不動産業界はブラックな働き方をしているイメージを持たれがち。一方で不動産デベロッパーになると、ホワイトな働き方をしているというイメージを持っている人も多いようです。
では、その実態はどうなのでしょうか。
社風や配属事情についてお聞きした前編に引き続き、同じ大手総合デベロッパーに勤め、先輩と後輩にあたる木津雅紀さん(仮名)と高山光輝さん(仮名)にご協力いただき、不動産デベロッパーの働き方の実態について伺いました。
※ 対談の前編については デベロッパー対談前編をご覧ください。
・「上司より先に帰ると気まずいなんてことは全くない」とてつもなくホワイトな働き方
・「良い意味でも悪い意味でも昇進・昇給の差はほとんどない」大手総合デベロッパーの超安定的なキャリアパス
・彼氏にしたい職業ランキング1位の恋愛事情は?「社内恋愛は全然OK、社内結婚も多い」
・大手総合デベロッパーはキャリアのゴール?「本当に色々な人が転職してくる」が「会社を辞める人はほとんどいない」
「上司より先に帰ると気まずいなんてことは全くない」とてつもなくホワイトな働き方
――不動産デベロッパーの働き方は、ずばりホワイトですか? それともブラックですか?
木津:とてつもなくホワイトだと思います。理不尽なことはなく、風通しが非常にいいです。ただ、部署や一緒に働く人、プロジェクトの波によって忙しくなることもあります。
――どれくらい忙しくなるのですか?
木津:私の場合、1カ月間チーム全員がほぼ毎日深夜まで働くといったことはありました。
所属している部署が企画系コーポレート部門なので、新規投資案件会議が差し迫ったりすると、途端に忙しくなるんです。
といっても他の時期は定時に帰れますし、全体としては非常に働きやすいと思いますよ。
高山:全く同じ認識です。基本的には定時で帰れますし、よく聞くような「上司より先に帰ると気まずい」といったようなしょうもない慣習も全くありません。
――おふたりとも出向経験がありますが、出向先の働き方はどうでしたか?
木津:ハード面では同じでしたが、ソフト面では少し違いました。
――どういうことでしょうか?
木津:「同じような働き方をしていてはダメだ」という意識を常に持つようにしていました。
私は新卒での出向だったので、研修などは全て出向先の新卒の人たちと一緒でした。ただ、採用は本社なので、給与体系も本社のものです。
全く同じような仕事しかしていないのに、出向先の同年代よりも私の方が給料は高いんです。
だから販売をするにしても、開発のプロジェクトに関わるにしても、自分が率先して頑張ろうと思っていましたし、マネジメントのポジションにいなくても全体を俯瞰(ふかん)して仕事をするように意識していましたね。
高山:私が海外勤務で感じたギャップは、日本人と現地の人たちの働き方の違いですね。
――どういった違いですか?
高山:「会社に骨を埋める」というマインドで働いている日本人に比べ、海外の人たちは会社を「自分の専門性を磨く場」「自分の専門性を発揮する場」として考えています。
一人一人が自分を職人として捉えていて、会社に自分のスキルアップにつながる場があるなら働き続けますが、そうでなければすぐに転職してしまうんです。
弊社は長く勤める人が多いので、こうしたマインドは海外拠点ならではのものだと思います。
「良い意味でも悪い意味でも昇進・昇給の差はほとんどない」大手総合デベロッパーの超安定的なキャリアパス
――大手企業の海外出向組は、非常に給料が良いと聞きますが、実際はどうでしたか?
高山:ものすごく充実していました。私が駐在していた国は物価も家賃も高かったのですが、それでもおつりがくるくらいの手当が出ていました。
上限付きではありますが、家賃は全て出してくれますし、給料自体も一気に高くなりました。家賃の補助分も入れたら、年収は二倍になりました。
――お給料のお話が少し出ましたが、昇進・昇給事情について教えていただけるでしょうか?
木津:良い意味でも悪い意味でも差はほとんどありません。
40代を超えて、課長以上のポジションになると少しずつ差が出てくるとは聞きますが、それもうわさレベルの話です。10年目の私くらいの年次だと、全くと言っていいほど社員間での差がありません。
――課長のポジションには、だいたい何割の人が就くことができますか?
木津:課長にはほとんどの人がなっているイメージですね。
高山:7〜8割くらいの人がなっているんじゃないでしょうか。なれない人の方が少数派です。
木津:部長職になると、全体の25%くらいです。同期が20人いたら4〜5人くらいが部長になる。
高山:ただここ数年は、新卒採用だけでも50人くらい採っているので、これからは割合が減っていくと思います。人手に比例して、ポストが増えるわけではないですから。
――給与はどれくらいのペースで上がっていくのですか?
木津:浪人や留年をせずに新卒で入っていたら30歳手前となる、7〜8年目には年収1,000万円を超えるという感じです。8年目になれば確実に1,000万円のラインは超えますね。
ぶっちゃけた話、私は残業代なども入れて1,200万円ほどもらっています。
高山:今私が5年目なので……あと3年くらいで1,000万円に手が届くんですね。そういう話は社内でもあまりしないので、先が見えて少しうれしいです(笑)。
――先ほどの海外駐在員は住宅補助が手厚いとの話ですが、国内ではどうですか?
高山:ありますよ。賃貸の人で月6〜7万円は出ます。金額は少し落ちますが、持ち家の人にも支給されています。
彼氏にしたい職業ランキング1位の恋愛事情は?「社内恋愛は全然OK、社内結婚もけっこう多い」
――とあるテレビ番組で、「彼氏にしたい職業ランキング1位」に不動産デベロッパーが挙がっていましたが、実際のところはどうですか?
高山:え……不動産デベロッパーってモテるんですか……?
木津:YouTuberとかもランクインしてたから眉唾ものだけど、そうらしいよ(笑)。
――あまり実感はありませんか?
高山:個人的にはないですね。合コンが好きな人たちは一定数いて、私の同期は若手の時は先輩や後輩を引き連れて合コンに頻繁に行っていましたね。
木津:「今週は3日合コンがある」みたいに言っている人もいるので、ニーズはあるってことなのかもしれません。私は行かないのでわからないんですが(笑)。
――合コン以外だと、どういうところで出会いがあるのでしょうか?
高山:社内で見つけている人は多いですよ。社内恋愛は全然OKですし、社内結婚もけっこう多いです。
木津:無関係な部署の人同士が結婚することも多いですよね。「どこに接点あったの!?」みたいなケースがちょくちょくあります。
――どこで知り合っているんでしょう?
木津:前編でもお話ししたように、弊社は社員の仲が良いので、定期的に部署を横断した飲み会やイベントがあるんです。そこで知り合うのだと思います。
部署が同じだったり、プロジェクトが一緒だったりして知り合う人たちもいますが、もしかしたら無関係な部署同士のカップルの方が多いかもしれないですね。
大手総合デベロッパーはキャリアのゴール?「本当に色々な人が転職してくる」が「会社を辞める人はほとんどいない」
――そこまで仲が良いと、転職する人は少ないのでしょうか?
木津:会社を辞める人はほとんどいませんね。 高山:5年目の私の代は、まだ1人も辞めていません。先輩や後輩の代でも、ちょくちょく聞くくらいです。
――辞めた人はどこに転職していくのでしょうか?
木津:私の代は、2人辞めましたが、どちらも総合デベロッパーとしてではなく、より専門に特化したデベロッパーがやりたいと言って転職していきました。
高山:最近はベンチャー企業にいくという話を聞くことが多いですね。自分で立ち上げたり、コアのメンバーとしてジョインしたり。
――逆に不動産デベロッパーに転職してくる人は、どんな人が多いですか?
木津:新卒と同じで、本当に色々な人がいますよ。外資系コンサルファームから来た人、外資系投資銀行にいた人、同業他社から来た人もいます。
高山:メーカー出身とか、海運出身の人も聞きます。部署によっては金融系の人が多いところもありますね。信託銀行出身とか証券取引所から来た人、外資系でファンドマネージャーをやっていたという人もいます。
――採用動向は増加傾向ですか? それとも減少傾向にありますか?
木津:増加傾向にあります。先ほど高山が申し上げたように、新卒も以前の20〜30人から50人に増員していますし、中途採用枠もかなり増やしている印象です。
高山:前回お話ししたプロ職採用も増えています。
不動産に限らず、事業をどんどん広げているので、人手不足が明確なんですよ。
木津:だから不動産デベロッパーの仕事に興味がある人で、優秀な人は、ぜひこの業界に入ってきてほしいですね。