「コングロマリット経済圏」形成を目指し稀有な存在に。創業者が語るイグニション・ポイント誕生秘話(前編)
2019/12/27
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コンサルティングにとどまらず、新規事業を次々立ち上げ続けるイグニション・ポイント。既存のコンサルティングファームの枠を越えた事業を展開し、急成長を続ける実力派集団を率いるのが青柳和洋代表取締役社長兼CEO。創業後5年で8社の新会社を「連続起業」した同社の誕生秘話から今後の展望までたっぷり語ってもらった。前後編に分けて、そのすべてをお伝えする。

〈Profile〉
青柳和洋(あおやぎ・かずひろ)代表取締役社長兼CEO
PDM(製品情報管理)メーカー、ITコンサルティング会社、デロイトトーマツコンサルティングを経て、イグニション・ポイント株式会社を共同創業。代表取締役社長に就任。

社内起業を経験したからこそ感じた、「すべての意思決定を自分で行う」必要性

――青柳代表はどのような思いから、イグニション・ポイントを立ち上げたのでしょうか。起業に至るまでの経緯をお聞かせください。

青柳:元々、30歳で起業をしようと漠然と考えていました。それを実現するツールのひとつとしてITに照準を定めていました。ITに関わる経験を積むため、製造業向けの基幹システムを構築するソフトハウス(ソフトウェアを開発・販売する企業)でキャリアをスタートしました。

そこでは、プログラマー、システムエンジニア、プロジェクトマネージャーなどの業務を経験してITに関する知見を蓄積していきました。さらに上流を経験したいと考え、製造業のITと設計領域におけるコンサルティング業務に携わることができる企業との出会いもあり転職しました。

転職して目の当たりにしたのが、日本の中小の製造業はIT化が遅れているという紛れもない事実でした。その一つの要因は、システムの価格がとても高額であることです。既に大手メーカーを中心に設計・製造は3次元CAD(コンピュータによる設計)で行われ、解析、製造ライン設計、サポートに至るまでデジタル化が進んでいました。

そのシステムを持っているか、持っていないかが、企業の力に大きく影響しているのですが、導入費用は数十億円規模。もっと安価なシステムを構築して広めることができれば、さらに面白く力のあるメーカーが日本に登場し、世界と伍していけるのではないかと考えました。

そこで社内起業を提案し、設計や製造管理を支援するクラウド系基幹システムや、ソフトウェアをインターネット経由で提供するSaaSといったサービスを、サブスクリプションモデルで提供するビジネスを立ち上げました。

非常に先進的な取り組みではありましたが、B2Bソリューションをマーケティング戦略で普及させていくというビジネスモデルが、まだ当時の日本には定着していなかったため、従来の営業スキームや企業風土の会社では普及に時間がかかりました。

そのときに、ビジネスというのはバックエンドも含め、すべての部門がベクトルを合わせていなければうまく回らないのだと実感しました。社内起業では意思決定の影響範囲にも限界があるため、やはり自らがすべてを決めて、動かしていける会社を作るしかないと強烈に実感し、具体的なアクションを起こすことにしました。

――具体的にはどんな行動を起こしましたか。

青柳:始めに、一緒に創業する仲間を募るために、デロイト トーマツ コンサルティングに転職をしました。もはやITと経営は切り離せない関係になっていましたし、経営視点を持ったITアドバイザリーは得意な領域でもありました。

これまでのキャリアから考えると、近い将来、コンサルティングに関するビジネスを自分で立ち上げるだろうと、漠然とではありますが考えていました。そのため、デロイトで経験を積み、キャリアに磨きをかけておきたいという思いもありました。

デロイトでの経験は貴重ではありました。一方で、もっと早くビジネスの中心に身を置き、自身のスピード感とビジネスセンスを試したい、と考えるようになっていました。

さらに、当初の目的としていた創業メンバーにも早々に出会うことができました。偶然タクシーで一緒になった同僚と意気投合、お互いに起業を考えていた事がわかり、試しに共同で事業プランを練り始めてみることにしました。

事業計画は想定よりも早く完成し、外部環境が良かったこともあり、すぐに実行に移したいという思いが高まり、デロイトを退職。イグニション・ポイントをスタートさせました。

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コンサルは、事業を成功させる手段にすぎない

――コンサルティング会社の中で起業家志望の人を見つけるのは難しくはなかったですか。一般的には、それほど多くないような気がしますが。

青柳:そうですね。当時は確かにそれほど多くはありませんでした。共同創業者と出会えたのは貴重な出来事だったのかもしれません。多くのコンサルタントは、自らが事業主になりたいと思いつつも、キャリアが長くなれば長くなるほど実際に行動に移すのが困難だと思います。

コンサルタントとしてキャリアを重ねていけば、当然収入も増えていきます。その時点でまたゼロリセットをする気持ちが沸き立つのかどうかというと、なかなか難しいですよね。

さらに言えば、事業を立ち上げる人間は、考えながら動かなければならないし、明日を生きることが重要となります。一方、コンサルタントは、対象の事業フェーズが異なる為に、事業戦略やコンセンサスを取れるペーパーづくりに時間をかける事もあります。事業家とコンサルタントでは、事業フェーズにもよりますが求められる能力が異なるのです。

多くのコンサルタントはキャリアと共に、より専門性を高めていく事が一般的です。戦略、業務、ITなど様々な領域と、自動車、電機・精密、公共などのインダストリーの組み合わせでユニットが割り当てられ、キャリアを追求していきます。

キャリアチェンジをしたいと思っても、一度このレールに乗って走りだしてしまうと専門性が逆に足かせになり他のコンサルファームに移ったとしてもキャリアチェンジは困難です。そのため、担当していた大手事業会社に移籍するケースも少なくはありません。これらの問題もあり、創業期の事業会社に関わろうとするコンサルタントは希少です。

私は、事業家として作りたい事業がたくさんあって、それらの事業を成功させる手段としてコンサルタントのキャリアを歩んだということもあり、スタンスが異なりました。

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社会に影響を及ぼすにはスケールする必要がある。尖っているだけでは意味はない

――創業時には、どのような企業を作り上げようと考えていたのでしょうか。

青柳:まず、コンサルティング会社を経営するのであれば、やはりインパクトは必要だと考えました。どんなに尖っていてもスケールしなければ意味がない。社会的な影響力を持つためには、組織の規模も重要です。

そういう意味で、業務領域の幅を広く持つべきだろうと考え、小さな組織ではあったものの、最初から従来の総合系ファームの領域を超えた領域をカバーする総合系ファームを目指すことにしました。

さらに、単なるアドバイザリーで終わらせずに、実際に事業を手がけ、それをビジネスの一つの形として見せながらコンサルティング業を行い、循環させていくのが面白いのではないかと考えました。核となるコンサルティング会社を作って、その周りにたくさんの事業会社を立ち上げていけば、事業会社の経営企画を志向する人材の流出も防ぐことができます。

日本においては、あまりコングロマリットが評価されていないという現状があります。一方で、ある特定領域の会社をひとつだけ運営していくよりも、ストラテジー、デジタル、ファイナンス、クリエイティブなどの領域を生業とする組織・会社と各種事業会社を同時に運営し、それらをうまく融合させた経済圏を作っていったほうが、急速な社会の変化に順応でき、不況にも強いのではないでしょうか。

そして何よりも、ユニークで面白いのではないかと考えました。そこでイグニション・ポイントをグループの真ん中に据えて、その周りに事業会社を作っていくことにしました。

――どういった事業会社を作っていこうと考えていたのですか。

青柳:事業領域を明確に決めていたわけではありませんが、会社の規模とローンチしていくペースだけは決めていました。その成長スピードの指標を定めるため、起業後の5年で急成長してIPOを実現した企業をすべてベンチマークしていました。

――起業後5年間を振り返ってみて、当初思い描いていた目標はどれくらい実現できたのでしょうか。

青柳:イグニション・ポイントの立ち上げ時に5年後まで計画していた売上や利益、従業員数に対して、殆どぶれていないのではないかと思います。かなり精度は高かったですね。

誤解を恐れずに言えば、コンサルティング業の経営は、それほど難しいものではありません。経営資源である人材を生かす教育やブランディングは重要ではありますが、キャッシュフローという面では、それほど難しさを感じるビジネスではありません。

幸いなことに当時は景気見通しも良く、「今後5年間、外部環境は悪くない」という認識がありました。一方で、toCのビジネスは、これとは異なる難しさがあります。

――コンサルファームの経営と事業会社立ち上げの両立は難しいように思います。

青柳:イグニション・ポイントのコンサルティング業の経営というよりは、やはり周りに配置するスタートアップ・事業会社の経営、それらをハイペースで立ち上げ、グロースさせることの方が難しいのではないかと思います。一社目のスタートアップとして、「Secual」という会社を立ち上げました。こちらは、IoTデバイスを用いたホームセキュリティサービスの展開やスマートシティの開発・運営を行う企業です。

イグニション・ポイントからのスピンアウトではなく、ビジネスモデルと人的リソースだけで0から立ち上げ、イグニション・ポイントのリソースを投入して成長させるのではなく、エクイティファイナンスで成長させていくという手法も新しい挑戦だと思っています。

この「Secual」自体、立ち上げてから数年しか経過していないため、現時点でどこまで成功といえるかはわかりません。しかし、イグニション・ポイントの最小限のリソースでスタートしたものの、数千倍で一部をイグジットし「Secual」も次のステージに進みました。

この5年間でスタートアップ、グループ会社は8社ほど立ち上げることができましたが、やはり何もない中で立ち上げた「Secual」の成長が自信になったのは確かです。以降の連続起業の起点となりました。

後編では、イグニション・ポイントのこれからの5年間の見通しや求める人物像についてお話します。今後、どんな企業に変貌を遂げようとしているのか、感じ取っていただければと思います。

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コラム作成者
Liiga編集部
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