1年目見習い商社パーソンが描くキャリア像「希望部署でない配属もかえって幸運だった」「仕事に楽しさを見出しつつ、近いうちの転職も視野に」
2020/12/15
#社会人1年目のリアル
#新卒内定者必須コラム
#総合商社の若手は何をしているのか

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Liigaでは、現在内定者向け記事の第1弾として「社会人1年目インタビュー」を連載しています。今回は総合商社1年目の稲垣あかりさん(仮名)のインタビューです。

稲垣さんに商社パーソン1年目の率直な感想と内定期間中の過ごし方をお聞きするとともに、将来の展望についてもお伺いしました。

 
〈Profile〉
稲垣 あかり(仮名)
総合商社 IT部門所属
大学3年の夏以降に本格的に就職活動をスタートさせ、コンサルやメーカーを中心にインターン選考を受けるも全て不採用に。秋以降に商社を中心に活動を進め、見事内定を獲得する。入社時は営業部門を希望していたが、現在のIT部門への配属となった。

【目次】
・「社会人の仕事をナメていた」「社会人はコミュニケーションが大事」社会に出て実感した”働く”のリアル
・「体育会のイメージとは裏腹にフラットな人間関係」意外な商社の人間関係の実態
・コロナ禍の働き方「出社した方が働きやすい」
・内定期間中はどう過ごすべき?「色々なコミュニティーで友達を作っておくこと」
・「自分のしたい仕事ができるまで時間がかかる」社会人1年目で大きく変わったキャリア像

「社会人の仕事をナメていた」「社会人はコミュニケーションが大事」社会に出て実感した”働く”のリアル

――今はどんなお仕事をされていますか?

稲垣:社内向けのシステムを作るチームにいます。チームの仕事としてはサポート期限を迎えるシステムの刷新だったり、リモートワークのためのZoomの社内導入だったりなどを進めています。

私自身の仕事としては、チームのサポートとして、会議の日程調整や会議室の予約、説明会の資料作成などを担当しております。

――お仕事は楽しいですか?

稲垣:あー……うーん……。まだ楽しさを実感できる段階ではないのかなと思っています。

システムを作るチームにいると言っても、まだ根幹に関わる仕事はできておらず、補佐のような仕事がメインです。そのため、自分で作っているという感覚はないのが正直なところです。自分のしたい仕事を任せてもらうには長い時間がかかる印象です。

――商社の若手は下積み期間が長いと聞きます。ということは、今のお仕事は結構楽なんでしょうか?

稲垣:いや、そんなことは全くないです(笑) 。思ったより仕事は大変でした。言葉は悪いですが、社会人の仕事を完全にナメていましたね。

というのも、仕事を終えて家に帰っても「明日も仕事だ」と思うと緊張感が抜けなくて、なかなか自分の好きなように時間が使えないんです。

――残業時間が長いからでしょうか?

稲垣:いえ、私の部署は残業を推奨していないので、アフター5とまでは言いませんが、アフター9くらいなら十分確保できます。

しかし、帰ってご飯を食べて、シャワーを浴びて、次の日に備える、という一連の作業を終えると意外と自由な時間は確保できません。

――今の部署は希望通りの配属ではなかったとお聞きしています。現在はどのように受け止められていますか?

稲垣:入社して半年経ちますが、今となってはIT部門への配属になってかえって幸運だったと思っています。

実際に営業部門に所属しておらず細かいところは分かりませんが、特定の分野を深く狭く学んでいくのが商社の営業だと個人的に思っています。

一方で、私の今の仕事は業務を通じてIT全般に詳しくなることができます。グループのシステム部門と折衝する機会がありますが、私の上司はそのシステム部門の社員の方々と互角、もしくはそれ以上の知識を持っていて、システム専門の方と対等に話せるんです。

そのような上司の背中を見ていると、私も将来的にこのような働き方を目指せるのではないか、と思っています。

いざ働いてみると、特定の商材を扱う営業部門より今の部署の方が全体を俯瞰(ふかん)できるので、自分のキャリアにとってためになるなと思っています。

――実際に働くようになってから、働く上での考え方において大きな変化はありましたか?

稲垣:あります。それはコミュニケーションの重要性です。

――といいますと?

稲垣:学生時代のアルバイトは業種にもよりますがマニュアル化されていて、最悪スタッフ同士で会話がなくても仕事が成立しますよね。実際、私が大学1年生の時に働いていた学習塾は、アルバイト同士の会話がほぼ皆無でした。

でも社会人になると、一緒に働く人とのコミュニケーションってものすごく大事だなと思うようになったんです。

――どのような場面でそう感じますか?

稲垣:仕事を進める上で、チームメンバー以外に経理部や法務部など社内の他の部署の方との連携も必要です。自分の仕事のことを知らない方に状況や依頼事項を端的に説明することは難しく、伝え方の面でとても苦労しました。また、チームメンバーとも、もともとコミュニケーションをとっていて人間関係ができているかが、仕事をスムーズに進められるかどうかを左右します。

私の部署も新型コロナウイルスの影響で飲み会や食事会もすべてなくなり、最初は顔も知らない人たちとリモートのチャットやメールだけでやりとりしないといけませんでした。その時は仕事を進めるのが本当に難しかったです。

「体育会のイメージとは裏腹にフラットな人間関係」意外な商社の人間関係の実態

――やはり、総合商社だと昔かたぎの方が多いのでしょうか?

稲垣:いえ、実はそうでもありません。私の部署はとてもフラットな人間関係で接してくださる先輩や上司が多いです。

例えば、会議のセッティングなどは1年目の私がするのですが、機材のセットアップに手こずっていたとき、上司の方が優しく教えてくれました。またオンライン飲み会を提案してくれたのも上司でしたね。

――商社には体育会系のひとが多いという話もよく聞きますが、その点はどうですか。

稲垣:正直なところ、あまりそういう話も聞かないです。理不尽な体育会系のノリはないと思います。パワハラもないですね。

――身近に活躍されている方にはどんな特徴がありますか?

稲垣:先ほど申し上げた、システム系の知識に精通している上司です。システム系の知識の豊富さももちろんそうですし、その人間性についても尊敬しています。

例えば、1年目である私に注意するとき、最初から指摘せずにまずは私にやらせて自分で気づかせようとしてくれるんですよね。しかも、それで終わりではなく後からきちんと指導してくれます。私も将来的にはそのような上司になれたらと思っています。

コロナ禍の働き方「出社した方が働きやすい」

――今はもうリモートではなく出社がメインになっているのですか?

稲垣:はい。基本は週3出社、週2在宅です。

――リモートの時と出社の時で、ミーティングの頻度に差はありましたか?

稲垣:いえ、同じです。出社している時にするような会議が、そのままオンラインになっていたという感じでした。会議に関して言えば、オンラインでもオフラインでも特に問題はありませんでしたね。

ただ、カメラオフで参加するルールだったので、つい集中力が切れてしまうのが難点でしたが。

――どういうことでしょうか?

稲垣:話の内容が分からず、議論についていけなくなってしまったときに、つい別のことを考えてしまうんですよね。怒られたことはないんですが、何度か「今ヤバかった!」と思ったことはありました(笑)。

――稲垣さんはオンラインと出社、どちらが好きですか?

稲垣:出社ですね。コミュニケーションもとりやすいですし。右も左もわからないので、先輩に聞かないと何も進まないんですよね。

あと、チャットでのやりとりってどうしても冷たく感じちゃうんです。先輩たちも「ごめんね、怖くない?」って聞いてくれるくらいです。だからやっぱり出社して、直接話す方がいいなあと思っています。

内定期間中はどう過ごすべき?「色々なコミュニティーで友達を作っておくこと」

――内定期間中はどんなことをしていましたか?

稲垣:いろんなことをしました。卒論の傍ら、バイトをしたり、友人と遊んだり......。

――卒業旅行などには行かなかったのですか?

稲垣:行きました。でも今となってはもっと海外に行っておけばよかったと思います。途中からコロナのこともあったので、海外1カ国と国内2カ所しか行けなくて。

――「これは内定期間中にやっておいてよかったな」と思うことはありますか?

稲垣:簿記3級の勉強ですね。今は忘れてしまっている部分もありますが、日々の仕事の中で会計の知識の必要性を強く感じています。だからさわりだけでも勉強しておいてよかったし、これからも勉強しなきゃなと思っています。

でも、苦手な英語を克服しようと勉強しましたが、内定期間中に頑張らなくても良かったかなと思っています。

――どうしてですか?

稲垣:語学は仕事をしているうちに、必要な単語や表現が身についていくからです。だからもう一度内定期間をやり直すなら、語学よりも会計の勉強に力を入れますね。

――では内定者の後輩に何かアドバイスをするとしたら、「会計の勉強をしておけ」になるのでしょうか?

稲垣:いえ、それだけではありません。たしかに会計の知識も大切ですが、色々なコミュニティーで友達を作っておくことをおすすめします。社会に出れば悩むことが増えますが、その時に相談できる人がいるかどうかは非常に大事です。

だから、ただ遊ぶだけの友達だけではなく、真面目な話ができる友達をできるだけ多く作っておくといいのかなと思います。

――稲垣さんも、そういったお友達がたくさんいるのですか?

稲垣:高校や大学時代の友人がそうです。最近自粛期間も明けてきたので、ウイルスの感染対策には最大限配慮しつつ、休日には彼らとランチに行ったりしています。

本当は職場の同期にも仲良い友人がもっと欲しいのですが、コロナの影響で研修がオンラインになったことで他部署の同期と会う機会がほとんどなくて……。

だから現役の内定者の人には、今のうちから内定先含め友達を作っておくことを強くおすすめします。

「自分のしたい仕事ができるまで時間がかかる」社会人1年目で大きく変わったキャリア像

――実際に社会に出てみて、学生時代のキャリア像に変化はありましたか?

稲垣:大きく変わりつつあります。もともとは若いうちに海外駐在を経験して、日本に戻ってから30歳くらいで結婚して、産休・育休をとって……と考えていました。

でも今は「別に海外に行かなくてもいいかもな」と思い始めています。

――なぜですか?

稲垣:もともと英語を使って仕事がしたいと思っていたんですが、今はこんな時代なので、別に海外に駐在しなくても英語は使って仕事ができるからです。

それに、海外出張程度ならともかく2〜3年も駐在するとなると、人生設計を考えるのも難しくなるなと思って。

――では転職についてはご検討されていますか?

稲垣:はい。入社当初でもキャリアのなかで転職も視野に入れていました。4月は「転職するなら10年目くらいかな」だったのが、今では3〜4年目での転職も視野に入っています。

――その心境の変化はどうしてですか?

稲垣:先ほど申し上げたように、自分が心から没頭できるような仕事ができるまでに時間がかかると感じるからです。今は始まったばかりなのでまだ判断できないですが、3~4年働いても自分のやりたいことに近づいている実感が湧かなければ転職も考え始めると思います。

――転職するとしたらどんな業界にいきたいですか?

稲垣:裁量の大きいベンチャーや、IT系企業にいきたいです。転職するにしても、現在の仕事の経験や勉強していることが武器になることは間違いないと思うので、スキルや知識をしっかりと身に付けたいですね。

コラム作成者
Liiga編集部
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