「日本のために」コンサルタントが出来ること。イノベーション&インキュベーション部が挑む社会課題解決
2020/04/01
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常に「社会課題解決」をゴールに設定し、時代の変化に合わせた「デジタル化」や「イノベーション」の支援を続けている三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)コンサルティング事業本部の「イノベーション&インキュベーション部(以下、I&I部)」。同社シンクタンク部門や三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)と連携するユニークなポジションにあるからこそ、自治体や官公庁、民間事業会社と幅広く手を携えたプロジェクト遂行が可能だという。同部の特長や象徴的な事例について、部の立ち上げからリードしてきた渡邉藤晴氏(戦略第1ビジネスユニットI&I部長/マネージング・ディレクター)に聞いた。

〈Profile〉
渡邉藤晴(わたなべ・ふじはる)戦略第1ビジネスユニットI&I部長/マネージング・ディレクター
大学卒業後、事業会社に入社。その後、監査法人のM&A部門にて製造業を中心にM&A戦略の策定、実行、PMIに従事。さらに外資系戦略コンサルティングファームにて製造業のグローバル戦略やM&A戦略といった成長戦略のほか、技術戦略策定に従事した後、2013年1月三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。
(掲載内容や肩書は2020年2月の取材当時のものです)

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やりたかったのは新規事業の立ち上げ。今は「業界のため」「国のため」に働くことに楽しさを感じる

――渡邉さんは、他のコンサルティングファームでの経験をお持ちです。特にMURCとの違いを実感することはありますか。

渡邉:事業会社、監査法人、外資系戦略コンサルティングファームを経て、MURCに入社しました。一般的にコンサルティングファームは依頼を受けたクライアント1社を相手にコンサルティングを行います。

ところが当社では現在、スマートシティやオープンイノベーションといったテーマのプロジェクトが代表するように、コンサルティングの対象・クライアントを「個」ではなく「群」で捉えて、広く価値を提供するということができています。もちろん「群」で捉えるクライアントには民間企業だけではなく行政なども含まれるため、民と官の組み合わせも多くあります。

MUFGとの連携でわかったことですが、彼らは金融グループとして、企業のみならず業界を、少し大げさな言い方をすれば国家を財務面で支えている自負をもっています。そういう方々と仕事をしていて、自然と同じようなマインドをもつようになりました。「業界のために」、ひいては「国のために」というマインドです。前職のファームでも仕事は楽しかったのですが、今は違う楽しさがありますね。

――そのような目的があって、MURCに参画されたのですか。

渡邉:実は、「日本のため」なんて意気込みはなかったんです。それまでの経験を生かして新規事業の立ち上げに関わりたかったので、エージェントには「コンサルティング業界以外で」と伝えていたくらいです。

ですが、当社が大企業向けの戦略コンサルティング部隊立ち上げをけん引する人材を欲しがっている、とエージェントから紹介があり、話を聞いていくうちに、自分の思いを実現できるのではないかと考え入社しました。

入社当初に言われたことで印象に残っているのは「渡邉さん、コンサルティングを依頼してきた会社のことだけ考えないでよ」という言葉です。前職では依頼を受けたクライアント1社を対象としてビジネスをしてきたのですから、当然といえば当然かもしれません。

また、別本部のシンクタンク部門や連携する銀行の方など、ともに案件に携わるメンバーによってアプローチの仕方や考え方が違うことには、戸惑いもありました。ですが、それまで味わったことがない感覚で新鮮でしたね。

大企業向けコンサル部門の設立という新規事業を立ち上げた事で、当初の目的は果たしました。加えて、国のプロジェクトが政策におち、ビジネスになるから企業も動いていく、といった流れを作ることに携われることに面白さを感じるようになってきました。この逆で民間企業から国を動かす流れを作り出すことも可能なので、業務範囲はとても広いです。

――「外資」と比べたときの違いはありますか。

渡邉:すべての外資企業を知っているわけではありませんが、外資企業の組織は一般的にトップダウンです。MURCはシンクタンクの研究員文化が残っており、ボトムアップで、サイズやガバナンスの観点でも自分たちの提案を実現しやすい良さがあると感じます。

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シンクタンクやグループとの連携で生み出す“掛け算”の価値

――I&I部の特長について教えてください。組織の立ち上げを担ったのが渡邉さんだと伺っていますが、これまでの経緯や、込めた思いもお聞かせください。

渡邉:同業他社に無い価値を考えるなかで、当社ならではのケイパビリティを活かしたメニューを作ることが、競合となる外資系コンサルティングファームとの最大の差異化戦略になると判断しました。

それは、当社のシンクタンク部門である政策研究事業本部や、「デジタルガバメント」や「スマートシティ」といった社会課題に直結するテーマを得意とするソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部(以下、SIP事業部)、MUFG各社との連携です。

そして、こうした組織とつながりのある政府機関や自治体、さらにMUFGのお客さまを中心とする民間企業も巻き込むことで、一般にコンサルタントの領域だと考えられている枠を超えた取り組みが可能だということです。

――「MURCのケイパビリティを活かしたメニュー」とは、具体的にどのようなものでしょうか。

渡邉:2018年度は、シンクタンク部門と連携しながらロボティクス、オープンイノベーションや新領域としてモビリティを強化しました。2019年度は、ESG経営やデジタル・イノベーションなどにもテーマを広げるとともに、AI開発など実行支援を強化することで顧客ニーズに最後まで対応可能なコンサルティングメニューを開発しました。

例えばモビリティならMaaS(Mobility as a Service)やCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)などがキーワードとなり、携わる業種の垣根が無くなります。また、MUFGのお客さまは幅広いため、あらゆる相談が寄せられます。

特定の業種に特化するのではなく、業種横断で価値を提供できるメニューが求められており、製造業の白書制作などに関わるシンクタンクやグループとの連携による総合力が、まさにケイパビリティとして活きてくるのです。

――メニューは毎年見直しているのですか。

渡邉:メニューは進化していくものとして日々見直しています。その元になるのは、「大切にする“考え方”」として定義する3つのポリシーで、節目ではあらためてメンバーに共有するようにしています。

ポリシーの1つめは「“社会課題解決”を常にゴールに設定」することです。シンクタンク系コンサルティングファームとして、社会課題解決を基本方針・戦略とし、官民連携のアプローチを常に意識しています。

2つめは「研究ではなく“実証”を重視」すること。戦略投資の位置づけで研究開発は行いますが、それを「研究」「勉強」にとどめるのではなく、常に顧客と「実証」することが基本で、あくまでビジネスとして責任を担います。

そして3つめに、これまでお伝えしたような「ケイパビリティは常に“掛け算”」を掲げています。例えばシンクタンク部門とは従来から連携してきましたが、シンクタンク部門を補助する役割が中心で、「足し算」の価値でしかないことがありました。そうではなく、連携のたびに自分たちの機能を見直して、「掛け算」の価値を生みだそうということです。

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新しいスマートシティの推進や、企業のオープンイノベーションを支援

――I&I部らしいプロジェクトには、どのような事例がありますか。

渡邉:2つご紹介しましょう。まずは、SIP事業部、民間事業会社、自治体とともにすすめているスマートシティのプロジェクトです。

SIP事業部は、一般社団法人スマートシティ・インスティテュートというコンソーシアムの取りまとめ役を担っており、日本だけでなく、グローバルのスマートシティに関するトップレベルの情報が集まります。また、スタッフにはスマートシティで先進的なヨーロッパの、なかでも有名なデンマークのプロジェクトを手がけたメンバーも所属しています。

このプロジェクトが特徴的なのは、スマートシティづくりにおいて自治体ではなく事業会社が主体となっていることです。最近ではトヨタ自動車のWoven Cityが話題になりましたが、予算が乏しい自治体に代わり企業が費用を負担することで、スマートシティの取り組みが大きく前進する画期的な構造になっています。

――民間事業会社にとっては、プロモーションにもつながりそうですね。

渡邉:もちろんプロモーションの意図はありますが、民間事業会社が前面に出る事が必ずしも正解とは限りません。あくまでも企業は黒子として支えるかたちこそが、我々が目指すスマートシティの姿と考えています。日本では珍しいですが、北欧ではよく採用されるモデルなんです。

参加企業は、スマートシティにCSRなどの社会貢献で参加するだけではなく、あくまでビジネスとして取り組んでおり、企業も自治体も互いにWinになれるかどうかが、プロジェクトの成否を分けることになります。そこで私たちは、どこにビジネスとして成立するキーがあるのかを見極め、各社がビジネスに落とし込むための流れを示す役割を果たします。

ビジネスコンサルティングを得意にするI&I部と、スマートシティの知見を有するSIP事業部との「ケイパビリティは常に“掛け算”」を意識している例ですね。

それから、もう一つ特徴的なのは、国内先進事例をもつアクセンチュアと当社がスマートシティの推進に向けた共同提案をすすめていることです。

――競合にもなり得るコンサルティング大手との協働は、かなり珍しいですね。

渡邉:当初は「外資系企業との差異化戦略を」と意気込んでいたものの、最近では立ち位置が違う事を実感しています。一般的に競合と呼ばれるコンサルティング会社とも協力できることは協力して、地方における社会課題を解決していこうという方向性は、I&I部の趣旨と合致しています。こうしたパートナーとの協力によって、全国の自治体で使うことができる新しいスマートシティのモデルを作成しています。

――もう一つの事例を教えてください。

渡邉:MUFGと連携した「オープンイノベーション戦略プロジェクト」です。

既に大手企業は、オープンイノベーションの名のもとに、幅広い企業と連携し外部の力を結集することで新たな価値を生みだす取り組みを始めていますが、行き詰まってしまうケースも少なくありません。オープンイノベーションの概念と方向性は間違っていないものの、残念ながらなかなか成果につながっていませんでした。

そこでI&I部はMUFGと共同で「オープンイノベーションのジレンマ」を調査研究し、ボトルネックが何かを深掘りした提案書骨子を策定しました。この提案書をベースに、同様の課題をもつMUFGの多数のお客さまに提案することで、オープンイノベーションの取り組みを軌道に乗せることができました。

まさに「個」ではなく「群」に対し幅広く価値を提供した取り組みであり、最終的には必要となる資金面も含めて、金融グループとしての総合力で最後まで支援できた事例です。

MUFG各社は企業との接点が多く、企業の課題をよく知っています。彼らを通して市場のニーズを素早く正確に捉えることで、「こんな提案を待っていた」と言われるメニューを作りあげ、問題解決へとつなげることが可能になりました。

同様の悩みを抱える日本全国のMUFGのお客さまに今回のメニューを展開していくことで、オープンイノベーションを日本全体で加速させられるのではないかと思っています。

「新産業のOS」として社会を支える存在を目指す

――渡邉さんが描くI&I部の将来像についてお聞かせください。

渡邉:I&I部は、社会の基盤となる「インフラ」や「新産業のOS」として、社会全体の流れを支える組織でありたいと考えています。そしてMURC内部においては、新たな部を設置できるような事業を創発できる組織にしていきたいですね。そのためには特定のサービスメニューを拡大させるだけでなく、新しいテーマを生み出し続けることが大切です。

――「テーマを生み出す」ですか。

渡邉:クライアントはコンサルタントに画一的な能力を求めていません。前例のない課題と向き合い新しいものを創るには、解決する能力よりもテーマを作れることが重要になっています。「問い」を立てる能力と言ってもいいでしょう。MURCの特徴は、一緒にプロジェクトをすすめる関係者が多彩であるため「問い」の因子が多いことです。

私自身も、当社に参画したことで早くたくさんの因子と接する機会を得られたことは間違いなく、とてもありがたい環境で仕事ができていると感じています。

――I&I部で活躍するために求められるスキルや素養とは何でしょうか。

渡邉:「新しいことを実現したい」、「世の中のためになりたい」と思う同志にステージを提供するのが当部です。コンサルタントの基礎的な能力はもちろん歓迎しますが、これは参画していただいた後に身につくものなので必須ではありません。重視するのは前向きな姿勢であり、パッションです。

「日本のために」が枕言葉に付くような夢や大きなビジョンを口にするのは、何だか青くさい感じがするし、恥ずかしいと思っている人もいるでしょう。I&I部では、その夢があるのに実現のしかたが分からずにいるような人を求めています。そして、そういった人を十分にフォローしたいと考えています。実際に熱い思いをもって転職してきた、事業会社出身の若手メンバーもたくさんいます。

どこにいても、いずれは「世の中のため」を考える立場に立つと思いますが、それに早い段階で気づき高い視座を得られるのがMURCです。アソシエイトクラスの社員が、私がいま話したのと同じような文脈で会話しているのをよく耳にします。

正直、私がアソシエイトの時代よりもはるかに高い視座をもって仕事に向き合っています。彼らが私と同じ立場になったとき、MURCや社会がどうなっているのか、すごく楽しみなんです。ぜひ、この「高い視座に触れ・創発する事ができる環境」の中で成長しながら、次の時代を切り開いていってください。

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コラム作成者
Liiga編集部
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