ゆうです。
2013年に日本のIT系メガベンチャーの駐在員としてサンフランシスコに赴任し、その後紆余曲折あって、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。
原稿執筆時点である2020年4月現在、世界は新型コロナウイルスで大変な状況となっていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
僕の所属組織では3月初めから在宅勤務の命令が出され、かれこれ1カ月半ほど会社には出社せず、在宅で全ての業務を行っています。
もともとアメリカでは日本よりも在宅勤務(こちらではWork From Homeといいます。よくWFHと略されます)が一般的に行われており、僕も重要なミーティングがない日などにはよくWFHをしていました。
そんな状況だったので、今回の在宅勤務の命令が出されても特に困ることはなく、今のところほぼ全くストレスなく過ごせています。
日本でも緊急事態宣言の発令に伴い、リモートワーク化が進みつつあるようですが、ツイッターを見たり、日本の友人の話を聞く限りでは、アメリカほどにはスムーズに進んでいないように見えますね。
これにはもちろん色々な要因があると思いますが、今回の記事では、その1つとしてあげられる、日本とアメリカの働き方や考え方の違いについて紹介したいと思います。
・リモートワークの導入がなかなか進まない日本企業
・成果で評価されるアメリカ、プロセスで評価される日本
・部下の自律性を重んじるアメリカ、部下に細かく指示を出す日本
・まとめ:新型コロナウイルスが変える働き方
リモートワークの導入がなかなか進まない日本企業
緊急事態宣言発令後の4月中旬にパーソル総合研究所が実施した調査によると、日本企業のリモートワーク実施率は27.9%だったそうです(発令前の3月中旬時点では13.2%)。
かなり頑張っているなとは思いますが、目標である「出勤者最低7割減」にはまだまだ及びませんね。
日本で働く家族や友人に話を聞いても、完全にリモートワークに切り替えるのはなかなか難しそうです。
そんな中、某IT企業が開発・販売する、リモートワーク導入支援ツールの紹介記事をたまたま目にしたのですが、その内容にかなり驚かされました。
このツールを導入することで、管理者は各社員の現在の在席状況が分かるばかりでなく、社員のPCのスクリーンキャプチャを自動で取得・保存することができ、PC上でどんな作業を行っていたか確認できるというのです。
要するに、社員が在宅勤務中にサボっていないかを監視するツールというわけですね。
ネットでもけっこう批判されていたようなので、日本でもこのツールが当たり前に受け入れられるわけではないようです(良かったです)。
しかしながら、こんなツールが開発されること自体が、日本でリモートワークがなかなか普及しない原因の一端をよく表しているのではないかなと思います。
アメリカ人はそもそもこんなツールを開発しようなんて、思いつきもしないでしょうからね。
成果で評価されるアメリカ、プロセスで評価される日本
僕はよく日米の働き方を比較して
・日本では仕事の成果に関係なく、会社で机に座っていた時間で評価される
と言ったりします。
もちろんこれは、実情を100%正確に表現しているわけではありませんが、全体の傾向としては正しいと思います。
日本にいると気づかないかも知れませんが、日本は勤怠についてかなりうるさいです。
特に、始業時間に遅れたり、終業時間より前に帰宅したりすると、けっこうきつめに怒られます。
2019年、埼玉県川口市で、市の職員がバスの時間に間に合わせるために、終業時間の5分前に繰り返し無断早退し、懲戒処分を受けました。
なんでも、そのバスを逃すと30分待たなければいけなかったとか。
その5分間オフィスにいたからといって、いったいどれだけのことができるっていうのだろうと、正直、僕は思ってしまいます。
そんな5分間をかたくなに守らせるよりも、従業員がストレスなく通勤できる方がよほど大事です。
一方、アメリカの勤怠は、日本に比べてかなり緩いです(もちろん業種や職種、会社にもよるとは思いますが)。
日本だと、何か用事があって遅刻や早退するときって半休申請しますよね。
「今日は病院によってから出社するので午前半休します」みたいな。
アメリカではそんなことお構いなしに、みんな普通に遅刻してくるし、普通に早退していきます。
もちろん半休申請なんてしません。
しかも、日本だとなかなか言うのがはばかられるような理由での遅刻・早退が多いですね。
「宅配便を受け取ってから出社します」とか「ペットの散歩をしてから出社します」とか「ガールフレンドが誕生日なので早退します」とか。
日本だったら全部「業務時間外にやれよ」って怒られそうなものばかりです。
あと、業務時間中の中抜けも多いです。
「ちょっと2時間ほどジム行ってきます」とか「ちょっと髪切ってきます」とか。
ちなみに有給申請もかなり緩く、毎回きちんと有給申請した上で休みを取ってる人なんているのかなという感じです。
なんでこんなに緩いのかというと、アメリカでは仕事のプロセスなんて誰も気にしていないからなんですね。
上でも書いたように、アメリカでは、いつどこで何をしていようが、最終的に仕事の成果さえ出していれば問題ないわけです。
日本は製造業でのし上がってきたという経緯があるからなのかもしれませんが、業界に関わらず、製造業の経営管理の仕方が浸透してしまっていますね。
決められたものを、決められた数だけ、決められた時間内に作ることが求められる製造業であれば、きちんと時間通りに出退勤し、勤務時間中は仕事だけに集中することが最適な管理方法なのかもしれません。
しかしこのやり方は、製造業以外の、特にホワイトカラーの仕事にはちょっとそぐわないですよね。
日本でもホワイトカラーの仕事であれば、プロセスではなく成果で評価するようにすべきだと思います(僕が言うまでもなく、もうかなり以前から言われています)。
しかし、これまでずっとプロセス偏重で評価を行ってきた日本人上司は、部下を成果で評価する能力が備わっていないのかもしれません。
部下が時間通りに出退勤し、業務時間中はサボらず仕事をしているか。
それしか評価基準がない上司にとっては、上述のリモートワーク導入支援ツール(という名の監視ツール)は、必要不可欠なものなのかも知れません。
部下の自律性を重んじるアメリカ、部下に細かく指示を出す日本
成果主義かどうかというのは表面的な違いでしかなくて、日本とアメリカの働き方は、その根源となる思想から大きく異なるように感じています。
なんというか、アメリカの働き方やマネジメントスタイルは、性善説をベースにしているように思います。
社員には必要最小限の指示だけして、後は好きなように伸び伸びと働かせてあげれば、おのずと最高のパフォーマンスを発揮するはずだ、という考え方ですね。
ですので、アメリカの会社のマネージャーの仕事は、勤怠管理ではなくモチベーション管理です。
週次で行う1on1(1対1の面談)でも、マネージャーは部下のモチベーションの状況をかなり注意して見ていますし、モチベーションを上げるために必要なことを意識的に行います。
マネージャーが部下の仕事の進め方に細かく口を出すこともありません。
アメリカ人は「自律性」を非常に重要視します。
細かい指示を出されると、アメリカ人のモチベーションは目に見えて下がります。
アメリカのマネジメントが性善説に基づいているのとは逆に、日本のマネジメントは性悪説に基づいているように感じます。
社員はきちんと見張っていないとすぐに仕事をサボるし、細かく指示を与えないとろくな仕事ができない、と。
勤怠管理は日本のマネージャーの大切な仕事の1つで、有給の申請漏れがあるとすぐにリマインドが来ます。
ちなみにですが、日本式の細かいマネジメント方式はアメリカでは「マイクロマネジメント」と呼ばれ、とても嫌われています。
日本からアメリカ支社に赴任した日本人が、アメリカ人の部下を持ち、慣れ親しんだ日本式のやり方で部下を管理しようとすると、部下から総スカンを食らいます。
そのまま部下との関係が修復できず、数カ月で帰国を余儀なくされることも・・・。
アメリカの性善説に基づいたマネジメントと、日本の性悪説に基づいたマネジメント。
どちらが正しいとか間違っているというものではないと思いますが、このリモートワーク時代においては、性善説に基づいて仕組みを構築した方がいろいろとやりやすいのではないかなと思います。
まとめ:新型コロナウイルスが変える働き方
以上、新型コロナウイルスへの対応の違いをきっかけに、日米の働き方の違いを見てきました。
簡単にまとめると以下のとおりです。
・リモートワーク支援ツールとして、社員の勤怠監視ツールが導入されることも
・アメリカではプロセスではなく成果で評価されるため、勤怠管理は日本に比べてかなり緩いことが多い
・アメリカのマネジメントは、社員は自由に伸び伸びと働かせれば最高のパフォーマンスを発揮するという性善説に基づいている
・アメリカで日本式のきめ細かいマネジメントを行おうとすると「マイクロマネジメント」と呼ばれ部下から嫌われるので注意
今回の新型コロナウイルス蔓延による変化は決して一過性のものではなく、我々のこれからの働き方を中長期的に変えていくものになります。
アメリカのやり方を全て真似する必要は全くありませんし、またそうすべきではないと思いますが、これからの働き方を考える上で、アメリカの働き方もぜひ参考にしていただけると幸いです。