途方もなく優秀な人たちに「ロジカルじゃない」と言われ続けたからこそ見えた”自分ならではの価値”
2019/12/26
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日本のプライベート・エクイティ(PE)投資の黎明期から市場を創出してきたアドバンテッジパートナーズは、難易度の高いプロジェクトにもチャレンジする事に起因してか、業界内でも人材レベルが群を抜いて高いことで知られている。今回は、同社のOBであり、現在は個人のスキルを売買できるフリーマーケット「ココナラ」を立ち上げ、代表取締役として会社を成長させ続けている南章行氏に話を聞いた。アドバンテッジパートナーズに入社した理由やそこで得られたかけがえのない気付きとは。現在の南氏を形作っているバックグラウンドを紐解く。

〈Profile〉
南章行(みなみ・あきゆき)株式会社ココナラ 代表取締役
慶應義塾大学経済学部を卒業後、1999年4月、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。運輸·外食業界のアナリスト業務などを経験したのち、2004年1月に企業買収ファンドのパイオニアであるアドバンテッジパートナーズに入社。5件の投資案件を担当し、投資先企業の役員としての経営改善活動や、良好な投資リターンの実現に貢献。2009年には英国オックスフォード大学経営大学院を修了し、経営学修士(MBA)を取得。現地で出会った「音楽を使った若者向け社会起業プログラム」ブラストビートの日本法人(NPO)設立を主導した他、オックスフォードの同期が設立した「NPO法人二枚目の名刺」にも参加するなど、個人の自立·自律をサポートする活動に積極的に参加。東日本大震災をきっかけに2011年6月にアドバンテッジパートナーズを退社し、自ら代表として株式会社ウェルセルフ(現株式会社ココナラ)を設立。

「困っている人や企業を助けたい」。大企業が次々倒産するのを見て企業再生のプロを志す

――メガバンクからプライベート・エクイティ(PE)ファンド、MBAの取得、NPO設立、そしてココナラの立ち上げと多彩なキャリアを歩んでこられた南さんですが、これまでのキャリアで転換点となるような出来事があればお聞かせいただけますか。

南:まずは新卒で銀行に入ったこと自体も、自分にとっては予定外の出来事です。大学入学当初は総合商社に行こうと思っていたので、1年間アメリカに留学して英語も学んでいました。ところが、いざ帰ってきて就職活動という時に、三洋証券に北海道拓殖銀行、そしてついに山一證券までも破綻するという事態が起きた。

若い方にはイメージがつきづらいかもしれませんが、当時はそんな大企業が倒産するなんて誰も考えていない時代だったんです。世界の時価総額ランキングでもトップ10に日本企業がずらりと並び、いい学校を出て、いい企業に就職すれば人生安泰だと思っている人がほとんどでした。

しかし、一生懸命頑張ってもリストラされることもあれば、企業そのものが倒産してしまうこともある。そんな当たり前の事実を突きつけられて、困っている人や企業を助けたい、企業再生のプロになりたいという想いが日に日に強くなっていきましたね。

――そうした想いを持つ中で、メガバンクを選んだのはどのような理由ですか?

南:最初はコンサルティング業界と金融業界で迷っていました。ただ、コンサルに行った方がビジネスに対する理解は深くなりそうだなと思う反面、企業再生となるとお金を扱えなければ実質的には力になることはできないだろうと考えました。銀行が主体となって大手ビールメーカーを再生へと導いた事例に出会ったことも大きかったと思います。

ただ、当時は先ほどお話ししたように金融業界そのものが大きな変革期を迎えていて、どの業界が大変かと言えば銀行が最も苦しんでいた。融資先を助けるよりも自分たちが生き残ることで精いっぱいなわけです。

僕は最初に配属された支店で成績を上げていたので、希望していた企業の再生プランを描く部署に入れたのですが、実態としては再生プランというよりリストラによる回収プランを作成するのが仕事でした。もちろん現実的には、そういった施策が必要なことは分かります。ですが、最初の動機がリストラされる人を救いたいという想いだったので、これは自分がやりたいアプローチではないな、と。ここに気づいたのが、2度目の転換点だったと思います。

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「できるようになってから行動する」スタンスでは、何一つ変わらないし、成長しない

――その後アドバンテッジパートナーズに入社されるわけですね。

南:ええ。転職を意識しながら読んでいた金融の専門誌に、企業買収ファンド特集が掲載されていました。それまでは、こんな事業があることさえ知りませんでした。僕が就活していた頃は、法律的にも存在していない事業でしたから。

買収先企業に自分たちが入ったり、社長を送り込んで経営をすべて刷新したり。これは僕が就活で迷った金融とコンサルの合体だ、この事業はすごいと率直に思いました。ある意味では資本主義の頂点ですよね。雑誌の特集では3社のPEファンドが載っていたのですが、当時のAPはコンサル出身の方が多いことが分かり、ぜひここに行きたいと。未熟な自分でも金融の知識を武器に戦えると思ったし、なによりコンサル出身の方から学びたかった。

ただ、正直に言うと入れるはずがないとも思っていました。コンサルトップ企業出身の精鋭が集まっているうえ、自分はといえば、銀行で4年しか働いていなかったからです。まずはどこかのコンサルで修行してから受けにいこうと考えていたのですが、あるエージェントからAPが若手のポテンシャル採用を始めたらしいと聞きまして。それなら挑戦してみようと思って受けに行ったら、通ってしまい。なぜ受かったのかはいまだに分かりません(笑)。

――まさに今おっしゃった、金融の知識とポテンシャルの部分が評価されたのではないですか。

南:いや、本当に分からないんですよ。実際に入社してみたら、周囲の皆さんに圧倒的に負けていることを実感しました。その時点の自分では、何一つ勝てる部分がない。僕より少し前に入った銀行出身の同い年の方がいましたが、彼もとてつもなく優秀で。同じキャリアのはずなのに、完全に負けているわけです。当時のパートナーに、なんで僕を採用したのか聞いてみたいですね。

1年ぐらい経ったころ、初めてのデューデリジェンスを担当したのですが、これがもうまったくダメで、自分一人では何もできない。社内外の方に助けていただくことになったのですが、まざまざと差を見せつけられました。彼らは、僕が1枚の資料を作る間に10枚は仕上げている。しかも分かりやすく中身も充実しているわけです。あまりの差に驚いて、この領域では僕は一生勝てないと、思い知らされました。

この人たちと戦っていくためには、相対的にぎりぎりマシな部分を磨くしかない。絶対優位は僕にはないと分かっていました。比較優位で言うならファイナンスだろうと思い、担当を変えてもらい銀行交渉などを任せてもらうことになりました。その交渉がうまくいき、ようやくここでやっていけるかもしれないという手ごたえを感じることができました。

――自分自身の強みを見つけることが重要なのですね。

南:今でも覚えているのですが、いちばん苦しんでいる時期の人事面談で、皆さんすごい方ばかりなので非常に勉強になりますと言ったところトップの笹沼泰助さんに発破をかけられて。君はこの業界で1番になるという気概はないのか、入社して1年経つけどまだ得意分野がないじゃないかと。これはwarningだなと思いましたね。次の面談までに得意領域を作らなければクビだと思って、がむしゃらにファイナンス領域で頑張ろうと決めました。

もちろんその領域でも、僕より優秀な人は山ほどいる。いるけれど、そんなことを言っていても仕方ないのでとにかく全力を尽くす。PEファンドでは、ディールだけでなく、投資後にもあらゆることが発生するわけです。投資先で起こる事件は、全員誰も経験がありません。それでも必要だと思えばすべてやるので、できるとかできないとか言う前に、とにかく行動するしかない。試行錯誤する中で、一つずつ壁を越えてできるようになっていく。勉強して、できるようになってから行動しますというスタンスでは、何一つ変わらないし、成長しない。それがAPで得た最大の学びかもしれません。

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ビジネスの本質を短時間で見抜くスキル以上に重要だった“気づき”

――その他には、APでどのような学びを得られたのでしょうか。

南:この仕事ならではの成長という意味では、短時間で各業界の本質をつかめるようになることですね。案件ごとに業界はまったく異なるので、初日に関連書籍を10冊買って、概要をつかんでインタビューに行き、本だけでは分からない部分も把握する。これは業界ならではのスキルで、多かれ少なかれPEファンドにいる方なら全員が身につける力だと思います。僕がIT業界で起業できたのも、異業種にまったく抵抗がなかったことは大きかったですね。

ただ、やはりそれ以上に重要なのが、自分ならではのバリューを発揮するスタイルを発見できたことです。途方もなく優秀な人たちに囲まれて、限界まで自分の能力を発揮しないと生き残れないという環境で、必死にやったからこそ見つけられたのだと思います。

――APで見つけた南さん独自の強みは、どのような部分なのですか?

南:最後までずっと南さんはロジカルじゃないねと言われていましたし、戦略を立てるところは下手でしたが、それを実行する段階でバリューを出せるという自信はつきました。相手の価値観に合わせて懐に飛び込んで、その人のモチベーションを刺激しながら動かしていくことが得意だなと。

論理的にこうやれば数字が上がりますという戦略も重要ですが、人の心をつかめなければ実際には何も変わらない。経営において戦略と組織はセットですから、ここが得意だと見つかったことは非常に大きかった。その後のNPO設立やココナラの経営にも活かされていると思います。

――APを離れて起業するきっかけは何だったのでしょうか。

南:自分の成長も感じていたし、AP自体も右肩上がりで、正直に言うと離れるつもりはまったくありませんでした。香港に進出して、次はニューヨークかロンドンだと予想して、その時のためにヨーロッパのMBAを取得しようと思ってオックスフォード大学に行きました。非常に素晴らしい出会いと学びに溢れていましたが、この留学している1年の間に、リーマンショックが起きてしまった。

世界の空気が一瞬で変わりましたし、おそらくAPも変わっているだろうと想像がつくわけです。イギリスで見る日本のニュースは、暗い話ばかり。これからしんどい時代が来るな、そういえば就職も氷河期の底だったなと考えているうちに、もともと僕の原点だった、苦しんでいる人を助けなきゃというモードに切り替わっていくのを感じましたね。日本に戻ったら、僕たちより若い世代のために何かしなきゃいけない。そんな想いがどんどん強くなっていきました。

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「気軽に来ない方がいい」。そう言いたくなるほど、責任は重い

――帰国後すぐに独立されたわけではないですよね?

南:そうですね。その時点ではまだ離れるつもりはなくて、APの仕事と並行して2つのNPOの立ち上げに参画しました。ファンドの仕事は片手間でできるものではないので、NPO代表にはならなかったのですが、それでも死ぬほど大変でしたね。夜中までAPで成果を出すために働いて、そこから午前3時か4時ぐらいまでNPOの仕事をしている日もありました。

最終的にAPを離れることを決めたのは、帰国して1年ほど経ってからです。仕事の量も質もトップクラスに大変な案件を担当して、ひとまず無事に投資を実行することができたのですが、その後の人事面談でもらったアドバイスが非常に本質的でした。

「今回の案件でも南さんのスタイルが活きる場面があったね、ただこの先パートナーまで昇進して、さらに大きな仕事をしようと思ったら、今のスタイルだけじゃなく2つ目3つ目の武器も身につけなければいけないよ」と。本質的であるがゆえに、自分の未来を改めて考えるきっかけになりました。

――どういうことでしょうか。

南:PEファンドの領域で一流と呼ばれる人は、複数の武器を鍛えて使いこなしている。しかし自分自身を振り返ると、1つの武器を磨きこんでいく方が合っていると感じたんですね。僕の武器は、先ほどもお話しした通り相手の懐に飛び込んで人の気持ちをぐっとひきつけること。そう考えた時に、これは経営者の仕事じゃないかと気づいたわけです。

――そこで起業を決意されたわけですね。

南:ただ、事業のネタも考えられてなかったので、まずはどこかの会社でNo.2として経験を積もうと当初は考えていました。5社ほど面接も受けたのですが、すべて受かるんですよ。上場企業の役員待遇で迎えたいというお話もありました。34,5歳でいくつも案件を成功させているし、数百億円規模の案件を扱ったこともある。非常に高い評価をいただいたのですが、何人かの社長と面接をする中で、僕にとって大きな発見があったんです。

彼らは、APで優秀すぎる人に揉まれてきた僕からすると、一見すごそうに見えない。APのパートナーの方がよほど頭がキレるじゃないかと最初は思いました。しかし、話していくうちに彼らの圧倒的なオーラに引き込まれてしまった。ある事業を立ち上げて、引っ張ってきたその人でなければ持てないオーラ。最後の意思決定をずっとやってきた人しか持てない自信があって、これはやばいと。なんで僕はNo.2になろうとしてたんだ、これでは同じことの繰り返しだと思って、転職を思いとどまり、自分で起業することを決意しました。

――APで学んできたことは、現在の経営にも活かされていますか?

南:ビジネスを生み出すのはネタの磨きこみがすべてなので、そこにはあまり関係ないかもしれません。ただし、立ち上がった後は非常に役立っていますね。ファイナンスは他の経営者よりはるかに詳しいですし、組織が大きくなってくると投資後にやっていた様々なことが活きてきます。ファンドを経験して起業するケースはあまり多くないのですが、僕にとっては非常に良かったと思います。

――ファンドの仕事に、スマートなイメージを持っている方も多いようです。

南:ファンドの仕事はかっこいいイメージがあるかもしれませんが、実際にはとても泥臭い仕事です。右から左にお金を流して儲けるなんてことはありません。社長すら変えられるポジションってすごいことですし、それをもって仕事ができるようになったと錯覚することもあるかもしれませんが、その分全力でコミットしなければならない。大変な仕事で、泥臭く、非常に重い責任を背負うことになります。

気軽に来ない方がいいとあえて言いたいですね。それぐらい責任は重い。でもビジネスって本質的なところはすべて泥臭いですし、それをも超えていつか成し遂げたいことがあるとか、ファンドで一流の人間になりたいと思うのであれば、チャレンジしてみればいいと思います。強烈に優秀な人に囲まれる場所なので、自分自身を磨くには最適な環境ですよ。

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コラム作成者
Liiga編集部
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