする機会も十分に用意されています。

もちろん、社内に様々なバックグラウンドやカルチャーを持つ人がいて、M&A以外のプロダクトでも顧客との接点が存在し、収益機会が比較的多い点はバルジブラケットの良さだと思います。一方で外資系ブティックの良さは、少数チーム体制であるからこそオーナーシップをもって仕事が出来る事だと思います。つまり、常に誰かがサポートしてくれるという状況ではないからこそ、自身に与えられた仕事に対して責任を持ち、やり遂げる必要が常に存在します。

他に外資系ブティック型投資銀行の特徴的な点としては、組織が比較的小規模である分、人事評価は非常にクリアです。誰とでも一緒に働く機会があり、普段の仕事ぶりや日々のアウトプットを通じて、全員から定期的に評価を受けることができます。

ーー外資系ブティック型投資銀行に転職して、キャリアの考え方に何か変化はありましたか?

オリジネーションにおいても積極的にリード出来るようになりたいと思うようになりました。元々はエグゼキューション・バンカーとして経験を重ねていきたいとも思っていましたが、そもそもマンデートを獲得できないことには収益には直結しないため、如何にマンデートを獲得していくかについても、案件を成功裏にクローズさせることに加えて重要だと考えるようになりました。

日系の証券会社や大手のバルジブラケットでは日本市場でのプレゼンスも高く、いわゆる“会社の看板”でマンデートを獲得することも可能となる局面も恐らくあるかと思います。

一方で外資系ブティック型投資銀行の場合、本社を構える欧米圏に比して、日本市場での知名度及びプレゼンスは日系・外資大手には一段劣ると認識しています。それでもマンデートを獲得するには、きちんと提案先の戦略や細かなニーズを理解し、限られたリソースの中でどのように効率的に攻めていくかを考え、提案先にとって意味のある営業活動を重ねることで、最終的には提案先からBC(ビューティーコンテスト)にも招聘してもらえるほどに信頼を得ることが重要です。

したがって、最終的なマンデート獲得までのストーリーを描きながら、積極的にオリジネーションにも参加することが、バンカーとしての将来を考えた際には重要だと考えております。

また、これはオリジネーションの醍醐味にも関係する話ではありますが、実際に、前職ではあまり経験することの無かったオリジネーションのサポートに参加し、提案を続けてきた案件のマンデートが獲得できたときには非常に嬉しかった記憶があります。チームで考えた提案内容をクライアントに評価してもらい、その結果としてマンデートを獲得し、そしてその案件をチームで無事成功に導いた経験は何物にも代えがたい喜びでした。

「他社から自分がどう評価されるのかを試したかった」

ーー初めての転職活動になりますが、具体的に転職活動はどのように進めたのでしょうか?

本格的に転職活動を始めてから3か月程で今の会社からオファーを頂き、転職が成立しました。

用いたツールは、エージェントだけです。エージェントの方に面接の質問傾向や対策方法について伺い、事前準備を徹底してきました。他に職務経歴書(CV)を提出する時にも、エージェントの方に内容を添削して頂き、適宜加筆修正しました。

また、他のツールとしては、LinkedInというSNSを見ていました。転職エージェントから連絡が来ることもあるので、転職市場のアップデートの情報源としてメッセンジャーで連絡を取っていました。

ーーエージェントの方とはどのようにして知り合いましたか?

転職準備期に、あるエージェントの方とLiiga経由でお会いしました。彼がとても業界の転職市場にも詳しく、親身になって相談を受けて頂いたので、Liigaのサービスを気に入り、更に話を聞くようになりました。

前述の通り、元々は前職でM&Aのアドバイザリーをやっていたので、転職しても同じ仕事を続け、エグゼキューション・バンカーとして経験を積みたいという想いが当時は強く、また、前職で働く中で、「前職の経験が同業他社で働く人からどのように映るのか」と、自分の外形的な評価を知りたいとも考えておりました。そこでエージェントである彼から外資系でM&A専業のブティック型投資銀行の案件の紹介を受け、当時の自分のキャリア志向ともマッチすると考え、話を聞くことにしました。

後ほど、別のハウスを受ける際にもう1人のエージェントにお会いし、別の外資系ブティック型投資銀行も薦めて頂きました。転職活動においてはこの2人のエージェントの方だけに会わせて頂き、推薦された数社の選考だけ受けました。

ーー転職で実際に受けようと考えたのは、その外資系M&A専業のブティックの数社だけだったのですか?

そうですね。もし他に大手のバルジブラケットで、カバレッジとプロダクトで明確にロールが分かれている会社での募集があれば、そこも検討しようかと思っておりました。

しかし、現職の外資系ブティック型投資銀行からオファーを先に頂いたこともあり、そこに入社することを決めました。今のハウスのオファーを持ちながら他のハウスを受けるという手もありましたが、現職は私の前職での経験を評価してくれているという感触があり、かつ面接でお会いした方とのカルチャーもフィットすると思ったので、オファーレターの承諾に至りました。

アソシエイトの面接は「即戦力になるか?」。MDの面接は「自分や会社と合うか?」

ーー受けたその数社の外資系ブティックですが、中途選考は具体的にどのように進みましたか?

まず現職のハウスとは別のハウスの選考を先に受けさせて頂きました。

現職及び別のブティックにも共通した選考フローですが、全体的な流れとしては、最初に若手のアソシエイト数人と面接し、面接を重ねるごとにタイトルが上がるといったものです。最終的にMDまで面接が進みます。私の時には海外支社メンバーとの面接は無く、東京オフィスのメンバーだけの面接でした。

私が入社した外資系ブティック型投資銀行は、面接の人数はアソシエイト数人、VP数人、ディレクター数人、MD数人、計10人前後でした。アナリスト以外の全タイトルの方と面接したことになります。

ーー面接ではどのようなことを聞かれるのですか?

最初はアソシエイトが、「即戦力になるか」を主に確かめてきます。未経験者には細かな知識を問うことはあまり無いかもしれませんが、経験者の場合、会計やコーポレートファイナンスなどの基本的な知識があるかどうかを口頭で確認してきます。例えば、「自分を提案先の経営企画部の者だと思って、加重平均資本コスト(WACC)を分かりやすく説明してみて」と実際に聞かれることもありました。私がこの質問に対して回答の説明をすると、さらに回答に対する追加質問を受け、面接官が満足するまで議論を続けました。

また、どのハウスもプレッシャーを与えてくる人が多かったように感じます。実際の業務でも、負荷のかかる場面が多く存在するので、そのような場合でも、冷静かつ落ち着いた受け答えができるかどうかを試しているのかもしれないと、入社した今となっては考えております。とはいえ、業界的には短気な方も多いので、意図的にプレッシャーを与えているのではなく、個人の性格によるところもあるのかもしれません。(苦笑)

ーー「知識はあるが気の弱い人」と「気は強いが知識の足りない人」、どちらが採用されやすいと思いますか?

後者ではないでしょうか。知識はキャッチアップする気概さえあれば、実務レベルにまで達することは可能だと思います。

但し、採用するタイトルによっては知識や経験が不可欠になることもあると思います。例えば、アナリストであればキャッチアップする気概と責任を持って仕事を完遂するマインドセットさえあれば、入社時に知識や経験が足りなくても比較的問題は無いと個人的には思っております。一方、アソシエイト以上のタイトルともなれば、採用に求める条件もアナリストに比して当然厳しくなるものと想定されますので、知識や経験はより必須になるものと考えております。

ーー他にも選考で印象に残っていることはありますか?

他に印象に残っているのは、特に上のタイトルの方との面接になればなるほど、知識を問うテクニカルな質問ではなく、「漠とした、自身の考え方を問う質問」が多いと感じました。例えば「ブティック型投資銀行についてどう思う?」といったような質問です。

テクニカルなスキルの部分は、アソシエイト等との面接で確認しているので、上のタイトルの方は、候補者の考え方を問う質問を通じて、「会社と合うかどうか」、「自分の部下として合うかどうか」というカルチャーフィットを試していると推測します。

ーー「ブティック型投資銀行についてどう思う?」これにはどう答えましたか?

面接の際の質疑応答でも理解を深めた「ブティックがどのようにマンデートを獲得しているのか」について中心に話しました。日系・外資系の大手の証券会社では、会社そのもののプレゼンス等を通じて、また銀行系の証券会社ではグループのリレーションでもマンデートを獲得できる機会が存在するのに対して、外資系ブティック型投資銀行では不断の営業努力なくしてマンデートの獲得は難しいと理解していたので、その点では前職の日系の証券会社とは全く環境が異なる、という話を面接でしました。

ーー他に選考の特徴として注意しておくべきことはありますか?

外資系ブティックに限らずバルジブラケットの面接にも通ずるとは思いますが、英語面接は必ずあると考えた方が良いです。英語面接の質問内容はハウスや人によって様々でした。

前職において私が最近携わった案件とそこでの私のロールについて英語で質問してきた方もいれば、一方で、趣味や住んでいる場所、又は今日どうやってここまで来たか、などの簡単な日常会話をした方もいました。候補者の英語レベルによって質問内容も変わる可能性もあると思います。

後編に続く)

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。