キャリアは描くものではなく、動き・考え続けながら、繋げていくもの
2019/08/30
#戦略コンサルで身につくスキル

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一昔前と比べると、コンサルタントに求められるキャリアやスキルに変化が見られる。消費財、中でもアパレル業界において、存在感を放つローランド・ベルガーのパートナーである福田稔氏に、自身の歩みを振り返ってもらいながら、今、これからのコンサルタントに必要なスキル、そこから見えてくるキャリア論について語ってもらった。

〈Profile〉
福田稔(ふくだ・みのる)株式会社ローランド・ベルガー パートナー
麻布中・高を経て慶應義塾大学商学部卒業
欧州IESEビジネススクール経営学修士(MBA)、米国ノースウェスタン大学ケロッグビジネススクールMBA exchange program修了
株式会社電通国際情報サービス(ISID)にてシステムデザインやソフトウェア企画に従事した後、2007年ローランド・ベルガーに参画。 消費財、小売、ファッション、化粧品、インターネットサービスなどのライフスタイル領域を中心に、成長戦略、デジタル戦略、グローバル戦略、ビジョン策定など様々なコンサルティングを手掛ける。ローランド・ベルガー東京オフィスの消費財・流通プラクティスのリーダー。
経済産業省「服づくり4.0」をプロデュースし、2017 57th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS「クリエイティブイノベーション部門」ACCゴールド受賞。同省主催の「若手デザイナー支援コンソーシアム」にも参画するなど、政策面からのアパレル業界に対する支援も実施。
また、プライベートエクイティファンドの支援を通じた消費財・小売企業に対する投資・再生支援実績は業界トップクラス。
シタテル株式会社の社外取締役や株式会社IMCFの戦略アドバイザーを務めるなど、業界の革新を促すスタートアップに対する支援も行っている。
近著に「2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日」。

やりたいこと、社会の情勢や潮流から見える必要なスキル

――まずは福田様のこれまでの歩みをお聞かせ願えますか。

もともとはファッションやプロダクトデザインに興味を持っていて、高校生のころは将来デザイナーになりたいと思っていました。そこで当時憧れていたデザイナー、コム・デ・ギャルソンの川久保玲氏、ヨージ・ヤマモトの山本耀司氏の出身校である慶應義塾大学に進学しました。大学でマーケティングを学ぶと同時に、途中1年間休学してデザインの勉強をしながら、昼間は実際にセレクトショップで働く。そんな生活を送っていました。

ただしばらく続けていると、デザインで食べていくことが自分には難しそうだと、考えるようになりました。またそのころは、堀江貴文さんをはじめとするITベンチャーが世に出始めていた、いわゆるIT起業ブーム。その波に乗り、私も仲間とITサービスで学生起業を果たします。しかしデザインに続き、ITビジネスでもうまくいきませんでした。

ビジネスモデル自体は悪くなかったのですが、失敗要因は技術力の低さでした。そこでこれからの時代に必要なスキルはIT関連の技術力だと思い、大学卒業後は当時技術力の高さに定評のあったIT企業にエンジニアとして入社しました。システムの要件定義や設計、実際にプログラムを書くなどの業務を通じて、同領域におけるスキルを高めていきました。

――キャリアスタートはエンジニアであったと。

ええ。ただ最初の会社で5年ほど働いたころ、大学時代にあれほど好調だったITスタートアップが、次々と表舞台から姿を消していきました。いわゆるITバブル崩壊とライブドアショックです。そこで私は改めて自分のキャリアを再考します。

「このままデジタルを極めていってもよいのか」と。そうして出た結論が、ビジネスモデルに対する深い知識や考える力を養うことでした。そしてそれができるのは、戦略コンサルティングファームだろうと。こうして私は、コンサルタントとしてのキャリアをスタートさせることになります。

今回、改めて自分のキャリアを振り返ると、今の優秀な学生のように、就活に際し明確なキャリアデザインをするタイプではありませんでしたし、実際にしてもいませんでした。その時々でやりたいこと、社会の情勢や潮流から見える必要なスキルなどを深く追求し、実際に現場で経験した上でキャリアを繋いでいったと思います。

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目の前のことに邁進する先に、必要なスキル、次のキャリアが見えてくる

明確なキャリアデザインがあったわけではありませんが、自分の中で譲れない指針はありました。自由と多様性です。

コンサルファームへの転職を考えた私は、どのファームにするか、実際にファームで働いている友人などにも相談しながら、検討しました。すると、ファームごとの特徴が見えてきました。具体的には、欧州系・米系の違いです。

ご存知の方も多いと思いますが、本国の力が強く、日本オフィスはどうしても本国の意向を反映しやすいコンサルティングファームもあります。 一方、ローランド・ベルガーはドイツが本社ですが、ヘッドクオーターの力はそれほど強くありません。というより、意図的に各国のオフィスに自治権を持たせ、自由に働ける環境にしています。ローカルオフィスやコンサルタントひとりひとりの多様性を尊重し、自己責任のもと自由に働ける組織文化が、ローランド・ベルガーにはあります。

もうひとつのポイントは、顧客ポートフォリオの多様性です。ある程度経験を積んでいくと、どうしても特定領域の業務が多くなりがちなコンサルティングファームもあります。一方、ローランド・ベルガーの日本法人は100名ほどの規模感ということもあり、特定領域での強みを持ちながらも、マルチなプロジェクトにアサインできます。実際私はこれまでのキャリアで、多様な顧客・業界・プロジェクトに多く携わってきました。

――コンサルタントになってからも、特に明確なキャリアは描かなかったのですか?

そうですね、変わらなかったと思います。現在の世の中は、VUCAの時代と呼ばれています。環境が連続的に変化し先が読みづらい。そのような社会では長期的なキャリアを考えすぎることは得策ではありません。まずは目の前のプロジェクトに全力でコミットし、どうしたらクライアントに最大限のバリューを提供できるか。

そして、物事の本質を捉える力、深く考える力を身につけるか。このことしか、考えていませんでした。

またそのような姿勢でビジネスにコミットしていると、これまでのキャリアと同様、再び自分に足りないスキルが見えてもきました。

――どのようなスキルだったのでしょう。

グローバル力です。具体的には、英語力、多様なバックグラウンドを持つ人たちとのコミュニケーション力です。ポジションもそれなりに上がり、国内のクライアントに対してはそれなりのバリューが出せるようになっていました。一方で、海外案件の場合は、どうしてもうまくいかなかった。そしてローランド・ベルガーは海外案件が多いファームでもありました。

そこで同スキルを身につけようと、留学支援制度を活用して海外へのMBA留学を決意。ローランド・ベルガーに入社してから4年、マネージャーというポジションでの決断でした。

留学先を選ぶ際にも先の多様性を重視し、スペイン・バルセロナにあるIESEビジネススクール経営学修士(MBA)に決めました。同校は最大のマジョリティであるスペイン人でも比率が2割以下に抑えられた欧州のトップスクールで、世界55国から多様な学生が集まっていたからです。

IESEを選んだのは他にも理由がありました。「就職」ではなく、「学び」にフォーカスしたアカデミックなビジネススクールという点です。実際入ってみると毎日がめちゃくちゃハードで、落第している同級生もいるほどでした。

――IESEではどのようなスキルが身につきましたか。

毎日ひたすら、ケーススタディ漬けでした。1日3本。準備だけで1本あたり3時間は必要でしたから、予習に要する時間は約9時間。私はさらにオプションでスペイン語も学んでいたため、毎日の睡眠時間は4時間ほど。正直、自分に力がついていっているのかどうか、考える隙もないほどハードな毎日でした。これだけケースをやると、ビジネスの難しい局面で、「論理」ではなく瞬時にものごとを判断できる「直感力」を養うことができます。

毎日のケーススタディに没頭していると、また新たな足りないスキルが見えてきました。英語力です。IESEにはアメリカ人、イギリス人、カナダ人、スコットランド人など英語をネイティブとする人も多く集まっているのですが、ネイティブ同士の会話についていけなかったからです。各国ごとに異なる英語の特徴、いわゆる訛りを理解できていなからでした。

そこで留学後半は英語力を高めるために、アメリカのノースウェスタン大学ケロッグビジネススクールに、exchange programという制度を利用し留学しました。

――英語力は高まりましたか?

そうですね。ただ、英語力以上にあるものを得ました。それは、語学のスキルはもちろん必要だけれども、相手からの評価は結局、議論の中身や人間性だということです。いくら英語力が高くても、しっかりと議論できていなかったり、人間として尊敬されなくてはダメだと。大きな気づきでした。

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本物のバリューを提供するには業界全体を変える必要がある

ローランド・ベルガーには他のファームにはないユニークな制度があります。スタートアップへの支援です。具体的にはアドバイザーという形で、創業者に対してメンター的な役割を担ったり、ベンチャーキャピタル(VC)や大企業との提携・折衝などをサポート。本業にシナジーがあることが前提ですが、柔軟に副業が可能なのです。

私は先に申し上げた通り、起業、スタートアップへの関心がもともと高いですから、帰国後は伝統的な企業へのコンサルティングと平行として、スタートアップのアドバイザー業務も開始。すると、あることが見えてきました。

――それは何でしょう。

日本の伝統的な企業が本当の意味でイノベーションを起こすには、その企業に対するコンサルティングだけでは不十分だということです。たとえばスタートアップのDNAを取り入れるとか。あるいは、イノベーションを興せる人材を送り込むといった具合です。

もっと言えば、スタートアップのアセットだけでも不十分で、プライベート・エクイティ・(PE)ファンドやベンチャーキャピタル、ときには政府などの力も必要だと、徐々に分かっていきました。

複数の業界というマクロな視座で見たときに考えられる、あらゆる横軸の領域や組織にコミットメントし、各領域が持つスキルを学んだり、ネットワークを築く。業界全体の構造的な課題を発見し、その問題解決を行うことで、はじめて本物のバリューやインパクトが起こせるのだと。そしてそのような経験やスキルを磨くことが、結果として業界全体のイノベーションにも通じ、日本経済全体にも寄与していくのだと。

このことに気づいてからは、積極的に横の動きを展開しました。デザイナーとスタートアップと繊維業界との連携プロジェクト。経済産業省のデジタルプロジェクト「服づくり4.0」。PEファンドを積極的に活用することで、業界内で困っている企業に手を差し伸べるプロジェクトなど。あるいは今回お伝えしてきたような内容を、メディアを活用し発信することで、業界関係者全員に対して啓蒙を行う、といった具合です。2019年6月に著書「2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日」(東洋経済新報社)を出版したのもその一環です。

気づけば、従来の伝統的なクライアント、スタートアップのアドバイザー、政府関連の事案、PEやVCなどファンド関連のプロジェクト、メディアと関わる領域も広がっていました。アパレル、消費財という業界において5つの領域でさまざまな活動に取り組むと同時に、業界全体という視座や観点でも個々のプロジェクトに携わるにようになっていきました。

業界全体に働きかけるという観点では、起業よりも現在のポジションのほうが、より大きなインパクトを生み出せると思います。

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正解もゴールもない。多動し、常にアップデートし続けることが重要

――つまり結果として、気づいたらマルチなキャリアを築いていたと。

ええ。気づけば、私は、アパレル、化粧品、リテールをはじめとする複数の消費財領域において幅広い知識やネットワークを築いて、海外も含めたコンサルティングやスタートアップの支援など複数の仕事を同時に進めてきました。この同時にアジャイルに物事を進めていくことのできる力が、コンサルタントに限らず、これからのビジネスパーソンに求められるスキルなのではないのか。そう、感じるにようになっていきました。

ピンと来るのは、堀江さんが度々おっしゃっている「多動力」です。この多動力こそ、これからのキャリアデザインにおいて重要なポイントなのではないかと。実際、私も多動することで、繰り返しになりますが、各領域の技術や人材を知ることができましたからね。さらに言えば多動するからこそ、各領域で得た点と点が、業界全体という面で繋がることが何度もありました。

動く領域は人それぞれ違いますから、身につけていくスキルや構築していくキャリアも、一人ひとりが異なる、ユニークなものになっていくでしょう。従来のように有名大学から大手コンサルティングファームに就職し、特定分野で専門家になるといった画一的なものではなく、もっと個人のエンパワーメントによるということです。

逆の言い方をすれば、画一的ではない、ユニークなスキル・キャリアを持っていれば、会社のブランド力やポジションに関係なく、仕事は舞い込んでくると。

実は今お話ししたことを、クライアントへのバリューはもちろんですが、今回のテーマである自身のキャリアという観点で考えたときに、私はプリンシパルのころに気づきました。そしてこれまで申し上げた通り実践してきました。その結果、手前味噌になりますが、アパレル、リテール、消費財関連のファンド案件などでは、特に自分から営業することなく、指名で仕事が来るようになっています。

またこのような状況は、ローランド・ベルガーの他のパートナーを見ていても明白です。各人が異なるマルチなキャリアを持っていますが、それぞれの領域で確固たる存在感を放っています。大手コンサルティングファームにいるから、上のポジションにいるから、会社の名前やポジションで仕事が来るような時代ではないのです。

ですから私はこれからも、多動ならびに学びを止めるつもりはありません。この先も私なりのユニークなキャリアを築いていくにはさらなるアップデートが必要だと考えています。

何かを変えたい、変わりたい。このような気持ちを行動に移し、日々アップデートして繋げていくことで結果として、新たなキャリアとなっている。つまりキャリアには正解もゴールもないのです。

日々アップデートし続ける精神は、創業者であり名誉会長ローランド・ベルガーの信条「常にリスクをとってチャレンジして成長する」というアントレプレナーシップそのものでもあります。このようなチャレンジングな環境だからこそ、多動力が重要だと言っておきながら、私はローランド・ベルガーに居続けるのでしょうね。

コラム作成者
Liiga編集部
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