M&Aの検討フェーズから実行まで、企業価値創造にこだわり抜く「バリューアーキテクト」の存在意義
2020/11/11
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PwC Japanグループで、企業のM&A戦略策定から実行、PMI(M&A後の統合効果を最大化するための統合業務)フェーズまで一気通貫で手掛けるのがPwCアドバイザリー合同会社(以下、PwCアドバイザリー)だ。2019年、同社に、ディールズ分野で幅広い経験を積める部門Deals Strategy & Operations (DS&O)が誕生した。強固なブランドを形成するPwCアドバイザリーは、なぜ今ディール局面における戦略・オペレーションのチームを強化するのか。その目指す姿を、パートナーであり、DS&Oのチームリーダーである鈴木慎介氏に聞いた。

〈Profile〉
鈴木慎介(すずき・しんすけ)PwCアドバイザリー合同会社 パートナー、DS&Oチームリーダー
国内大手メーカー、プライベートエクイティファーム、PwCの戦略コンサルティング部門(PRTM、Strategy&)を経て現職。戦略、オペレーション領域のアドバイザー。戦略コンサルタント、事業会社経営幹部、エンジニアとして、20年以上一貫してテクノロジー業界におけるさまざまな経営課題に取り組む。前職のプライベートエクイティファームではテクノロジー会社を対象としてソーシングからエグジットまで数多くのディールをリードした経験を有する。

CEOの困難な意思決定を支えるため、“バリューアーキテクト”の育成に注力

――DS&Oチームが発足した背景を教えてください。

鈴木:従来は戦略コンサルティングを担う部門とオペレーションコンサルティングを担う部門を別々に運営し、「プレM&A」と「ポストM&A」の各フェーズに対応してきました。

「プレ」は主に事業/M&A戦略・ビジネスデューデリジェンスといったサービスを、ディールクロージング後の「ポスト」はPMI戦略/計画・オペレーション統合支援などのサービスを別チームで提供していたのですが、これらを一気通貫で提供すべく発足したのがDS&Oチームです。

企業の大小を問わず、近年多くの日系企業が積極的にM&Aを実施するようになってきました。しかし、評価尺度にはよるものの、M&Aの多くは失敗に終わるといわれることがあります。

本来、事業戦略実現のための手段としてM&Aを実行するわけですが、M&Aによって何を実現するかが曖昧なまま案件を開始し、クロージング後のPMI(買収後の統合作業)においても目的・目標が不明確なため、結果として失敗が多くなる構図であると考えられます。

――M&A自体が目的化してしまうこともあるのですね。

鈴木:一旦M&Aのプロセスが始まると、担当者の思考は、トップの意向をくんで、とにかく案件を完了させる方向に傾いていきがちです。

何を目的として対象会社を選んだのか、買い手と対象企業でどのような相乗効果(シナジー)を出せるのか、といった基本的なことを十分に検討しないまま裏付けのない高い買収価格でM&Aを実行することになり、結果的に価格に見合う事業価値を実現できないことになります。時には、数年後の減損処理につながってしまうこともあります。

このような背景もあり、M&Aの目的や実現価値を見定める上流から価値を実現させる下流まで、戦略コンサルティングを担う部門とオペレーションコンサルティングを担う部門を統合したDS&Oチームを発足しました。

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――企業のM&Aを成功に導くためには、どのような力が求められるのでしょうか。

鈴木:PwCはグローバルで、「バリュークリエーション(価値創造)」をプライオリティサービスとして掲げており、ディールを通してクライアントの価値向上に貢献をすることを使命としています。

その使命達成に向けて、DS&Oチームでは「バリューアーキテクト」と呼ぶ人材の育成に力を注いでいます。M&Aの検討フェーズから実行フェーズまで、バリュー創出にこだわり、その実現をリードすることのできる人材です。

私はPwCに参画する前は、プライベートエクイティファンドに在籍していました。ファンド時代には、自分自身で対象企業を発掘・評価し、M&Aを実行し、買収した会社に出向してバリューアップやエグジットまでを担当しました。ここでディールの最初から最後まで一連の業務をリードする経験をしました。

ファンドにおいて自らの関わった案件の投資結果を見てきた経験から、M&Aの成否は、その検討段階で対象事業の本質的な強み、価値を評価できるか、つまり対象事業の目利きができるかにかかっていると考えています。

対象事業の強みがある前提で、それを生かして将来にわたって収益を向上させることができるか、買い手と対象企業間での相乗効果が存在するか、考えられるリスクは許容可能なものか、それら全てを考慮して、そのM&Aを通して将来にわたってどれだけの価値を実現できるかを評価できることになります。

プレの段階で一番重要になるのは、事業の価値を見いだし、評価する力であると考えています。

――その後の段階ではまた別の力が求められるのでしょうか。

鈴木:M&Aが実行されるとPMIのフェーズに入ります。PMIを成功させて、当初もくろんだ事業価値を実現するには、対象事業の市場・競争環境や戦略・オペレーションを深く理解している前提で、ベストであると考えるPMI戦略・計画をやりきるための実行力が必要になります。

PMIのステージでは、さまざまな利害が絡み、時には抵抗勢力も現れてきますので、事業価値を実現する目的に向けて妥協しないリーダーシップが必須となるのです。

DS&Oチームでは、事業価値を見出し、価値実現をリードするバリューアーキテクトを一人でも多く育成したいと考えています。DS&Oチーム全体で支援するディールは、年間で何十件にもなります。ディールサイズもさまざまで、新聞の一面を飾る多くのビッグディールにも関わっています。

DS&Oチームに参画して頂く方には、多様なタイプのプロジェクトを上流から下流まで一気通貫で数多く経験することで、「事業価値を構想する力」と「事業価値を実現する力」の両方を鍛えていってもらいたいと考えています。

DS&Oのバリューアーキテクトは、クライアントの意思決定の重責と向き合うことになります。M&Aという企業の命運を左右する決断をするトップマネジメントは、往々にして孤独の中で困難な意思決定を下さなければなりません。

私たちはクライアントに寄り添いつつも、クライアント企業の価値創出に向けて、時には客観的な視点から厳しいアドバイスをすることも求められるのです。

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クロスボーダー案件において、多様なバックグラウンドのグローバルチームに飛び込んでいく積極性を求む

――バリューアーキテクトを目指して、DS&Oチームで活躍できるのはどんな人材でしょうか。スキル面についてお聞かせください。

鈴木:基礎的なケイパビリティとして、重要になるのはソフト面でしょう。M&Aという仕事は、先程もお伝えしたように、関係者間で利害の相違・対立が多々ある中で、客観的な立場から信念をもってアドバイスをしなければなりません。

プロフェッショナルとして高い人間力とリーダーシップが求められます。1件当たり何十人、時には何百人も関わることのあるM&Aプロジェクトはヘビーコミュニケーションな仕事ですので、高いコミュニケーション力も欠かせません。

国内マーケットが縮小する中で海外進出を図る日系企業が多いため、クロスボーダー案件が数多くあります。対象会社がある国の現地PwCメンバーファームとのコラボレーションが重要で、海外のメンバーとのコミュニケーション機会も多いため、多様性をもつグローバルチームに飛び込んでいく積極性を求めたいですね。

M&A支援サービスにおいては多様な専門知識が求められますが、それは後から身に付けられる部分であると考えています。PwC Japanグループには税務や法務、コンサルティングなど、特定のサービスに深い知見を持つ法人があります。案件ごとにそのメンバーファームの力を借りることもできます。

そういったさまざまなプロフェッショナルとチームを組んで、切磋琢磨することでスキルアップを実現していただきたいと考えています。

――新たに加わる方に対してDS&Oチームが提供できる価値とは。

鈴木:DS&Oチームでは、ディールに関わる戦略の策定に関わることはもちろん、PMIフェーズに関わって、実行力を鍛えることもできます。これまで戦略策定だけに関わってきた人には実行フェーズの機会を、実行フェーズ中心に業務をしてきた方には戦略検討フェーズの機会を提供することができます。

また、重要なマイルストーンにおいては、クライアントのトップマネジメントによる大きな意思決定に関わることになります。世間でニュースとなっているディールにおいて、私たちのアドバイスを踏まえて、企業のトップがどのように意思決定を下しているのかを間近に見ることはエキサイティングな体験になることでしょう。

将来、企業経営に関わりたい方にとっては、得難い経験を提供できると思います。

どのような業界からジョインするにせよ、最初は学ぶべきことの多さに驚くと思います。OJTを通して多くを学びつつも、圧倒的な成長を実現するために自己学習は欠かせません。がむしゃらに学ぶことを継続できる方であれば、力がついていることを数年で実感できるでしょう。

どのようなテーマに対しても好奇心を持って取り組み、継続して自己学習できる方に、ご応募いただきたいですね。

――明確な戦略を描く中で、あえてDS&Oチームの課題を挙げていただくとしたら何ですか。

鈴木:クライアントから寄せられる数多くのニーズに対応するために、私たちのプロフェッショナルリソースをもっと増やす必要があると思っています。万全な体制を築くために、採用は積極的に続けていかなければならないと考えています。

DS&Oチームには、さまざまなバックグラウンドを持った人材が集まっています。M&Aごとに多様な領域のプロフェッショナルを集めてチームアップすることになります。

戦略コンサルティングファームの経験者はもちろん、販売・マーケティング、サプライチェーンマネージメント、財務・会計、HR、ITなどのオペレーション関連の経験者も含めて、あらゆる領域のエキスパートを必要としています。

「ディールを通して日本を再興させたい」という気概を持ったプロフェッショナルに門を叩いてほしい

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――若手メンバーにも早期に機会が与えられるとのことですが、具体的な案件の切り出し方やアサインメントには、どのような特徴がありますか。

鈴木:若手メンバーにも、早い段階で大きなディールを経験してもらうようにしています。例えば、大きなディールの中で一部の役割を担ってもらいながら、私たちチームが提供するディール全体を横目で見てもらうことで知見を積み重ねられるようにしています。

そして、徐々に担当する業務スコープを拡大し、より大きな役割を担うという流れです。小さくともプロジェクト全体をリードできるようになることが、当面の目標になります。

最近、DS&O内に「スタートアップ・ディール・アドバイザリー・チーム」を立ち上げました。ベンチャー企業を対象とするディールの組成・実行などに関わるさまざまな支援を行っています。

現下の日本経済において求められるベンチャーの創出・成長に資するサービス領域であり、若手メンバーには意義や魅力を感じてもらっている仕事でもあります。「ゆくゆくは自ら起業したい」と考えている人にとっても、貴重な体験となるのではないでしょうか。

――メンバーが、DS&Oチームでの経験をステップにして、外へ羽ばたいていくこともあるのでしょうか。

鈴木:もちろんです。私自身は、若手メンバーの中にベンチャー志向や起業志向を持つ人がいるのは自然なことと考えています。実際に羽ばたいていったメンバーは何人もいます。

目指す道が「日本の再興」という点で共通していますし、かつて一緒に働いたメンバーが、新たな場所で頑張っているニュースを聞くのは本当にうれしいものです。当法人では、他社への移籍後に再び戻ってくるメンバーもおり、そのような人たちの他社での実務経験が、アドバイザリー業務において圧倒的な説得力を与えることは言うまでもありません。

一方で、もともと独立志向を強く持っていたメンバーが、アドバイザリーの現場を経験する中で、クライアントの重要なディールに関与できる当法人でキャリアを築くことに方向を定め、シニアロールを担うまでになったケースもあります。限定されたルートだけでなく、さまざまなキャリアプランを描くことができる環境がPwCアドバイザリーにはあります。

M&Aだけでなく事業再生を通して、日本の再興に貢献したい

――「日本の再興」というキーワードがありました。コロナ禍での事業見通し、DS&Oチームの展望をお聞かせください。

鈴木:業界にもよりますが、多くのクライアントの経営アジェンダが事業再生に移行してきていると感じています。大幅な需要減に直面して、企業存続のために、構造改革が避けられないクライアントも増えてきているのではないでしょうか。

新型コロナウイルスは、これまで遅々として進まなかった日系企業の構造改革が進む契機になると考えています。

この環境に対応するため、PwCアドバイザリーでは、DS&Oチームと、事業再生支援サービスを担うBRS(Business Recovery Service)チームとの一体運営を進めています。

財務リストラ局面において、一企業内での事業ポートフォリオの入れ替えやより大きく業界再編の構想・実行を支援するサービスが求められており、BRSチームと(事業戦略を指南する)DS&Oチームとのチームアップが必要な案件が増えてきているためです。

DS&Oチームが取り組む今後のテーマとしては、従来からのクライアントの成長に資するM&A支援だけでなく、事業再生における戦略策定支援においても、数多くの案件機会が出てくると考えています。事業再生においても、バリューアーキテクトが求められることには変わりはありません。

DS&Oチームでは、さまざまなフェーズにあるクライアントへの案件増加に対応できるよう、リソース面の大幅拡充が必要と考えています。

私たちが手掛けるディールでは、売り手・買い手・対象企業の将来、結果的にそこで働く方々の人生にまで大きな影響を与えることになります。重責を担っていることを忘れずに、私たちチームが有するケイパビリティと提供するバリューを日々向上させていきたいと考えています。

一つ一つの案件での価値創造による貢献を積み重ねることで、一企業の将来のみならず業界全体、ひいては日本経済全体にも大きなインパクトを与えることができると信じています。

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コラム作成者
Liiga編集部
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