新卒日系企業だった私が、複数回の転職を経てPEファンドに入社できた理由
2020/06/16
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仕事の規模や年収から、投資銀行やPEファンドをキャリアのゴールとして思い描いている人も多いでしょう。

大村康生さん(仮名)は新卒では大手日系企業へ就職。しかし大学時代に目指していた公認会計士の道をあきらめきれず、働きながら勉強を続けた結果、24歳の時に見事合格。

そして監査の経験からM&Aに興味を持ち、より幅広いスキルを身につけるために外資系FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)に転職。さらにその後、外資ブティック系投資銀行を経て、憧れのPEファンドへの転職を実現しました。

今回は大村さんに、「投資銀行・PEファンド転職の秘訣」「転職の時に大切にしていた軸」についてお聞きしました。

〈Profile〉
大村康生(仮名) PEファンド アソシエイト
新卒で日系大手企業に入社後、24歳の時に公認会計士試験に合格。その後、外資系FAS、外資系ブティック投資銀行への転職を経て、20代後半でPEファンドへ転職。現在に至る。


【目次】
・新卒日系企業から複数回の転職を経て、外資系投資銀行に入ったのは「PEファンドにキャリアアップするため」
・目指すは投資のプロ。FAS・投資銀行で経験を積み5年をかけてPEファンドへ
・投資銀行を目指すならネームバリューのみならず「自分の目的」に合わせてハウスを選べ
・「どう投資判断しますか」「リターンを暗算せよ」…。PEファンドの面接は難題ばかり

新卒日系企業から複数回の転職を経て、外資系投資銀行に入ったのは「PEファンドにキャリアアップするため」

ーーこれまでの経歴を教えていただけますでしょうか?

大村:はい、このような経歴です。

日系大手企業(新卒) ↓ 公認会計士試験合格 ↓ 外資系FAS ↓ 外資系ブティック投資銀行 ↓ PEファンド(現職)

新卒で日系企業に就職し、そこで事業企画部に配属されました。しかし学生時代に目指していた公認会計士資格が諦められず、働きながら勉強して24歳の時に試験に合格しました。

監査業務を経験した後に勤めたのが外資系FASです。こちらは2年半ほど勤めましたね。

入ってしばらくは財務デューデリジェンスや、M&Aの交渉フェーズで企業価値の評価(バリュエーション)を実施したり、交渉時のアドバイスを行ったりする仕事を担当しました。途中からはM&Aアドバイザリーチームに異動しました。

その次は外資系ブティック投資銀行に転職し、PEファンド関連のM&A案件を主に扱っていました。

ーーPEファンドへの転職を考え始めたのはいつ頃でしょうか。

大村:実はもともと投資銀行に入った目的が、「PEファンドへキャリアアップすること」だったのです。だから投資銀行に入社しいくつかトラックレコードを積んだ後に転職活動をスタートしました。転職活動期間は約2年半。バンカーとして経験を積みながらじっくり選考を進めましたね。

そして2020年からPEファンドで働くことになりました。投資のプロフェッショナルとしての採用で、まずは一般的なPEファンドのアソシエイトの仕事をしています。具体的にはデューデリジェンス、LBOモデルを始めとしたバリュエーション・モデリングのほか、MDやディレクターと共に案件発掘(ソーシング)をすることが私の職務です。

目指すは投資のプロ。FAS・投資銀行で経験を積み5年をかけてPEファンドへ

ーー今までの転職の軸はどこに置いていましたか。

大村:正直言ってメインは「収入」です。加えて、もともと数字が好きだったので、「金融や投資のプロフェッショナルになりたい」という思いもありました。

M&Aをプロフェッショナルとしてやるなら、外資系投資銀行かPEファンドに行きたいと考えました。しかし横断的な領域の監査経験がないまま外資系投資銀行に入るのは難しいと考え、まずはFASで経験を積むことにしました。

ーーFASに入社後のキャリアについて教えていただけますか。

大村:FASに入ってすぐ、次の投資銀行転職を見据えたキャリア作りを進めました。

まず、私のいたFASでは一度デューデリジェンスのチームに配属されると他のチームに移籍することは難しくなるので、あえて社内ローテーションにアプライしました。そうすることで幅広い経験を積むようにしたのです。そのようにして自分の経験を増やしつつ、転職の機会をうかがっていました。

しかし、FASから投資銀行への転職は本来ハードルの高いジョブチェンジです。そのため色々な投資銀行にアプライしつつ、腰を据えて転職活動に取り組みました。

最終的に志望企業の中でオファーが出たのは日系投資銀行1社およびブティック系の外資系投資銀行1社だけでしたので、外資系ブティック投資銀行に入社することにしました。

ーーしかし、投資銀行に入社して数年でPEファンドへの転職活動を始めたと。投資銀行に勤め続けるという選択肢はなかったのでしょうか。

大村:入社後いくつかの案件に恵まれたことや、自身の年齢や最終的なキャリア目標がPEファンドであったことを考え、プロモーションやボーナスのタイミングを勘案し転職活動を進めました。 投資銀行でのキャリアも未練がありませんでした。

ーー転職活動はどのように進めましたか。

大村:金融業界に強いエージェントや、以前から仲良くしていたエージェントから「ここを受けてみたら?」と紹介されたところに応募したところ、今の会社から「ぜひ会いたい」と言ってもらえ、かなりスムーズに内定までいきました。FAS時代から考えると、足掛け5年かけてようやくゴールにたどり着いたことになります。

ーーどういったところを評価されたのでしょう。

大村:どこなんでしょう。「なぜオファーをいただけたのですか?」と当時私も聞いたのですが、「なんか良かったから」という答えしか返ってこなかったんですよね(笑)。

今振り返ると、経験や地頭の良し悪しは当然見られたと思いますが、それ以上に話しやすさや謙虚さなど、キャラクター的なところで「うちに合いそうだ」と感じてもらえたのではないかと思います。

投資銀行を目指すならネームバリューではなく「自分の目的」に合わせてハウスを選べ

ーー投資銀行へ転職する際、志望するハウスはどのように選べばよいですか。

大村:投資銀行に関しては、ネームバリューのみならず「自分の目的」に合わせてハウスを選ぶことがとても大切ですね。

投資銀行に長く勤めたい方は、尊敬できる人と働ける環境かどうかを重要視することをおすすめします。こんなことを言うのは私自身が、前職のチームに尊敬できない人が何人かいたせいで、早々に転職を決意する羽目になっているからです。もちろん、投資銀行はたった2年働くだけでも次につながるスキルが身につきましたけどね。

もし面接で「この人はすごいバンカーだな」と感じた人がいたら、ティアうんぬんの問題は無視してその会社に決めた方がいいと思います。

一方で、投資銀行の中でもやりがいのある仕事を求める方ば、エグゼキューションをしっかり担当できるところを選ぶべきですね。

ーーやりがいの観点から、各ハウスの印象を教えていただけますか。

大村:まず日系のM&Aハウスならば、野村證券の投資銀行部門やGCAはしっかりと経験を積める場所だと思いますね。案件の数が多い印象です。

外資系であれば、日本のオフィスがイニシアチブを持っているところを選ぶとよいでしょうね。これについてはInternational Finance Review(IFR)誌などに掲載されているリーグテーブルを参考に考えるとよいでしょう。これを見ればどこのチームが、どれくらいの規模のM&Aを、どんな風に引き受けているかが分かります。

例えば、海外のチームが見つけてきた案件を日本のチームがリエゾン(連携担当者)として引き受けている案件がメインであるハウスの場合、日本側はあくまでサブでしかありません。エグゼキューションをリードするのは海外チームだからです。当然その方が楽ですが、やりがいにはつながりません。

ーー大村さんが在籍された投資銀行は、やりがいの面ではどうでしたか。

大村:私がいた投資銀行も、海外オフィスと提携してアメリカの売り案件を日本のクライアントに紹介するだけで終わるケースがありましたね。こうなると単なる横流しでしかないので、正直言って面白くありませんでした。 ただ、ブティックですので少数精鋭でエグゼキューションを経験できるところは非常に良かったですし経験値はつきました。

このように自分がどんな働き方をしたいのかによって、どの投資銀行に行くべきかが変わってきます。そのため同じ投資銀行志望だとしても、各自自分の目的を明確に整理した上で、戦略的に自分に合ったところを志望することをおすすめします。

「どう投資判断しますか」「リターンを暗算せよ」…。PEファンドの面接は難題ばかり

ーーPEファンドを志望する際、自分が入りやすいファンドはどのように見極めればよいですか。

大村:そもそもPEファンドは合う・合わないという「運」の要素が採否を大きく左右します。

なぜなら、PEファンドはファンドによって色が大きく変わります。ハードスキルを重視するところもあれば、ハードスキルに加え、人柄やチームメンバーとのフィット感も重視して採否を決めるところもあります。

運をつかむためには人事を尽くして天命を待つしかありません。だから面接対策はこれでもかというほどやっておいた方がいいと思います。前提としてエージェント選びは大切です。

ーー具体的には、どんなエージェントを選ぶとよいですか。

大村:日本人に対しては、日本人のエージェントをおすすめします。なぜなら、外国人のヘッドハンターは紹介した後は放ったらかしということもよくあるからです。確かに彼らが紹介してくれる案件にも、興味が惹かれるものはありますけどね。

一方で、日本人のエージェントはマンツーマンでサポートについてくれる人が多いです。具体的にはキャリアインキュベーションやアンテロープキャリアコンサルティングなどがよいですね。

信頼のできるエージェントを選んだら、あとは面接対策です。

ーー面接対策は、具体的にどういった対策をすれば良いのでしょうか。

大村:エージェントに相談したり、自分で情報を集めたりしながら、モデルテストなどの対策を進めることですね。

PEファンドの面接では難しい質問がたくさん飛んできます。例えば四季報に載っているような会社について「弊社に入社したら、この会社についてどのような投資判断をしますか?」と聞かれたことがあります。こうした質問には付け焼き刃では答えられません。

他にも口頭試問で「LBO(レバレッジド・バイアウト)したときのリターンを暗算してくれ」などと言われることもあります。もともと得意な人は問題ありませんが、苦手な人は事前の対策が不可欠です。

しかしここまで準備をしても、ファンドとの相性が合わない、つまり「運」が悪ければ、どんなに優れた方でもオファーが来ません。そのためPEファンドを目指すなら、着々と準備を進めつつ、最後は運が回ってくるのを待つ、という姿勢でいるべきだと思います。

コラム作成者
Liiga編集部
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