「月収2,000万円の月もあれば、月収14万円の月もあった」現役外資系生命保険マンが語る、生命保険フルコミッション営業の実態とは?
2020/10/20
#年収1500万以上のリアル

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コロナの影響で様々な変化が起きている中、外資系生命保険会社のフルコミッション営業職は依然、人気の職種となっています。そこで今回は、現役で活躍されている営業マンにお話を伺いました。

前川誠二さん(仮名)は、薬剤師として働かれた後に、外資系生命保険会社のフルコミッション営業へ転職されました。未経験からキャリアをスタートし、MVPの受賞もされました。

今回は前川さんに「外資系生命保険営業の年収とプライベート」「トップ生命保険営業マンと前職との意外な共通点」「外資系生命保険営業への転職を検討している人へのアドバイス」についてお話しいただきました。

〈Profile〉
前川 誠二(仮名)
外資系生命保険会社 フルコミッション営業職
地方私立大学の薬学部を卒業後、薬剤師として地元の私立病院に入職。2年勤めたのち、友人の紹介を経て現在の外資系生命保険会社に転職。現在に至る。



【目次】
・「年収5,000万円以上の営業マンは300人いる」「年収1億円稼ぐ人も」外資系保険会社フルコミッション営業のお金事情
・「生命保険に満足している人は1割未満」生命保険営業の実情とは?
・「営業経験がないからこそMVPがとれた」営業経験者がむしろ陥る失敗とは?
・「この業界で頑張りたいなら、人間性を磨くべし」転職希望者へのアドバイス

「年収5,000万円以上の営業マンは300人いる」「年収1億円稼ぐ人も」外資系保険会社フルコミッション営業のお金事情

――フルコミッション営業というと稼げる人は大きく稼げる一方、稼げない人は全く稼げないというイメージがありますが、実際はどうでしょうか?

前川:イメージ通りだと思います。私も一番稼げなかった時期で月収14万円という月がありましたし、月収2,000万円という月もありました。

――月収や年収はどのように決まるのですか?

前川:1件契約をとると、インセンティブが分割されて数年間にわたって支給されます。

こういうシステムなので1〜2年しっかり仕事をすれば、毎年少しずつ減っていくものの、4年後くらいまでは安定した給料が続くことになります。コンスタントに契約をとれる人の場合、年収1億円をずっとキープする人もいます。

――年収1億円はすごいですね。年収5,000万円以上の人はどれくらいいますか?

前川:営業マンは5,000人くらいいるのですが、年収5,000万プレーヤーは大体300人くらい。つまり構成比は6%くらいですね。ただもちろんずっと契約が取れない人は、月収も上がらないままです。

入社して最初の2年間が修業期間とされていて、そこで3割が辞めます。そして入社5年経つとさらに3割辞めて、元の人数の4割しか残らないです。

――厳しい世界ですね。

前川:全ては自分次第ですからね。一般的な福利厚生はありますが、それ以外の点では全て個人事業主のようなものです。私も自分で保険を売るために自分でポスティングしたこともありますよ。大体2,000通投函してようやく1件とれるぐらいですね。

――個人事業主なので、色々雑務も全て自分でやらないといけないのですね。

前川:だから年収3,000万~1億円稼ぐエグゼクティブプレーヤーは、自分の給料でよくアシスタントを雇っていますね。あとは奥さんに事務を頼む人も多いです。

ーー奥さんはどんな方と結婚する人が多いですか?

前川:実は、モデルとか女優さんが多いんですよ。紹介ビジネスなので、次々と紹介をたどっていくと芸能人などと会うことも結構あるんです。出会いが多い仕事かもしれませんね。

ーーちなみに、みなさんどんなところに住んでいますか?

前川:みんなお金をかけてますよ。基本的に忙しいので、所属してる営業支社から徒歩で通える場所に住んでますね。その辺のタワマンといったぐあいです。家賃は月30万~50万円が平均でしょうか。

また採用形態が特殊なので、みんなめちゃくちゃ仲が良いんですよ。というのも、人事部はなくて営業所長が自分で育てたいライフプランナーを自分で採用していくので、“類友”ばかり集まってくるんですね。打ち上げなどがあるとみんな夜通し語り合っています。

「生命保険に満足している人は1割未満」生命保険営業の実情とは?

――改めて生命保険営業という仕事について、簡単に教えていただけますか。

前川:入院やがん、子どもが小さいうちの死亡など多くの人が抱えるリスクに備えるために、専門家の立場からアドバイスし、その人がいざという時にお金に困らないようにする仕事です。

実際私が薬剤師をしていた頃、お金がないから最適な治療を受けられない・薬が買えないといったケースは少なくありませんでした。

お金がないから自分や家族を守れないというのは、すごく苦しいことだと思います。生命保険営業の仕事は、そうした事態をサポートするためにあると考えています。

ーー1日のスケジュールはどんな感じですか?

前川:基本は業務委託みたいなものなので、全て自分次第です。僕のスケジュールだと、
・1日4人くらいアポがあって、午前中1人、午後に3人くらい会う
・アポは1人あたり大体2時間くらい。アポとアポの間の1時間で移動などの準備をしていたら、それだけで1日が終わる
・1日に仕事にかける時間は午前9時から午後10時までくらい。これを週6日こなすのがルーチン
・MTGがある日を除き、基本的には外回りなので直行直帰

こんな感じですね。アポは基本的に、最初は知り合いに電話をかけて「話を聞いてほしい」というところからスタートします。紹介ビジネスなので、その人から紹介をもらって数珠つなぎで新規顧客を開拓するのが基本ですね。それでも難しい人は異業種交流会などに行っているみたいです。

――世の中には「保険は要らない」と言うファイナンシャルプランナーもいますが、その点についてはどう思われますか?

前川:「本来なら必要ない保険も多い」というのが正確だと思います。

というのも日本の生命保険の世帯加入率は9割にも上りますが、生命保険のサービス内容に満足している人は1割未満とされています。そもそも自分がどんな保険に入っているか理解している人すら少ないのです。

この高加入率低満足度は、日本の保険業界の最重要課題とされています。

――なぜそのような状況になっているのですか?

前川:昔から続く「雑な保険販売」が原因です。

新卒で入社すると、先輩から声をかけられて「お前は保険に入っているのか? 入っていないなら、自社が推薦する保険に入りなさい」と言われ、わかったようでわからないままハンコを押してしまう……といった人も多いのではないでしょうか。

しかしロクに理解をしておらず、説明もされていないので、いざ保険を使おうとするとすでに期限が切れていたり、思ったようなお金をもらえなかったり、といった結果につながるのです。

だから「本来なら必要ない保険も多い」のです。

――そうした問題に対して、前川さんはどう向き合われているのですか?

前川:私を含め弊社のセールスマンは、4〜5回もの面談の中で徹底してお客様のニーズを探り、それに沿った提案をしたうえで、お客様が本当に納得されるまでは契約しないという営業手法を実践しています。

他の業界なら至極当たり前のやり方なのですが、このやり方で販売することで、保険はようやく本来の「将来のお金の不安を取り除く」という価値を発揮することができると考えています。

「営業経験がないからこそMVPがとれた」営業経験者がむしろ陥る失敗とは?

――前川さんは営業未経験でこの世界に入られたわけですが、それが原因で困ったことはありましたか?

前川:上司からは「営業未経験でよかったな」と言われますし、自分でも未経験だったからこそMVPなどの実績が残せたと思っています。

――どういうことでしょうか?

前川:営業職として実績を持ってこの仕事に就く人の中には、自己流さやプライドが邪魔をして結果を出せない人が多いのです。

経験のない私にはそうした変なクセがなく、加えて薬剤師として「患者の問題をしっかり把握する」「問題に対する適切な解決策を提示する」「患者様の選択を後押しする」といった仕事をしていました。

こうした薬剤師の仕事のやり方は、本質的に保険営業と同じです。最初は不安もありましたが、今では営業未経験で入ってきてむしろよかったと思っています。

――では、苦労らしい苦労はなかったのでしょうか?

前川:いえ、そんなことはありません。最初の頃は3〜4回も遠いところまで面談に行ったのに、契約に至らなかったケースがたくさんありました。

私も人間ですから「せっかくここまで時間とコストをかけたのに……」と落ち込むことも1度や2度ではありませんでした。

ただ、仕事のやり方を変えてからは、そうした失敗もほとんどなくなりましたよ。

――どのように変えたのですか?

前川:1回目の面談の時に、僕から「契約するかどうか」をしっかり握るようにしたのです。

といっても「この内容で契約しちゃいましょう」と雑に売るわけではありません。

端的に言えば「あなたの人生のパートナーとして、これから時間と労力をかけて仕事をしますが、あなたにとって私は人生に必要な存在ですか?」とストレートに問いかけるのです。

これを実践し始めてからは骨折り損になるケースが減り、努力が身を結ぶケースが増えましたね。

「この業界で頑張りたいなら、人間性を磨くべし」転職希望者へのアドバイス

――保険のフルコミッション営業という仕事に魅力を感じている人に対して、アドバイスはありますか。

前川:まず、今後生命保険の営業職はどんどん厳しい仕事になっていくことを知っておくべきだと思います。

理由は大きく2つあります。1つ目は新型コロナウイルスによる不景気の影響を受け、保険業界は軒並み値上げ傾向にあるからです。

例えば今の50〜60代の人たちが若いころに1万円で買った保険を、今の若い人たちが買おうとすると3万円くらいになってしまいます。したがって、契約までのハードルも必然的に高くなっています。

2つ目は金融業界を構成する銀行・証券・保険のうち、保険だけが圧倒的にフィンテックの導入が遅れているからです。いまだに昔ながらのやり方で書類を処理している人が大半です。

今後フィンテックの拡大は避けられません。そうなれば昔ながらのやり方を変えられない保険会社は潰れてしまう可能性が高いでしょう。

――そのような状況で、生命保険営業として活躍するには何が必要なのでしょうか?

前川:私はまだまだ若輩者なので偉そうなことは言えませんが、営業所長や先輩などからは「商品で売るな。人で売れ」と厳しく教えられています。

保険の商品の質が落ちていく中で結果を出していくには「あなただから契約するよ」と言ってもらえる関係を作るほかない。だから人間性を磨けというわけです。

――どんなことをすれば人間性が磨かれるのでしょうか?

前川:社内ではよく「会社や上司との約束は守らなくてもいいが、せめて自分との約束は守れ」と言われます。

その約束は小さなものでもよくて、例えば「明日は朝5時に起きる」とか「筋トレをする」などでも構いません。ただ自分なりに決めたことを、全部きっちり遂行していくだけです。

自分を律して約束を果たせたということは、その都度成長しているという証。したがって、それを積み重ねていくだけで人間としての魅力が増し、結果として周りが引きつけられるのです。

実際私自身も、この会社に入ってから「自分との約束」を守るようにしているのですが、実際に以前より人から相談されることが増えました。だからまずはそこから始めればいいのではないかと思います。

――今のお仕事をされていて、やりがいを感じるのはどんなときですか?

前川:私たちには、お客様の理想の人生設計の中での不安を取り除くための方法を、全力で準備して、心を込めて提案する責任があります。

だからこそ私の提案に対して喜んでくれたり、涙を流して「前川さんに私の人生をお任せします」といったお言葉をもらえたりすると、大きなやりがいを感じます。

保険営業は基本的に紹介ビジネスですから、お客様の大半はこの仕事をしていなければ会っていなかった方々です。そんな人たちから人生を託してもらえるのは、本当にうれしいことだと思います。

コラム作成者
Liiga編集部
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