政府系機関から外資系戦略コンサルへの転職者が語る「労働時間は短くなったが、年収は上がった」
2020/05/21
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国立大学を卒業してから政府系機関に就職して海外勤務も2年経験。その後、外資系戦略コンサルティングファームに転職した柿谷さん(仮名・20代)。国と民間、日本国内と海外の仕事を経験し、若くしてビジネスでの見聞を広めた柿谷さんに「政府系機関と外資系コンサルの違い」「外資系戦略コンサルの面接事情」「オンライン面接の心得」などについてお聞きしました。

〈Profile〉
柿谷さん(仮名・20代)外資系戦略コンサルティングファーム勤務
国立大学を卒業後、政府系機関に就職。6年間在籍した中で海外勤務も経験。海外駐在中に現地からリモートで転職活動を行い、外資系戦略コンサルティングファームの日本オフィスに就職。現在2年目。


【目次】
・海外赴任中に、焦らず1年がかりで転職活動
・ケース面接のポイントは中身よりもテーマの理解と論理構成
・政府系よりコンサルの方が勤務時間は短いが、精神的負担はキツい
・コンサルをやめてから何をしたいか。「確固たるビジョン」を持っておくこと

政府系機関で海外赴任中に、1年かけて戦略コンサル狙いの転職活動

ーーこれまでのご経歴を教えてください。

柿谷:新卒で政府系機関に入って4年間、国内のインフラ整備などの仕事をやっていました。その後海外に行って、2年間インフラ整備などへの融資関連の仕事をしました。

帰国後に、現在の外資系戦略コンサルティングファームに転職しました。転職してからは、自動車通信の新規事業を手掛けています。

ーー新卒時の就活は政府系機関以外にどこを受けましたか。

柿谷:人材系企業やメガベンチャー、商社やコンサル、事業会社などを幅広く受けました。政府系金融機関もいくつか受けましたね。

ーー政府系機関を選ばれた理由は何でしょうか。

柿谷:その政府系機関は、新卒でも入った時からすぐ仕事を任されるのがいいなと思いました。最初は下積みのところが多いですからね。自分でプロジェクトを企画して、複数の人を巻き込んで動かしていける点が魅力的でした。

ーー最初の勤務地は日本ですか。

柿谷:日本で勤務していました。担当する国に赴任している日本人とペアを組んで、仕事を行っていました。現地の情報をペアの相手に集めてもらい、プロジェクトの詳細はこちらで考えます。必要に応じて現地に出張していました。

ーー転職までの経緯を教えてください。

柿谷:政府系機関に在籍中、海外勤務を2年しましたが、後半の1年は現地で転職活動をしていました。平日はしっかり働きたかったので、土日に転職エージェントの方とオンラインで面談をしました。

転職まで1年かかった理由は、最も転職したかった企業を、最後に受けようと考えていたからです。面接を受けて、その改善点を次の面接に反映させることを何度か繰り返しました。必ず辞めると決めていたわけではなかったので、焦っておらず、質重視でマイペースに行いました。

ーー最初からコンサル志望だったのでしょうか。

柿谷:はい、コンサル系、できれば戦略系を狙いたいと考えていました。人生のどこかで一度やってみたいと思っていたのです。

ーーそれはなぜでしょうか。

柿谷:海外の現地で日本企業と一緒に仕事をしていると、会社の事情などでプロジェクトを実施できないことが何度もありました。その経験から、意思決定に関わる部分を変えていかないとプロジェクトを実現させていくのは難しいと思いました。それなら、戦略系のコンサルがいいのではないかと。

ーー現職の外資系戦略ファームに決めた理由を教えてください。

柿谷:ここに受かったからですね。新卒で就活した際に今の会社を訪問したことがありました。雰囲気が良かったのを覚えていたので、決めました。

ケース面接のポイントは回答の中身よりも、“全体感”の把握と論理構成

ーー外資系ファームの1次面接について教えてください。

柿谷:面接時間は1時間でした。駐在先からオンライン面接で受けましたね。その中で志望動機を聞かれるのが5分ぐらいで、残り55分がケース面接です。トピックはその志望動機に基づき設定されました。

インフラ整備や工事を、より効率よく進めるためにはどうすればいいか。それをゼロベースで考えるという内容でした。私がインフラ案件を中心にやっていたからでしょう。

ーー質問に対して即答していくような形式でしょうか。

柿谷:考える時間はある程度与えられて、即答しなければいけないケース面接ではなかったです。話す内容が正しいかどうかではなく、どういう思考のプロセスで考えているかを重視されていたように思います。面接官は、マネージャーが1人でしたね。

ーー2次面接はどのような内容でしたか。

柿谷:こちらも駐在先からオンラインで受ける1時間程度の面接でした。1時間のうち20分ぐらいは志望動機について聞かれましたね。残り40分はディスカッションベースのケース面接という感じです。

ーー具体的なテーマはなんだったのでしょう。

柿谷:自動車関係のコンサルをしている面接官だったので、自動車についてです。頭文字をとってCASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)と呼ばれる潮流があるのですが、これについてどう思うかを聞かれました。

そもそもCASEを知らなかったので、まずはそれについて教えてもらいました。そして、教えてもらった内容をベースにディスカッションをした感じです。

ーー知らないことを素直に伝えて教えてもらったんですね。

柿谷:コンサルでは、お客様の方が情報をたくさん持っている場合が多いんです。その中でちゃんと話を進めていけるかどうかが大事だと思います。1次面接は私が知っていることがベースのケース面接だったので、2次面接では知らないことを問い掛けた時の反応を見ていたのでしょう。

ーー面接の手応えはありましたか。

柿谷:途中で落ちたと思いましたが、最後に一緒に働こうといわれて安心しました。その後、入社まで時間が空き過ぎたので、もう1回面接を受けてくれといわれました。それで3次面接がありました。

ーー3次面接の内容を教えてください。

柿谷:3次面接はたまたま日本に帰っていた期間だったので、先方の日本オフィスで受けました。時間は1時間で内容はケース面接です。「インフラ整備に使用する機械メーカーをより良くするにはどうするか」を社長に提言するという内容でした。面接官とディスカッションをした後、最後に2分で社長に提言してくださいといわれました。

ポイントをおさえて話す能力があるかが問われたと思います。コンサルに入ったら毎日行うことです。会議が終わった瞬間に、リーダーは要点をまとめて部下に仕事を振らなければいけません。最低限の仕事ができるかどうかを確認されたのでしょう。

ーーケース面接の回答について、ポイントがあれば教えてください。

柿谷:「全体感を捉えて話すこと」「論理構成を正しく組むこと」「自分のスタンスを取ること」の3つでしょう。

ーーケース面接対策はどんなことをどれくらいやりましたか。

柿谷:あまり時間はかけなかったです。やっていたのはエージェントの人と文書ベースのやり取りでしょうか。添削のようなものを3~4カ月やりました。1週間に30分ぐらいです。面接そのものは、“実戦”を通じて上達することをすすめるエージェントだったのでそういうやり方をしました。

ーーオンライン面接について気をつけたことはありますか。

柿谷:「ゆっくり話す」「簡単な言葉で話す」「最初に何を言うか宣言してから話す」ですね。例えば、答える前に「2つあります。これとこれとついて話します」などの工夫をしないと、面接官に伝わりづらいです。

相手の顔が見えないので伝わっているか、わからないことがあります。そういうときは「まだ続けていいですか」「いったん切りましょうか」などと問い掛けて、確認しながらやりました。

政府系よりコンサルの方が勤務時間は短いが、精神的負担はキツい

ーー政府系機関から転職する人はどのようなところにいくのでしょうか。

柿谷:コンサルや金融、商社などが多いですね。国際金融機関などもあります。転職する年代は若手の人が多く、私の同期だと3分の1は転職しています。3~4年目から10年目ぐらいまでに出る人が多いです。

ーー政府系機関の年次が高い人たちは、転職組なのでしょうか。

柿谷:いいえ、新卒から上がっていくことの方が多いです。中途採用を積極的にやりだしたのは最近です。将来的には中途の人の割合が増えていくと思います。

ーー政府系と民間の違いなどを教えてください。

柿谷:違うところは、数字感覚でしょう。コンサルは民間企業の経営をより良くするのが仕事なので、コストとリターンが大事です。政府の場合は、予算のなかで定性的な社会的効果を含めて出すのが仕事で、数字だけでは語り切れないのでコンサルは数字に対するシビアさがまったく違います。

ーー政府系機関とコンサルでは年収などの違いはどうですか。

柿谷:コンサルの方が圧倒的に稼げますし、収入がモチベーションになっています。政府機関では、成果が給与にあまり反映されないので差が出ません。私がいた政府系機関は社会貢献をしたい人が入ってくるので、収入が多くなくても、皆さん仕事に対するモチベーションが高いんです。

ーーコンサルでは入社時に年収の交渉はできるのでしょうか。

柿谷:交渉は自由にできますが、私はしていません。交渉しなくても前職よりも年収が上がったからです。

ーー入社してからの状況をお聞かせください。

柿谷:想像していたよりも労働時間は少ないですね。非管理職だと労働時間の制約が、働き方改革の影響で厳しくなっています。土日は働かなくていいし、平日も安定しているプロジェクトであれば、午後8時か9時には帰れます。

ただし、精神的な面ではコンサルの方がきついですね。コンサルは成果にコミットしていて、政府系機関はアクションにコミットしているかに違いがあるからです。

ーー担当するプロジェクトはどのように決まるのですか。

柿谷:2パターンあります。プロジェクトが終わったタイミングで、自動的にほかの案件にアサインされるパターン。それと、自分から募集リストにアプライ(応募)をして選ばれるパターンです。今は案件が多くて人が足りないので、最初のうちは毎週の会議で自動的に決まっていきます。

コンサルをやめてから何をしたいか。「確固たるビジョン」を持った方がいい

ーーコンサルとして今後成し遂げたいことはありますか。

柿谷:価値を生み続けて、この仕事を長く続けたいと思っています。新しいサービスを世に出して、日本経済新聞の一面に出るくらいに評価されたいですね。実際には10件コンサルして、1件サービスがリリースされたらよいぐらいといわれているので、簡単ではないと思いますが。

ーー今後コンサル業界の見通しはどうでしょうか。

柿谷:一定数は必ず残るでしょう。常に新しい事業は生まれ続けます。そうしないと企業は競争に負けますから。事業が生まれる限りコンサルはなくなりようがないと思います。

ただし、コンサル業界が発展するかというと、景気に左右されるのでなんともいえません。景況感が悪化すると、単価の高い戦略系コンサルは一番先に切られますから。

ーー戦略コンサルへの転職を目指す方に、アドバイスはありますか。

柿谷:自分自身がコンサル業界に入って何をしたいかという、明確なビジョンを持つことですね。ただし、コンサルはずっとやる仕事ではないとは思います。コンサルをやめてから何をしたいか。その確固たるビジョンも自分の中に持っておく方がよいですね。

コラム作成者
Liiga編集部
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