メガバンクから未経験で飛び込んだ、投資銀行M&Aアドバイザリー「信念を貫くことで突破口がひらける」
2020/05/16
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一般的に「将来は安泰」といわれるメガバンクに入っても、求めている働き方とのギャップにより、次のキャリアを考えている人は少なくないようです。しかしそこで問題になるのが、「どんなキャリアを思い描くか」です。

今回お話を伺った鈴木真さん(仮名)は新卒でメガバンクに入行し法人営業を担当。若くして同社のロンドン支店に異動になり、経験を積みました。

その時海外で働くエリートたちから刺激を受け、帰国後しばらくして転職活動をスタート。M&A業務未経験にもかかわらず、証券会社投資銀行部門でM&Aアドバイザリーとしての職を得ました。

ここでは、転職を決めた理由や、未経験にもかかわらずM&Aアドバイザリーで転職ができた要因を中心に、鈴木さんの転職活動を振り返っていただきました。

〈Profile〉
鈴木 真(仮名) 証券会社 投資銀行部門M&Aアドバイザリー
新卒でメガバンク入行。当初は国内で法人営業を担当していたが、若くしてロンドン支店に異動が決定、世界有数の金融街で経験を積んだ。帰国後しばらくしてからM&Aに携われる仕事を求めて転職活動をスタート。未経験にもかかわらず、現職のポストを勝ち取った。


【目次】
・最年少ロンドン勤務から、未経験でM&Aアドバイザリーへ
・転職の理由は「会社に依存しないプロフェッショナリティーを手に入れたい」
・未経験で勝ち取ったM&Aアドバイザリーのポスト。決め手は英語力と体育会経験?
・「未経験」の壁を乗り越える術は、社内事情に振り回されず信念を持ち続けること

最年少ロンドン勤務から、未経験でM&Aアドバイザリーへ

ーーまずはこれまでの経歴についてお聞かせください。

鈴木:新卒でメガバンクに入行した当初は、ベンチャー企業に飛び込みで法人営業をしていました。大企業とのマッチングを提供するなどの評価が認められて、口座開設や新規取引獲得に結び付けていました。毎日門前払いをされて、6〜7日目にようやく会ってくれたクライアントもいました。

そうしたガッツが評価されたのか、当時としては最年少の入行3年目にしてロンドン支店に異動が決まりました。就職活動の時から世界を舞台に活躍できる仕事がしたかったので、本当に嬉しかったです。

ーー海外支店にはどれくらいいたんですか。

鈴木:海外支店にいたのは2年です。初めの1年は非日系法人を対象にした営業、2年目は日系法人の海外子会社などに対する営業をメインに、RM(Relationship Manager)のサポートに携わりました。

転職後は、証券会社の投資銀行部門で、M&Aアドバイザリーとしてクロスボーダー案件(国際間取引)のオリジネーション(案件発掘)を担当しています。

転職の理由は「会社に依存しないプロフェッショナリティーを手に入れたい」

ーー前職でのご経歴はかなりの出世コースのように思えます。どうして転職を決められたのでしょうか?

鈴木:会社に依存しない、プロフェッショナリティーを手に入れたいと思ったからです。銀行というのは良くも悪くもゼネラリストが評価される傾向にあります。いかに多種多様な経験と知識を身につけるかどうか、が重要視されるのです。しかし海外で出会ったエリートたちは違いました。彼らは、自分のスキルと経験で、どこでも生きていけるプロフェッショナリティーを持っていました。

ーー前職の業務の中でプロフェッショナリティーを磨くことは難しかったのでしょうか。

鈴木:日系メガバンクの法人営業の仕事の4〜5割は、資料作成を中心とした社内向けの業務で占められています。海外支店の時はよりその割合は大きく、8〜9割は社内向けの業務でした。

ーー社内向けの資料作成がそんなに多いんですね。

鈴木:そのため仕事をスムーズに進めようと思うと、どうしても社内の都合を優先した仕事の仕方をする必要があります。加えてメガバンクの人事評価は完全にブラックボックスですから、なおさら社内の目を気にして仕事をすることになります。

もちろんそうしたヒエラルキーが機能している組織の方が優れている点もあります。しかし私には、海外のエリートたちの働き方のほうが魅力的に見えたのです。

未経験で勝ち取ったM&Aアドバイザリーのポスト。決め手は英語力と体育会経験?

ーー銀行の法人営業からM&Aアドバイザリーとなると、未経験での転職ということになると思いますが、転職活動はどのように進めたのでしょうか。

鈴木:日本で働いているイギリス人の友人に「近いうちにM&Aがやりたいんだ」という話をしたところ、「自分が世話になった優秀なヘッドハンターを紹介するよ」と言ってもらったのです。

1度会って相談をしたら、「試しにCV(履歴書)を書いて、何社か受けてみなよ」という話になりました。海外勤務から帰ってきてすぐだったので、ためらいもあったのですが、試しならいいかと思って受け始めました。

ーーどういった会社を受けられたのですか?

鈴木:Merrill LynchやGreenhill & Co、野村證券、フロンティア・マネジメント、デロイトーマツ ファイナンシャルアドバイザリーなどです。

ただ、やはりM&Aに関しては未経験だったので、はじめからM&Aアドバイザリー業務に携わらせてくれるところは、なかなか見つかりませんでした。

「カバレッジ(営業担当者)からなら考えてもいい」という会社が多く、実際に受けた会社のうち1社はカバレッジ採用で専務面接まで進んでいました。

ーーそこで決めなかった理由はどこにあったのでしょうか?

鈴木:プロフェッショナリティーを磨く、が転職の目的だったからです。未経験ですし、自分の資質的にもカバレッジが向いているのは理解していました。

しかしカバレッジから始めてオリジネーションに携われるようになるまでに何年かかるのか、そもそも携われるようになるのかは誰にもわかりません。だからできるなら最初からM&Aに直接関わる仕事に就きたかったのです。

ーー現職は最初からM&Aアドバイザリーとしての選考だったのですか?

鈴木:いえ、現職の面接も2次まではカバレッジの選考でした。しかし、3次面接の担当者が投資銀行部門の人で、そこで直接M&Aの仕事がしたい旨を伝えたところ、「面白いね、君。未経験者の採用は本来していないけれど、とりあえず部長に会ってみるといい」と言ってもらえたのです。

結果、4次面接で投資部門の部長である、今の上司に運良く気に入ってもらい、オファーをもらうことができました。

ーーどんなところが気に入られたのだと思いますか?

鈴木:一番のポイントはメガバンクでの海外勤務の経験があったことだと思っています。法人営業だったので、B/SやP/Lといった財務諸表をはじめとするファイナンスの知識がありましたし、英語も一通りできました。

ーーやはり英語ができることはポイントになるんでしょうか。

鈴木:クロスボーダー案件に関する資料のうち、読む資料は8割以上が英語、書く資料も2割は英語です。そのため「英語で仕事をしていました」と言えたのは大きかったと思います。あとは私がM&Aアドバイザリーの中では珍しい、体育会系だったというのもポイントだった可能性はあります。

昔から人を巻き込むのが得意で、チームを作って何かを成し遂げるのが好きでした。大学時代の体育会系部活の話を、実例を交えて熱く語ったのが、面接官に響いたのかもしれません。

ーー投資銀行には体育会系の人たちは少ないものですか?

鈴木:私の周りにはいません。カバレッジの人たちは違うかもしれませんが、M&Aの人たちはスマートな人たちが多い印象ですね。

「未経験」の壁を乗り越える術は、社内事情に振り回されず信念を持ち続けること

ーー今メガバンクに勤めていて、未経験からM&Aアドバイザリーを目指す人たちに対して、何かアドバイスはありますか?

鈴木:ファイナンスの知識を身につけておくのは前提ですが、大切なのは自分の信念を持って日々仕事に臨むことです。メガバンクに勤めているとどうしても社内に目が向きがちですが、投資銀行の仕事は真逆です。

今の仕事で、社内向けの業務に使う時間はほとんどありません。ほぼ全ての労力をクライアント向けの業務に注ぎ込んでいます。

ーーマインドセットを完全に変える必要がありますね。

鈴木:はい、部下が上司に対して食ってかかることは日常茶飯事ですし、上司も部下の意見がロジカルで、数字に裏打ちされていればしっかりと話を聞きます。自分の信念を持って「上司を説き伏せてでもクライアントの役に立つ提案をするんだ」という姿勢が必要なのです。

ーー未経験でも可能性はありますか。

鈴木:私が転職活動をしていた頃と違い、今は各社が働き方改革などの影響で人手不足に陥っています。経験者を採用しているだけでは追いつかないので、未経験者の採用枠を設けているところもあります。これは未経験者にとってはチャンスだと思っています。

自分からヘッドハンターやエージェントにコンタクトをとり相談して、自分に足りないものを明確化し、そのギャップを埋める努力をしていれば、きっと道は拓けるはずです。

コラム作成者
Liiga編集部
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