「M&Aブティックには新卒ではなく中途で行け」外資系ブティック型投資銀行の魅力と、転職実態に迫る(後編)
2019/08/29
#投資銀行につながるキャリア
#投資銀行に転職しました
#投資銀行の選考対策で大事なこと

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前編では、外資系ブティック型投資銀行への転職に成功したCさんの転職動機や転職活動の進め方、面接の実態について迫り、外資系ブティック型投資銀行について感じた特徴もお話して頂きました。後編では面接対策からキャリアビジョン、更にこれから外資系IBD転職を考えている方へのアドバイスも語って頂きました。

前編:https://liiga.me/columns/314



【目次】
・面接対策のカギは、想定問答をIBD経験者に見てもらうこと
・M&Aがやりたくてブティックを選んだ先に、M&Aだけでいいのか?と思えてきた
・外資系IBDに行きたい人は「FAS転職」か「IBDへの社内異動」を挟め
・編集後記

面接対策のカギは、想定問答をIBD経験者に見てもらうこと

ーー今回、外資系投資銀行を受けるにあたってどのような対策をされましたか?

志望動機を始め「想定問答」をテキスト化して準備し、それをエージェントの方に見てもらいました。またエージェントの方以外では、前職場の上司で外資系IBDに転職した知り合いにも、想定問答の答えを確認してもらいました。実際に働いている方に見てもらい、その人がどう思うかを参考にしたことは有効だったと思います。

CVもエージェントの方に見て頂きました。CVはそもそもエージェント経由で提出すれば良いと思います。エージェントの方が見て、「これなら大丈夫そう」と判断できる水準まで加筆修正してで提出しました。

これらの準備にかけた時間は1か月程度です。準備を完了してから面接に臨みました。

ーーなるほど。1カ月の準備期間の間は、1日あたりどれくらいの時間を準備に割きましたか?

1日あたりでいうとそこまで時間を割いてはいなかったです。ただ、普段から「転職してどう活躍したいか・どのような貢献が出来るか」は考えていたので、それを「どう伝えるか」を中心に、エージェントの方に見て頂いていました。

また英語面接の対策も、実は私は特別に対策をしたわけではありません。留学の経験もないですが、もともと苦手ではなかったです。いわゆる、学校の試験は点がとれるタイプの方でした(笑)。加えて前職において、クロスボーダー案件で英語を使っていたので、その経験も活かして英語面接の準備もスムーズに出来たかと思います。 但し、外資系ブティックに入社して働き、日常的に英語を使うようになった今になって見返すと、少々恥ずかしい英語だったとは思います。だからこそ万全を期して面接対策を行うという意味では、本番の面接の前に、英語面接の想定問答の完成度もエージェントの方などに見てもらうと、より安心して面接に臨めると思います。

M&Aがやりたくてブティックを選んだ先に、M&Aだけでいいのか?と思えてきた

ーー周囲で、中途でご入社される方の特徴や共通点はございますでしょうか?

ジュニアの方の外形的特徴として、日系証券IBD出身やFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)出身の方、元銀行員などの金融業界のバックグラウンドの方が多いです。総合商社の方もいますが、そういう方も商社で事業投資に携わっていた方など、M&Aの領域に何かしら関連した経験のある人ばかりです。ブティック型投資銀行の仕事と全く関係ないバックグラウンドの方は、私の知る限りでは殆どいないと認識しています。

ーー退社後は、皆様どのようなキャリアを歩む傾向にあるのでしょうか?

人それぞれですが、比較的現職と関連したキャリアを歩む傾向がありますね。 MDのような上のポジションの方が辞めるときは、事業会社の経営企画ポジションに行ったり、別のバルジに行く人もいます。あとはアソシエイトなど下のポジションの方ですと更に様々です。留学に行く方もいます。

ーーそれでは、ご自身は今後どういうキャリアを歩みたいですか。

現職には満足していますが、一方でこれまでM&A一本でやってきて、M&Aだけで案件を獲得することの難しさも感じるようになりました。外資系ブティック型投資銀行ではお客様との提案活動での接点は、基本的にはM&A機会の提案のみであり、ファイナンスやIPOの提案活動を行うことはありません。提案できるプロダクトが限定されていることもあり、外資系ブティック型投資銀行では他社に比してお客様との接点は相対的に小さいがゆえに、M&A一本でも他社に遜色のない提案活動を継続して行う必要があるというのを感じることもあります。

もともとM&Aに引き続き携わっていきたいというキャリア志向もありましたが、将来的に自分がバンカーとして案件獲得に努める上で、「M&Aだけでいいのか?」とも思うようになりました。将来もし機会があるのなら、バルジ・ブラケットで他のプロダクトとの接点を持ちながら働き、他のプロダクトの知見を深めることも選択肢の一つと考えております。

ーー他のプロダクトを扱いたいと仰っていましたが、最終目標はどこに置いていますか?

最終目標は「継続的に案件を獲得するバンカーになること」です。活躍するMDは、案件獲得のために様々なアングルを持って提案活動を行っており、過去のアドバイザーとしての経験も寄与し特定の顧客からの信頼も得ている、という共通の特徴があると感じています。私自身も業界で活躍していくために、そのような提案力を身に着け、特定の顧客がカバーできるバンカーになることを最終目標に置いています。そうなるためにも、M&Aに限らずプロダクトの知識の引き出しは多い方が良いのではないかとも思っています。

外資系IBDに行きたい人は「FAS転職」か「IBDへの社内異動」を挟め

ーーここからは外資系IBDの目指し方について、現職のパターン別に色々お伺いします。まず、「現在日系IBDにいる方」は外資系IBDへの転職に向けて、どんな対策をしたほうがいいでしょうか?

まずは基礎的な対策をすべきです。コーポレートファイナンスや会計の知識など、業務に必要な一通りの基礎知識を身に着けているかどうかはジュニアの採用では重要になると思います。私も面接の前には、知識に漏れや間違いが無いかなどを念の為確認しました。

加えて、説得力のある志望動機も重要です。「なぜM&Aブティックなのか」をきちんと説明でき、相手を納得させることが求められます。概ね面接は志望動機から入るので、面接の導入としても重要です。私の場合、もともと業務でM&Aに携わっていたものの、少数精鋭のブティックとは異なる環境で働いていたこともあり、「少数精鋭の環境で、M&Aの領域で継続して経験を積んで行きたい」という想いは選考を通じて面接官にも納得感を持ってもらったのではないかと思います。

また、どのファームがどの業界や企業に強いのかを事前に知っておくことも面接対策の一助になると思います。過去にそのファームがアドバイザーとして携わった案件を一通りチェックすることで、そのファームが得意とする業界や親密な関係にあるクライアントが見えてくることもあると思います。

ーー続けて、「現在証券会社のリテール部門にいる方」のパターンをお伺いします。リテール部門から外資系投資銀行のIBD部門に転職するにはどういうキャリアを歩むのが良いと考えますか?

第二新卒のポテンシャルを活かして、FASに転職するか、IBD部門への社内異動を早めに狙うのが良いのではないかと思います。その後で外資系投資銀行に転職するのが自然な流れかと思います。

転職で、リテール部門から外資系IBDへストレートに進むのはなかなか難しいのではないかと考えています。新卒に比して即戦力となる人材を求めている募集側の立場を考えると、募集ポジションに競合してくる他の応募者と比較した際には、当然に「より経験のある候補者を採用したい」というインセンティブが働くものと考えられます。ゆえに、IBDやFASなどのバックグラウンドがあった方が、即戦力としてはより魅力的に映るものと考えられます。だからこそ、「自分も経験者です」と言えるようになることが転職への近道にもなると考えています。

特にブティック型投資銀行は比較的人数が少なく新卒採用も限定的であるため、未経験の方を育てるノウハウが十分に蓄積されていないと思われる点でも、経験者の方の採用が圧倒的に多いと思われます。

ーーなるほど。それでは今仰られた「リテールからIBDへの社内異動を狙う」には、どのようなステップを踏むのが良いでしょうか?

客観的に見て、社内異動において希望の部署へ行くには「今の仕事で良い評価をされること」が重要です。例えば、証券リテールにいる方の場合、現職で良い営業成績を残している、などです。その上で、社内異動でも転職でも、「君を採用したときのメリットは何か」を明確化し、異動先にとっても「来てくれたら嬉しいね」と思わせることが大切だと思います。

異動の際に、証券リテールにいる方の場合、現実的にはプロダクトのポジションではなくカバレッジのポジションへの異動を狙うのが堅実だと思います。

「リテールで営業業務は一通りこなし、中小企業への営業も経験してきたので、対法人の営業もできますよ。実際に所属部署ではこういう突出した実績も残しているので、この強みを貴部署でも活かせます」というファクトを語っていくと、異動受け入れ先にメリットを感じさせられると思います。

勿論、プロダクトへの異動の可能性を否定するものではありませんが、営業経験をより効果的にアピールしやすいという点ではカバレッジのポジションへの異動の方がより可能性が高いものと考えております。

ーー外資系IBDではなく他の日系IBDへの転職のパターンでも、リテール出身の方がストレートに転職する事は難しいのでしょうか?

基本的に難しいと考えるべきと思っております。私が知る限りで前職の日系IBDに中途で入社してくる方は、主に外資系IBDからの転職者や監査経験のある会計士やFASなどのIBD業務に一定の関連性がある方が殆どでした。未経験者はかなり珍しいと認識しています。

だからこそ、現在金融業界にいる方でIBDは未経験という方の場合は、転職で日系IBDを狙うよりは、社内異動で日系IBDを狙う方が可能性が高いと私は思います。前職でも社内公募の制度を利用してIBD部門に移ることに成功した人は複数名いらっしゃいました。

ーー最後の質問になりますが、M&Aブティックに入社するには新卒と中途、どちらから入った方がよいと思いますか?

私個人の意見になりますが、中途から入った方が良いと思います。なぜなら、前述の通り、外資系ブティック型投資銀行の多くは新卒を育てるノウハウを十分に備えていないのではないかと考えるからです。

私は前職を新卒で選んで良かったと感じています。その理由は、研修が充実しており、何も知らない未経験者でも、ある程度のレベルには達することが可能であるからです。コーポレートファイナンス、Excelのモデリング、パワーポイントなど、一通りの業務基礎については研修の機会が与えられます。

外資系ブティック型投資銀行は比較的リソースが多いというわけではありませんので、充実した研修を準備することも難しく、早期にOJTで業務基礎を身に着ける形になるものと思われます。それならば、バルジブラケットや日系IBDに新卒で入社して、きちんと基礎を固めてから、中途でブティック型投資銀行を目指す方が望ましいものと考えております。

編集後記

Cさんのお話を伺い、ブティック型投資銀行の転職成功の鍵は、「なぜM&Aのプロダクトがやりたいのか」「なぜ外資系ブティックハウスなのか」を明確にすること、そしてまとめた内容をエージェントやIBD経験者に見てもらい「伝え方を磨くこと」、であると感じました。

外資系ブティック型投資銀行に転職したことにより、バンカーとしての「新しい挑戦分野」や「将来像」が明確になったと活き活きと語るCさんの姿が、とても印象的でした。外資系ブティック型投資銀行への挑戦がCさんのバンカーとしての成長を大いに促進したのでしょう。

Cさんのアドバイスが外資系IBDへの転職を考えている方々に参考となれば幸いです。

コラム作成者
Liiga編集部
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