「PEごとに、求める人物像の相違を把握せよ」。~エージェントが語る、PEに転職するのに必要なこと#1~
2020/09/20
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「経営の総合格闘技」と言われるプライベート・エクイティ(PE)業界。多くの外資系投資銀行や外資系コンサルティングファーム在籍者が次のキャリアを見据えて、転職を目指す。だが、それらに在籍しているからといって、PE業界への転職が円滑に進むわけではない。では、どのように考え、行動すれば、PE業界に近づけるか。PE業界に詳しいスタート・プランニング・ジャパン(SPJ)の山崎正社長に、教えていただいた。第1回目の今回は、PE業界の現状や求められる人物像などについて紹介する。

〈Profile〉
山崎正(やまざき・ただし)スタート・プランニング・ジャパン社長
早稲田大学理工学部卒業後、山一證券入社。以来、複数の金融機関で主に外国為替ディーリングに従事。2004年10月から、金融専門のエグゼクティブ・サーチビジネスを展開。投資銀行、PE、資産運用会社などと良好な関係を構築している。2010年スタート・プランニング・ジャパン設立。

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まず、言っておかなければならないのは、PEは、手間がかかる業務だということです。投資先の経営に「ハンズオン」で関わるわけだから、常駐するケースも多いです。投資案件が増えれば、それだけ、業務量も多くなります。これは、国内PEだろうが、外資系PEだろうが、状況は同じです。

一方でPE業界では採用が活発に行われています。超低金利で、運用難が続く中、活況を呈しているPE業界には、多くのマネーが集まります。資金が集まれば、新たなファンド組成で投資案件も増加します。そうなれば、新規投資や投資先の経営改善をするための多くの人材が必要となるというわけです。

PEのすそ野が広がっていることも追い風です。十分な資金を集めて、ファンド組成している新興PEも増えてきています。以上のような状況を考慮すると、採用ニーズは多いと言えるでしょう。

PEは、投資銀行などとは異なり、パートナークラスを採用することは少ないようです。基本、20-30歳代の若手を採用しています。ただ、投資銀行やコンサルティングファームなどから、ベンチャー企業CFOや商社といった業界に人材が流出して、PEといえども、採用が難しくなってきています。そのため、採用対象年齢を下げるPEも出てきています。

PEで求められる資質は、地頭のよさだけではない

PE業界を目指すとしてまず何をすべきか。具体的なPEの特徴を把握しておくことです。特に対投資先の向き合い方を理解しておく必要があります。一つの投資先に常駐するケースもあれば、複数案件を抱える場合もあります。投資先は人材を豊富に抱える企業ばかりではありません。人材が不足している企業、ガバナンスなども整ってない企業もあります。投資先からは、スキルを持った人材を求められることもあります。「手がかかる」投資先ほど、PEは、常駐を増やさなければなりません。

投資先との付き合い方には濃淡があるといっても、経営改善をする、という大目的はPEに共通です。投資先の経営陣や社員とも議論をしながら、投資先の課題を見出して、解決していかなければなりません。では、PE社員にはどんな資質が求められるか。

まず、学歴ですが、結果的に高くなっています。ですが、学歴だけを見ているというわけではありません。地頭の良さで選抜された結果、高学歴人材が多くなっているというのが現状です。

会社経営では、事態を予測することが難しいです。投資先に生じる事態の対処方法を柔軟に考えられる思考力や、社内外に対処方法などを論理的に説明できるコミュニケーション能力などが重要になってくるためです。

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地頭がよければいいかというと、そうではありません。人間的な魅力も求められます。PEの20歳代の若手であっても、常駐する投資先では、年配の役員たちと応対しなければなりません。そういったベテランたちとうまく付き合いながら、投資先の課題を解決していく必要があります。

PEから来たからといって、「上から目線」で対応する人は、投資先には受け入れられるのは難しいでしょう。むしろ、投資先よりも、目線を低くして応対し、投資先の従業員に心地よく働いてもらえるような、人格的な魅力があり、投資先から、かわいがられることが重要になってきます。

アグレッシブさを求められるケースもあります。採用面接時に、投資案件のアイデアを提案して、実際に入社してから、自ら投資候補先に赴き、投資交渉までしてくる、というような人を好むPEもあります。

PEによって求める人物像は異なりますが、転職希望者が、各PEの求める人物像を正確に把握することは難しいです。どんなPEがマッチするか、どんな人が活躍しているかなど、PEファンドへの紹介実績が豊富なエージェントに聞いてみることをお勧めします。

選考では戦略コンサルが有利な点もある

どんなスキルを持っている人が採用されているか。多い順にあげると、投資銀行のM&A部門、戦略コンサルティングファーム、MBA取得者、総合商社でしょう。

なぜ、投資銀行のM&A部門に在籍していた人が多く採用されているか。業務で培ったスキルを活かすことができるからです。

投資銀行のM&A部門では、業務で財務モデルを作成します。様々な財務分析の結果を表計算ソフトでまとめて体系化することをモデリングと言います。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書で構成するいわゆる「財務諸表」を、複数のシナリオを分析できるように、パラメーターを設定して作成します。

これは、投資先を選定して、投資に値するか、目標とするリターンが出るかを想定するPEにとって欠かせない業務です。投資銀行で財務モデリングを経験している人がPE転職で有利なのは、このためです。

次が、戦略コンサルティングファームに在籍している方です。戦略コンサルの方は事業会社の経営戦略や財務戦略、新規事業開発など様々なプロジェクトを経験しています。そのため、常駐した際に遭遇する問題に対する対応力があります。

また、戦略コンサルの方は、様々な企業を見てきているため、投資先候補の事業の成長性などを分析して、この会社に投資したら面白い、というような発想力があると思います。これは、戦略コンサル出身者のアドバンテージとなる点です。ですが、投資銀行の方と比べて、貸借対照表やキャッシュフロー計算書を見る機会は少ない傾向があります。投資をする以上、投資効率を考えるのは必須です。

次がMBAを持っている方です。経営学とは、決まった学問があるわけではなく、様々な学問が集まって構成されています。そのなかには、財務などもあります。

PEで必要な知識の一端を学べるというわけです。PEのなかには、MBAを取得してくると、ポジションが上がる企業もあります。投資先企業からもMBAホルダーは優秀な人材と評価されるので、それだけ、PEでは、MBAは重宝される資格と言えます。

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総合商社の方もPEに転職するケースがあります。総合商社に入るくらいの方ですから、優秀であるうえ、実際に事業投資を経験している方がいるためです。MBAを取得していれば、採用に有利になる可能性はあります。

また、総合商社からFASに転職してM&Aのオリジネーション(案件の発掘)、エグゼキューション(案件の実行、管理)、ドキュメンテーション(契約書など必要な書類の作成)といったM&Aに必要な実務を経験してから、PEを目指す方もいらっしゃいます。

繰り返しとなりますが、スキル面でも、PEによって、求める人物像は異なります。優先的に採用するのは、投資銀行出身者か、戦略コンサルティングファーム出身者か、その両方か、また、総合商社の出身者を採用したケースの有無、といった情報を把握しておく必要があります。PEファンドへの紹介実績が豊富なエージェントに聞く事をお薦めします。

刺激的な環境だが、生半可な覚悟で務まる仕事ではない

PEに転職した投資銀行や戦略コンサルティングファーム出身者に聞くと、「PEは、やりがいがある」と話す方が多いです。投資銀行のM&A部門で経験できる買収までの業務と、戦略コンサルで経験する経営戦略や財務戦略、新規事業開発といったプロジェクトの両方に携わることができるからです。

また投資銀行や戦略コンサルティングファームよりも大きな裁量を持ち、責任のある仕事を自らが主体となって行う事が出来る事がモチベーションになると聞きます。

但し、投資先によって、抱える課題も様々で、「もう十分に経験を積めた」という感覚を持つことはないと聞きます。投資先の今後を、左右する業務であるため、生半可な覚悟で務まる仕事ではありません。

次回は、PEに転職するために、具体的にはどんな対策が必要かをお教えします。

コラム作成者
Liiga編集部
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