名刺は投げるわ、弁当は広げるわ・・・でも結果は出す。アメリカの会議の風景 | 海外就職のすすめ(17)
2020/08/11
#海外で働きたい
#GAFAでの働き方

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ゆうです。

2013年に日本のIT系メガベンチャーの駐在員としてサンフランシスコに赴任し、その後紆余曲折あって、現在はAmazonのシアトル本社でプロダクトマネージャーをしています。

今でこそだいぶアメリカ流の仕事の仕方に(良くも悪くも)慣れましたが、赴任当初は日本とのあまりの違いにしばしば愕然としたものです。

何せ、日本で当たり前と思っていたこと、こうすべきと思っていたことが、ことごとく覆されてしまうのですから。

その中でも、会議の進め方の違いには、とても驚きました。今回の記事では会議の進め方について、僕が感じた日米の違いについて紹介したいと思います。

将来海外で働きたいと思っている人や、まさにこれから海外で働くことになっている人には是非読んでもらいたいです。

〈Profile〉
ゆう
東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。外資系コンサルティング会社で数年の経験を積んだ後、IT系メガベンチャーに転職。2013年に同社の現地駐在員としてサンフランシスコ支社に赴任。2017年、サンフランシスコ支社の閉鎖を受けてAmazonシアトル本社に転職。プロダクトマネージャーを務める。アメリカ生活7年目。アメリカでの半年間の就職活動経験を活かし、英語や海外就職について発信中。
▶Twitter:@honkiku1
▶Blog:https://honkiku.com/
▶Note:海外就職攻略の教科書

※記事の内容は全て個人の見解であり、所属する組織・部門等を代表するものではありません。


【目次】
•初めて取引先と会う場面、名刺が手裏剣のように飛んでくる
•雑談がとにかく長い、雑談で会議の半分を費やすことも
•会議で話をしたければ、人の話を遮るしかない
•会議中の飲食は当たり前
•でも、議論はしっかりする、成果を出して時間通りに終了
•まとめ

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初めて取引先と会う場面、名刺が手裏剣のように飛んでくる

連載第12回: アメリカのビジネスパーソンはみんな使っている、LinkedInは海外就職の必須ツールでも触れましたが、アメリカ人はあまり名刺を使いません。

名刺を交換するよりLinkedInでつながった方がはるかに簡単で便利ですからね。

とは言え、全く使わないわけでもなく、初めての取引先と会うときなど、名刺交換をすることもあります。


日本では名刺の渡し方についてかなり厳しく仕込まれます。

名刺は両手で持ち、相手に正面を向けて差し出しましょうだの、相手の名刺の高さよりも低い位置で差し出しましょうだの。

僕も新入社員研修でマナー講師にかなり怒られました。

いただいた名刺はすぐにしまわず、自分の名刺入れを座布団に見立てて、その上に名刺を置きましょうと教わった時には、さすがにあきれましたが(笑)。


アメリカでの初めての名刺交換のとき、日本と同様に名刺を差し出そうと身構えていた僕の手元に、シュッと何かが飛んできました。

そう、取引先の担当者の名刺です。

彼は自分の名刺をシュッシュッシュッとリズミカルに、こちらの出席者に投げていきます。

名刺交換でタブーとされる、テーブル越しの名刺交換のはるか上を行く、とんでもないマナー違反です。

あのマナー講師が見たら卒倒間違いなしです。


このときは、「なんて常識のない人なんだろう」と思いました。

しかし、その後別件で何回かの名刺交換を経て、どうやらこれはアメリカではいたって普通の名刺の渡し方らしいということを認識しました。。

日本のように「名刺は本人同様に丁重に扱うべし」などという発想はなく、名刺はあくまで「連絡先が書かれた紙」にすぎないわけです。

その「ただの紙」をいかに効率的に渡すかを考えれば、そりゃ投げますよね。

特に人数が多い場合、日本のように1人1人ちまちまと交換していては日が暮れます。

効率を重視した結果だと考えれば、名刺を手裏剣のように飛ばす行為も容認できます。

日本では名刺に限らず、「人に何かものを渡すときに投げて渡すのは失礼」と考えられていますよね。

何人かのアメリカ人に聞いたところ、彼らにはそんな概念は全くないそうです。

相手が誰であろうと、危険なものでなければバンバン投げてきます。

アメリカの映画で、新聞配達員が各家庭の庭先に新聞を投げ入れていくシーンを見たことがあると思います。

日本であんなことをしたらクレームの電話が鳴りやまないと思いますが、アメリカではいたって普通の光景です。

雑談がとにかく長い、雑談で会議の半分を費やすことも

名刺交換が終わって、さあ会議スタートかと思いきや、そんなことはありません。

アメリカ人はとにかく雑談が大好きです。

いきなり本題に入るなんてことはけっしてなく、必ず雑談から入ります。


日本でも「いきなり本題から入らずに、まずはアイスブレイクで場の雰囲気を和ませるべし」なんてことはよく言いますよね。

しかしながら、僕が見た限り、彼らは「まずはアイスブレイクで場の雰囲気を和ませなければ!」などという殊勝な考えを持っているようには到底思えません。

僕には彼らは純粋にお喋りを楽しんでいるようにしか見えません。

だって、雑談がとにかく長いんですもん。


アメリカ人は、日本人が「雑談はこのくらいが妥当な長さだろう」と感じる長さの2〜3倍は喋ります。

30分の会議のうち、15分が雑談で終わることも珍しくありません。


もしあなたがその会議のオーナーだったり、ファシリテーターだったりした場合は、「そのうち雑談も終わるだろう」などと悠長に待っていてはいけません。

その雑談は決して終わりません(泣)。マジです。

話している人が息継ぎする瞬間を狙って、できる限り大きな声で「じゃあ、そろそろ始めましょうか」と割り込んでいきましょう。

ちなみに英語では「All righ! Let’s get started!」と言います。

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会議で話をしたければ、人の話を遮るしかない

話し合いが始まっても、安心してはいけません。

雑談に引き続き、アメリカ人は会議の本番でもめちゃくちゃ喋ります。

喋り続けてないと死んでしまう、何か特別な生き物なんじゃないかと疑うほどです。


アメリカ人と会議をする上での最大の注意点、それは「人の話は遮らなければいけない」ということです。

「え?人の話を遮っちゃいけないんじゃないの?」って思いますよね。

確かに日本では「人の話を遮るのは失礼に当たります」と教わります。


しかし、アメリカではそれは必ずしも正しくありません。

事実、アメリカ人は人の話を遮りまくります。

遮らないと、ずっと話し続けてますからね、彼らは。

遮るのも仕方ないことなんです。


自分が話したいときは、基本的には人の話に割り込んでいく必要があります。

それには以下のようにいくつかコツがあります。

1. 話している人が息継ぎする瞬間を狙う
2. 呼吸音を出しながら息を吸ったり、身を乗り出したりして、話したいアピールするのもアリ
3. うまく割って入れなくても、臆することなく何度でも割り込みに挑戦する

「割り込みに失敗して恥ずかしい」なんて感じる必要はありません。アメリカ人たちでさえ、何度も失敗しますが、めげずに何度でも割り込みを試みます。

ちなみに、もし自分の話が遮られて、それでも話し続けたければ「Let me finish」と言えば最後まで喋らせてくれます。

会議中の飲食は当たり前

僕がアメリカに赴任して間もない頃、朝イチの会議で隣に座った女性が、カバンからタッパーを取り出し、なにやら真っ赤な、野菜とも果物とも判断できないものをモリモリと食べ始めました。

それはビーツ(食べる血液とも言われるほど栄養満点の野菜)だったのですが、日本では見たこともなかったので、そのインパクトのあるビジュアルにかなり度肝を抜かれました。

が、ビーツの見た目以上に驚いたのは、「会議が始まっていきなりモリモリと朝食を食べ始めるその行動」にでした。


日本でも「ランチョンミーティング」など、「お昼を持ち寄って話しましょう」的なものはあるにはありましたが、それはあくまで会議がランチの時間にかぶってしまうなど、特別な場合に限った話でした。

まさか、通常の会議でいきなり食事を始める人がいるとは!


この女性が特別だったわけではなく、アメリカではごく一般的な光景です。

僕も、作業に集中していてお昼ごはんを食べそこねた場合などは、会議にお弁当を持ち込んで食べてますし、食事以外にも、小腹がすいたときなどポテトチップスやドーナツなどを持ち込んで食べることもあります。


また、食事なんかはまだかわいい方で、中には会議に塗り絵帳を持ち込んで、延々塗り絵をしているツワモノもいます。

なんで誰も何も言わないのか、不思議でなりませんでした。

でも、議論はしっかりする、成果を出して時間通りに終了

こんな、名刺は投げるわ、お弁当は広げるわ、日本人から見たらトンデモ行動ばかりなアメリカ人ですが、議論はめちゃくちゃしっかりします。

前述の塗り絵の彼も、塗り絵に夢中で人の話など聞いていないかと思いきや実はしっかり聞いていて、かなり鋭い発言をしていました。

日本では小さい頃から「人の話を聞くときは、その人の方をちゃんと見て話に集中しなさい」、「人の話は遮ってはいけません。最後まで聞きなさい」などと教わりますが、あれはいったい何だったのかと思わざるを得ません。


日本でよく見る会議中の内職もまず見ません。

みんな会議中は、その会議に全身全霊で臨みます。

そして、雑談でかなりの時間を費やしたにも関わらず、しっかりと成果を出して時間通りに帰っていくのです。

正直、会議の成果という点では、日本の形ばかりの会議、何も決まらない会議よりも優れているのではと感じざるを得ません。


これは、会議というものの位置づけが、日本と多少異なることも関係しているかも知れません。

日本の、特に昔ながらの大企業では、重要な議論や意思決定は会議の前に終わっていることがほとんど。

会議は単なる確認の場に過ぎません。


一方アメリカでは、会議は議論の場であり、意思決定の場です。

ぼんやりしていると議論はどんどん進み、自分の望まない結論に至ってしまうことも。

そうなることを防ぐために僕のようなノンネイティブができることと言えば、徹底的な準備だけです。

会議の資料は事前にもらって読み込んでおく。自分の意見はきちんと(必要なら英語で)まとめておく。自分の意見をサポートするためのデータを用意しておく。

こういった基本をおろそかにしないことが、海外で生き残るためには重要になってきます。

まとめ

以上、アメリカの会議の風景について、日本との違いを中心に紹介してきました。

簡単にまとめると以下のとおりです。

 •アメリカ人は名刺を「連絡先の書かれたただの紙」としか認識しておらず、テーブル越しに投げて渡してくる
 •アメリカ人は雑談が大好きで、日本人が妥当と感じる長さの2〜3倍は話す。止めないといつまでも喋り続けるので注意
 •アメリカ人は基本的にいつまでも喋るので、会議で発言するためには人の話に割り込む必要がある。コツは
   a.息継ぎの瞬間を狙うこと
   b.ジェスチャーで話したいアピールをすること
   c.何度でも諦めずに割り込もうとすること
 •アメリカ人は会議中でもかまわず飲食する
 •でも、議論はしっかりとして、時間内に成果を挙げて時間通りに帰っていく

会議の進め方ひとつとっても分かる通り、日米の仕事の進め方には大きな違いがあります。

限られた時間で成果を出す姿勢は、アメリカをはじめとした海外で仕事をするためには、非常に重要です。「日本で当たり前とされていること、正しいとされていることが、常にどこでも通用するわけではない」ということをしっかり認識する必要があると思います。

連載記事「海外就職のすすめ」
コラム作成者
Liiga編集部
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