「PEファンドに転職できるかは、“実力+椅子が空いてるか”どうかで決まる」現役PEマンが語る、転職成功のカギとは?
2020/12/27
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「30代で年収1億円」という話もあるPEファンドのお仕事。現在、戦略コンサルファームや投資銀行業界などプロファームに在籍されたビジネスパーソンの転職先として人気が高まっている業界でもあります。投資や経営に興味のある人の中には「いつかPEファンドへ」と思っていてもなかなか動けない......という人もいるのではないでしょうか。

今回お話を伺った横井聡さん(仮名)は、新卒で日系大手メーカーに就職。法務などの仕事に携わったのち、戦略コンサル・FASを経て、現在のPEファンドに転職した方です。

そんな横井さんに、PEファンドに転職しようと思った理由や、PEファンド転職で役に立った戦略コンサルとしてのスキル、そしてPEファンド転職の実情とリアルな選考対策についてお聞きしました。

〈Profile〉
横井 聡(仮名)
PEファンド アソシエイト
大学卒業後、日系大手メーカーに就職し、法務の仕事に携わる。その後外資系の戦略コンサル・FASを経験したのち、PEファンドに転職。現在は新規投資案件のソーシングに携わっている。


【目次】
・「戦コンマネージャーでも、PEファンド転職では書類で落とされる」元コンサルが狭き門に挑もうと思った理由
・「転職後に生かせるのはビジネスDDとハンズオンの経験」戦略コンサル出身者と投資銀行出身者がPEファンドで求められるスキルの違いとは?
・「転職できるかは実力だけでなく“椅子”が空いてるかどうかで決まる」PEファンド転職の実情とリアルな選考対策
・「PEファンド転職でワークライフバランスが圧倒的に向上」「まずはちゃんとPEマンとして実績を積みたい」PEファンドの働き方と見据えている将来像

「戦コンマネージャーでも、PEファンド転職では書類で落とされる」元コンサルが狭き門に挑もうと思った理由

――PEファンドはかなりの狭き門といわれていますが、実際はどうでしょうか?

横井:日系の有名なPEファンドでは、外資系の世界的な戦略コンサルファームでマネージャーを務めていた人でも書類選考で落とされたと聞いたことがあります。狭き門であることは間違いないでしょう。

――そんなハードルの高いPEファンドに挑戦しようと思ったのはどうしてですか?

横井:このままコンサルを続けていても、担当クライアント(会社)を抜本的に変えるのは難しいと感じたからです。私以外のコンサルの方でも、程度の差はあると思いますが、同じような悩みを抱える場面があると思いますよ。

――会社を変えるのは難しいと感じたきっかけはありましたか?

横井:あるとき、クライアントの事業部のトップと「この企業への出資は戦略上非常に有意義なので、絶対に交渉を成功させましょう」と話していたことがありました。

実際に交渉にも動いて、ほとんど契約がまとまっていたのですが、最後の最後でその会社のトップが「そんな生ぬるい条件で買うな。この条件で買え!」とこれまでの交渉の経緯を踏まえても難しく、ロジカルな説明もできない条件での交渉を指示してきたんです。

――交渉が決裂してしまった?

横井:そのときはたまたまご破算にはなりませんでしたが、最初は「終わった」と思いましたね。

コンサルをしていて、こういったガバナンスが機能していないことが要因で物事が進まないというケースを複数経験してきました。

PEファンドなら、株式を50%以上保有したうえで、比較的強く「この赤字の拠点を閉じてください」とか「この拠点の売上予算が未達なので、一緒にアクションを考えましょう」といった具合にドライブしながら、会社を変えていけます。

“ガバナンスを効かせられる“というコンサルにはないPEファンドの特徴を活かして企業を良くしたいと思ったことが転職を考えた理由の一つです。

――他にも転職動機はありますか?

横井:もう一つはお給料ですね。コンサル業界では、マネージャークラスくらいまではプロジェクト単位でのパフォーマンスでお給料が決まります。

一方で、PEファンドはリターンを出せば、その分自分に返ってきます。そういった、良い意味でも悪い意味でもわかりやすい世界で勝負したいと思ったのも転職動機ですね。

あとは「掛け算で勝負できる人材になった方がいい」と感じたのも、PEファンドを選んだきっかけです。

――どういうことでしょうか?

横井:コンサル業界で何年か働いてみて、自分より頭の良い人が本当にたくさんいることを痛感しました。シニアになるとそこに業界知見が加わってくる。そのまま頭の良さだけで戦っていくのは無理だと思ったんです。現役コンサルの方には色々な意見があると思いますが、努力だけでは乗り越えられない「センス」のようなものも多分にあると思います。

自分としては、事業マネジメントやファイナンス、リーガルやタックスといった、いろいろな分野の掛け算で勝負していく方が戦えるとこれまでの経験で感じました。最初の会社で法務にいたので、「センス」よりも努力でカバーできる範囲が(楽ではないですが)多いと知っていたのも理由です。

「転職後に生かせるのはビジネスDDとハンズオンの経験」戦略コンサル出身者と投資銀行出身者がPEファンドで求められるスキルの違いとは?

――PEファンドに転職する人には、戦略コンサル出身者と投資銀行出身者が多いと聞きます。PEファンド転職で使える戦略コンサルのスキルにはどんなものがありますか?

横井:ビジネスデューデリジェンス(以下、ビジネスDD)とハンズオンの経験ですね。

ある企業が投資に値するのかどうかを判断する時、PEファンドも戦略コンサルにビジネスDDを依頼します。しかし、1から10までコンサルにお願いするわけにもいかないので、初期の段階では自分たちで調べて投資仮説を立てる必要があります。

そのときに戦略コンサル時代のビジネスDDの経験がそのまま使えるわけです。

――ハンズオンの経験が生きるのはどんな時ですか?

横井:実際に買った企業の中に入り込んで、バリューアップを図るタイミングですね。

PEファンドのビジネスモデルは単純化して言うと、買収した時よりも企業の事業を良くして、高い値段で他社に買収してもらう、高い値段で上場することによって、買収時の差額で儲けるというものです。

この企業の魅力を最大化するフェーズで役に立つのが、ハンズオン――クライアント企業の経営に直接・間接的に関与して、事業の改革・改善を行った経験というわけですね。

――そう考えると、PEファンドへの転職は投資銀行出身者より戦略コンサル出身者の方が有利なのでしょうか?

横井:いえ、戦略コンサル出身者と投資銀行出身者では、求められるスキルが違います。

戦略コンサル出身者にはビジネスDDやハンズオンの経験が求められますが、投資銀行出身者が求められるのはM&Aに関わるすべてを取り仕切る経験やスキルです。

具体的には、企業の価値を算出するためのモデル作成、ディールのスキームを考えるストラクチャリング、契約交渉等、ディールの実行に関わる様々なアクションです。こうした分野は、かなりの経験と知識が必要なので、投資銀行出身者は即戦力としてPEファンドに入ってくることが多いです。

「転職できるかは実力だけでなく“椅子”が空いてるかどうかで決まる」PEファンド転職の実情とリアルな選考対策

――狭き門であるPEファンドへの転職を、横井さんはどのように乗り越えたのですか?

横井PEファンドに転職できるかは、結局のところ「椅子」が空いているかどうかで決まってしまう部分も残念ながらあるんですよ。

PEファンドは多くても1社あたり40〜50人くらいの規模でビジネスをしている業界です。そのため採用もコンサルに比べて少なく、一度の募集で1〜2人、多くて4人くらいの枠しか用意しません。だから採用する時は明確な採用条件を決めている場合が多いです。

――例えばどんな条件でしょうか?

横井:20代後半の投資銀行出身者で、ディールの経験をこれくらい積んでいて……というものだったり、30代前半の戦略コンサル出身者で、ハンズオンの経験が豊富で……というものだったりといろいろあります。

はっきりと言えるのは、どんなに能力や実績があっても、条件に見合わない人は採用されないということです。私も実際、「今は30歳までで探しています」という理由で書類通過しないファンドのありました。書類は通っても、「同じような経験をしているより若い方がいるので。。。」という理由でご縁がなかったファンドもあります。ファンドに興味がある方は、なるべく若いうちにトライした方が良いと個人的には思います。

――だから戦コンのマネージャーでも落とされるということですね?

横井:そうです。私自身、転職活動を始めて半年くらいかけて10社以上アプライして、オファーをもらったのは2社でした。可能性があるところを選り好みせずに受けたという感じです。

――その2社からオファーをもらった要因はどこにあると思いますか?

横井:1つ目は先ほど申し上げたような「PEファンドでなければならない理由」を志望動機でしっかりと伝えられたこと。2つ目はコンサル的なビジネスDDの経験のみならず、バリュエーションや出資交渉支援といった、普通のコンサルだとあまり経験する機会がないファイナンス系のプロジェクトの経験や、メーカー時代の法務の経験など、幅広い経験値をアピールできたこと。

3つ目は、オファーをもらった2社との相性・タイミングが良かったからです。

――PEファンド転職では、相性・タイミングも大切なのですか?

横井:はい。PEファンドは少数精鋭の組織なので、その人が優秀かどうかだけでなく、会社と合うか否か、他の候補者と比較してどうか、組織のバランス上採った方が良いかが非常に大切になります。

実際、志望度が高かったPEファンドの最終面接で、社長との相性が良くないと判断されたことありました。また、その会社も含め「より優秀な人がいた」、「直近4名採用する予定の2枠をコンサル出身者で埋めてしまったので、迷ったが残りは投資銀行の人にしたい」といった、自身ではコントロールが難しい理由で落とされています。

「PEファンド転職でワークライフバランスが圧倒的に向上」「まずはちゃんとPEマンとして実績を積みたい」PEファンドの働き方と見据えている将来像

――実際にPEファンドに入ってみての感想はどうですか?

横井:ワークライフバランスは向上しました。仕事のやりがいも大きくなり、とても満足しています。

――労働時間はどれくらい変化しましたか?

横井:戦略コンサル時代では多いときで月残業200時間、働き方改革後も100時間以内という状況でした。

まだ働き始めて間もないですが、ディールが佳境に入っている時以外は、早く帰れる日が増えました。

――仕事のやりがいではどんな変化がありましたか?

横井「投資判断をする」というところに、大きなやりがいを感じています。

コンサルにいたころは、クライアントに対して投資の提案をするとき「順調にいけばこれくらい利益が出ますが、万が一成長が鈍化してもロジカルに考えればこれくらいの利益に落ち着きます」といったような説明が中心でした。

でも今は「想定外に利益が落ちるリスクを払拭しきれない中で、自分は投資するのか否か」を問われているわけです。

――大変なプレッシャーがありそうですが……。

横井:確かにコンサルのころよりも、意思決定者としての覚悟が問われるようになりました。でも、年齢を重ねていけば意思決定をした経験、意思決定をして成果を残した経験がより重要になっていきます。

だから、今そういった経験を積むことができているというのは、とてもありがたいことだと考えています。

――今後のキャリアについては、どのように考えていますか?

横井:まだPEファンドに入ったばかりなので、これからの3〜5年はまずしっかりとPEマンとしての実績を積んでいきたいですね。具体的には投資の検討、判断をする経験、実際に投資をする経験、3〜5年かけてきちんとエグジットをして、数字を作る経験です。

それ以降は、自分なりの芸を磨いていくフェーズに入ると思っています。

――芸とはどんなものですか?

横井:得意分野のことです。「この業界が得意」でもいいですし、「大企業のカーブアウトが得意」でもいい。グローバル化に合わせて海外進出が投資テーマとなる投資を得意分野にしても良さそうです。

今はまだ見えていませんが、将来的には何らかの得意分野を作っていきたいなと考えています。

コラム作成者
Liiga編集部
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