「私の入社は正直リスク?」「全然!なんで?」産休から復帰した外資系メーカーの女性マネージャーが語る、女性の会社選びの意外なコツとは?
2020/10/20
#働く女性のキャリア戦略
#外資メーカーのマーケターとは
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キャリアウーマンの皆様の中では、これまで築き上げてきたキャリアを手放すことなく、女性だからこそ経験できるライフステージを充実させていきたいと考える方も少なくないでしょう。そのようなキャリアを築くにはどうすればいいのでしょうか?

大山楓さん(仮名)は現在32歳。外資系メーカーのブランドマネージャーとして華々しいキャリアを積み上げたのち、第1子妊娠を期に産休・育休を取得、つい先日職場に復帰されました。

今回は、これまで仕事にストイックに取り組んできた大山さんが「出産前後でどのように価値観が変化したか」をお聞きするとともに「理想の産休復帰を叶えるための会社選びのポイント」について伺いました。

〈Profile〉
大山 楓(仮名)
外資大手食品メーカー勤務 ブランドマネージャー

大学卒業後、外資の大手飲料メーカーに入社。テリトリーマネジメントとして営業職に2年従事し、ステップアップのため外資食品メーカーへ転職。営業戦略立案に携わり、実績を残す。その後、さらなる新たな挑戦として外資大手食品メーカーへ転職。あるブランドの日本事業ブランドマネージャーとして実力を発揮したのち、妊娠・出産を経て現在に至る。


【目次】
・「出産前は120%頑張った。これからは80%でいい」外資の世界を渡り歩く女性が出産後に経験した価値観の変化とは?
・「私の入社は正直リスク?」「全然!なんでリスクになるの?」会社選びのコツは、入社前に育休産休事情を”ストレートに”聞くこと
・「君、やる気あるの?」子育て成功のコツは「夫に育児という”プロジェクト”のパートナーであることを自覚させること。」

「出産前は120%頑張った。これからは80%でいい」外資の世界を渡り歩く女性が出産後に経験した価値観の変化とは?

――大山さんのご経歴を教えてください。

大山:まず新卒で外資系大手飲料メーカーに営業職として入社し、セールスの基本を学びました。1日平均16軒、新商品の発売日となると1日30軒など、早朝から夜まで小売店に足を運びましたね。

その後、小売店の本部との交渉などより上流の営業戦略にコミットするために、外資系食品メーカーに転職しました。そこでは上流の営業戦略の経験を積みつつ、並行して大学院で企業の広報活動について専門的に学んだりもしました。

そして2社目を卒業したあと、外資系食品メーカーに転職し、現在ではある食品ブランドのブランドマネージャーとしてブランドの成長に総合的にコミットしています。

――そんな仕事にストイックな大山さんも産休・育休を取得し、先日復帰されました。産後、仕事への価値観に変化はありましたか?

大山:大いにありましたね。まず、もともと仕事は断らないタイプですが、より一層「どんな仕事であれ、一旦受けるというスタンス」をとるようになりました。

育休から復帰したばかりの「今の自分」に依頼された仕事であるということは、チームの私に対する信頼を前提とした仕事であるわけです。「それならば!」と一層引き受けようという気持ちになりますね。

そして、今までは常に120%で仕事に臨む性分だったのですが「80%くらいのパフォーマンスでもいいので、なるべく早くボールを打ち返す」ことを意識するように変わりました。

――なぜ120%から80%になったのですか?

大山今の私には子供がいるからです。熱を出したり風邪を引いたり、そういった緊急の出来事が起きると、どうしても家庭が優先になってしまいます。

そこで、その時に備えて余裕を確保するために、今まで120%の馬力を出していたところを80%くらいに抑え、「周りの力を借りて100%にできればいい」と考えるようになりました。

――自分自身の力で120%やっていた人が、「周りの力を借りて100%にできればいい」と考えを変えるのは難しかったのでは?

大山:そうかもしれませんね。でもこの考えは、100%のパフォーマンスが発揮できなくなった理由を、自分の子供のせいにしないためにも必要ですからね。

以前の自分と比較すると、どうしてもできないことばかりが見えてしまいます。しかし子供がいなかった過去の自分と、子供のいる現在の自分を比べても仕方がありません。

そのことを忘れないためにも、自分への期待値はあまり上げ過ぎないように心がけています。

ーー結果、仕事のパフォーマンスにはどのような影響がありましたか?

大山:パフォーマンス面にもメリットがありました。

早くボールを打ち返すと、最短距離でゴールに到達するためのヒントやアドバイスが周りから出てくることもあります。また、ちょっとしたトラブルやミスがあってもリカバリーの時間を確保できることに気付きました。

「私の入社は正直リスク?」「全然!なんでリスクになるの?」会社選びのコツは、入社前に育休産休事情を”ストレートに”聞くこと

――女性の場合、仕事と結婚・子育ての兼ね合いに悩む人が多いと思います。大山さんはどう兼ね合いを考えましたか?

大山「独身の間に、やりたいことにはどんどん挑戦し、やり尽くしておくべき!」。これに尽きます。なぜなら結婚や出産は、なかなか予測できないからです。

あとは、自分の将来なりたい姿を早くからシミュレーションしておくことも大切です。例えば「子育てするならこういうふうになろう」というように、具体的にイメージしておくのです。

すると、似たような人を見つけたときにロールモデルにしやすいので、より早く「なりたい像」に近づけます。

もちろん、子育ては想定外の連続なのでうまくいかないことの方が多いですが、対処の方法を知るという意味でもロールモデルは有効かと思います。

――産休・育休を取得するにあたって、意識されたポイントはありますか?

大山:会社に入る前に、「社内に産休・育休から復帰した人がどれくらいいるのか?」「上層部には子供を持つ人がどれくらいいるのか?」を事前に調べました。

こちらが逆にジャッジするつもりで既婚率や出産率について質問し、正直な反応が返ってくるかどうかを見ておくと、後々「こんなはずじゃなかった」といった事態を防げるはずです。

「女性の活躍を推進しています!」とうたっていても、実際に実現できていない会社は数多くあります。だから入社前に複数の人に会って、どこまで聞き出せるかが勝負ですね。

――「あまり突っ込んで聞いてしまうと、選考に影響するのでは」と不安に思う人もいるかもしれません。

大山:気持ちは分かりますが、そこで遠慮すると入社後のリスクが高くなってしまいますし、本末転倒でしょう。そうならないためにも、産休・育休取得が当然の権利として行使されている会社かどうか、確認しておく必要があります。

私が今の会社に入社したのは結婚1年目の時期でした。後々産休を取得する予定もあったため、当時の面接では人事や上司となる人に「会社にとって私が入社することは正直なところリスクになりませんか?」と聞いて回りました。

すると「なんでリスクになるの? 取得して当然でしょ!」という回答だったのです。この会社なら産後も安心して復帰することができる、と思いましたね。

――先進的な職場ですね。

大山:はい、その点では幸運でした。また、もし準備が整っていない環境なのであれば、自分が1人目の休暇取得者となるよう、職場に働きかけるのも1つです。

私は現職で産休・育休を取得しましたが、実は日本オフィスでは私が取得第1号でした。前例を作るという意味でも、思い切って産休を取得しました。

勇気はいるかもしれませんが、今は時代が追い風になっています。どうしても働きたい会社なら、行動を起こしてみるのもいいと思います。

「君、やる気あるの?」子育て成功のコツは「夫に育児という”プロジェクト”のパートナーであることを自覚させること。」

――大山さんにとって、今の家庭と仕事の優先順位は?

大山:優先順位としては、子供が1番です。あくまで家庭の中ですが、それを達成するため私も夫も努力する必要があります。片方だけが頑張って犠牲になるのはフェアではありません。

――大山さんご自身は今後も仕事を頑張りたいと考えていらっしゃいますよね。

大山:もちろんです(笑)。同様に、夫も頑張りたいタイプです。

でも、後々「子供がいたからやりたいことができなかった」と言うのはお互いに嫌なので、そのためにはどうしたらいいか、今は日々話し合いながら模索しています。

――ご主人とはどのようなコミュニケーションを?

大山:私はあまり感情を隠せないタイプなので、正直に伝えて、彼がどう感じたかを聞くようにしていますね。

例えば、モヤモヤするけどその時になかなか言語化できない場合、LINEで「こういうふうに感じたから、こういうところに気をつけてほしい」と文章化して送るなどしています。

――子育てはハードですよね。

大山:ハードです。特に生まれたての時期は3~4時間おきにミルクをあげるので、ゆっくり眠れない日々が当たり前のように続きます。

あと実は、夫にも出産前に子育てについて色々と自主的に調べさせておけばよかった......と強く後悔しています。夫に子育てについて、私が調べたことを教えてくれと、聞かれることがよくあります。どこから手をつけていいか分からないのでしょうが......。

――なぜ、そんなに後悔しているのですか?

大山:例えば、もし今の職場で9カ月後にスタートするプロジェクトのチームリーダーになったとしましょう。

プロジェクトの市場はすでに競合他社がひしめき合っていて、勉強しなければいけないことが山のようにある。そんな状況で9カ月経ってからメンバーが何の下調べもしてこなかったら……どうしますか?

――「君、やる気あるの?」と問いたくなります。

大山その通りです、「君、やる気あるの?」です(笑)。子育ても同じです。妊娠から出産までは9カ月のリードタイムがあります。これほど長い準備期間があるのに、夫は自分で何の勉強もしてこなかったわけです。

これから妊娠・出産を控えていて、パートナーと支え合って子育てをしようと思う人は、前もって相手にプレッシャーをかけておくことを強くおすすめします。育児という“プロジェクト”のパートナーの一員であることを夫に意識させ、一緒にマネジメントしていこうよ、と働きかけるのです。

私は今になってプレッシャーをかけていますが(笑)、事前に情報や認識を共有できていれば、もっとスムーズにこのプロジェクトを進行できたはずだと反省しています。とはいえ、イレギュラーばかりのプロジェクトですが(笑)。

――最後に、今後の仕事への抱負をお願いします。

大山:私は正直、子供に興味のない人間でした。ちゃんと親になれるのだろうかという不安もありました。何より仕事が大好きだったので、自分が子供を溺愛するようになるとは思ってもいませんでした。しかし今となっては、本当にかわいい存在です。

そのためか「子供を育てるためにもちゃんと仕事しなくちゃ」という、これまでとは全く違った感覚が生まれました。

「子供に自慢できるような仕事がしたい」とか、「一生懸命やっている姿を見てもらいたい」と考えています。

何より子供を言い訳にするのは嫌なので、自分自身がつぶれないようコントロールしながら、今後はより襟を正して、仕事に取り組んでいきたいです。

コラム作成者
Liiga編集部
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