「体育会系」「ハードワーク」のイメージが強い広告業界。これから広告業界に飛び込もうとしている内定者の皆様にとっては「内定期間の間、何をしておくべきなのか」は気になるところでしょう。
関川誠さん(仮名)は、大手広告代理店1年目のプランナーです。今回は関川さんに、1年目だからこそ感じる「内定期間中にやるべきこと」「成功する広告代理店勤務者の特徴」「キャリアの将来像」についてお話しいただきました。
・「テレビだけは見るべきだ。他には何もしなくていい」広告業界内定者が今やるべきこととは?
・「話がうまくて、ミーハー」広告業界に向いている人の特徴
・「10年はこの会社に勤めそう。将来は海外向けの仕事に携わりたい」広告代理店勤務1年目が見据える、自らの未来
「テレビだけは見るべきだ。他には何もしなくていい」広告業界内定者が今やるべきこととは?
――今内定者期間を過ごしている後輩たちに、何か1つアドバイスするとしたら、何を伝えたいですか?
関川:「テレビを見ろ。他には何もしなくていい」と伝えたいですね。
――どうしてですか?
関川:理由は大きく2つあります。
1つは、テレビ番組やCMごとのターゲット層について知るためです。何時くらいの、どのような番組に、どのようなCMが流れているか――これを観察するだけでも「どういう人をターゲットにしているのか」が見えてきます。こうした分析の経験は、実際に広告業界に入ってみると想像以上に役に立ちます。
もう1つの理由は、メディアや世の中のことを知るためです。広告代理店では、クライアント以上にテレビをはじめとするメディアや、世の中のことを知っていることを期待されます。それに応えるためにも、普段からテレビを見ておくことは非常に重要です。
――テレビ番組やメディア、ひいては世の中の出来事についてまで、深い理解をしておく必要があるのですね。
関川:その通りです。
広告業界では、たとえば「火曜日午後7時から、A局で放送されている番組は?」と聞かれたら、即答出来なければいけないんですよ。もっと言えば、各番組がどんな視聴者層をターゲットにしているかも、ある程度理解している必要があります。
――関川さんも内定期間は相当テレビを見たのでしょうか?
関川:いえ、全く……。正直言って、学生時代はテレビを持ってすらいませんでした。だから社会人になってテレビを買って、いま必死に勉強しています。
現在はコロナの影響でほぼ毎日リモート勤務なのですが、4〜5月は毎日一日中テレビをつけて、仕事をしながら勉強をしていました。慣れない仕事をしながら、慣れないテレビを見るので、最初はかなり大変でしたね。
――では、関川さんは内定期間は何をしていたのですか?
関川:港区にあるアドミュージアム東京に行って、広告の歴史を多少勉強したくらいですね……。会社からはMOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)の取得や、ビジネスマナーの勉強をするように言われていたのですが、あまり真面目にやらずに4月を迎えました。
――それでも大丈夫でしたか?
関川:特に問題はありませんでしたよ。Microsoft Officeに全くさわれないとか、ビジネスマナーを予習しておかないと不安とか、そういうことなら勉強しておいたほうがいいかもしれませんが、ある程度自信があるならわざわざ勉強しなくてもいいと思います。
言い過ぎかもしれませんが、とにかくテレビさえじっくり見ていれば、他には何もしなくても大丈夫です。何度も言いますが、本当にテレビだけは見ておいたほうがいいです(笑)。
「話がうまくて、ミーハー」広告業界に向いている人の特徴
――4月から働いてみて、上司や先輩で「優秀だな」と思う人の共通点はありますか?
関川:2つあります。1つは「知識・情報量の多い人」です。
私の身近でいうと、今の直属のトレーナーがそのタイプです。広告やマーケティング領域にはいろいろな指標があるのですが、その人は本来自分の分野ではない指標についても、またもっというと広告やマーケティング外の領域に関しても、とても知見が広いのです。
――2つ目の共通点も教えてください。
関川:2つ目は、「良い意味で人を使うのがうまい人」です。
もっというと、どういうところに落とし込むべきかというのを見据えたうえで、周囲に的確な指示出しができる人ですね。
細かい話ですが、会議後に「次の会議まで何をするべきか」が見えていない上司や先輩は意外と多いものです。ネクストステップをメールなり口頭なりではっきりと示して、チームを動かしていくことができる人は、やはり優秀だと感じます。
――関川さんから見て、広告代理店に向いている人の特徴はなんでしょうか?
関川:1つは「話がうまい人」。もう一つは「良い意味でミーハーな人」ですね。
――「話がうまい」というのはプレゼンがうまいということでしょうか?
関川:いいえ。どちらかというと「たわいない話を他人と3時間くらいできる」という意味です。営業やクリエイティブ担当者は特にそういったスキルがあった方が便利だと思います。
ただ一方で、一言もしゃべらないのに大変評価されているクリエイティブの人もいるので、一概には言えませんけどね。
――では、「良い意味でミーハー」というのはどういうことでしょうか?
関川:興味の幅が広い人、という意味です。
例えば、ゲームがめちゃくちゃ好きで、テレビもめちゃくちゃ好きな、一見インドア派に見えるけど、実はサーフィンやスノーボード、キャンプなども大好き、みたいな人です(笑)。
「10年はこの会社に勤めそう。将来は海外向けの仕事に携わりたい」広告代理店勤務1年目が見据える、自らの未来
――関川さんは現在プランナーとのことですが、自分で希望を出したのですか?
関川:自分から希望を出しました。ただ私の場合、プランナーになりたかったというよりは、人事から「プランナーに向いていそう」と言われたため、その通りに希望した形です。
――自分の希望は特になかったのですか?
関川:はい。そもそもあまり広告の世界を知らずに今の会社を受けたので、どの職種・部署がどんな仕事をするのか、どれが自分に合っているのかがわからなかったんです。
だから面接の際、人事の人に「何っぽいでしょうか?」と聞いたんです。そこでプランナーだと言われたので、言われるがままに希望しました(笑)。
――後悔はありませんか?
関川:ありません。むしろ仕事が楽しくて、本当はダメなんですが朝も夜も、週末も平日も関係なく、何かと仕事をしていますね。
――転職は考えていますか?
関川:今のところは、10年くらいはこの会社に勤める気でいます。
最初は「5年勤めたら長い方かな」程度に考えていたのですが、働き始めてみると仕事そのものが面白いのと、今の会社で働くことのメリットが大きいような気がして。
――今の会社で働くことのメリットとは何ですか?
関川:大手だけあって広告に関する膨大で詳細なデータを持っていたり、業界のルールを主体的に構築できたりといった点です。
ただ、どうせ10年勤めるのであれば海外を相手に仕事をしたいという思いはありますね。
――海外転勤、海外出向などですか?
関川:そうですね。あとは海外支社や海外のグループ会社などとやりとりをする、国内の部署に所属するのもいいかなと思っています。
――そのためにはどんなスキルが必要だと思っていますか?
関川:膨大な情報・知識量を持ったり、全体を見られる人間になったりしないとダメだと思っています。
広告業界は、私が勤める会社を含めてまだまだ昔ながらの年功序列の風習が残っています。
そのため、ちょっと優秀なくらいでは、どうしてもチャンスが回ってきません。だから、自分のやりたいことをやりたいようにするためには、先ほどお話ししたような「優秀な人」になる必要があるんです。