GAFAM(Google・Apple・Facebook・Amazon・Microsoftの世界のIT業界において巨大で支配的な企業5社の総称)といえば、多くの人にとって憧れの企業だと思います。
それだけにGAFAMの実態やGAFAMへの転職方法について知りたい方も少なくないでしょう。
今回お話を伺った高橋哲平さん(仮名)は、現在は日系のスタートアップでマーケターとして活躍していますが、実はこれまでにGAFAMのうち2社で働いていた経歴を持っています。
今回はそんな高橋さんに、「GAFAMに向いている人・向いていない人」「GAFAM社員の働き方」「GAFAMへの転職のために必要な対策」について語ってもらいました。
・「GAFAMは成果を出せばどんな働き方をしてもいい。6~7時の定時帰りが普通。ほぼ会社に出てない人も」
・「GAFAMはどちらもオフィスが派手で、効率性を重視していた」GAFAM2社の共通点、日系企業との違いとは?
・GAFAMが向くか否かは「経験したい事業フェーズ」次第。ワークライフバランスだけ見て転職するのはオススメしない
・「GAFAMに転職したいなら、Linkedinはスイートスポットだ」GAFAM2社経験者が語る、入社するために行うべき”2つの準備”とは?
「GAFAMは成果を出せばどんな働き方をしてもいい。6~7時の定時帰りが普通。ほぼ会社に出てない人も」
――まずは高橋さんのご経歴を教えてください。
高橋:国立大学を卒業後、ある日系企業に入社し社長室に配属になりました。その数年後にGAFAMの1社に転職して4年 、次に同じくGAFAMの別企業に転職して6年間働いた後、知人の紹介を受けて現在の日系スタートアップに転職しました。
――GAFAMを2社も経験されているのですね。
高橋:そうですね。なぜGAFAMで2社も働けたかというと、狭い業界ですから、前職のつながりから「今GAFAMのこういうポジションのニーズがある」などの話を聞くことが多かったからです。ただ後でお話ししますが、1社目のGAFAMに入る時は相当対策しましたね。
――GAFAMでの仕事はいかがでしたか。
高橋:まずGAFAMは私が勤めたどちらの会社も、ほとんどの社員が夜6時から7時の間に退社して、家庭や個人の時間に充てていました。
中には「今日はちょっと体調が悪いから」「今日は娘の送り迎えがあるから」と言ってあまり出社しない社員もいて、日系企業にいた頃からは想像できないくらいに、皆さんフレキシブルに働いていました。「成果さえ出していればどんな働き方をしてもいい」という価値観が徹底されているのです。
また、GAFAMは以下のように福利厚生も充実しています。
・食事が3食全て無料で提供されたり、会社から補助が出たりする。 ・月に3万円するようなハイクラスのスポーツジムを無料で利用できる。 ・社外のスクールに通うための費用も7割支給される。 ・ストックオプションが充実している。
まさに至れり尽くせりです。スポーツジムではよく芸能人を見かけましたね。ちなみにGAFAMの米国本社だとクリーニングも無料だったりするみたいです。
――ワークライフバランスを重視する人には素晴らしい環境ですね。
高橋:はい。GAFAMに入って、会社側が意識してワークライフバランスが良くなるように設計してくれているのをすごく感じましたね。年収もGAFAMに入る前は500万円くらいでしたが、GAFAM2社を経て1,500万円ぐらいになりました。
また、例えば今も新型コロナウイルス感染予防でGAFAMはWork from Homeが徹底されているはずです。多分GAFAMは2020年いっぱいはオフィスで誰も働かないと思いますよ。どちらの会社もすごくいい所にオフィスがあるので、賃料がとてももったいない感じがしますけどね(苦笑)。
一方で新卒で入った日系企業の方がハードワークでした。朝7時に出社して帰るのが夜11時という生活が毎日でしたから。
「GAFAMはどちらもオフィスが派手で、効率性を重視していた」GAFAM2社の共通点、日系企業との違いとは?
――GAFAM2社で共通点や違いはありましたか。
高橋:事業内容や事業フェーズ以外は、GAFAMの一社目から二社目に移ったときもあまり驚きはありませんでしたね。仕事の進め方、オフィスの派手さ、そしてセントラルのUSチームがあって大部分はそこで意思決定が決まるところなど......ほぼ一緒でしたね。
――米国本社とは、どのように協働していくのですか。
高橋:米国本社の完全トップダウン方式ですね。もちろん無茶な注文などがあれば日本からも言うべきことは言いますが、基本的には本社と足並みを揃えて仕事を進めていきます。
――その際のやりとりは英語ですか。
高橋:はい、そうです。社内のテキストコミュニケーションは全て英語ですし、シンガポール支社や米国本社とやりとりするのも全て英語です。
ですから、GAFAMを目指すなら英語力は必ず磨いておくべきですね。「ずっと現場で営業だけやっていく」という人は別ですが、将来的に昇進や海外支社への転籍など、GAFAMならではのメリットを活用したいのであれば、英語力は必須です。
――英語力のレベルはどれくらい必要ですか。
高橋:ビジネス英語で意思疎通ができれば大丈夫です。日本にいる分にはネイティブである必要はありません。
他にもGAFAM2社とも共通していたことは、「効率よく働くこと」「率直なコミュニケーション」が重要視されていることですね。
――「効率よく働くこと」「率直なコミュニケーション」とは?
高橋:「効率よく働く」とはつまり、最も重要な課題は何かを考えたうえで、その課題に対して最適なアプローチをかけ、最大の成果を出すということです。そうした無駄のない働き方が常に求められます。
GAFAMにいたころはよく、「インパクトを重視しろ!」と言われましたよ(苦笑)。
また、そのために重要になるのが「率直なコミュニケーション」です。「チーム内での居心地が悪くなるから」などといった理由で忖度や忌憚のない発言を避けていれば、必然的に問題は後回しになり、パフォーマンスが下がってしまいます。
よってパフォーマンスが高い仕事をするために、率直に意見を言う姿勢が求められるのです。
GAFAMが向くか否かは「経験したい事業フェーズ」次第。ワークライフバランスだけ見て転職するのはオススメしない
――GAFAMと比較して、最初の日系企業はどうでしたか。
高橋:最初の日系企業は「ガッツだ!」「無駄なこともやってみるんだ!」という感じでしたね。GAFAMとは対照的です。
ただ個人的には、最初はとにかくがむしゃらに働くような経験を積まないと、いきなりスマートに働くことはできないと思うので、日系企業での経験は重要だったとも思っています。
――どんな人にGAFAMは向いていると思いますか。
高橋:実はGAFAMはその事業フェーズからして向き不向きが分かれるので、ワークライフバランスだけを理由にGAFAMへ転職するのはあまりおすすめできません。
――事業フェーズによる向き不向きですか。
高橋:はい。GAFAMに向いているのは、例えば事業を10から100、100から1000にするような「成熟フェーズ」の経験を積みたい人だと思います。
一方で、0から1、あるいは1から10にするような事業フェーズで「自分の力を試したい」と考えている人には、GAFAMは少し物足りないかもしれません。
――GAFAMといえばベンチャー精神にあふれているイメージでしたが、違うのですね。
高橋:GAFAMは良い意味でも悪い意味でも既に企業として出来上がっているので、「一個人のスキルを磨く場所」としてはベストとはいえないというのが私の所感です。
例えば私がGAFAMを辞めて今の日系スタートアップに転職したのも、勤めているうちに事業が成熟していって、スキルを磨く場として物足りなくなったからですね。
――GAFAMを辞める人は、どこに行く人が多いですか。
高橋:僕みたいにGAFAMを代表するグローバルITプラットフォーマーや、日系スタートアップに行く人もいますし、ベンチャーのCEOや起業する人もけっこういます。
一方で電通などの広告代理店やコンサル、投資銀行に行く人は少ないですね。大体インターネット業界のどこかに行くか、自分で興すかですね。
「GAFAMに転職したいなら、Linkedinはスイートスポットだ」GAFAM2社経験者が語る、入社するために行うべき”2つの準備”とは?
――GAFAM転職に必要な準備について教えてください。
高橋:まずはLinkedinをフル活用することです。
実は日本でのGAFAMへの転職においてLinkedinはスイートスポットなんですよ。なぜなら人事は必ずLinkedinを見て人材を探しているのに、日本人の多くはLinkedinを使っていないからです。
そのため、こまめにLinkedinを更新しておくだけで、向こうが見つけて連絡をくれる可能性が上がるのです。
――具体的にはどういった内容を書けばいいのでしょうか。
高橋:自分がどんなスキルや経験を持っているのかを、企業の人事担当者が理解できるような内容です。例えば「セールスとしてこれだけの実績を残しました」「BizDevとしてこんな事業を立ち上げました」といった具合です。
それに対して「◯◯社で部長をやっていました」といった、社外の人間にはわかりづらい内容を書いてもあまり意味がありません。あくまで人材を探している人事が見て、あなたがどんなスキルや経験を持っているのかがわかるように書くことが大切です。
そうしておけば、色々な連絡がくる中で、魅力的な企業からも連絡が入るようになります。例えば、私の場合他のGAFAMや、UberやSalesforceといったスタートアップから何社も勧誘をもらっていました。
そもそも自分から意中の企業に応募する方法はリスクが高く、非効率的なんですよ。スカウト経由で受けた方が明らかにGAFAMの内定成功率は高いです。
――なぜスカウト経由の方がGAFAMの内定成功率が高いのですか。
高橋:理由は2つありますね。まず、社内にポジションの空きが応募したときにあるのかが分からないからです。そして、空きがもしあったとしても自分のスキルとマッチしたポジションかも分かりません。
一方でLinkedin経由で見つけてもらってスカウトを受けたということは、企業側は経歴を見た上で「空きポジションとマッチしているから、この人と会ってみたい」と思っているわけです。だから転職の成功確率がグッと高くなります。
こちらの方が戦略として効率的ですよね。
――GAFAMからLinkedinで勧誘をもらった後、どんな選考対策をしましたか。
高橋:選考前の対策とリサーチはかなり万全にしていましたね。自分が選考を受ける部署がどういう人材を求めているのかを、片っぱしから調べました。
GAFAMを受ける場合、転職活動に使えるリソースが10あるのなら、そのうち7を対策とリサーチに使うことをおすすめします。
――高橋さんの場合、GAFAMの選考準備にはどれくらいの時間をかけましたか。
高橋:GAFAMの選考時は3〜4日間、毎日3時間ほどリサーチをしてから面接に行きました。ありのままの自分を見てもらうというよりは、その部署を受けに行くモードに自分を仕上げていくイメージです。
相当優秀な人はともかく、それ以外の人は準備をしてしすぎることはありません。働きながらこういった準備をするのは大変かもしれませんが、本気でGAFAMを目指すなら、やる価値は十分あると思います。
――具体的にはどういった対策をするのですか。
高橋:まずHiring Managerの名前やJob Titleで検索してみますね。次に意中の採用ポジションが担当しているGAFAMのサービスを実際に使ってみて、魅力や使いにくさはどこにあるのかを調べてみたりしますね。他にも調べるべきことはいろいろありますよ。
ある程度リサーチが進んだら、次にまず「相手が抱えている課題」を予想しますね。そして「その課題をどのようなステップで解決できるのか」「そのために自分は何ができるのか」といった回答を準備しますね。
私の場合は、A4用紙が文字でびっしり埋まるくらいメモを作ってからGAFAM選考に臨みました。
関係者に質問できるような間柄の人がいるなら、その人に話を聞くのも効果的です。ともかく重要なのは、面接前の段階で相手が求めているものをできるだけ明確にしておくことです。