「名刺を5回破られた」「水をかけられた」証券会社全社トップ営業が語る“ハードすぎる日常”とは?
2020/10/20
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20代で年収1,000万円も狙える給与水準の高さに加え、ハードな環境で圧倒的な営業スキルを磨くことができることから、一度は「証券会社のリテール営業」に就いてみたいと考える方は少なくないのではないでしょうか。

とはいえ、ハードといわれる証券会社のリテール営業の実態について、あまり想像がつかない方も多いと思います。

今回取材した現在米系投資銀行に勤める降谷加奈子さん(仮名)は、日系証券会社でリテール営業に就いていた頃、1,2年目で数百億円の圧倒的な受注成績を残し、2年連続でトップセールスに輝いた人物です。

今回は降谷さんが「トップセールスに輝くために積み重ねていた努力」「証券リテール時代の苦労話」そしてそこまでの実績を残しながら「米系投資銀行に転職した理由」について伺いました。

〈Profile〉
降谷 加奈子(仮名)
米系投資銀行 ホールセール部門
国立大学を卒業後、日系証券会社のリテール営業として新卒入社。入社1〜2年目で全国5,000人中トップのセールスを2年連続で記録し、両年のMVPを受賞。入社4年目まで通常業務と並行してM&A案件に携わったのち、米系投資銀行にヘッドハントされて転職。現在に至る。


【目次】
・起床は新聞が届く前。あらゆるマーケット情報を仕入れた」証券リテール営業トップセールスが積み重ねた“圧倒的努力”
・「お客様とのミーティングの8割は雑談に使う」数百億円の受注を生んだ信頼関係を築く秘訣(ひけつ)とは?
・「目の前で名刺を5回破られた」「水かけ・罵声は当たり前」証券リテールのハードすぎる日常
・「顧客本位ではない売り方はもうしたくなかった」日系証券リテール営業に限界を感じ、米系投資銀行ホールセールへ

「起床は新聞が届く前。あらゆるマーケット情報を仕入れた」証券リテール営業トップセールスが積み重ねた“圧倒的努力”

――降谷さんは1年目と2年目の際に、2年連続トップセールスに輝いています。強者ぞろいの証券会社で、このような成績を出すためにどのようなことを心がけていましたか?

降谷:「誰にも負けない努力」をすることと、お客様とできるだけ「深い信頼関係を築く」ということを意識していました。

努力について言えば、毎朝新聞が届く前に起きてアメリカのマーケットを見たあと、数時間かけて自社が発表しているレポートなどあらゆるマーケット情報に目を通し、6時過ぎに出社していました。

――起床時間はもちろん、出社時間も全て同僚より相当早いのでは。

降谷:私のいた支店は7時半には支店長も含めて全員が出社するところでしたが、他の人よりも1時間以上早く出社して、その日の準備を始めていましたね。

出勤ラッシュが始まるころには会社を出て、お客様のもとに向かい、アポイントや飛び込み営業に駆け回っていました。

――すさまじい努力ですね。

降谷:リテール営業は自由度の高い仕事ですから、頑張りたいだけ頑張ることができたんです。

対象も個人・法人を問いませんし、取り扱う商品も株や債券、投資信託、保険などの金融商品のほか、M&Aの仲介・紹介やグループ会社と提携した不動産の仲介・紹介など多岐にわたります。

加えて、私が勤めていた日系証券会社は営業の裁量が大きく、お客様のニーズに応じて、自分の頭で考えて好きなように提案してもよいとされていました。

だからとにかく、最初からトップスピードで圧倒的成果を出そうとがむしゃらに頑張りました。

「お客様とのミーティングの8割は雑談に使う」数百億円の受注を生んだ信頼関係を築く秘訣(ひけつ)とは?

――「お客様とできるだけ深い信頼関係を築く」というのは具体的にどういうことですか?

降谷:「降谷さんだから」「降谷さんの会社だから」という理由で契約をいただける関係性を築くということです。

リテール営業では、お客様が気づいてさえいないニーズを見つけ出して仕事をします。そのためにはお客様に本音を話してもらう必要があります。

――例えば、どういった相談を受けることがありますか。

降谷:「実は数千億円の運用資産があるが、利益がうまく出ていない」とか、「運用に興味はないんだけど、事業承継をどうするか悩んでいる」といったものです。

そうした本音をこぼしてもらえるような関係になっていれば、あとはお客様の悩みを解決できるような提案をすることで、契約いただける可能性がグッと高くなるというわけです。

――どうすればそうした関係性を築くことができるのですか?

降谷:商品を買ってもらおうとするのではなく、ただひたすら雑談をすることです。実際、私はお客様とのミーティングの8割を雑談に費やしていました。商品の提案は残りの2割の時間で、思い出したようにやるだけでした。

――雑談ではどんなことを話すのでしょうか?

降谷:家族の話、趣味の話、部下の愚痴などなんでも。

相手の言葉や表情の変化などに気を配りながら、突っ込むところは突っ込んで、引くところは引いて……といった駆け引きはしますが、あくまで自然にコミュニケーションをとることを意識していました。

そうした時間の積み重ねが、信頼関係につながるからです。事実私が1年目、2年目に担当させていただいた数百億円の案件は、そうしたコミュニケーションの積み重ねのたまものでした。

「目の前で名刺を5回破られた」「水かけ・罵声は当たり前」証券リテールのハードすぎる日常

――証券会社のリテール職はハードな仕事というイメージがありますが、4年間の中で一番つらかったのはどんなことでしたか?

降谷:どれが一番つらかったかと聞かれても思い出せないほど、毎日が地獄のようにつらかったです(笑)。

リテール営業の新規開拓では、まず自分の提案したい商品に合致するような個人・法人のリストを作成し、上から順番に電話をかけてアポを取っていきます。 これを「コールドコール」と呼ぶのですが、アポが取れるのは100件に1件、実際に契約や取引まで至るのは1000件に1件です。

感情を押し殺して、機械的に仕事に没頭していたというのが正直なところです。

――何か印象に残っているエピソードはありますか?

降谷:水をかけられる、罵声を浴びせられるなどは日常茶飯事でしたが、とある企業の社長に初対面で名刺を渡した際、その場でビリビリに破られたのは衝撃的でしたね。

――その後どうしたのですか?

降谷:もう1枚名刺を渡しました。その名刺も破かれましたが……。

――毎日が地獄のようにつらいのにもかかわらず、仕事を続けられたのはどうしてですか?

降谷:お客様がいてくださったからです。一番初めに個人宅に訪問して、その場で契約を決めてくださった未亡人のおばあさまに可愛がってもらったり、根気よく営業に通った会社の社長から応援してもらったり……そうしたお客様の存在は大きかったです。

先ほど申し上げた名刺を破り捨てた社長もその中の一人です。

実はこの話には続きがあって、2枚目の名刺を破られてもめげずに3枚目、4枚目、5枚目と渡していったところ、社長が「面白い子だね」と笑ってくださいました。それをきっかけに仲良くなり、最後はお客様になってくれたのです。

あとは「自分の成長を日々感じられた」というのも、仕事を続けられた理由の一つです。

――どういうところで成長を実感できたのですか?

降谷:他業界の同年代と比べた時ですね。

他業界で働いている大学時代の友人たちと久しぶりに会うと、自分の毎日のスピード感や経験させてもらっている仕事の規模がいかにハイレベルのものなのかを実感しました。

もともと証券会社に入ったのは、ファーストキャリアでビジネスパーソンとしてのハードスキルとソフトスキルを徹底的に磨くためでした。

確かに毎日の仕事はつらかったのですが、その意味ではファーストキャリアに前職を選んだことに後悔はありません。

「顧客本位ではない売り方はもうしたくなかった」日系証券リテール営業に限界を感じ、米系投資銀行ホールセールへ

――そうした思いがあったにもかかわらず、転職を決めたのはどうしてですか?

降谷:自分がふに落ちる売り方をできる仕事がしたかったからです。

リテールビジネスを維持するためには、回転売買(編集部注:資産運用において、頻繁に売買を繰り返す手法)などをはじめとする顧客本位ではない売り方がどうしても必要です。

ビジネスモデルに違和感を抱いて、資金調達や運用、M&A仲介などを主な業務とする本社のホールセール部隊への異動を希望したこともありましたが、「リテール営業かつ若くて女性となると、10年くらいはホールセールに異動はできない」と言われてしまいました。

そんなタイミングで以前から交流のあったエージェントから声をかけてもらい、私の希望する働き方ができる今の会社に転職した、というわけです。

――転職してみた感想はどうですか?

降谷:今の私のスキルやビジョンに合った環境で働けているので、とても満足していますね。

――今後のキャリアビジョンについて教えてください。

降谷:今後はよりお客様の企業価値向上に貢献できる仕事に携わりたいと思っています。

今の仕事は運用損益や為替差損益などの営業外収益だけしか貢献できません。だからゆくゆくは、売り上げに直接貢献できる分野にアドバイザリーとして入ったり、PEファンドのように株主として同じ船に乗ったりといった形で、金融面からの経営支援ができるようになりたいですね。

コラム作成者
Liiga編集部
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