sponsored by 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
大手システムインテグレータ(SIer)の営業職を3年あまり経験し、仕事を通じて感じた限界や挑戦への意欲から、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)のコンサルタントに転身した埜口忠祐氏。シンクタンク部門や産官学との連携によって、社会課題を解決できることが決め手になったという。埜口氏に転職の背景や、MURCで経験したプロジェクト事例などを聞いた。
「真に悩みを解決する提案」が可能な環境を求めて、コンサルタントに転身
――埜口さんは大手SIer出身だと聞いています。MURCでコンサルティングに携わろうと考えた理由をお聞かせください。
埜口:日本の大手企業を新卒で経験してみたくて、大学卒業後、SIerに入社しました。官公庁を中心とする法人営業に3年半従事しました。転職を考えた理由は、いくつかあります。
まずは、働く組織の成り立ちです。日系大企業の組織は、どうしてもまず仕組みがあって、そこに個人をはめ込む「システム」的な部分が大きく、それに窮屈さを感じておりました。一方、コンサルティングファームでは、はじめにそれぞれ得意なことをもった個人があり、それらが組み合わさった結果としての「チーム」で力を発揮するという点で自分に合っていると感じました。
もう一つは、前職がSIerだったので、どうしても課題解決がソリューションありきになってしまうもどかしさを感じていたことです。もっと自由な立場で、顧客の悩み、ひいては社会全体の課題を解決できるような提案をしたいと考え、MURCでコンサルタントとして働くことを決めました。
例えば、仕様書があるシステム構築案件と違って、今はHow(どうやるか)だけでなくWhat(何をやるか)を自ら考え提示することが求められるため、アウトプットにおける自分の創意工夫の幅は格段に大きくなり、責任感・充実感ともに増しました。
シンクタンク部門と強みを寄せ合い、政府のロボット戦略策定に貢献
――埜口さんが経験した、特にMURCらしいプロジェクトを教えてください。
埜口:当社のシンクタンク部門である政策研究事業本部と共同ですすめた、次期ロボット戦略検討支援プロジェクトがあります。
経済産業省のロボット新戦略は2015年に発表されましたが、それをブラッシュアップする形で、「ロボットによる社会課題解決および産業振興」のあり方の検討を支援しました。
当社では、もともと数年前から一般社団法人日本ロボット工業会からの受託事業として「ロボティクス研究会」というコンソーシアムを開催していました。経済産業省やロボット工業会、大学、民間企業と、日本のロボットビジネス市場発展のための議論やプロジェクトをファシリテートしてきましたので、その中で得た知見やネットワークの強みを活かせると考え、提案しました。
MURCが担当したのは、3つのステップです。
まず、海外も含めたロボットビジネスおよび政策動向の調査、インタビューです。本来なかなかアポが取れない、著名な方へのインタビュー含め、多くの方から大変参考になるご意見を頂き、仮説をブラッシュアップすることができました。
調査には、政策研究事業本部の研究員に大きく支援頂きました。特に海外調査においては、欧州や中国など海外におけるロボットビジネスや政策動向にも明るい専門家が社内にいたことが、大変心強かったです。
――次のステップでは何を担当しましたか。
埜口:業界・テーマごとの研究会の実施です。ロボットと一口に言っても、関連プレーヤーには、サービス・製造・物流など業界の幅と、プラットフォーマー・メーカー・SIerなどレイヤーの幅があり、それぞれのアジェンダに適したメンバーを決めるところから担当します。
当社は研究会のアジェンダ・仮説の設定、ファシリテーションを行いました。研究会自体にも当社の研究員に参加してもらい、製造業におけるAI活用などの専門知見を提供してもらいました。
そして最後に、調査と研究会の結果を取りまとめた上で、ロボット産業支援政策オプションを整理しました。
プロジェクトを通して、日本が磨いてきたモノづくりの強みを生かしつつも、決してロボットありきの導入ではなく、「ユーザーへロボットならではの価値を提供する」視点での導入がすすむための仕組みや環境のデザインが重要だと感じました。
国のプロジェクトということもあり、何よりも「社会課題の解決」という目標に対し、クライアントである官僚の方含め、社内外の志の高い人と肩を並べて取り組めることにやりがいを感じました。
リーダーシップで産官学をまとめ、サプライチェーンの次世代像を創る
――他のプロジェクトも紹介していただけますか。
埜口:食品ロス削減を目指したスマートサプライチェーンの実証実験プロジェクトを、他のシンクタンク・事業会社と連携し、実施しました。RFIDという電子タグを商品に貼ることでモノの流れを可視化し、消費財サプライチェーンの課題に対してメーカー・卸・物流・小売が協調し、食品ロスを減らしていこうという、経済産業省所管のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトです。
具体的には、サプライチェーンの川上から川下まで、在庫や販売状況を一つのデータベースで共有し、需給調整を行うことで、食品廃棄などの無駄を削減しようという試みです。2019年2月に、コンビニエンスストアとドラッグストア計5店舗とモニターとなる家庭の協力を得て実験を行いました。
当社は、別プロジェクトで類似テーマの調査をしていたときの知見とネットワークを生かし、実験の設計およびパートナリング、実験結果分析を担当しました。
――国民生活に密接に関連するテーマも扱うのですね。プロジェクトの特徴を教えてください。
埜口:このプロジェクトは、シンクタンクとしての顔とコンサルティングファームとしての顔を併せもつ当社の立ち位置が生きた案件だと思っております。
社会課題の解決という大目標と、民間企業のビジネス視点での定性・定量的メリットを繋ぎ合わせることに主眼がありました。私は事務局の一員として、他社と協力して実験全体をコーディネートする役割を担い、民間企業に実験協力への経済的メリットを訴求するため、店舗における検品・棚卸の効率化や、店の棚やモニター家庭における新たなデータを用いたマーケティング手法の実証ができるよう設計・調整を行いました。
特に心がけたのは、協力企業の説得と利害調整です。誰が協力してくれるか、何を提供すれば協力してくれるのかを必死に考え、お願いしました。意外だったのは、相手へのメリットを示すのはもちろん大事ですが、何よりも「世の中をよくするために、協力してほしい」という青臭い思いを強く伝えることで動いてくれる方々が多かったことでした。
SDGsへの対応がグローバルで意識される中、シンクタンク系コンサルティングファームである当社としては、こういった場を通じて、社会全体の課題を日本企業にアジェンダとして打ち込んでいく責任があると感じております。
――他のシンクタンクと協業したプロジェクトだったということですが、どのように連携されたのでしょうか。
埜口:基本的には、互いの得意領域を生かす形で連携しました。技術的な領域においては、RFIDやデータベース標準化に知見をもつ他シンクタンクの有識者に中心になってもらい、当社は実験の設計やパートナリング、KPI設定による経済的なメリット算出に集中しました。
また、実験には東京大学や慶應義塾大学の教授も参加されたので、まさに産官学連携のプロジェクトとなりました。社会課題解決に向けた国のプロジェクトだったため、縄張り争いもなく、それぞれの得意なことをもち出し合ってすすめることができました。
自分たちが設計した仕組みが実際の店舗に実装され、来店したお客さまの目に触れることになりました。大きなやりがいを感じましたね。
「やりたいことを、MURCを使って成し遂げる」視座の高さが重要
――埜口さんと同じような経験をしてみたい方がいらっしゃると思います。MURCで大切なこと、活躍している人の特徴を教えてください。
埜口:まずは、知的好奇心が強いことです。コンサルタントはプロジェクトごとに毎回、短期間でインプットして徹底的に考え抜くことが求められますが、それを楽しめる人が特に当社には多いようです。私としても知的好奇心を満たせることがコンサルタントという仕事の大きな魅力の一つだと思っています。
特に私の担当した国家プロジェクトのような案件では、それぞれ異なる専門領域をもつ幅広いステークホルダーの課題認識をくみ取った上で、働きかけることが求められる場面が多いです。関係者が悩んでいることに対しては、手段にこだわらず最善をつくす姿勢が求められるので、経験したことのないテーマを前にしても怖気づくのではなく、ワクワクして取り組める人は親和性が高いと思います。
加えて、視座の高さも重要です。周囲の優秀なコンサルタントを見ていると、「MURCのコンサルタント」という意識ではなく、「自分のやりたいことを、MURCという場を利用して成し遂げる」という意識をもっている人が多いと思います。実際に未経験入社の方でも、入社早々「これがやりたい」と周囲に働きかけ、案件化に成功している方もいて、本当に尊敬します。
――では、埜口さんが一緒に働きたい人はどんな人ですか。
埜口:普段の生活において「これはおかしい。この問題をなんとか解決したい」とつい考えてしまうような問題意識の高い人です。優秀な上司たちを見ていると、クライアントが真に悩んでいることや、真に考えなければいけないことを紐解いていく姿勢が徹底されています。「問題解決力」だけでなく、高い「問題設定力」が求められるなと強く感じています。
もう一つは、いい意味で「少し変わった人」「とがった人」に来ていただければ嬉しいですね。コンサルティングファームで働くことの魅力は、高い成長意欲とさまざまな才能をもった面白い人が集結している場所であることだと思います。
通常「ダイバーシティ」という言葉においては、年代や性別、国籍などのデモグラフィックな要素が注目されますが、個人的には性格・資質などのサイコグラフィックな面でのダイバーシティも高まると、組織としても強くなれるのではないかと考えています。
――これから埜口さんが成し遂げたいことを教えてください。
埜口:現代は、近代に出来た組織・制度・慣習などの仕組みの中で息苦しさを感じる人々の声がやっと届くようになりつつある時代だと思います。抽象的な表現ですが、MURCという場を通じて、日本ひいては世界の「生きづらさ」を少しでも無くしていきたいです。
当社は三菱UFJフィナンシャル・グループに属するシンクタンク系コンサルティングファームとして、研究員部隊や官公庁・自治体・大企業・ベンチャー企業などとの豊富なネットワークをもっています。私にはまだまだ成長しなければならない部分が数多くありますが、やがてはそのような当社の資産を活かしながら、世の中を、不揃いな一人一人の人間にとって生きやすい場所に変えていきたいと考えています。
ちなみに、MURCには参加自由の「社内学会」という活動があるのですが、私自身は個人的な関心もあり、「テクノロジーを用いて、発達障害のグレーゾーンにあたる方が世の中で自然に活躍できる環境を作れないか?」を学会メンバーと研究しています。そのような、本業とは別で他部署の研究員やコンサルタントと社会課題に取り組める場があるのもMURCの魅力ですね。