はじめに
転職活動をしたことがない、経験が少ない方の中には、職務経歴書の書き方がわからないという方も多いのではないでしょうか?
新卒採用時のエントリーシートとも異なるため、そのルールを学習しなければなりません。
今回は、外資系企業で人事部長を歴任されている中島豊氏(中央大学ビジネススクール特任教授)に職務経歴書に関してアドバイスをいただきました。具体例とともにお伝えさせていただきます。
中島豊氏プロフィール 1984年に東京大学法学部を卒業後、富士通に入社し、一貫して人事を担当。 富士通在籍中にMBA留学(ミシガン大学)。 その後、リーバイ・ストラウス ジャパン、ゼネラルモーターズ・ジャパン、楽天、ギャップジャパン、シティグループ証券と外資系を中心に、人事の要職を歴任。現在も外資系金融機関で人事担当役員を務める。
職務経歴書は、タスクを書くのではなく、ストーリーを書け
-外資系でたくさんの職務経歴書を見られてきた中島様に職務経歴書についてアドバイスをいただきたいと思います。転職活動をするにあたって、若手の方だと職務経歴書を書いたことがないのですが、書き方についてコツのようなものがあれば教えていただきたいです。自分が担当してきた仕事をどのようにアピールしたらよいのか分からない方も多いと思うので。
担当した仕事はどのくらいの売上で、何人をマネージして、バジェットに対してどうだったかということが書かれていることが大事です。部署名と、タスクしか書かない人もいますが、それは典型的な悪い例です。
具体的な事例を挙げましょう。
・10億円の物品発注
これだとその人が作業したことしか伝わりません。人事は「ストーリー」をみたいので、
・10億円の物品発注を行うにあたって、5社に対してコンペを行った。比較の結果、A社にすることでこれまでより20%の支出を削減することに成功した。
というようなストーリーにすることで、見え方が大きく変わってきます。
また、会社から言われたことだけに従ったのか、自分から動いたかどうかも重要な視点です。大学でも教えていますが、面接の際に、日本人の学生だと、主語が「We」となります、一方シンガポールの学生に聞くと、主語が「I」となっており、本人が何を考えて何をしたか、そしてそれが自分起点のアクションかどうかということが明確になっています。
-外資系ということなので、英語の職務経歴書を求められますが、その場合、注意点はありますか?
基本的に動詞からはじまります。manage, lead, supervise, create, designといった動詞を利用して書いていきます。例えば、support~とかだと補助的な役割のためメインでやっていなくてジュニアなポジションなのだなという印象を持ちます。
-若手の場合、なかなかリーダーとしての経験が不足して、補助的な役割がメインになってあまり見栄えがよく見えないのではないでしょうか。
企業はほとんどのポジションで、リーダーの役割を担える人を求めています。若手がどんなポジションであれ、責任とリーダーシップを持ってやれる仕事が必ずあるはずです。
たとえサポート系の業務だとしても、何かしらプロ意識を持っているだけでまるで違ってきます。”Responsible for ~”と表現してみると、それが見えてくるはずです。日本では「データ入力」、「コピー取り」と表現される業務が、アメリカでは、「Data administration」「Document administration」といった表現がなされることからも、Data/Document(の管理)に対する「責任」を担当者が意識していることが読み取れるわけです。
履歴書の事例を大公開。動詞の使い方、役職に応じた書き方を覚えよ
-職務経歴書の例を見せていただけないでしょうか。
では、人事部門のキャリアを志望している場合の職務経歴書例をお見せしましょう。ただし、これはあくまで一例ですので、参考までにご覧ください。
基本的な内容ですのでご存知の方も多いと思いますが、まず書式として、最新の経歴がいちばん上になるように書く必要があります。企業名やポジション、何人をマネジメントしていたかなども記入してください。マネジメントを行っていなかった場合でも、どのような業務で責任をもち、何をリードしてどんな成果を出したかを書くべきです。
人事は、求めているポジションに相応の経験・スキルがあるかどうかを職務経歴書から読み取るので、できる限り詳細に書いた方が、ミスマッチも起こりにくくなります。
-このような職務経歴書のルールは、どのように学ばれたのですか?
MBA留学中に学びました。授業はもちろん、Placement office(就職課)でも徹底的にルールを習います。
MBAでは夏休みにインターンシップがありますので、常に練習しておく必要がありますし、インターン参加後も職務経歴書は定期的にアップデートしておかなくてはなりません。
ちなみに、幹部採用の場合には、職務経歴書をヘッドハンターが書いてくれる場合もあります。ヘッドハンターのインタビューに答えるとキャリアを職務経歴書にまとめてくれるので、それを確認して、提出するような形です。
しかし、MBA受験時にも同様のものを書いているはずなので、少なくともMBAに入学している学生であれば、すでにある程度きちんとした職務経歴書が書けるはずです。
-「弱み」は書いた方が良いのでしょうか?
弱みを書くことはあまりありません。強みに関しては、「Strength」(強み)と書くのも少し嫌らしい感じがしますので、「expertise」(専門知識)という形で、自分の専門性をアピールする場合が多いです。
おわりに
職務経歴書は紙切れ一枚ですが、最初のスクリーニングに引っかかると、選考に進むことができません。そのため、よい職務経歴書を書くために、自身の市場価値を把握し、適切にそれを伝える練習をしておくことで将来のキャリアが開けていくのではないでしょうか。