外資系から日系企業への転職は気をつけろ-経験者が語る環境の違いとは?
2016/07/29
#外資メーカーのマーケターとは
#マーケターから始まる職歴
#マーケティング業界ウラ話

はじめに

日系から外資系、外資系から日系への転職は、同業界同職種の転職であっても、前職とのギャップに悩むことがあります。そこで、実際に外資系メーカーから日系メーカーに転職したY氏に、外資系と日系の違いなどについて、インタビューをしました。

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海外オフィスの部長クラスは投資家だと思え!~外資メーカーでの日々

―はじめまして。簡単にご経歴を教えてください。

私立大学の文系学部を卒業後、外資系のメーカーにマーケティング職として入社しました。学生時代は勉強熱心、というわけではなくテニスばかりしていて顔を真っ黒に焼いている日々でした。テニスをして、お酒を飲む、という毎日に飽きたのか、ある日、一年発起して3年生の夏に就職活動をはじめました。

就職活動は特定の強い興味がある分野も無かったので、早くから選考を始めていた外資系企業や、各業界の大手ばかりエントリーをして、内定した外資系消費財メーカーにマーケティング職で新卒入社しました。他にも、投資銀行、コンサル、リクルート、消費財以外の外資/日系メーカー総合職からも内定をもらいました。

強い興味はなかったものの、昔から広告はなんとなく好きだったので、電通や博報堂に入りたかったのですが、すぐに落ちてしまいましたね。全く別の業界に行こうと考えていたのですが、就活を進めるなかでマーケティングの職種別採用がある会社があることを知り、応募しました。内定を複数獲得したなかで、もともと広告に興味があったこともあり、B to Cのマーケティングで消費者とのコミュニケーションを設計することが楽しそうだなと直感的に思い入社を決意しました。

―その直感は間違ってはいませんでしたか?

そうですね。マーケティングは楽しい仕事でした。

特に、B to Cの業界は、自分たちの考えた戦略やアイデアが世の中にでて、多くの人の行動や意思決定を左右する仕事であったので、チャレンジングな日々を過ごすことができました。特に日用消費財は、接触して影響を与える人数が他の商品よりも多いので、自分の仕事に対しては満足感がありました。

―具体的に何がチャレンジングでしたか?

外資系メーカーのマーケティング職はプロジェクトにおいてリーダーの役割を担っているので、いろんな人を説得したり、実際に動いてもらったりということを主体的に実行しなければなりませんでした。

よく言われることですが、1,2年目の段階から意思決定に携わり、リーダーシップを発揮できる環境は自分にとってチャレンジングでしたね。

―説得する相手はどういう人で、どのように説得するのですか?

部門内外や社内外、国内国外を問わず、あらゆる立場の人が相手でした。例えば、同じマーケティングの部署でも、国外にいる部長クラスの外国人相手に、プロジェクトがいかに魅力的で効果的で売上があげられるかを、キャンペーンアイデアからメディアプラン(TV等の広告投下の施策)まで、一貫した説明で納得させなければいけません。

海外から部長クラス以上の訪問がある際は、「海外からの訪問は社内の人間であれ投資家だと思ってプレゼンしなさい」と言われたことを覚えています。

日本国内が魅力的でないとグローバルから判断されたら、中国やインドに投資されて、日本国内のマーケターの存在価値を問われることになるので、プロジェクトの魅力を一生懸命伝えようと努めました。予算が多ければ多いほど自分の仕事の幅が広がり、成長につながる仕事ができるので、予算獲得は特に当事者意識をもって臨んでいました。

また、日本国内の他部署であれば、製造の部署に対して、納期までの時間をさらに短くできるところはないか、利益率をあげるためにコスト削減できる余地はないかを一緒になって検証から実行まで行います。

製造の部署はある程度余裕をもってスケジュールを組みたいので、一回は無理と言われることが多かったです。そこからお願いをして、いかにこのプロジェクトに与えるインパクトが大きいかを伝えて、納得してもらいました。マーケティング以外の部署は、年齢が2周り以上離れている方もいたのでロジックだけではない部分で、感情をこめて伝えることも時には大事でした。

社外であれば、プロジェクトの目的、目標を共有したうえで、実行可能なキャンペーンアイデアに落とし込むために、広告代理店にブリーフィングをする必要があります。広告代理店は時には上司以上に一緒に働くことが多く、彼らといかに思いを一つにできるかがプロジェクト成功のカギになっていました。

こういったステークホルダーに対して、プロジェクトの目的を共有して理解してもらい、一丸となって成功に向けて動き出す必要があります。この役割を担うのがマーケターです。

―入社した外資系企業ではマーケターとしてどのような商材の仕事に携わっていたのですか?

とあるフレグランスブランドの日本を中心とする担当でした。一部東南アジア諸国を担当することもありました。

私は、売上目標を達成するために、与えられたバジェットを活用して、効果を最大化するマーケティングプランを策定するのが主な仕事でした。

―マーケティングプランとはどういったものをさすのでしょうか?

どんなターゲットに、どんなブランドだと思ってほしいかを設定し、その目的を達成するために、ATL(Above the Line)と呼ばれるマス媒体やイベント等のメディアプランの策定、スーパーやドラッグストア等の店頭設計まで、消費者の目に触れるあらゆるコミュニケーションの設計に責任を持ちます。大きな予算が動くところはこのあたりです。

また、製品の価格設定やパッケージのデザイン、製造スケジュール、時には日本の消費者に最も好まれるための原材料の決定など、幅広い分野にわたっての決断にリーダーシップを発揮しています。

「同じ仕事を早くこなせることは成長ではなく、ただの慣れだ」上司から言われキャリアを見つめ直す

―転職を考えたきっかけはなんだったんでしょうか?

数年間、同じ部署にいて仕事を素早くこなすことはできるようになり、自分なりには成長を感じていました。

そんな折、尊敬していた上司から、 「同じ仕事を早くこなせるようになることは成長ではなく、ただの慣れだ」 と言われ、自分のキャリアを見つめなおしました。

そこで、風土も業界も全く異なる環境でマーケティングができて、成長できる場所でチャレンジしてみたいと考えました。

また、当時グローバルの影響力が世界的に強くなっているタイミングでもあり、日本の施策の自由度や、ポジションの減少なども一因にはなっていました。

―転職活動はどのように行ったのでしょうか?

大手のエージェント、特定の業界に強いエージェントなど、複数のエージェントに相談をしました。転職サイト経由で連絡が来た方とやりとりするだけでなく、転職経験のある友人からエージェントを紹介してもらうこともしました。

マーケティングの職種ということは決まっていたので、相談後、すぐに応募しました。全く異なる環境と述べましたが、初めての転職で勝手がわからなかったこともあり、同業界にも一部応募をしました。

似たような外資系消費財メーカーを受けましたが、当時所属していた会社とマーケティングのフレームワークや社風、面接官の方のパーソナリティまでがびっくりするくらい似ていて、やはり違う業界にしようと思ったこともありましたね。

これは余談ですが、対応が不誠実だったエージェントがいて、応募を志望していないところに勝手に応募されるという経験がありました。別のエージェント経由で応募したときにそれが発覚して、エージェントの会社に即クレームをいれました。こういうこともあるので気を付けてください。

―受けていった企業からどのように絞っていったのでしょうか?

私の中では、給料が下がらないということが1つ大きな基準でした。外資系から日系大手まで幅広く応募しました。実は日系企業は書類ではねられることが多かったんですよね。

受けていく中で、判断軸が、東京に本社がある企業であること、店頭・トレードマーケティングやデジタルのみでは無く、領域が限定されていないマーケティング業務ができること、予算規模の大きい B to Cであること、といった感じで固まっていき、最終的に3社ほどで迷いました。

最終的な基準として、当時働いていた環境と最も違いそうだという点で照らし合わせて、現在勤務する大手日系電機メーカーが最も条件に見合ったのでオファーを受諾にしました。

日系は日本市場が、外資系はロジックが重視される

―実際に転職してみて、外資系と日系の違いは何がありましたでしょうか?

そうですね。たくさんありました。外資系、日系といってもそれぞれ1社ずつしか経験がないので、一概に言うことはもちろん難しいですが、その点ご了承ください。

日系だといい点として、当然のことですが、ヘッドクオーターが日本にあることです。多くの日系企業は、今でも意思決定を日本でやっていることが多いので、日本国内の決定が最終的な決定となります。

また、日本のメーカーは最大の市場が日本であることが多いため、社としての戦略上の優先順位が、国内のプロジェクトを担当している限り高くなります。外資系時代の業務であった、いかにそのプロジェクトが魅力的かを国外のマネジメントクラスの人間に話す必要がありません。

一方、外資のいい点は、ロジックが重視されていることです。特に外資系の消費財におけるマーケティングはフレームワークの考え方が浸透しているので、判断基準が明確でした。

現在の日本企業に関していうと、マーケティングのフレームワークがほとんど存在しないため、担当者によって判断基準がまちまちで、マーケティングについて感覚のみで行っている人が多い印象です。日本企業はよく言われていますが、マーケティングが弱いため、今後日本はさらに製品が売れず衰退していくのではないかと危惧しています。

現在勤務する日系大手企業だと、日本では企業名だけで売れてしまうので、何で製品が売れているのかわからなく、機能重視ばかりで消費者のことを見ることができていないという印象があります。

また、マーケティングに関連することですが、外資系の方が、調査設計がしっかりしていて消費者のことをきちんと理解しようとする姿勢があります。製品の一機能や、製品の質問ばかりしても消費者のことは理解できません。その対象消費者がどういう人なのか?というところからはじめないと真の意味での戦略は考えることができないです。外資系は消費者に向いており、調査から得られるインサイトも多いです。

また、外資は年功序列でなく、若くても昇進することができるのがいい点です。日系もだいぶ緩和されていると聞きますが、まだまだ年功序列のイメージは否めません。

とはいえ外資系において、日本人はグローバル全体で見た時に、出世しづらい環境にはあります。語学のハンディキャップだけでなく、○○人閥、といった派閥は外資系企業にも未だにあり、人件費の高い日本人がグローバルで戦っていくには、世界中のライバル以上にあらゆる面で努力していかなければなりません。

業務内容としても日本は一支社なので、会社によっては海外のTVCMを日本語に訳すだけのアダプテーションの作業のみが、日本のマーケティングの仕事になってしまう場合もあるので、注意する必要があります。

こういった良い点、悪い点がそれぞれあるので事前に情報収集しておくことをおススメします。

―働いている人に違いはありますか?

外資系の方が、中途を受け入れる風土もあるので、ジェンダーという狭い意味ではなく、広い意味でのダイバーシティがあると思います。日系は、転職の割合が少ないので、1つの価値観を共有していることが多く、ある意味では思考の硬直化にもつながりやすいです。

ただ、新卒が多数派であることのメリットとしては、会社へのロイヤリティが高く、メンバーが同じ方向を向いて、プロジェクトを進めることが出来ます。

―他に異なる点はありますか?

マーケティング部門からの視点ですが、日系企業だと、営業部門が強い会社が多いため、ビジネスが営業主導になりがちでマーケティング部門が意思決定できる範囲が限られることがあります。一方、外資系企業はマーケティング主導でプロジェクトをはじめ、ドライブする役割を担っているため営業戦略にまでタッチできるのでやれる範囲は広がります。

―外資系から日系、日系から外資系に行く人に何かアドバイスはありますか?

事前の調査も限界はあるし、面接でわかることも限界があります。やはり転職してみて、はじめて分かることばかりです。

少なくとも、外資系から日系に行くときはある程度、明確な転職の理由をもっていないと厳しいと感じます。

今の環境が嫌だ、逃げ出したいという気持ちだけで転職を決めると、大変な目に合うと思います。マネージャーになってポジションをあげたい、他の業界でマーケティングをやりたい、地理的に職場を変えて、大阪・海外で働きたいなどの明確な目的がないと、日系企業へ転職したことを後悔する結果になると思います。

新しい環境にチャレンジすること自体は面白いことですので、転職する理由が強く自分の中にある方には、お勧めしたいです。 「外資系」「日系」と一括りにしましたが会社ごとによって違いがあるので、ご了承ください。

―ありがとうございました。

ありがとうございました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。外資系から日系への転職は大きな環境の違いがあることがわかったのではないでしょうか。一長一短なので、皆さまのキャリアを後悔することがないように、外資系、日系の違いを特に調べておいてください。

コラム作成者
Liiga編集部
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