やりたかったのは本質的な企業変革。コンサル出身者がソフトウェア企業に見出した可能性
2020/11/11
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「もっとクライアントのコア領域に踏み込んで、本質的なコンサルティングをしたい」―。1990年代後半から20年以上、外資系ファームなどでコンサルティングに携わってきた岩井一郎氏は、その間もどかしさを覚えることも少なくなかった。主に製造業を相手にサプライチェーン改善やシステム導入などを促してきたが、仕事が生むインパクトは限定的。そんな問題意識を胸に同氏は2015年、モノづくりのコアを成す設計領域のITに強いダッソー・システムズに入社、今はコンサルタントとして新たな可能性を見出している。

同氏に入社の経緯、ダッソー・システムズのコンサルタントの役割、一般的なコンサルティングファームとの違いなどを語ってもらった。

〈Profile〉
岩井 一郎(いわい・いちろう)
ダッソー・システムズ株式会社 自動車・輸送機器・モビリティ業界担当ビジネスコンサルティング・ディレクター
京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、1993年に日系大手鉄鋼メーカーに入社。4年半の勤務の後、米国系コンサルティングファームに転職し、自動車、ハイテク、消費財といった業界の支援に従事。インド系ITコンサルティング企業などを経て、2015年ダッソー・システムズに入社。

顧客のコア領域に踏み込むため、テクノロジーに強い企業を選択

――ダッソー・システムズに入社した経緯を教えてください。

岩井:大学院を出て4年半ほど、鉄鋼メーカーでエンジニアとして製造ラインの技術サポートや、設備の立ち上げなどを担当しました。

その後、米国系のコンサルティングファームでサプライチェーン改善、会計システムやERP(統合基幹業務システム)の導入支援などに携わり、コンサルタントとして経験を積むことができました。ただその中で、設計・製造という、クライアント企業のコア領域に踏み込めないジレンマのようなものも、感じていたんです。

なのでダッソー・システムズに入った理由としては、「設計領域も含めた企業改革のコンサルティングをやってみたい」と思ったことが、大きいですね。

ダッソー・システムズは3D CAD(3次元製品設計)やPLM(製品ライフサイクル管理)のソフトウェアに強く、設計・製造の現場にかなり深く入り込んでいますし、この領域のテクノロジーをグローバルでリードしています。 description

さらに、私が入社する前の2010年くらいから、設計・製造以外にも領域を広げ、「バリューチェーン全体を考えながらクライアントの企業価値向上につながる提案を行う」ことに力を入れていました。コンサルティングなどの経験を生かしながら、新しい仕事にも挑戦できると考えて入社を決めました。

――ダッソー・システムズのコンサルタント職は、どんな仕事ですか。

岩井:ダッソー・システムズには、3D CADの「CATIA(キャティア)」、製造のオペレーションをデジタル化する「DELMIA(デルミア)」、シミュレーションソフトの「SIMULIA(シムリア)」など、さまざまな製品があります。こうした製品群を担当する技術コンサルタントと、業界を担当するビジネスコンサルタントがいるのですが、私は後者で、主に自動車業界を担当しています。

――どのように業務を進めるのでしょうか。

岩井:自分が担当するクライアントの課題は何か、何を求めているのかをヒアリングしながら、我々の製品群でどうやって価値を生むかを考え、提案していきます。クライアントが抱える経営や業務の課題に対してアドバイスしていくこともありますし、最新のソリューションを紹介しながら「こんなチャレンジをしてみたらいかがですか?」と、提案することもあります。

クライアントが業務改革の計画を策定、実行、展開するのをサポートしたり、場合によっては課題を見出し新たな取り組みを考えるところから関わったりすることもありますね。

また、我々の製品を扱っているパートナー(代理店)の営業戦略立案のサポートもしています。クライアントが自ずと増えるようなエコシステムを作るため、パートナーとの連携は大切な仕事の一つです。

――例えばどんなプロジェクトがありますか。

岩井:最近多い例でいうと、スマートシティ関連の案件が挙げられます。ダッソー・システムズが特に力を入れている領域でもあります。街全体を3Dで再現したバーチャルシティを作り、都市計画に生かす取り組みなどが進んでいます。

都市づくりとなると、やはりモビリティが関わってきます。私が担当する自動車や鉄道業界のクライアントが関心を持っていますから、建設業界のチームと連携しながら提案活動を行っています。その中でMaaS(Mobility as a Service)と呼ばれるような次世代型のモビリティサービスや自動運転の仕組みをどう設計するかなどを、クライアントと一緒に考えたりもします。

最新のテクノロジーを扱うからこそ、分かりやすく伝えるコミュニケーション力が重要

――コンサルティングファームのコンサルタントと、ダッソー・システムズのコンサルタントの仕事は、どう違いますか。

岩井:やっていることだけを見ると、実はさほど大きな違いはありません。ただ、コンサルティングファームの目的は、クライアントにコンサルティングそのものを提供することですが、我々はソフトウェアを基にクライアントに価値を提供します。

コンサルティングファームとは違って製品を持っているので、課題解決のスピードが速いという印象があります。転職する場合は、同じ職種であっても「異なる仕事」という心構えを持っていた方がいいかもしれませんね。

また、コンサルティングファームは、社員の大部分がコンサルタントだと思いますが、ダッソー・システムズにはソフトの開発、保守、営業など、さまざまな役割の人たちがいて、連携しながら案件を進めています。それぞれの立場を理解しつつ、リスペクトを持って接しなくてはいけません。そこも大きな違いですね。

――そのほか、コンサルティングファームとは違う面白さや、大変さはありますか。

岩井:ダッソー・システムズの製品群は、3D技術を基に企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促すものです。最新のテクノロジーの本質を理解し、それをクライアントに伝えて価値を提供することに、やりがいを感じます。いくら素晴らしい技術でも、その価値が伝わらないと意味がありません。なかなか難しいのですが、面白いところでもあります。

――難しさとは。

岩井:例えばクライアントからDX、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)など話題になっているテーマについて、「トップの指示なので、何でもいいからすぐ導入したい」といったことを言われることが昨今は多くあります。その際はそれらのテクノロジーの真価を伝えた上で、「経営や業務の課題を本当に解決できるのか」「真に企業価値を高められるのか」といった、本質的な議論をしなくてはなりません。

――どのような学びがありますか。

岩井:コミュニケーションでしょうか。先進的なテクノロジーなのでなおさらですが、専門用語ではなく一般的な言葉、それもクライアントが普段使っている言葉で分かりやすく伝える必要があります。中には、技術のバックグラウンドがない方もいます。そこでいかに、製品が持つ価値の本質を伝え、行動につなげてもらうことができるか。日々試行錯誤を繰り返しています。

活発なグローバルコミュニケーションの中で求められる語学力。臆していると「機会を失うことになる」

――海外と連携する機会もあるのでしょうか。

岩井:とても多いですね。日常的に、世界各地の拠点と連絡を取って、海外の最新技術や先進的な事例をクライアントに紹介したり、日本の事例を海外の同僚と共有したりしています。ですから、さまざまな国・地域の人とコミュニケーションができる力は不可欠です。

ダッソー・システムズ以上に巨大なグローバル企業で日本法人も規模が大きいと、国内だけでオペレーションがある程度完結してしまい、海外とのコミュニケーションがあまり生じないこともあります。しかしダッソー・システムズの日本法人はまだ従業員700人程度ですし、フランス本社や他国の拠点とのコミュニケーションは非常に密です。日本企業の海外展開をサポートすることも多く、業務はとてもグローバルだと感じます。

――英語は必須ですね。

岩井:はい。堪能である必要はありませんが、「英語アレルギー」みたいな人だと、さまざまな機会を失うことになります。例えば、あらゆるドキュメントがまず英語で出てくるので、翻訳されるのを待っていると情報がどんどん古くなりますし。 description

――過去に日本企業と米国系企業でも働いた経験から、欧州系企業としての特徴は感じますか。

岩井:日本企業と比べると、ものごとを俯瞰(ふかん)的にとらえる傾向がある気がします。ビジネス全体を考えてから、細部に入っていく。日本は逆で、細かいことから詰めていく印象があります。

米国系企業との違いで大きいのは、「お金以外の価値」を大事にすることでしょうか。例えばダッソー・システムズは「3D技術、サステナビリティー、コラボレーション、イノベーション」を軸に据えていますが、これらを犠牲にしてでも売り上げを伸ばすようなことはありえません。

こうした価値観は、日本人と親和性があるように思います。

コンサルと営業、両方の経験を積める環境。起業志望者らにとっても「面白い選択肢になる」

――就業環境についてはいかがですか。

岩井:本社がフランスにありますから、フランス文化の影響を受けているように感じますね。フランス人の社員は「ワークライフバランス」という言葉をあまり使わず、「ライフバランス」というんですね。「最も重要なのがライフであり、その中にワークがある」というわけです。

働き方は個々に任されているという印象です。良いアウトプットを出しさえすればいいので、介護や育児など、制約がある人でも働きやすい職場です。

――コンサルティングファーム経験者がダッソー・システムズに来ることで、キャリアにどんな広がりが出ると感じていますか。

岩井:私は現在、コンサルティングだけでなく営業にも関わっています。コンサルティングファームを経験した若手にとっては、ダッソー・システムズで早いうちに営業を経験するのも面白い選択肢になると思います。一般的なコンサルティングファームだと、パートナーまで昇進しないと本格的な営業はできませんしね。

ITソリューションを売り込んでクライアントの課題解決を促す営業の仕事は、特に将来的な起業や、外資系企業のカントリーマネージャーになることを目指している人には良い経験になると思います。 description

コラム作成者
Liiga編集部
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