sponsored by PwCアドバイザリー合同会社
PMI(M&A後の統合効果を最大化するための統合業務)は、企業のM&A戦略の中で重要な位置を占めており、さまざまなコンサルティングファームがPMIのチームを組成している。案件の量も増えてきており、若手でも責任のあるポジションに就くことも多い。今回はPwCアドバイザリー合同会社(以下、PwCアドバイザリー)に入社し、PMI未経験で同社のDS&O(ディールズストラテジー&オペレーション)に所属した若手社員の吉田大祐さん、久保恵理華さん、叶健仁さんに、同社を選んだ理由、得られる経験などについて、語ってもらった。
「企業のビジネス全体を見通せる」魅力に引かれ、転職を決意
――PwCアドバイザリーでPMIに携わろうと考えた理由を教えてください。
吉田:PwCアドバイザリーは、さまざまなサービスラインをグローバル展開しているPwCグローバルネットワークのメンバーファームであるため、自分の語学スキルと監査経験を生かせると思いました。
入社当時は財務デューデリジェンスを実施するチームに所属していましたが、ある日、PMIチームの業務にアサインされ、クライアントと海外の被買収会社に行くという経験をしました。被買収会社の幹部にガバナンス体制、財務レポーティング体制の現状をヒアリングし、買収後にどのような体制を敷けば良いのか徹底的にディスカッションしました。 語学スキルと監査経験が役に立ったこの経験が、PMIへの関心を非常に高め、自分の専門領域にしたいと思わせたきっかけと言えます。
久保:PwCアドバイザリー入社前は、別のコンサルティング会社に在籍し、オペレーション改革やITシステムの導入などを担当していました。クライアントと今後の実務像を日々検討する中で、もっと違う角度からビジネスに携わりたいと思うようになったのが転職のきっかけです。PMIを通じて企業のビジネス全体を見通すことができる点に引かれました。またPwCには国内に監査、税務、コンサルティングなど、各専門の関連会社があり、世界各国にも多くのメンバーファームが存在します。このグループ連携を強みに、クライアントに提案を行っている点にも魅力を感じ、入社しました。
叶:私は日系の大手証券会社でM&AのFA(フィナンシャルアドバイザリー)業務に携わっていました。FAとしてM&Aに携わる中で、M&Aをビジネスとオペレーションの面から俯瞰(ふかん)することができるPMIに関心を持つようになり、2019年に当社に入社しました。
久保:M&Aに関わる、という点では同じでもFAからPMIアドバイザリーというのは、業務内容が随分違いますよね。
叶:そうですね。FAはM&A取引に対して財務の側面や取引そのものをアドバイスし「M&Aディールを完了する」ことを主軸とした業務です。対してPMIアドバイザリーは、買収した企業を「どのように運営し成長させていくか」を考える業務、といった違いがあります。当社では、PMIチームがディールの初期や途中段階から買収後のプランニングを行うことが多いと知り、私のFAとしての経験が生かせるのではないかと思いました。
「組織は正論だけでは動かない」。統合案件で試された力量
――PMI業務で難しいと思ったことはありますか。また、それをどのように乗り越えましたか。
吉田:ある統合案件を通じて「正論だけでは組織は動かない」という経験をしました。これまで別々の道を歩んでいた企業同士が統合するのですから、ステークホルダーが見ている将来像・方向性は当然のことながらバラバラです。アドバイスをする中で、全体最適に向けた素案を考慮しながら、いかに各企業のニーズに合わせて方針を整えていけるか、そこにコンサルタントとしての自分の力量が試されていると感じました。結果的には、担当者との綿密なコミュニケーションを通じて、各社が抱える利害を少しずつ調整することで無事にそれぞれが納得のいく落としどころを見つけることができたと思います。
叶:「正論だけでは組織は動かない」というのは、まさにその通りだと私も感じています。どんなに合理的な企業でも、運営を行っているのは「人」です。ですから、それぞれの案件において、その「人」にどのようにアプローチするかが重要になると感じました。例えば、被買収企業がPMI活動のリソース管理に消極的であれば、買い手側にPMIニーズの優先順位度を整理してもらい、さらに両社間のコミュニケーションがスムーズになるよう働き掛ける、といった柔軟な対応も必要になってきます。
統合の検討に当たっては、買い手であるクライアントと被買収企業に統合方針の合理性だけを説いてもうまくいくとは限りません。両社のニーズをくみ取り、双方が納得する形でPMI方針を定めることで初めてPMI活動に前向きに取り組んでもらえるのだと感じました。
久保:M&Aでは、売り手、買い手の当事者に加え、弁護士やアドバイザーなど、さまざまなステークホルダーが関わりますから、常に意見や情報が飛び交い、日々課題も大量に発生します。時間の制約もあるため、事実を整理し、課題について関係者と迅速にコミュニケーションを行うことが重要だと感じます。グローバル案件の場合、迅速なコミュニケーションを行う上で不規則な業務時間となることもありますが、「PMIチームの雰囲気の良さ」にいつも助けられています。温かい人柄の人が多く、忙しい中でも役職関係なくお互いを支え合うカルチャーがあることで、難しい案件でも乗り越えることができていると感じます。
PMIで求められる、経営を短期間で客観的に把握する力
――PMI業務に求められる資質は何だとお考えですか。
叶:企業の事業・オペレーションの全体像を短期間で客観的に見渡す力ですね。M&Aディールの最中に行われる、クロージングに向けたPMIアドバイザリーにスピード感が求められるのはもちろん、クロージング後のPMIも一定期間のマイルストーンを見据えた活動になるため、ある程度のスピード感が求められます。そのため、限られた期間の中で、企業同士の事業・オペレーションの全体感を把握し、クライアントの求めるPMIの深度を量りながらアドバイスをしていく能力を培っていく必要があると感じています。
久保:まず、いくつものアイデアの中から現実的な落としどころを見つける力が大事だと思います。PMIを計画する際にはさまざまなアイデアが出てくるのですが、時間・リソースの制約を考慮し、関係者が納得するアイデアの取捨選択と優先順位を決め、実行する視点を持つ必要があります。
吉田:「コミュニケーション力」だと思います。PMIは、買収後の目指す姿をクライアントと徹底的に協議しながら進めていく業務ですので、信頼関係を構築できなければ、私たちからの提案にクライアントも納得できなくなってしまいますし、目指す姿に向かうためのクライアントのアクションも鈍くなってしまいます。そのため、信頼関係を構築するためのコミュニケーション力は必須スキルです。
――「コミュニケーション力」とは、具体的にどのような能力だと思いますか。皆さんのお考えをそれぞれお聞きしたいです。
久保:細かいことであっても、それらを先回りしてケアできる気遣いだと思います。そのためには、PMIに対して主体性を持ち、クライアントに対して起こりうる事象を予測できる力が試されます。
叶:仕事に関することだけではなく、その人のパーソナリティーを引き出して、信頼関係を構築できる能力だと考えています。私たちはクライアントとビジネスパートナーとしてお付き合いをしていますが、一人一人の人間性にも着目できると、より深い関わりができると考えています。
――PMIに向いているのは「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」のどちらだと思いますか。
叶:結論としては、どちらも活躍できると思います。PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)を主軸としてクライアントのPMI活動を俯瞰的にアドバイスすることもできますし、ビジネス・会計・IT・人事などの専門性を持ってクライアント同士のシナジーの検討、会計基準やITシステム、人事制度の統合などに付加価値を出すこともできます。
吉田:スペシャリストを目指すかジェネラリストを目指すか、「縦軸(ハードスキル)と横軸(ソフトスキル)」で考えるのが良いと思います。ハードスキルとは、会計・人事・IT・デジタルといった専門知識で、ソフトスキルとはリーダーシップ力、コミュニケーション力、問題解決能力といった能力です。大切なのは、中長期的に見据えて、自分を縦横軸の座標のどこにプロットさせたいかについて考えることです。
久保:その説明は分かりやすいですね。私は、縦軸があると強いと思う一方、横軸も大切だと考えています。PMIの案件では着目すべきファンクションタスクが多岐にわたるため、チームとしての価値を最大化するためには、他人の強みを認識してお互いの強みをうまく掛け合わせて案件に取り組むべきです。そのためには「ハードスキル」と「ソフトスキル」のどちらも必要になってくると考えます。
M&A成立後の初日をクライアントと祝える喜び
――この業務に就いて、心が大きく揺さぶられた経験はありますか。
久保:自分のちょっとした経験が、クライアントにとって大きなバリューになったなと思えると、やりがいを感じます。PMIという1つの軸に身を置いて業務をしているため、自分の業務領域を明確に把握でき、日々の知見の積み重ねから、自分の成長が実感できます。それによって、もっとクライアントに喜んでもらえれば、これほどうれしいことはありません。
叶:クライアントと一緒にDAY1(売買契約締結後、買収対象事業の所有権が買収先に移管した、統合初日)を迎えられることです。FA業務では、M&Aの契約が無事締結されたら次第に案件からフェードアウトし、すぐ次の案件にアサインされることが多く、DAY1をクライアントと祝うような機会は少なかったです。M&Aプロセスの中でも、DAY1をクライアントと一緒に迎えられるのはPMIの醍醐味(だいごみ)ではないかと思います。
吉田:確かに、DAY1を迎え、クライアントから感謝の言葉をいただけるのはとてもうれしい瞬間です。私は、クロスボーダー案件に携わることが多いですが、商習慣、文化、言語などの違いから発生する問題が非常に多いため、これらの問題を1つ1つ解決するのは大変な時もあります。ですから、そのような時期を乗り越えて、DAY1を祝えるのは感慨深いです。とはいえ、DAY1以降のフェーズがPMIチームの真骨頂となるので、ともにスタートを切ったクライアントと伴走しながら引き続きバリューを発揮していけるよう取り組もうと思えるのもPMIの魅力の一つです。
――若い段階でPMIに携わるメリットは何でしょうか。
叶:さまざまな企業における経営の全体像を見据えつつ、ビジネス・会計・人事・ITなどの機能について携わる機会があることだと思います。事業会社で1つの業務を担当するのと違い、さまざまな経営トピックに触れる機会が増えるので、自分でビジネスを起こしたいと考えている人にとっても、非常に実践的な力を身に付けることができるのではないでしょうか。
久保:M&Aに携わるクライアントは経験豊富な方が多く、プロジェクトを通してさまざまな知識を吸収できることです。長年の経験に基づくビジネスの在り方・課題に関するご意見は興味深く、自身のビジネスに対する洞察力を磨く上で大変ありがたいと感じています。
吉田:「組織を動かす力学」「各業界の知識」「M&Aの奥深さ」を同時に学べる点が非常に魅力的だと思います。ビジネス・会計・人事・ITなどの専門知識に加え、幅広い業態のクライアントと案件に取り組むので、専門的でありながらも広いトピックに若いうちから携われることで、自己成長という観点で見たときに大きなプラスとなると感じています。