「数千万円の利益より、定時が大事だった...」私がインフラ業界のぬるま湯に耐えられず、投資銀行に転職した理由
2020/11/10
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鉄道、航空、電力、ガス会社など、社会の基盤となる私たちの生活に密着したサービス・仕組みを提供している「インフラ業界」。

松川正史さん(仮名)は、新卒でインフラ業界の大手企業に入社したものの、あまりの保守的な働き方に問題意識を持ち、日系証券会社の投資銀行部門(以下、日系証券IBD)への転職に成功しました。

今回はそんな松川さんに「インフラ業界の実情」「インフラ業界と投資銀行業界の違い」「インフラ→投資銀行の異業種転職に成功したポイント」についてお話ししていただきました。

〈Profile〉
松川 正史(仮名)
日系証券IBD アソシエイト
都内有名私立大学を卒業後、新卒でインフラ業界の大手企業にコモディティー・デリバティブトレーダーとして入社。丸4年間勤めたのち、日系証券会社の投資銀行部門にアソシエイトとして転職した。


【目次】
・数千万円の利益が出るけど「定時を過ぎているから、やめておこう」私がインフラ業界は”もうおしまい”だと思った理由
・「IBDバンカーが転職で評価されるのは、"スキル""社名""根性"」働いてわかった投資銀行の実態
・インフラ→投資銀行の異業種転職を成功できた理由は「証券アナリスト資格の勉強会でのある出会い」

数千万円の利益が出るけど「定時を過ぎているから、やめておこう」 私がインフラ業界は”もうおしまい”だと思った理由

――ファーストキャリアのインフラ業界ではどのようなお仕事をされていましたか?

松川:コモディティー・デリバティブトレーダーです。会社の本業とは別に金・銀・銅などのベースメタルや原油、小麦や天然ガスなどの取引で利益を出す、という部署にいました。

――インフラ業界でのお仕事はどうでしたか?

松川:かなり保守的でしたね。例えば目の前に数千万円の利益が出る仕事があっても「今日は17時半を過ぎているから、やめておこう」と判断するのが私のいた会社でした。利益より定時が大事なんです。

上司に唐突に「明日休みます」と言っても、「わかった」で終わり。誰も気にしません。

――数千万円の利益より定時が優先されるのは信じがたいですね......。なぜですか?

松川:インフラ業界の事業はそれ自体が公共性の強いビジネスなので、特に頑張らなくても利益が出るからでしょう。そしてトレーディングが会社の本業ではないからでしょう。

だから本業以外のところで利益や損失が出ても、手柄にもならなければ、問題にもならないのです。

例えば、私が2億5000万円の損失を出した時にも何も言われませんでしたし、逆に5億円の利益を出した時にも同様でした。

――給料面はどうでしたか?

松川:仕事のできる、できないにかかわらず、年収1,000万円までは階段が見えています。長く勤めていれば誰でも年収1,000万円まではもらえますし、早い人なら入社8年くらいで年収1,000万円の大台に乗ります。

ただ、そこからの伸びはほぼありません。部長クラスでも年収2,000万円には届きませんね。そして、この「長く勤めていれば誰でも年収1,000万円もらえる」というのが、会社最大の問題になっていました。

――なぜですか? 魅力的な職場に思えますが。

松川:なぜかというと、バブルの頃に入社した50代の従業員がほとんど仕事はしないのに年収1,000万円の給料をもらってしまうからです。一方でバリバリ働いて利益も出している20代の社員の年収は1,000万円に程遠いのです。

これからを担う有望な若手が、あと10年で定年退職を迎えてほとんど仕事をしない彼らを養っている会社なわけです。こんな会社が成長できると思いますか?

私は「ああ、この会社はもうおしまいだな」と思いましたね。

――若手の離職率は?

松川:100人いた同期が丸4年で私も含めて20人辞めましたね。

たった4年で20%という離職率はインフラ業界ではとてつもなく大きな数字です。この数字を見ても、若い人には働きにくい場所だということがわかるはずです。

――そのような状況にもかかわらず、組織は変わらないのですか?

松川:変わらないでしょうね。年配の社員は自分たちの利権を守るのに必死ですから。その影響で若手も士気が削がれてしまいました。

例えば私の元上司は若くして部長になった優秀なマネージャーですが、そんな人でさえ私が「今のままでいいんですか?」と聞くと「俺は副業やりながら、のんびりやるよ」と言っていました。

「IBDバンカーが転職で評価されるのは、"スキル""社名""根性"」働いてわかった投資銀行の実態

――日系証券IBDに移ってから、働き方は変わりましたか?

松川:ニュース番組「報道ステーション」をリアルタイムで一切見れなくなりました(苦笑)。勤め始めて1年弱ですが、23時より早く帰ってくることはないですね。土日もクライアントから連絡が入れば仕事になりますし。

――スローな前職から一転してハードな職場に転職したことで、苦労したことはありますか?

松川:苦労しかありませんでしたね。また、意外にもチームワークが少ないことに驚きました。

――どういった点でチームワークが少なかったのですか?

松川:自分の仕事が終わったら、チームの仕事が残っていても何も言わずに帰ってしまうのです。前職だと自分に余裕があるなら他の人の仕事を手伝うのが普通だったんですけどね。私がいたIBDでは、あまりそれをしませんでした。そこはギャップでしたね。

――IBDは新卒入社3年目で、どれくらいの年収になりますか?

松川:私が勤めているのは日系なので、年収600万円台だと思います。投資銀行業務をやっている人たちのボリュームゾーンは良くて年収700万円台ですね。だから年収はインフラ業界とそんなに変わらないと思います。

これだけ激務なのにこの程度の年収では、優秀な人がどんどん外に出ていくのも納得がいきます。

――IBD出身者は転職市場でも引く手あまたですよね。

松川:おっしゃる通りです。ただ私の仮説ではIBD出身者が転職しやすいのは「バリュエーションができる」「◯◯の業界に詳しい」といったスキル面だけで評価されているわけではありませんよ。

――では何が評価されているとお考えですか?

松川:スキルに加えて、「IBD出身というブランド」と「激務に耐えられる根性」です。なぜかというとIBバンカー3〜5年目の人材で、バリュエーションのスキルが身についている人や専門領域を確立している人はごく少数ですから。となると、この2つも評価されているのでしょう。

インフラ→投資銀行の異業種転職を成功できた理由は「証券アナリスト資格の勉強会でのある出会い」

――松川さんは今の会社にも強い問題意識を持っているようですね。今後のキャリアは?

松川:もうじき転職するつもりです。すでにオファーもいくつかもらっていますよ。

――社会人5年目にして3社目の転職というのは多いですよね?

松川:おっしゃる通りです。ただこれからの時代は「きちんと努力と実績を積み上げていればどうにでもなる」というのが私の実感ですね。

例えば私はインフラ業界から日系証券IBDに転職しましたが、一般的にこの転職は難しいはずです。どうしてもポテンシャル採用になりますからね。でも私はあるエージェントとリレーションがあったから、スムーズに採用されました。

――どうやってそのエージェントと知り合ったのですか?

松川:紹介です。私はインフラ業界にいた時に証券アナリストの国際資格CFAの勉強をしていたのですが、その資格の勉強会で知り合った証券パーソンに紹介してもらいました。

このエージェントは色々なIBDにコネクションを持っていました。人事部門ではなく直接部長クラスに書類を渡すことができるので、普通なら履歴書で落とされるような経歴でも採用までこぎつけられる可能性が高いのです。

――ぬるま湯に甘んじずにスキルを磨いていたからこそ、そうした強力な人脈とリレーションを築けたということですね。

松川:はい、このように資格の勉強をしたり、能力があって信頼できる人たちとリレーションを築いたりしていれば、自ずと道は開けていくんです。

今後転職がもっと一般化すれば、キャリアはますます多様化していきます。

そのなかで第一線にい続けるためには、むしろ、「一般論に惑わされずに、自分がやるべきことや、やりたいと思うことは伸ばしていくべき」だと思いますね。

コラム作成者
Liiga編集部
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