「外資の日本支社=グローバル」にあらず。“真の”世界基準が分かる海外勤務【キャリア転換の“深層” Vol.3 海外編】

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外資系企業の日本支社で働くこと自体、今や全く珍しいことではない。コンサルティングや金融といったLiigaのユーザーが多い業界ならば、なおさらだろう。ただ海外企業の日本以外の拠点で働くキャリアとなると、まだ一般化しているとは言い難い。仕事の進め方、商習慣などで日本との隔たりは大きく、もちろん言語の壁もある。

過去のLiigaコラムに登場した若手プロフェッショナルらの意思決定や経験を再考する連載「キャリア転換の“深層”」、第3回は上記の障壁などを乗り越え海外で活躍する道を考える。

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外資の日本支社や日系の海外駐在は「衛星のようなもの」。ハイキャリア人材はなぜ海外に出るべきなのか

「シリコンバレーのものすごさを日々目の当たりにしています。それと比べると、日本で外資企業に勤めることや日系企業の駐在員として海外で働くことは、誤解を恐れずに言うと地球の周囲をぐるぐる回る衛星のようなものだと感じています。同じ世界で活動していることにすらならないというか、完全に次元が違います」。

やや棘(とげ)のある書き出しになってしまったが、こちらは三菱商事やドリームインキュベータ(DI)での勤務を経て、現在は米国シリコンバレーでベンチャー投資などに携わる桑島浩彰氏のコメントである。

同氏は日本と海外、特に米国や中国とではビジネスそのものや人材の水準に大きな隔たりがあり、それを埋めるべく日本の高学歴人材も「一度は海外に出るべき」と説く。

海外勤務経験がない身ならば耳の痛くなる話だが、事実に目を向けると、否定しようがない。グローバル企業の時価総額比較では、米中の企業が上位を独占(*)。日本発のビジネスモデル、商習慣、テクノロジーなどが世界で恒常的に存在感を発揮しているとは、言いにくい。

日本人も、高学歴層の多くは世界をリードするようなコンサルティング、金融、ITなどの外資系企業に就職してはいる。だが桑島氏いわく、それら外資系企業に「日本で」勤めること、あるいは日系企業において海外駐在することは、「衛星のようなもの」なのだという。

日本から米国に渡り世界的メーカーの本社で働くある若手人材は、桑島氏の主張を裏付けるようなコメントを残している。

「自分が想像したこともないような世界をみることができます」。

この方は世界中から優秀な人材が集まる環境下で、時に仕事の進め方などのギャップに苦しみながらも、前職の外資系監査法人の日本支社とは比べ物にならないほどの刺激と成長機会を得ているのだという。 *2020年8月末時点で上位10社のうち米国企業が7社、中国企業が2社、もう1社はサウジアラビアの国有企業

新興国の刺激とビジネスチャンス、米国西海岸の高報酬-。海外就業だからこそ得られるもの

刺激ある海外の就業先は、米国や中国といった経済大国とは限らない。

「世界最先端のテクノロジーが次々と生まれている場所にどっぷり浸かれば、日本が抱えている問題の解決方法を見つけられるのではないかと思ったからです」。

こちらは、インドのヘルステック系ベンチャーで働く方の、現地へ移った理由である。インドなどの新興国は、急速な経済成長が“呼び水”となり、テクノロジー、人材、そしてリスクマネーなどの集積地と化している。残念ながら、得られる経験や情報の質と量が、日本とは“ケタ違い”なのだという。 description

「初めてケニアに行った時に、課題に対して色んなサービスが立ち上がっていたんですね。例えば銀行口座を持っていない人がいっぱいいるのにモバイルマネーはすごく流行っている。『これは日本では味わえない面白さがめちゃくちゃ味わえそうだ』と思い、それ以降、アフリカビジネスにのめり込み、暇さえあればビジネスリサーチしていました」。

ケニアで事業展開するこちらの方も、新興国ならではの魅力を熱弁する。この方は新卒で外資系戦略コンサルティングファームに入ったものの、アフリカビジネスの魅力に取りつかれ、欧州MBA留学を経てケニアで起業。社会課題に対応した臨床検査事業を拡大すべく、今も奔走する。

他方、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)の中の1社の米国本社で働く別の方は、異なる角度から海外就業の魅力を挙げる。

「(米国の)西海岸のテクノロジー系の企業であれば、多くの場合、日本の同じ仕事と比べて年収が2〜3倍になるのではないかと思います」。

日本企業が概して内部留保をため込みがちなのに対し、海外企業は比較的従業員や株主への還元を重視する傾向にある。無論、解雇リスクや国・地域による差異もあるため一概に海外が待遇面で上とは言い切れないが、高報酬が海外就職のメリットの1つになり得るのは、事実である。

「物価の高さを考慮しても、僕は年収の高いアメリカ就職を選んだほうが良いと思います」と、このGAFA勤務者は現地での就業を推す。

外資企業での本国異動は「狭き門」!? 海外就業への最適ルートとは

では、実際に外資企業の日本以外の拠点で働くには、どんな道があるのだろうか。

「大学を卒業したら、いつかは海外で働いてみたいと考えていました。そこで、外資系監査法人の日本支社に入社したのですが、その監査法人では海外勤務の機会がほとんどありません。それならば、アメリカ本社への転勤制度がある企業に転職した方がいいと考えました」。

こう語るのは、上で紹介した世界的な米国系メーカーの本社勤務者。この方は本社への異動が可能になる幹部養成コースに応募、高倍率の中で苦闘しつつも参加権を勝ち取り、狙い通り今の環境を手にしている。

このように採用された国以外へ異動できる制度がある企業に照準を定めるのも、海外就業を目指す上では有効な一手。ただ、この例が示す通り、米国本社勤務などの場合は厳しい競争を勝ち抜くことが前提となる。

加えて、そのような異動制度は一般的かというと、そうでもない。

「外資企業の日本支社に入った時点で本社勤務はかなり狭き門になってしまいます」と、前出の桑島氏は釘を刺す。

では、どうすればいいか。

同氏は、米国などで就職する道の1つとして「理系の大学院留学」を挙げる。昨今シリコンバレー周りで存在感を増すインド系、中国系のIT人材は、その多くが大学院経由で現地就職しているのだという。

また、日系企業の駐在員勤務がきっかけとなり、海外に定着する例もある。

前述のGAFA米国本社勤務者は、その中の1人。この方は、自身のように日系企業の現地拠点に赴任してから永住権を取得し、現地資本の企業などに転職する道を勧める。桑島氏が指摘するように外資系企業で本社勤務を勝ち取るのが「狭き門」なのに対し、日系企業は比較的「海外行き」の競争率が低く、また米国の場合、日本から直接現地企業に応募するよりビザ関連の障壁が少ないからだという。

「時間」の概念の違い、「空気を読まない」文化、そして解雇、言語の壁…。海外勤務はギャップの連続

さて、ここまで海外でキャリアを切り開く若手人材の事例を紹介してきた。ただ、そうしたグローバルな環境での日々が、必ずしも順風満帆とは限らない。仕事の進め方や商習慣などが日本とは全く異なり、かつ時には人材の多様性も段違いに高い中、適応し成果を出せるようになるまでに、程度の差こそあれほとんどの人が苦労を経験している。

「一番想定外だったのは『信頼というものがかなり希薄なのかな』、というところですね。これは分かっているつもりでしたけど、自分が実際にビジネスをしだして、想定を超えて大変な部分でした」。

こう語るのは、上でアフリカ起業の例として紹介した元戦略コンサルタント。日本で当たり前のことが、海外で全く通じないこともある。むしろ「島国」の日本は、あらゆることにおいて特殊と見た方がいいのかもしれない。

「例えば、(人が)時間通りに来なかったり、締め切りを守るってことに関する感覚はかなり緩いですね。ここに対して最初はかなりイライラしてたりしましたが、自分でコントロールできる部分とそうでない部分があると思って、その中でどう時間を上手く使うか、という発想を持つようにしています」と、この方は続ける。 description

「一つは、コミュニケーションの取り方です。日本人に足りないこととしては、自分の意見を持ち発言する『積極性』、それから適切なタイミングで良い質問をする『質問力』が挙げられます。アメリカでは、これらがコミュニケーションを取る上で非常に重要になります」。

こう日本と海外のギャップを指摘するのは、既に2度紹介した世界的メーカーの米国本社勤務者。日系企業の多くではいわゆる「空気を読む力」が重んじられがちだが、海外、少なくとも米国のビジネスシーンでは真逆の価値観が主流なのだという。

米国などは多民族で人材の多様性に満ちているため、前提の共有がなされにくい「ローコンテクスト」な環境。「空気を読む・読んでもらう」のではなく、日本人から見て過剰とも思えるほど明確に意思表示する姿勢が、求められるようである。

海外勤務ならではの苦労として、以下のような経験談もある。

「シニアマネージャーの口から出たのはこんなセリフでした。『重要な発表がある。本日付で君たちのチームはシャットダウンすることになった。君たち全員、今日でお別れだ』。続けざまに解雇通達書などの書類が渡されてサインをさせられ、社員証を取り上げられました」。

語り手は、競争をくぐり抜けて米国系投資銀行の日本支社からニューヨーク本社に移った若きソフトウェアエンジニア。いわゆるレイオフ、事実上の一斉解雇である。

この方自身は社内の別チームに再就職先を見つけニューヨーク勤務を続けているが、同じチームのメンバーの多くは、他社に職を求めざるを得なかった。海外、特に金融業界において解雇は「突然雨に降られるのと同じくらいありふれたもの」なのだという。 description

このほか、言語の壁もある。「留学していたので、英語には自信がありました」(上記のメーカー米国本社在籍者)というような日本で外国語上級者とされる人が、いざ働いてみるとネイティブスピーカーとのコミュニケーションに四苦八苦する例は、枚挙にいとまがない。

「圧倒的な英語弱者である私は、『日本語だったらなぁ…もっとうまく言えるのに。もっと健康的な生活が送れるのに』と何度涙をのんだかわからないわけです」。

こちらは就業ではないものの、海外有名大学のMBA課程を修了した方による回顧録の一部。この方は学生時代カナダに留学し、社会人になってからは3年のインド駐在を経験したにもかかわらず、語学面での苦労は絶えなかったという。

他方、言語がさほど大きな障壁にならないケースもある。

解雇の例で触れた米投資銀行本社勤務者は、「過去のデータから統計分析をすることで市場の変化を予測する『リサーチャー』と呼ばれる職種や、リサーチャーが使うソフトウェアやデータを作る開発エンジニアは、言語や文化の壁にぶち当たることはさほどないと思います」と、明かす。

技術系の職種は言葉よりもプログラミング言語、数字、専門用語などが主なコミュニケーション媒体となり、会話での不自由はその他の職種と比べ問題になることが少ないようである。

ギャップに向き合う覚悟は必須。でも、臆せず“外”に飛び出そう

以上、海外企業、なおかつ日本支社以外で働く若手人材の事例から、真の意味でのグローバル人材になる道、注意すべき点などをまとめた。海外勤務は異文化のほか先端のビジネスやテクノロジーなどに触れられ、刺激的な体験になるのは間違いないが、半面さまざまなギャップに対峙する覚悟も求められる。

とはいえ、臆しているわけにもいかなそうである。

なぜか。

その回答の1つとして、書き出しにならい桑島氏のコメントでこの記事を終えたい。

「日本経済が強かった時代は英語ができなくても海外が合わせてくれましたが、今は残念ながら日本人であることにアドバンテージはありません。これはもうすぐ途上国でも同じ状況になるでしょう。日本人が置かれている現実は甘くないのです」。

《第4回「事前準備編」に続く》

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