理系出身コンサルのネクストキャリアとして「プロダクトマネージャー」を薦める理由 | 海外就職のすすめ(16)
2020/05/19
#GAFAでの働き方
#海外で働きたい

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ゆうです。

2013年に日本のIT系メガベンチャーの駐在員としてサンフランシスコに赴任し、その後紆余曲折あって、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。


プロダクトマネージャーという職種ですが、日本でも最近ようやく少しずつ知られるようになってきました。しかし「プロジェクト」マネージャーに比べると、まだまだマイナーな職種なのではないでしょうか?

実はプロダクトマネージャーは、シリコンバレーをはじめとするアメリカのテック業界では、エンジニアと並んで非常に人気のある花形職種です。

また、コンサルタント、特に理系出身のコンサルタントにとっては、かなり親和性の高い職種だと思います。


今回の記事では、現役コンサルタントやコンサル志望者が多いLiiga読者に向けて、コンサルのネクストキャリアとして、プロダクトマネージャーをお薦めする理由を紹介したいと思います。

〈Profile〉
ゆう
東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。外資系コンサルティング会社で数年の経験を積んだ後、IT系メガベンチャーに転職。2013年に同社の現地駐在員としてサンフランシスコ支社に赴任。2017年、サンフランシスコ支社の閉鎖を受けてAmazonシアトル本社に転職。プロダクトマネージャーを務める。アメリカ生活7年目。アメリカでの半年間の就職活動経験を活かし、英語や海外就職について発信中。
▶Twitter:@honkiku1
▶Blog:https://honkiku.com/
▶Note:海外就職攻略の教科書

※記事の内容は全て個人の見解であり、所属する組織・部門等を代表するものではありません。


【目次】
・プロダクトマネージャーって何?:ミッション達成のためには何でもする「ミニCEO」
・コンサルの問題発見・解決スキルがそのまま使える
・エンジニアと会話できるだけの技術的素養が必要
・「仕事の結果がすぐにデータに反映される」喜び
・まとめ:プロダクトのビジネスとしての成功に責任を持つのがプロダクトマネージャー


プロダクトマネージャーって何?:ミッション達成のためには何でもする「ミニCEO」

コンサルタントにプロダクトマネージャーをお薦めする理由の前に、まずはプロダクトマネージャーという職種自体を簡単に説明しておきます。

実はプロダクトマネージャーの具体的な仕事内容というのは、業界や企業、チームによってかなり異なります。


さらに言えば、同じチームに所属するプロダクトマネージャーでも、その仕事内容は個人によって異なることが往々にしてあります。

Aさんはプロダクトのデータ分析とそれに基づく機能改善を担い、Bさんはマーケティング施策を担当し、Cさんはチーム内外の調整を行う、みたいなことがよくあります。


このように、実際に行う仕事内容は千差万別なのですが、プロダクトマネージャーのミッションは共通しています。それは「プロダクトのビジネス的な成功に責任を持つ」というものです。

注:ちなみに「プロダクト」とは、ここではアプリやWebサービスなど何かしらのソフトウエアのことを指します。自動車やコンピュータなどのハードウエアにもプロダクトマネージャーは存在するとは思いますが、僕はハードウエアについては詳しくないので、ソフトウエアのプロダクトマネージャーに絞って説明します。


プロダクトチーム(プロダクトを開発・運営するチーム)は、プロダクトマネージャーの他にも、デザイナーやエンジニア、プロジェクトマネージャーなど様々な職種によって構成されています。

その中で、プロダクトのビジネス的な成功(多くの場合、売り上げや収益)に責任を持っているのは、多くの場合、プロダクトマネージャーだけです。


デザイナーは、使いやすいインターフェースや個々の機能の性能については責任を持ちますが、最終的にそのプロダクトがもうかるかどうかは、あまり気にしない傾向があります。

エンジニアはロバスト性が高く、ハイパフォーマンスなソフトウエアを構築することがそのミッションですし、プロジェクトマネージャーは、プロダクトが予定通りの予算とスケジュールでリリースされさえすれば、その後の売り上げに責任は持ちません。

プロダクトマネージャーだけが、そのプロダクトがリリース後もユーザー数を伸ばし、キャッシュを稼ぎ続けることをミッションとしているのです。

(もちろん、優秀なメンバーはプロダクトマネージャーでなくてもプロダクトの成功を意識して動きますが、職種のミッションとしてビジネス上の成功に責任を負うのは、多くの場合、プロダクトマネージャーだけです)


つまり、プロダクトがビジネスとして成功を収めるために必要なことは何でもしなければならない、スーパージェネラリストとしての働き方が求められるのが、プロダクトマネージャーという職種なんですね。

スケジュールに遅延が発生していれば、その原因を究明して、円滑に進むように力を注ぎ、集客が弱ければマーケティング施策に知恵を絞ります。

プロダクトマネージャーの具体的な仕事内容を定義しづらいのは、こんな理由からなんです。

「プロダクトマネージャーとはプロダクトのミニCEOである」みたいな言い方をよくしますが、確かにスタートアップのCEOはこんな感じなのかもなという気はします。

「プロダクトマネージャーは起業家への近道」といわれるのもそういった理由からかも知れません。


さて、プロダクトマネージャーの役割をなんとなく理解していただいたところで、次章からは、僕が「理系のコンサル出身者はプロダクトマネージャーに向いている」と考える理由を説明したいと思います。


コンサルの問題発見・解決スキルがそのまま使える

コンサルタントのお仕事はクライアントの問題解決ですよね。

クライアントの抱える課題に対して、調査やデータ分析を通じて課題を明確にし、真因を特定して打ち手を考え、クライアントを説得して行動を促す。

その問題解決スキルは、プロダクトマネージャーになってもそのまま使えます。


プロダクトマネージャーの1日はダッシュボードのチェックから始まります。

直近24時間で何か問題が起きていないか、現在実施しているA/Bテストの進捗はどうなっているか、中長期トレンドは順調に推移しているかなどを確認します。

ここでもし問題が見つかれば、さらにデータを深掘りし、スピーディーに仮説を構築して施策を立案し、効果がありそう(かつ早くできそう)なものから実行し、実行後にデータをチェックしてその効果を測定する。

こんなことを日々行っています。


素早く行える施策であれば、その場ですぐに実行を決めてしまうことも多いですが、ある程度の規模のものになれば、それなりの承認プロセスを経る必要があります。

必要となるコスト、スケジュールと、期待できる効果などを見積もってリーダー陣を説得する必要がありますが、これもコンサルタントならば個々のプロジェクトで散々やっていますよね?


データ分析、仮説構築、施策立案、効果見積もり、プレゼンといった、コンサルティングプロジェクトを通して身につけられるスキルをそのまま流用できること。

これが、コンサル出身者にプロダクトマネージャーをお薦めしたい大きな理由の一つです。

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エンジニアと会話できるだけの技術的素養が必要

コンサルタントの中でも、特に理系出身者(理科系の学部を出ていたり、エンジニア経験のある人達)は、さらにプロダクトマネージャーに向いていると思います。

理由は簡単です。プロダクトマネージャーは、プロダクトを実際に作るエンジニアが実現できるようなソリューションを考案する必要があるからです。


技術的素養のないプロダクトマネージャーが考える施策は、机上の空論であることがしばしばあります。「そんなデータの持ち方はしていない」「計算量的に無理」「本番環境のパフォーマンスに重大な影響を与える可能性がある」など、エンジニアから総ツッコミが入ります。

そういったチェックをするのがエンジニアの仕事でもあるので、プロダクトマネージャーが初めからエンジニアリングの観点からも完璧なソリューションを考える必要はありません。ですが、ある程度の技術的素養がないと、エンジニアからのそういった指摘を理解することもできません。

エンジニアの指摘を理解できないと、エンジニアからの信頼を失ってしまうわけです・・・。

プロダクトマネージャーがバリバリにコードを書くことができる必要はないのですが、

・言語は何でもいいので、プログラミングを学んだことがある
・ネットワークやサーバー、データベースの仕組みがなんとなく分かる
・その業界で使われる技術を大まかに理解している


くらいの技術的素養があると、エンジニアともスムーズに会話できると思います。


「仕事の結果がすぐにデータに反映される」喜び

では、コンサルタントからプロダクトマネージャーにキャリアチェンジして得られるものとは何でしょう?それは当事者として仕事の成果を体感できることです。

コンサルタントは基本的には提案して終わり、ITコンサルであればシステムを導入して終わりであることも多いです。

最近はコンサルタントのあり方も変わってきていて、提案だけでなく実行のサポートもしたり、システム導入後の継続的な改善にも携わったりするとは聞いていますが、結局は「他人事」です。

コンサルタントはどこまで行っても当事者にはなれませんし、そもそもそんなことは求められていません。

自分が携わったプロジェクトの成果が見えることはあまりなく、もしあったとしても数カ月〜数年後に新聞記事などで見かけて「ああ、これあのときの」となる程度です。


初めは様々な業界の様々なプロジェクトに携われることを非常にエキサイティングに感じるかも知れませんが、それもいつしかむなしくなってきます。

「自分がしてきたことは結局何も生み出していないのではないか?」と。


一方、プロダクトマネージャーは違います。

自らのプロダクトを開発して世に送り出し、ユーザーからの反応をダイレクトに受け取って改善につなげていく。

何か施策を行えば、その結果はすぐさまデータに反映されます。

「自分の仕事の結果が見えない」なんてことはありえません。

逆に、自分の仕事の結果が残酷なまでにデータに現れます。


もしコンサルタントとしての働き方にむなしさを感じているのなら、プロダクトマネージャーはとってもオススメです!

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まとめ:プロダクトのビジネスとしての成功に責任を持つのがプロダクトマネージャー

以上、プロダクトマネージャーのお仕事と、それがなぜ理系のコンサル出身者にお薦めなのかを説明してきました。

簡単にまとめると以下のとおりです。

・プロダクトマネージャーのミッションは、プロダクトのビジネス的な成功に責任を持つこと
・そのミッションを達成するために必要なことは何でもしなければならない。そのため、スーパージェネラリストとしての働き方が求められる
・コンサルタントとして鍛えたデータ分析、仮説構築、施策立案、効果見積もり、プレゼンといったスキルは全て、プロダクトマネージャーに転用可能
・ある程度の技術的素養を持っていないと、実現性の高い施策を考えられないばかりでなくエンジニアと満足に会話することもできず、彼らからの信頼を得られない
・自分の仕事の結果が見えづらいコンサルと異なり、プロダクトマネージャーの仕事は結果がすぐにデータとして現れる

コンサルタントの仕事自体は非常に面白くやりがいのあるものですが、もしその次のステップを考えているのなら、プロダクトマネージャーも視野に入れてみてはいかがでしょうか?
連載記事「海外就職のすすめ」
コラム作成者
Liiga編集部
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