「MDなら年収1億円超。でも毎日深夜3時帰り」元外資系投資銀行マンが語る“PEファンドにどうしても転職したかった理由”
2020/11/20
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外資系投資銀行といえば、超ハードワークでありながら若手でもかなりの年収が稼げる人気のキャリア。一方、PEファンドも企業の経営に最も近い立場で株主としてコミットでき、かつ高収入を稼げる憧れのキャリアです。

しかし外資系投資銀行もPEファンドも入るのは「超狭き門」でもあります。

そこで今回は、新卒で外資系投資銀行に入社したのち、現在はPEファンドに転職した畑山浩二さん(仮名)に取材を実施。

「外資系投資銀行とPEファンドに入るためのポイント」のほか、畑山さんが経験した「外資系投資銀行のタフな労働環境」「年収1,200万円減でも投資銀行を辞め、PEファンドに入社した理由」についてお聞きしました。

〈Profile〉
畑山浩二(仮名)
外資系PEファンド アソシエイト
某私立大学を卒業後、外資系投資銀行に新卒として入行。6年間カバレッジ(案件獲得)部隊に所属し、M&Aや採用業務に携わる。その後、より企業や事業にコミットするためにPEファンドに転職し、2020年4月より現職に就く。



【目次】
・「年収は1,200万円減った。それでもPEファンドへ転職したかった」求めたのは、キャリアの深み
・年収を下げてもPEファンドへ転職したかった背景。外資系投資銀行の激務の実態
・外資IBDの採用基準は新卒も中途も「覚悟と根性」!? 元採用担当者が語る実態
・「採用は常にある」が「PEファンドは前職のエースしか採用しない」。高い難易度の転職を成功させるには
・PEファンド転職を目指すなら、どんなバイアウトに関わりたいかを明確にせよ

「年収は1,200万円減った。それでもPEファンドに行きたかった」転職の理由とは

――まずはご経歴について教えてください。

畑山:大学卒業後、新卒として外資系投資銀行(以下外資IBD)に入りました。

そこでは営業を通じて案件を獲得するカバレッジの業務や、新卒・中途の採用業務に従事しました。6年間務めたあとにエージェントを通じて現在のPEファンドに転職しました。

――転職で年収はどれくらいの変化しましたか?

畑山:年収はだいたい1,200万円ほど下がりましたね。外資IBD時代に年収3,200万円程度だったのが、年収2,000万円くらいになりました。

――かなりの減額ですね。外資IBDの年収テーブルについて教えていただけますか。

畑山:新卒1〜3年目くらいのアナリストで年収1,300万〜2,000万円弱、その次の職階のアソシエイトになると年収2,000万〜3,000万円、ヴァイスプレジデントで年収3,000万〜4,000万円、ディレクターになると年収4,000万〜1億円弱です。

マネージングディレクターまで行けば年収5,000万〜6,000万円のベース給にボーナスを加えて、当たり年には年収1億円を優に超える人も出てきます。

――対して、PEファンドはどうでしょうか?

畑山:上の職階のことはわかりませんが、外資系PEファンドだと比較的高くて、1〜3年目は年収2,000万円-3,000万円が相場です。

ただ日系のファンドになると、スタートが年収1,200万円くらいからになるので、もっと少ないですね。

――畑山さんが年収をそれだけ減らしてまで転職したかった理由は何なのでしょうか?

畑山:一番大きい理由は「キャリアの深み」を追求したかったからです。

IBDで働いている限りは、事業と正面から向き合って、その価値を高めていく仕事はできません。なぜならIBDは基本的に、外部から把握できる情報を使って事業や企業を評価して、クライアントに対して「買った方がいいですよ」「売った方がいいですよ」と提案するのが仕事だからです。

そういう仕事は6年間を通じて十分やってきたので、次はより経営や事業を深い次元で学びながら、株主として企業の事業改革・事業改善やガバナンス改革を実行したいと思ったのです。たとえ年収が1,200万円下がってでも、マネージングディレクターになれば年収1億円超が得られるとしてでも、です。

あとはワークライフバランスも、大きな転職理由ですね。

年収を下げてもPEファンドへ転職したかった背景。外資系投資銀行の激務の実態

――やはり外資IBDはハードワークなのですか?

畑山:つい最近までは「会社を出るのが夜3時、会社に来るのが朝の9時」が当たり前でした。しかもいつどんな仕事が降ってくるか、予想がつきません。

――どういうことでしょうか?

畑山:金曜の夜にお客さんから「大変なことになった! 至急頼みたいことがある」と電話がかかってきた結果週末がなくなる、なんてことが日常茶飯事なのです。

それだけならまだ体力の問題ですが、精神的にタフな仕事も同時に対応しなければならなくなると、いよいよ追い込まれますね。

――精神的にタフな仕事、ですか?

畑山:簡単に言えば、身の丈以上の仕事です。

外資系特有の文化なのかもしれませんが、お客さんに対して提案資料のプレゼンをしたり、IPO案件の海外ロードショーのための上司の出張を代行したりと、日系IBDならジュニアはあまり関われないような仕事にも、人数が少ないためどんどんアサインされるのです。

身体的にボロボロのところに、こうした仕事が乗っかってくる状況は、まさに「激務」という表現にふさわしいと思います。

――そのような状況では、ワークライフバランスを大事にするのは難しいですね。

畑山:はい。子供が生まれたので、給料を失ってでもワークライフバランスを重視したかったのです。

ただ、最近は外資IBDの働き方もずいぶん変わりましたけどね。

――どう変わったのですか?

畑山:働き方改革の影響で、給料はそのままで激務がかなりマシになったんです。なので今の外資IBDは勉強させてもらいながらお金を稼ぐという意味では、かなり効率のいい仕事だと思いますよ。

私としては先ほど申し上げたキャリアの深みを追求したいということ、IBDでカバレッジを続けていても、大してスキルが身につくわけではないということから、今のところ戻るつもりはありませんが……。

――カバレッジの仕事ではスキルは身につかないのですか?

畑山:私はそう感じました。なぜなら、案件がとれるかどうかは運ゲーのようなものだからです。

一生懸命接待して、お客さんと仲良くして、でも結局仕事がもらえるかは運次第。基本的なファイナンスの知識くらいは身につきますが、それくらいです。だから私は転職することに決めたのです。

外資系IBDの採用基準は新卒も中途も「覚悟と根性」!? 元採用担当者が語る実態

――畑山さんは前職で採用業務にも携わっていますが、外資IBDにはどのような採用基準がありましたか?

畑山:新卒にしろ、中途にしろ、基礎学力・思考力の深さ・地頭の良さがある前提で一番見られるのは「覚悟と根性」です。

もちろん新卒なら「謙虚に学ぶ姿勢」、中途なら「金融などのハードスキル」があるに越したことはありません。

でも結局のところストレス耐性がなければ採用にはなりません。

――それは、ハードワークだから?

畑山:おっしゃる通りです。外資IBDで働くようになれば、上司からのモーニングコールを受けての朝9時出社、深夜3-4時過ぎまでの飲み会、飲み会がなくても夜2〜3時退社が数カ月続いたり、毎日のように上司にダメ出しをされた挙句「そろそろクビになるかもな」なんて嫌味を言われたり……それが当たり前の世界です。

だから採用業務の時は、とにかく覚悟と根性があるかをチェックしていましたね。

――それは新卒も中途も同じですか?

畑山:はい。中途でも、未経験者の採用の場合は「仕事はものすごくキツいけど、大丈夫ですか?」という質問を、手を替え品を替え投げかける感じでした。

経験者としての採用ならハードスキルのチェックもありましたが、若手や未経験者の場合はそれもありませんでしたよ。

もちろん面接官や状況によっても変わるとは思いますが。

「採用は常にある」が「PEファンドは前職のエースしか採用しない」。高い難易度の転職を成功させるには

――PEファンドへの転職の際は、合計何社受けましたか?

畑山:4社です。

――4社のうち、オファーが出たのは何社ですか?

畑山:1社だけです。僅差で落ちたところもあったことから、ファンド毎にカラーやカルチャーが異なり求める人材も異なるのだと思いました。

――やはりハードルは高いですか?

畑山:そうですね。採用募集自体は常に行なっているのですが、PEファンドは基本的にIBDやコンサルでエース級の活躍をしていた人しか取りたがらないのです。

「同期や同じタイトルの先輩後輩が5人いたら、3〜5番目の人材は論外。2番目でもなるべくならとりたくない」というのが教育に時間もリソースも割きたがらないPEファンドの人事の思考です。

そのため、面接でも前職でどれくらいの評価をもらっていたかどうかを、数字で実績として示す必要がありました。

――今のファンドでの面接は何回ありましたか?

畑山:7回です。通常は3カ月くらいの選考期間で4〜5回面接するのですが、私の場合は新型コロナウイルス感染予防の影響もあってスケジュールが間延びして7回になりました。

――面接ではどのようなことを質問されましたか?

畑山:ごく一般的な質問ばかりでしたよ。

・どうしてPEファンドに入ろうと思ったのか? ・入って何をしたいのか? ・どうしてこの会社なのか? ・将来どうなりたいのか? ・前職の外資IBDではどんなM&Aを、どんなロールでやってきたのか?

などです。

――PEファンドは日本ではまだ若い業界です。「将来どうなりたいのか?」という質問に答えるのは難しくありませんでしたか?

畑山:難しいですよね。おそらくこの質問は、PEファンドで5〜7年続けていく覚悟があるのかを聞いているのだと思います。

PEファンドで取り扱う案件の多くは、1件あたり5〜7年かかります。例えば「3年でPEファンドを辞めて別のキャリアに行きます」なんて人は、採用しても案件を1つもこなせないわけです。

だから将来について質問することで、どれだけPEファンドでのキャリアを具体的にイメージしているかどうかを確かめたのでは、と考えています。

――PEファンドに特有の選考はありましたか?

畑山:モデリングテストでしょうね。

――それはどのようなテストなのでしょうか?

畑山:とある企業を実際にどういう価格で買って、どういう取り組みを行って、何年後にどんな形でエグジットをしたら、どれくらいのリターンが見込めるか。

これをエクセルを使って資料に落とし込み、採用チームに提出するのがモデリングテストです。

おそらくPEファンドの選考の中でも最大の難関であり特徴だと思います。

――選考を受けるにあたって、何か対策はしましたか?

畑山:エージェントを利用して情報収集や面接対策をしました。

モデリングテストに関しては無料有料問わず、アメリカのサイトなどで演習問題を集めてきて、それを解く練習をしていました。

PEファンド転職を目指すなら、どんなバイアウトに関わりたいかを明確にせよ

――これからPEファンドを目指す人は、何から始めれば良いですか?

畑山:まずはIBDかコンサルのキャリアを経験すること。PEファンドに入ってくる人の大半は、このどちらかの経験者だからです。

そしてどんなバイアウトに関わりたいかを明確にすることです。

――なぜでしょうか?

畑山:働き方や、働く環境が大きく変わってくるからです。これについては、まずPEファンドの分類について知っておく必要があります。

――詳しく教えてください。

畑山:PEファンドは様々な要素に応じて分類することができます。

例えば案件の規模(ディールサイズ)によって分類すると、ラージキャップ・ミッドキャップ・スモールキャップの3つに分けられます。

他には案件の種類(ディールタイプ)に応じて、マジョリティバイアウト、マイノリティ出資、PIPES投資、カーブアウト、事業承継、MBO、等々に分けられますし、例えばヘルスケアや製造業系等の特定のセクター(業種)に特化している/が得意なファンドもあります。

――こうした分類ごとに働き方や働く環境が変わってくるのですか?

畑山:そうです。

例えばラージキャップは売り手にも買い手にも比較的高学歴の人たちが多くいて、経企や財務の方であれば当たり前のように「マルチプル法」「DCF法」といった言葉も飛び交います。

対してミッドキャップになると「社長が配管工からのたたき上げで、一生懸命やっているうちに従業員が300人になっていた」みたいな企業が仕事相手になります。

どちらが良い悪いではなく、どんな人とどんな仕事がしたいのかが明確でなければ、自分に合うPEファンドを選ぶことはできません。

だからどのようなバイアウトに関わりたいかを明確にする必要があるのです。

コラム作成者
Liiga編集部
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