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三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)には、グローバル案件のみを専門に扱う「グローバルコンサルティング部」が存在する。総合コンサルティングファームとしては、このような部門は珍しいという。同部の東條恵明部長と近藤慶祐シニアコンサルタントは、同部ではグローバル案件の「実務」まで知り尽くし、プロジェクトの神髄を究めることができると話す。その仕事の魅力に迫る。
市場調査、パートナー企業選び、多分野に及ぶアドバイザリー業務…コンサル経験者でも戸惑う業務範囲の広さ
――おふたりが所属する部門は、グローバル案件のみを扱っていると聞きました。どんな案件に携わっているか教えていただけますか。
東條:グローバルコンサルティング部が手掛ける案件の特徴がよく表れているという意味では、たとえば「日系の建設関連企業がタイでの事業を強化した案件」が該当すると思います。
近藤:そのクライアントはもともと、日系顧客向けにタイで事業を展開していました。ですが、収益源を多様化するため、これまで手掛けていなかった非日系案件や住宅などの他分野の工事も現地で請け負うことができるように、コンサルティングを進めました。
――具体的にはどんなことをしたのですか。
近藤:タイの建設・設備工事の市場規模や競合企業の調査、それを踏まえた戦略の策定、現地パートナー企業の選定、法務、税務など専門分野のアドバイス、業務提携の契約締結といった、大半のプロセスに携わりました。
特に大変だったのは現地パートナー企業の選定です。クライアントは、もともと日系顧客向けの工場の電気設備工事に強みを持っていましたが、地場の顧客とのリレーションがなく、また、住宅関連の電気工事については経験が多くありませんでした。
経済発展によって増加する需要を取り込むためには、地場の顧客とのリレーションが強固であり、住宅やコンドミニアムなどの成長分野に長けたパートナー企業が欠かせなかったのです。
業界団体に尋ねるなどしながら情報を集め、20社程度を選定しました。クライアントの事業との相乗効果などを勘案して、最終的に1社をパートナーとして選びました。
この案件は、私が当社に入社して初めて担当したプロジェクトですが、先のパートナー企業との契約締結まで2年半を要しました。市場調査やパートナー候補との交渉のため、タイには十数回、足を運びましたね。
調査では、できる限り、現地の生の声を吸い上げる努力をしました。クライアントが直接的に話を聞きづらい競合の情報やユーザーが求めていることを具体的にお伝えできたと思います。
東條:現地の業界構造の調査・分析については時間と知恵が必要です。他地域・業界でのビジネスモデルや成功要因も念頭におきながら、現地で成功するためのポイントを探ります。
近藤:苦労は他にも多々ありました。前職、前々職ともにコンサルティングファームに在籍し、戦略案件、業務改善案件など幅広い案件に携わりましたが、グローバル案件に携わる機会には恵まれませんでした。そこで当社に移って初めてグローバル案件に従事できると意気込んでいましたが、初めは思うようにはいきませんでした。
――どんな苦労でしたか。
近藤:まず英語です。現地のパートナー企業候補へのインタビューや、候補を絞った段階での交渉は基本的に英語で行うため、不慣れなうちは特に苦労しました。また、建設業種の企業に対するコンサルティングは初めてだったうえ、クライアントにアドバイスできる水準まで法務、税務、会計などの専門知識を習得するのにも苦労しました。
コンサルタントであれば、担当領域について知識を増やすのは当然かもしれませんが、その範囲があまりに広いため、戸惑うことが多かったです。
東條:この状況を楽しめる人でないと、我々が在籍する部門でコンサルタントを続けるのは難しいかもしれませんね。
――現地のパートナー企業にとっても、海外企業と組むのは不安があると思います。この点で、心掛けていたことは何でしょうか。
近藤:日本のスタンダードを押しつけないことです。商慣習や労働観などが日本と異なるタイの企業側から見ると、自分たちが今までやってきたことを否定されるような不安があると思います。我々が日本のクライアントと現地企業との仲介役となって、双方にメリットがあるように気を配り交渉を進めてきました。
その交渉の前提となるのが、現地企業が我々のクライアントを信頼してくれることです。何度も現地に赴いたのは、その信頼関係を築くためでもあります。
クライアントと現地パートナー企業、双方の考えをきちんとすり合わせていくことが最も重要です。中長期的にともに事業を拡大させていくパートナーとしてお互いをとらえるには、関係性が非常に重要だと考えています。
こういった取り組みが実を結んだのか、クライアントとパートナー企業との関係は、今なお進化しています。たとえば、クライアントのタイ現地法人が手掛けていた工場の電気設備工事案件に、そのパートナー企業が参加することになったのです。パートナー企業にとっては、これまであまり手掛けていなかった工場案件に関わる好機が生まれました。
あらゆる業界、国・地域の案件を初めから終わりまで1つの部署で担当する強さ
――外資系コンサルティングファームをはじめ、同業他社も日系企業が海外事業を強化する案件を手掛けていると思います。MURCが関わると何が違うのでしょうか。
東條:クライアントの真の意図を理解した者がプロジェクトの全工程に携われることです。我々は、市場調査からエグゼキューション(案件の実行)までを一貫して手掛けます。業務の内容ごとに、関わる部門や法人が変わることはありません。
近藤がお話ししたように、市場調査の段階から、日本にいる我々が現地に赴かなければなりません。各種交渉も自分たちで行います。ですので、グローバルコンサルティング部に在籍する約20人のコンサルタントにかかる負荷は大きいです。
しかし、クライアントの意図と、プロジェクトの進捗にズレが生じることは少ないため、クライアントの満足度は高まると考えています。
近藤:カバーする業界や国・地域も1つとは限りません。クライアント企業の業種でチームを分けているコンサルティングファームが多いですが、当社のグローバルコンサルティング部では、あらゆる業界、国・地域のコンサルティングを手掛けます。たとえば私の場合、これまでに、タイ、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、カンボジア、アメリカの案件に携わっています。
東條:これは、我々の強みです。様々な業界、国・地域におけるコンサルティングに携わることで、多種多様なビジネスモデルの知見を得ます。実際に類似した案件に携わることになったときに、これが生きてきます。
ただし、グローバル案件の実務を知れば知るほど、無責任な戦略は描けません。これは、「外見がかっこいいだけの戦略」は描けないという意味です。実現性の低い戦略を立案してもクライアントのためにはなりません。
一見すると、現実的で「派手さがない」戦略を提案することは、つらい部分もあります。ですが、グローバル案件の実務の難しさや大変さを知っているからこそ、着地を見据えた堅実なコンサルティングが必要だと考えています。
「飽きっぽい」人が向いている。その意味とは
――どんな方がグローバルコンサルティング部に向いていると思いますか。
近藤:知的好奇心が旺盛で、考えるのが好きな方だと思います。解のない問いに対して、とことん突き詰めて考えられる方はマッチすると思います。
コンサル経験者の方でしたら、これまでの経験はもちろん生かせるでしょう。私が前職や前々職で身に着けた情報収集、分析、その結果を資料としてまとめるといったスキルは、現職でも役に立っています。そのうえで、心地よいプレッシャーと刺激のある業務に従事できる環境です。
東條:表現は少し難しいですが、「飽きっぽい」人が向いていると思います。クライアントの業界や担当国を必ずしも固定せず、様々な国や地域の案件について、知らないことをたえず勉強しながら、コンサルティング業務に取り組まなければなりません。
「建設業界の業務提携案件」を担当していたかと思えば、「総合商社の食品原料事業の買収案件」をのちに担当することもあります。1つのことだけに集中するのが好き・得意な方にとっては、苦痛かもしれません。
たとえゼロからのスタートでも、過去の知見で使えるものは活用しながら、様々な業界、国や地域の案件に柔軟に対応するには、あらゆることを吸収してやろうという気概が必要です。そういう方であれば、グローバルコンサルティング部における業務を楽しめると思います。また、そのような知見・経験そのものが、コンサルタント個々人の大きな財産となります。
――近藤さんにお聞きします。どんなコンサルタントになりたいですか。
近藤:やはりグローバルで活躍できるコンサルタントになりたいと思っています。グローバルだからといって、無理に壮大な戦略を描くのではなく、クライアントの成果につながるように、成果を上げられるまで伴走できるようなコンサルタントを目指します。グローバルコンサルティング部では、それが可能だと思います。