オファー条件に即OKは損。高待遇は交渉で勝ち取れ| 海外就職のすすめ(11)
2020/02/28
#GAFAでの働き方
#海外で働きたい

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ゆうです。

2013年に日本のIT系メガベンチャーの駐在員としてサンフランシスコに赴任し、その後紆余曲折あって、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。


前回:海外就活の最大の難関、オンサイトインタビュー攻略のため、純ジャパがすべきことまでは、アメリカ企業の採用試験の攻略法について一通り説明してきました。

今回は、晴れてオファー(内定)を獲得した後にやってくる非常に大事なプロセス、給与交渉について説明します!


提示された給与をそのまま受け入れるのが一般的な日本とは異なり、海外(特にアメリカ)では交渉でより良い条件を勝ち取るのが当たり前!

とはいえ、急にそんなこと言われてもどうすればいいのか分かりませんよね。

この記事を読んで給与交渉のポイントを押さえ、ベストな条件を引き出しましょう!

「英語で交渉するなんて・・・」という人のために、今回はそのまま使えそうな英語表現もちょいちょい紹介していきます。

〈Profile〉
ゆう
東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。外資系コンサルティング会社で数年の経験を積んだ後、IT系メガベンチャーに転職。2013年に同社の現地駐在員としてサンフランシスコ支社に赴任。2017年、サンフランシスコ支社の閉鎖を受けてAmazonシアトル本社に転職。プロダクトマネージャーを務める。アメリカ生活7年目。アメリカでの半年間の就職活動経験を活かし、英語や海外就職について発信中。
▶Twitter:@honkiku1
▶Blog:https://honkiku.com/
▶Note:海外就職攻略の教科書

※記事の内容は全て個人の見解であり、所属する組織・部門等を代表するものではありません。




【目次】
・オファー取り消しの心配は不要。やりがいを得るためにも給与交渉は“必ず”やろう
・英語での交渉を乗り切る―。各プロセスの対処法をお勧めフレーズとともに解説
・競合他社のオファーは強力な武器。他社事例を示し交渉を有利に
・まとめ:きちんと準備すればそれほど恐れることはない

オファー取り消しの心配は不要。やりがいを得るためにも給与交渉は“必ず”やろう

日本では、採用時の給与交渉ってまだそれほど一般的には行われていないんじゃないかなと思います。

実際、僕も日本で転職をしたときには、先方の提示額をそのまま

「ありがとうございます!がんばります!」

と受け入れていました。

いやー、今思うと若かったですね・・・。


結論を言うと、給与交渉は必ずした方がいいと思います。

特に海外就職であれば、なおさらです。

失うものは何もありません。


「でも、もし給与交渉したことが理由でオファーを取り消されてしまったら・・・?」

大丈夫です。

僕が知る限り、給与交渉をしてオファーが取り消されたという例は聞いたことがありません。


オファーを出したということは、企業側はあなたのことを本気で欲しいと思っています。

先方は、あなたにオファーを出すまでにかなりの時間とコストをかけてきていますし、他の採用候補者には既に断りの連絡を入れてしまっているはずです。

このため、多少給与アップを要求したからといってオファーが取り消しになるようなことはまずありません。


また、給与の交渉は、ハイアリングマネージャーではなく人事の採用担当者と行うことが多いです。

採用担当者のミッションは、オファーを出した相手をスムーズに入社させることであって、彼らにオファーを取り消す権限はありません。

この観点からも、給与交渉をしてオファーが取り消される確率はかなり低いと言っていいと思います。


「最初は低くても、入社後がんばって上げていくというやり方もあるのでは・・・?」

僕の経験上、給与アップは入社前の方がはるかに容易です。

僕も入社前に交渉をして、給与を当初提示額よりもかなり大幅に上げてもらったことがあります。

あの昇給を入社後にしようと思ったら、いったいどれだけの成果を上げればいいのやら・・・。


更に、これはケースバイケースかとは思いますが、高めの給与で入社するとその分期待値が上がり、初めから高度な仕事を振られたり大きな裁量を持たされることが多いように感じます。

「面白い仕事をする」という観点からも、交渉で積極的に給与アップを狙ったほうがいいですね。

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英語での交渉を乗り切る―。各プロセスの対処法をお勧めフレーズとともに解説

給与交渉の流れは、おおむね以下のようになります。

1.オファーの第一報が電話で来る
2.オファーレターを受け取り、吟味する
3.こちらの希望を伝える
4.オファーレターを修正してもらう
5.オファーレターを受け入れる


1.オファーの第一報が電話で来る

オファー(内定)の第一報は、メールではなく採用担当者から電話で来ることが多いです。

「おめでとうございます!チームで検討を重ねた結果、あなたを〇〇ポジションに受け入れたいと思います」と。

で、そのあと「基本給は$XXXで、RSUがXXXで、サインオンボーナス(入社準備金的なもの)が$XXXで・・・」と、給与や福利厚生などが早口で(たぶん普通のスピードなんでしょうが、純ジャパには十分早口に聞こえます)伝えられます。


この電話で何をすべきかですが、まずは感謝の意と、オファーをもらえたことを自分が非常に嬉しく思っていることを伝えましょう。

例えば、

”Thank you for the offer! I’m really happy to receive your call!”

みたいな感じです。

伝えられたオファーの内容が(仮に聞き取れたとして)良くても悪くても、その場で交渉をしたり、ましてやオファーを受け入れるようなことはしないように。

終始ポジティブな姿勢を見せつつ、オファー内容を書面でくれるよう依頼しましょう。

依頼の仕方としては例えば

“I’d like to make a good long-term decision. Can you send me an email with all the details? I’ll get back with you by the end of the week if it works for you.”

みたいに伝えればいいと思います。


2.オファーレターを受け取り、吟味する

オファー内容を書面でくれるよう依頼すると、恐らく「オファーレター」というものがEメールで届きます。

これには採用されるポジションや就業開始日、給与や福利厚生などオファーの諸々が全て記されています。

まずはこのレターを(かなり長くて文字ばかりですが)じっくりと吟味し、基本給やボーナスなどの各項目について

・オファーされた内容
・現職での内容
・自分の希望
・提案の正当性
・妥協ポイント

を一覧にしてみましょう。

例えば以下のようになります: 

【基本給】
・オファーされた内容:$135,000
・現職での内容:$140,000
・自分の希望:$145,000
・提案の正当性:現職の給与額およびGlassdoorでの調査結果
・妥協ポイント:$140,000(現職のまま)もしくはサインオンボーナスでカバー

この表には基本給やボーナスだけではなく、サインオンボーナス(入社準備金的なもの)や有給日数その他の福利厚生も含めます。

これは、単純な給与の額だけでなく、その他の項目も合わせて総合的に判断するためです。


3.こちらの希望を伝える

自分の希望内容が整理できたら、それを先方に伝えましょう。

電話でもいいですが、構成をじっくり練ることができるEメールの方がいいんじゃないかと思います(特に純ジャパでスピーキングに自身が無い僕のような人には)。

自分の希望する内容と、それが妥当だと考える理由を、プロフェッショナルらしく丁寧にかつロジカルに伝えましょう。

例えば給与額のアップを依頼するのであれば、

“I was just wondering if you might be flexible on that salary figure. It was a little lower than I had expected.”

みたいに切り出し、

“Taking my current salary and research on glassdoor.com into consideration, I was expecting the offer to be around $145,000. Please refer to the numbers I got from glassdoor.com below.”

みたいな感じでこちらの希望額とその理由を伝えます。

Eメール送信後、先方からフォローアップの電話が来ることも多いので、口頭でも説明できるように準備しておきましょう。


4.オファーレターを修正してもらう

こちらの希望を伝えたら、先方に一度持ち帰って検討してもらいます。

たいてい数日以内には改訂版が送られてくるので、それを再度吟味します。

このとき、もしこちらの希望が通らなければ、それに代わる代替案を提示します(次の章で詳しく説明します)。

先程の給与額アップの例の続きだと例えば、

“If it’s difficult to change the salary, which I understand, could we discuss the possibility of a sign-on bonus as a bridge until the first performance review?”

のようになります。

このプロセスを、双方が合意できるまで繰り返します。


5.オファーレターを受け入れる

納得できるオファーレターがもらえたら(おめでとうございます!)、ようやくオファーレターを受け入れます。

“I really appreciate your willingness to work with me. The offer letter looks perfect!”

みたいにお礼を伝え、オファーレターにサインして返送しましょう。

これで就職活動もようやく一区切りです。

お疲れさまでした。

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競合他社のオファーは強力な武器。他社事例を示し交渉を有利に

上に挙げた給与交渉の流れの中でもすでに登場しましたが、給与交渉のポイントを2つほどお伝えしておきますね。


提案の正当性を明確に説明しよう

なぜ自分はその提案が妥当だと思うのか、その正当性を明確に説明しましょう。

これは相手(採用担当者)を説得するために必要なだけでなく、採用担当者がその変更の承認を上長などから得るためにも必要になります。

例えば僕が給与交渉を行ったときには以下のような説明をしました。

・現在、競合他社であるA社からもオファーをもらっている
・A社の提示している給与はトータルで$XXXである
・A社の勤務先の都市との物価の差を考慮し、トータル$XXXにして欲しい

正当性を説明するためには、基本的に比較対象を用意するといいです。

それは現職でもいいし、上の例のように同時に受けていてすでにオファーをもらっている他社でもいいし、あるいはGlassdoor等でリサーチした結果でも構いません。

何も比較対象無しに交渉を行うのは、ちょっと分が悪いですね。

ちなみに言うまでもありませんが、競合他社からのオファーはかなり強い手札になります。


代案を用意し、攻めやすいところを攻めよう

給与や福利厚生は、比較的変えやすいところと変えづらいところがあります。

例えば、有給休暇の日数はだいたい社内一律で決まっていますよね。

自分の現職の有給日数はもっと多いから、自分だけ増やしてくれと言っても増やしようがありません。

こういうときには、自分の本来の希望(この例では有給日数)にこだわるよりも、相手が比較的自由に変えやすいことを代案として示してあげるといいです。


具体的には、ストックオプションやサインオンボーナス(入社準備金的なもの)は一度きりのものなのでけっこう自由に変えやすいみたいですね。

例えば上で挙げた有給日数の例だと、

「私の現職での有給日数は御社より年間5日間多いので、そのギャップをカバーするためにサインオンボーナスを$XXX上げてください」

などと言えば、けっこうな確率で上げてくれると思います。

まとめ:きちんと準備すればそれほど恐れることはない

以上、給与交渉の仕方を見てきました。

簡単にまとめると以下のとおりです。

・給与交渉は積極的にすべき。給与交渉をしたことが理由でオファーを取り消されることはまず無い
・オファーの電話が来たときにその場でOKしたり交渉を始めてはダメ。オファーの内容を書面でもらい、じっくり吟味すること
・交渉はメールで。プロフェッショナルらしく丁寧かつロジカルに、自分の提案の理由付けはしっかりと伝える
・提案が断られたときの代案も用意しておくと吉。サインオンボーナスなど一度だけ発生するものは、比較的柔軟に対応してもらえやすい


給与交渉は多くの日本人にとって不慣れなことだとは思いますが、きちんと準備すればそれほど恐れることはありません。

自分の価値を最大限評価してもらえるようにがんばりましょう!


次回は海外就職においてもはや必須のツールであるLinkedinについて書いていきます!

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コラム作成者
Liiga編集部
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