「マッキンゼー・BCG・ベインというキャリアは控えめに言って”最高”だった」元MBBマネージャーが語る、戦略コンサルタントのキャリア事情【MBB戦略コンサルタント対談(後編)】
2020/10/20
#戦略コンサルの仕事内容
#戦略コンサル業界事情
#ポスト戦略コンサルの研究
#戦略コンサルで最速マネージャーになる
#新卒内定者必須コラム

description

「戦略コンサルの昇進の実態は?」「昇進後のキャリア事情は?」現在戦略コンサルティングファームのジュニアスタッフとして働いている方はもちろん、これから戦略コンサルに転職してみたいと考えている方も一度はこうした疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。

世界の3大戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストンコンサルティンググループ(BCG)、ベイン・アンド・カンパニー(以下、MBB)(※)の元マネージャーである城田孝宏さん(仮名)と木山優輔さん(仮名)のおふたりに、前編では、「MBBに入った当初の働き方や教育環境」「MBBそれぞれのカルチャーの違い」「MBBの面接官が見ているポイント」についてお話しいただきました。

後編となる今回は、「MBBの昇進・労働時間・働き方事情」「スピード昇進する戦略コンサルタントの共通点」「MBBマネージャークラスの転職事情」についてお話しいただきました。

(※)MBB:マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストンコンサルティンググループ、ベイン・アンド・カンパニーの世界3大戦略ファームの総称。

〈Profile〉
城田 孝宏(仮名)
元MBBマネージャー PEファンド勤務
大学時代に会計士資格を取得し、新卒で監査法人へ。その後MBBの一社に転職する。5年間でマネージャーに昇格し、さらに2年の経験を積んだのち、2019年にかねてより憧れていたPEファンドへ転職。現在に至る。

木山 優輔(仮名)
元MBBマネージャー CtoCサービスのITスタートアップ経営企画部長
大学卒業後、新卒で日系大手企業に就職。コーポレート系の仕事に携わる中で経営を変える仕事に興味を持ち、MBBの一社に転職する。5年間でマネージャーに昇格し、2018年CtoCサービスのITスタートアップに経営企画部長として入社。現在に至る。

※記事の内容は全て個人の見解であり、所属する組織・部門等を代表するものではありません。

【前編まとめ】

前編では、元MMBマネージャーであるお二人に「MBBに入った当初の働き方や教育環境」「MBBそれぞれのカルチャーの違い」「MBBの面接官が見ているポイント」についてお話しいただきました。

一口にMMBといってもカルチャーには大きな差があり、マッキンゼーは「プロダクトファースト」、BCGは「クライアントファースト」、ベインは「リザルトファースト」との言葉もありました。 一方で面接で見られるポイントは共通しており、「CPU」「チームワークスキル」「クライアントワークスキル」とのことです。

実際にMBBで働いていたお二人だからこそ分かるリアルな体験は、インタビューの前編記事をご覧ください。



「昇進するほど、忙しさはコントローラブル」「新人時代の方が忙しい」MBBの働き方の実態とは?

――MBBはどれくらいの頻度で職位が上がっていくのですか。

木山:MBBはどこも1.5〜3年に1回のペースで昇進しますね。もちろん個々の能力によって例外的にもっと早く昇進するなど、多少のブレはあります。MBBの基本的な職位はファームにより多少異なりますが、下記のような感じです。 description

【関連記事】「マネージャーは年収2000万円~?」コンサルティングファームの職位と年収

――マネージャーとプリンシパルの違いは?

木山:マネージャーとプリンシパルの違いは、一般的には担当ケース(担当プロジェクト)の数の違いですね。マネージャーは1つ、プリンシパルは2つ以上です。

――1日の働き方は職位によって違いますか。

城田:多少違います、新人時代の方が忙しいでししょうね。なぜなら新人はプロジェクトのイニシアチブを取ることができないので、上から与えられる仕事が終わるまで延々とやる、という感じになるからです。

一方でマネージャー以上になってからは、状況に応じてメリハリをつけて仕事ができるようになりますね。

プロジェクトがうまくいっていて手が空いているときは、9時〜18時の定時勤務で夜はプライベートの予定を入れて、仕事は一切しないという働き方ができる時もあります。一方で時々立て込んで忙しい時だけは、朝5時起床で出社して夜中までやる、というイメージですね。

――職位が上がると、忙しさもコントローラブルになるのですね。

城田:その通りです。ただ「日中の時間の使い方」という意味ではコントローラブルとはいえませんでしたね。

マネージャーになってからは、自分で手を動かすというよりメンバーから絶えず打ち合わせのアポが入るのがメインの仕事になります。ほぼ毎日9時〜20時の間は5分の空きさえなくアポが入るという状況になりますね。

木山:日中の時間の使い方がコントローラブルではないという点も含めて、ほとんど同じです(笑)。

コンサルタントまでは自分の手を動かして時間を使って、仕事を形にしていく。マネージャーになると、自分で手を動かすのではなく、チームメンバーが最短距離でゴールに到達するためのサポートをする。

そうした役割の変化に応じて、働き方を変えていった感じです。

「残業させすぎると昇進できない」「早めに専門領域が決まるようになった」働き方改革後のMBBの仕事事情

――戦略コンサルというと労働時間が長いイメージですが、働き方改革の影響で労働時間に変化はありましたか。

城田:私のいたファームは、アソシエイト以下の人たちの労働時間に制限を設けていたので、マネージャーがそのぶんの仕事を巻き取る、という状況が発生していました。

なぜならコーポーレート部門がかなり本腰を入れていて、マネージャー以上の評価基準に「下の人たちの労働時間を一定時間以下に抑えているかどうか」を明確に組み込んでいるからです。この評価が低いと次に昇進できないので、みんなしっかり守ってますね。

ただし、それでマネージャー以上の労働時間が爆発的に増えたわけでもありません。私の場合は、もともとの自分の仕事の生産性を上げていたので、下の人たちの仕事を巻き取っていても毎日19時には会社を出ることができていました。

木山:私はもともと働き方改革が必要なほど働いていませんでしたね。休日出勤はほとんどなしで、平日の勤務時間も平均すると週60時間くらい。1日12時間程度です。

確かに働き方改革の号令がかかって以前より厳密に労働時間を管理するようにはなりました。でもそれが原因で誰かの仕事や労働時間が増えた、という話は聞きませんでしたよ。

城田:ただ労働時間を抑えるために、各コンサルタントは早めに自分の専門領域を決めるようになりました。私はコンサルタント時代は、毎回違う領域のケースのお客さんを相手にしていたので、そのたびに労働時間が長くなっていました。今はそんなことはありませんね。

これは自分の経験が制限されることになるので、良し悪しがありますね。僕は色々なケースを経験したいので本当は嫌なんですけど、これに抗うと昇進が相当難しくなるので仕方ないですね(苦笑)。私も領域を決めざるをえませんでした。

――ちなみにデューデリジェンス(以下、DD)案件だと労働時間が長くならざるをえないのでは。

木山:確かにある程度は否めないのですが、その分メリハリをつけていましたね。忙しくない日は早く帰るとか。短納期でどうしてもやることが膨大な時は、そのDDの間は働くけど、その分終わったら1週間しっかり休んで、トータルの労働時間をアジャストしていました。

城田:私のいたファームはそこまでメリハリはつけられなかった気がします。「やってもらってありがたい」と顧客に喜ばれますが、そのぶん労働時間が長くなりますからね。だからDDをやっているチームは離職率は比較的高めかもしれません。

【関連記事】「日本企業はグーグルに勝てるのか?」BCGが示す、最先端のコンサルティングファーム像とは

元MBBマネージャーが語る、スピード昇進する戦略コンサルタントの共通点

――城田さんは5年、木山さんは4年と、おふたりともマネージャーまでスピード昇進されています。早く昇進するためのコツはなんですか。

城田:私の同期でマネージャーまで上がった人は5人に1人ぐらいなのですが、共通していたことは「アグレッシブさ」でした。自分からチャレンジしたり、バリューを訴求したり、色々な人を巻き込んでなんとかしようとしたり。そういうがむしゃらさはまず必要だと思います。

あとは「1つ上、2つ上の職位の人たちの仕事をやってしまう」というのも一つです。自分がアソシエイトやコンサルタントなら、マネージャーやプリンシパルの仕事を取りにいくのです。

私のケースはあまりお手本とはいえませんが、入社直後に入ったプロジェクトでマネージャー、プリンシパルの人たちがクライアントと揉めており、上の仕事を強制的に取りやすい状況にありました。

だから、新人の私がパートナーと直接やりとりしたり、クライアントからも直で自分に電話が来るようにしたりと、自分が早々に主導権を握る形で仕事を進めていましたね。

――木山さんはどうですか。

木山:同感です。常に1個上、2個上の仕事をしたり、役割を果たしたりしていれば、実際に昇進した時にそのポジションで高いパフォーマンスが発揮できます。自ずと昇進も早くなります。

その際私が意識していたのは、「自分の仕事で十分に成果を残したうえで、仕事を取りにいく」ことです。「コイツはちゃんと仕事をする」という評価をもらわないと、ストレッチさせてもらえませんからね。

――仕事を取る、というのは具体的にどうすればいいのでしょうか。

木山:仮にマネージャーの仕事だったら、プロジェクト全体の仮説とかサマリーの作成を自分でやってしまえばいいのです。パートナーとのディスカッションの場で、自分からしゃべらせてもらってもいいでしょう。

ともかく自分でやってみて、それに対してフィードバックをもらう形を作る。それを生かして仕事をブラッシュアップできれば、どこかで任せてもらえるようになります。これが仕事を取る、ということです。

城田:あとはPDCAを絶えず回し続けることも大切だと思います。会社のやり方や、パートナーやマネージャーごとのやり方などの新しいことを受け入れつつ、古い自分を壊していく作業を繰り返す。これができないと、MBBで活躍するのは難しいですね。

木山:私もそう思います。自分に対する期待値を理解して、そこに至るまでに何がどれだけ足りていないかを分析し、具体的にどうすればいいかというアクションまで落とし込む。

自分の苦手なことと向き合う必要も出てくるのでつらいこともありますが、人の手を借りながらでもいいので、このPDCAをとにかく高速で回していけば、成長スピードはグンと上がり、結果としてマネージャーにもなれるはずです。

特に早いタイミングでの昇進を狙うなら、期待値の上がるスピードは極めて早くなります。そのためにはなおさらPDCAのスピードを上げる必要があります。

――かなりの努力と能力が求められそうですね。

城田:そんなことはありません。なぜなら戦略ファームというのは、各職階のジョブディスクリプションが明確なので、何をどこまでできればどの職階に昇進できるかも明確だからです。

昇進する方法がとてもわかりやすい。だから能力さえあれば、普通の会社よりも戦略ファームの方が昇進はよほど簡単だと思いますよ。

――昇進できなかった人はやはりOut(退職)になりますか。

城田:最近では「トラディショナルトラック」と「エキスパートトラック」の2つの評価制度を選択できるようにする道がMBBでも出てきました。

前者は「アップアウト」の世界ですが、後者は「パフォームアウト」です。つまりパフォームしていればずっと同じ職階にとどまれて、クビがないという制度をやり始めました。おかげで退職率は昔に比べかなり下がっていると思いますね。

背景としては、5~6年同じ職階を経験してある程度知見がたまり、パフォームもしてるのに、昇進できないからといって辞めさせちゃうのはもったいないよね、いてくれた方が助かるよね、という考え方です。よりエキスパート性の高いITスキルも求められるようになっているので、そういう人は同じ軸では評価できません。

木山:また「トラディショナルトラック」だとしても、アウトにならないように会社や周りがフォローをしっかりするようになっていますね。だからアウトの発生確率はあまり高くないです。

【関連記事】「日本企業はグーグルに勝てるのか?」BCGが示す、最先端のコンサルティングファーム像とは

「MBBマネージャーになれば、大企業・外資大手の役員転職も見えてくる」MBBマネージャーの転職事情

――城田さんも木山さんもマネージャーになった後、それぞれPEファンドと事業会社に転職されています。マネージャークラスの転職事情について教えてください。

城田:私はもともと小説の主人公に憧れたからPEファンドに移った人間ですが、周りでファンドに移った人の転職理由を聞くと「キャリアを広げたい」「労働時間を減らしたい」とのことでした。

他のファームに移る人は、今いるところだと昇進しにくいから、より自分のやり方にマッチしたところに変わるという人が多いイメージ。他の業界に行く人たちは、事業会社を経験したいという人が多いです。

木山:転職理由は百人百様ですが、私の場合は「世の中を変えるための最短距離はどれか」で考えた結果、ITスタートアップが最善の選択肢だったというだけです。

つい最近までは大企業を動かすことが、世の中を変えるための最短距離でした。もともと戦略コンサルになった理由も、大企業の経営をダイレクトに変えられる仕事だからでした。

しかしその構造はもはや変わっています。フリマアプリの「メルカリ」の登場を境に、スタートアップにもお金が集まるようになり、世の中を変えるような商品やサービスをどんどん生み出せるようになりました。

それならダウントレンドの大企業を戦略コンサルの立場からターンアラウンドするよりも、アップトレンドのスタートアップを伸ばした方が、より世の中を変えやすいのではないかと思い、転職しました。

【関連記事】総合コンサル→PEファンドの転職者が語る「マネージャーとして海外赴任。そこで気付いたコンサルティングファームの限界とは」(前編)

――マネージャークラスまで昇進すると、下の職階に比べオポチュニティはどれぐらい変わりますか。

城田:まずPEファンドでいうと、オポチュニティは増えました。特にバリューアップサイドのポジションがかなり増えました。

大企業はあまり興味がなかったのでわかりませんが、スタートアップだと事業部長など、高いポジションのものが増えましたね。

木山:城田さんのおっしゃるように、オファーの質はマネージャーへの昇進に伴い、役職が1〜2つ分上がりましたね。

大企業や大手外資だと、コンサルタントクラスだと課長レベルがメインです。一方でマネージャークラスだと役員や役員手前のポジションがメインになります。この前も、とても大きいグローバル企業のストラテジーディレクターの案件のオファーも来ました。

またスタートアップの場合だと、マネージャーになると数百人規模のスタートアップでも部長ポジションのものが増えてきます。もちろんもっと規模が小さいスタートアップであれば、マネージャーでなくても部長・役員候補というオポチュニティもあると思います。

――MBBに入る事はキャリア選択としていかがでしたか。

城田:個人としての成長という意味でも、キャリアの幅を広げるという意味でも、MBBという選択肢は「期待」を裏切りません。成長意欲のある人にとって、戦略コンサルはこの上なく居心地のいい場所だと思います。

今ジュニアとして働いている人はぜひともそのまま頑張ってほしいですし、これから戦略コンサルを目指す人にも自分に合ったファームで活躍してほしいですね。

木山:控え目に言っても最高でした。仕事自体のやりがいはもちろん、成長やキャリアにも大いに役立つ仕事だからこそ、戦略コンサルという選択肢をどう生かすかが大事です。

大前提に「自分はこういうことのために生きたい」という夢やビジョンがあるべきで、その手段やそこに至るまでの通過点として戦略コンサルを選ぶことができたら、きっと人生は充実するでしょう。

夢やビジョンがしっかりしていれば、入った後のモチベーションにもつながりますし、私のように辞めるタイミングの見極めにも役立ちます。

なんとなく戦略コンサルで働く、なんとなく戦略コンサルを目指すといったことのないように、じっくりと考えた上で選んでほしいと思います。

【関連記事】マッキンゼー・BCG・A.T.カーニー出身CXO4人が語る「コンサル出身者がスタートアップで活躍する理由」イベントレポート

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。