「日系企業は年功序列でやりづらかった」外資→日系→外資と3社渡り歩いたマーケターが語る、転職の失敗
2020/03/12
#外資メーカーのマーケターとは
#マーケターから始まる職歴
#日系メーカーから脱出する

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食品、一般消費財、家電、自動車、ラグジュアリー…B to Cの世界でモノを売るのに欠かせない存在、「マーケター」。そのキャリアの特徴として「転職しても即戦力になる」という点があります。

今回はファーストキャリアで外資系消費財メーカーのマーケティング職に就き、その後日系メーカーに転職し、そして再び外資系小売企業へと転職した中西さん(仮名)に取材しました。転職経験談を基に、「日系・外資の違い」「各商材のマーケティングの違い」について語っていただきます。

【目次】
・日系は外資に比べ年功序列。生販管理できる人がマーケターのエース!?
・マーケターとしてキャリアを広げるには、〇〇に新卒入社せよ
・外資はマーケターが主体。日系は業務が細分化されていて属人的
・外資から日系に転職すると、給与だけでなく職位も仕事内容も下がる

日系は外資に比べ年功序列。生販管理できる人がマーケターのエース!?

ーー現在のご経歴について教えていただけますか。

中西:新卒で外資系消費財メーカーA社に4年間、次に転職して日系電機メーカーB社に3年間勤め、そして現在は外資系小売業C社に勤めて1年半になります。

ーーなぜA社からB社へ転職したのですか?

中西:A社にはもともとマーケティング職で入りましたが、途中で人事の方の要望を受けて一時的に別の部署に異動することにしました。しかし、その部署で1年間働いていると、次はマーケティング職ではなく、さらに別の部署に異動させられそうになったのです。そこで、「そろそろマーケティング職に戻りたい」と思い、転職することを考えました。

実はちょうどその頃、A社はマーケティング職の大規模なリストラもありました。だから、社内のマーケティング職に戻るより、違う商材を扱ったほうが成長できると思ったのです。

また当時はテレビCMの経験が少なかったので、テレビCMの領域に深くコミットできる会社行きたいと思っていました。そんな理由から日系のB社に移ったのです。

他にもB社に決めた理由として、日系でしたが年収も比較的高く、かつ面接の時の印象ではA社と似たカルチャーがあると感じたことも決め手になりました。

ーーその後、C社へ転職したのはなぜですか。

中西:B社に実際に入社してみたところ、とても仕事がやりづらかったのです。早く辞めて経歴に傷がついても困るので3年間は勤めましたが、入社して最初の段階から辞めたいと思うようになりました。B社に入社して思ったのは、やはり日系企業なのでかなり年功序列的な会社だということです。外資だと20代でマネージャーになる人が多いですが、B社の場合は基本的には30代の後半から40代で管理職になります。

ーーB社で働いた上で、他にギャップを感じたことはありますか。

中西:B社は職種別採用も導入しているグローバルカンパニーだったので、なんとなく先進的なイメージがありました。しかし、ユーザードリブンではなく、かなりプロダクトドリブンの会社だった点にもギャップを感じたのです。

B社では、プロダクトを作る際には「新たにできたすごい技術」をとにかく重視する傾向がありました。ユーザーからするとそれが必要ではない機能であってもです。例を挙げると、カメラの場合は“画素数”にとにかくこだわるイメージです。「1,600万画素と1,800万画素の違いなんか、目で見てわかる人はいない」と私は思ってましたが、そういうことが言いづらい雰囲気でした。

そのようなことからB社での仕事のメインは、「マーケティングの戦略を立てる」というよりは、「プロモーションのクリエイティブをいかに自分たちがカッコいいと思う物にするか」という感じでしたね。自分たちの施策が売上にどう反映したかという意識もほとんどありませんでした。

また、マーケティングの部署の仕事領域が大きく異なり、「生産から販売」に近い領域のオペレーションを上手く回すことが重要とされていました。

ーー詳しく教えていただけますか。

中西:マーケターの大事な仕事の一つが「正確な生販計画」をいかに立てるかだとされていました。いかに在庫を余らせないで発注量をコントロールできる人、すなわち「生販管理のエース」が、“できるマーケター”と評価されていました。

この傾向はB社特有というより、日系企業特有でもあるような気がします。

マーケターとしてキャリアを広げるには、〇〇に新卒入社せよ

ーーマーケターとして入社をオススメしたい業界はありますか。

中西価格が安くて商品の差別化が難しい一般消費財のマーケティングを経験するのがオススメです。安価な消費財を経験した人が高級品や耐久消費財のマーケターに転職したり、私のように小売に転職するキャリアパスは多くあります。しかし、逆のキャリアパスは難しいと言われています。

消費財のマーケティングの仕事とは、極論をいうと「石でも売る仕事」です。

例えばシャンプーは、実は高級品も安価な物も、ブラインドテストを行うと一般人では差が見分けるのが難しいほど、品質に大差はないのです。だからマーケティングにおいては、プロダクトではなく、コンセプトやプロモーションで差別化するのがポイントになります。

だから、最初から「ラグジュアリーをやりたい」「どうしても車がやりたい」という思いがないのでしたら、消費財のように安くて差別化が難しいプロダクトに携わったほうがマーケターとしての経験が積め、転職してもつぶしが利くと思います。特にマス向けの消費財は、広告費などの予算規模が大きいこともあり、マーケターとしての経験の幅が広がると言われていますよ。

ーー消費財とその他では、マーケティング手法も違うのでしょうか。

中西:その通りです。例をあげると、ラグジュアリー業界は消費財と全く違うキャリアになります。

ラグジュアリー業界の特徴は、買うユーザーが限られている点です。特にハイブランドになってくると10%の顧客が売上の90%を占めることも珍しくありません。だから消費財と違い、店頭や外商というチャネルを活かし、いかに一部のVIP客に買ってもらうかがポイントになっています。

そうなると、ロイヤリティプログラムを磨くこと、VIPやプレス向けのイベントの開催がマーケティングの要になってきます。またコミュニケーションにおいても、店頭を作りこむ店頭のヴィジュアルマーチャンダイジング(VMD)が重要な手段です。一方で、マス広告の中でも、テレビCMよりも雑誌のブランド広告の方が主な施策となります。このようなことから、消費財に比べラグジュアリー業界は、マーケターとしての経験分野の幅が限られ、深く狭い方向になるでしょう。

また別の視点でいうと、消費財の製品サイクルの短さも、マーケターの経験値が深まる要因です。

ーーなぜ製品サイクルが短いとよいのですか。

中西:例えば自動車や家電などの耐久消費財は、商品サイクルが数年に一度ととても長いです。だから、企画からプロモーションを考えてローンチし、結果から学ぶという一連のプロセス全体を経験する回数が限られてしまいます。

外資はマーケターが主体。日系は業務が細分化されていて属人的

ーー日系と外資の違いについて、詳しく教えていただけますか。

中西:まず傾向として外資の方が基本的に一商品に携わる社員の人数が少ないです。そして、外資はマーケターの立場が比較的強いです。だからマーケターが幅広い裁量を持って色々と決定できます。その結果、外資だと「なんでも屋さん」的な働き方が可能なのでキャリアは広がります。CMを制作しながら売上にも責任を持ち、さらに店頭も管理して生産計画も詰める、といった役割が求められるからです。

一方、日系の方が一商品に携わる社員の人数が多いです。しかし外資と業務量はそんなに変わりません。仕事は、プロモーションだけ、売上の生販管理だけ、店頭を作るだけ、カタログを作るだけ・・・といったようにかなり細分化されていると感じます。個々の業務の経験値は上がっていきますし、特定の業務だけやりたい人にとってはフィットすると思います。

ーー外資はマーケターが収支責任まで担う、というのは本当ですか。

中西:P&Gが代表ですが、他の外資も比較的そうです。ブランドごとの売上や利益の責任を担うのがマーケターです。だから、マーケターが事業の主導権を握っているのが外資の特徴ですね。セールスとマーケターが対立関係になることがありますが、最後に方針を決定するのはやはりマーケターです。

ーープロダクトのR&Dの進め方については、日系と外資で違いはありますか。

中西:外資ではマーケターが商品コンセプトを設計し、それに基づいてR&Dしていきますね。一方、日系だと一般的にR&Dチームはマーケターが関与せずプロダクトを作ることが多いです。そしてマーケターにはプロダクトが完成した後に「これを売ってください」と降りてくる体制を敷きます。

もっとも日系は営業が強いことも多いので、「お客さんがこう言っているからこうしてくれ」というセールスの意見を基にプロダクト作る風土も見られるようですね。

ーーマーケティングのノウハウの違いについてはどうですか?

中西:かなり差がありますね。日系はより属人的で、「とにかくカッコいい物を作ろう」「作り手の重いを伝えよう」という風潮があります。『お客様第一』という思想はあったとしても、そこから「マーケティングはこうあるべき」とメソッドが体系化されている企業は少ないと思いますね。

一方で外資だと、「マーケティングはこうあるべき」という体系的な基本メソッドがあり、これを基に常に論理的にマーケティング戦略を考えていく傾向があります。

外資から日系に転職すると、給与だけでなく職位も下がる

ーー外資から日系に移った1回目の転職活動はどのような軸で動きましたか。

中西:1回目の転職は、まだ社会人4年目という比較的ジュニアの立場での転職でした。給与の下がらない企業を探しましたが、ほとんどの日系企業は給与条件があてはまりませんでしたね。例えば、給料が現職だと新卒4年目で年収500~700万円もらえるのに対し、KDDIのマーケティング職だと額面それ以下になってしまうので内定を辞退しました。

また転職活動をする中で、外資から日系に転職すると、給与だけでなく職位も下がることがわかりました。だから当時は外資を中心に受けていましたね。日系で唯一受けていたのは、前職よりも良い給料だったリクルートと、メーカーにしては結構給料が高かったB社の二社だけです。

ーーその中でなぜB社に入社したのですか。

中西:リクルートはカルチャーが私とあまり合わないと思いました。一方でB社は思ったよりも給与が良く、CMなど今までやったことがない領域に挑戦でき、そして入社前の説明では前職と裁量がかなり似ていると思いました。ただ入社した後に実はそれは勘違いであることが分かったんですけどね。だから自身のキャリアを広げられると思い、B社のオファーを承諾することにしました。

ーー2回目の転職活動では、どういう軸で動いていましたか。

中西:当時は既に30歳を超えていて年齢的にも少し危機感があったので、幅広くマーケティング施策に取り組める会社への転職を希望していました。

私は日系のB社に3年間在籍して、履歴書に書ける経験も増えましたし、CMの経験も一通り積みましたが、このままB社にいても全然キャリアアップできないという危機感があったのです。

ーーどのような企業を受け、なぜC社を選んだのですか。

中西:最終的には、日系消費財メーカーと外資系食品メーカー、そして現職の外資系小売C社の3社で迷いました。

日系消費財メーカーは海外展開を広く進めているのは魅力的だったのですが、中の人の話を聞いてみたところ外資とマーケティングの進め方が異なり、宗教的なカルチャーがあり、給料が下がることが分かったので辞退しました。外資系食品メーカーではなくC社を選んだ理由は、C社の方が給料が3割ほど高く、色々なマーケティング施策を展開していてマーケターとしてキャリアが広がると思ったからです。またC社のほうがグローバルブランドとして強かった点も要因でしたね。だから、C社にしました。今でもそれで良かったと思っています。

ーーCMの経験を積んだことは、転職において有効でしたか。

中西有効だったと思います。なぜなら、CM経験が募集要項で必須とされている企業もあるからです。CMを積極的に展開している企業にとっては、エージェンシーマネジメントの実務経験や、テレビCMなどのマス広告の制作プロセス理解がある人の方が、入社後の活躍を期待しやすいでしょう。もちろん、各社によってマーケティング戦略は異なるので、CM経験のみが転職活動で必須というわけではありません。

コラム作成者
Liiga編集部
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